○○○○勢マスター   作:花垣

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 場合によっては変わったりするかもしれません。
 ご容赦お願いします。


File.グランバロア
アブル


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぺたぺた、よちよち、冒険者ギルドへの道を歩いてく。

 

 

 

 

「うおっ⁉︎」

 

「気合入り過ぎじゃね……?」

 

 

 ……ひさびさに陸を歩くと驚かれる。

 まぁそれは仕方ない。

 

 

 

 

『報告きたよー』

 

「うわぁっ⁉︎」

 

 

 

 

 けど冒険者ギルドでも驚かれた。

 見覚えない子だし新人かな?

 ならそれも仕方ない。

 

 

 ──服を着たサメが入ってきたんだから。

 

 

 

 

『んぎゅ……、……っと」

 

 

 

 

 でもまあそれで話が進まないのも嫌なので、ぎゅぎゅ……、──ぽっと【トヨタマヒメ】の顎の下から顔を出す。

 これで服を着たサメから、服を着たサメを着た女の子になった。

 

 

 

 

「ごめんね。驚かせちゃった?」

 

「あ、あなたがアブルさん⁈大変すみませんでした‼︎」

 

「いーよいーよ」

 

 

 

 

 わたしはアブル。

 グランバロアの冒険船団所属のマスターだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小さい頃からお魚と話してみたいと思っていた。

 お魚から見える海の形を知りたかった。

 けどイルカやクジラの言葉はだいぶ分かってきたらしい2040年代に入ってもお魚の言葉は分からないままだった。

 

 

 でも話題になった〈デンドロ〉というゲームには色んな性能を持つエンブリオというものがあると聞いて、もしかしたらって気持ちでやってみた。

 

 

 そうして現れたのが服を着てる以外は本物そっくりのサメの着ぐるみ【鮫衣恵承(こういけいしょう) トヨタマヒメ】。

 着ると本物のサメみたいに動けるけど──、

 

 

 

 

「ふう、ふぅ……」

 

 

 ──陸だと動きづらい。

 わたしの足が入っている尻びれはあんまり大きく動かせないから、ちょっとずつしか歩けない。

 引きずってるしっぽと尾びれが支えになってなかったらいっぱい転んでたかもしれない。

 脱げないわけじゃないから脱いだってよかったけど、すぐ追加調査にむかうから横着しちゃった。

 

 

「よいしょー……」

 

 

 とりあえず一番近い海口までたどり着いたのでひと休み。

 グランバロアは海の上の船の国だけど、身一つで泳いだり潜ったり海面を歩いたりする人達もいるのでこういう海への入り口も用意がある。

 

 

「ふぅー……」

 

 

 身体を海に浸すと【トヨタマヒメ】を着ててもちょっと落ちつく。

 ここらへんはグアムの海とは全然違うけど、それでも海はいい。

 

 

「……よいしょっ』

 

 

 歩いた疲れも取れたので、【トヨタマヒメ】の中にずっぽり顔をしまう。

 【トヨタマヒメ】には着るためのファスナーも切れ目もないけど、ぎゅーって身体をつっこむとそれだけでぎゅむん、と着れちゃう不思議な着ぐるみだ。

 

 

『よっ』

 

 

 そうして服を着たサメになった私は──、──海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──青い海に射す光の幕。

 泳ぎ回るお魚たち。

 えらに吸い込み、肌で感じる水はなめらかで気持ちいい。

 

 

 この世界の海も、わたしはすきだ。

 

 

 

 

『(えーっと……。こっち)』

 

 

 このあたりは海底が遠いからどこまで行ってもおんなじ景色で、なにもなければ自分のいる所なんて分かんない。

 でも【トヨタマヒメ】を着てるわたしにはわたしが海のどこにいるかなんとなく分かる。

 それだけじゃなく【トヨタマヒメ】を着てるわたしはまさしくサメになってる。

 呼吸はえらに吸い込んだ海水でしてるし、肌や目もわたしの感覚とつながっててちゃんと機能してるから触られれば分かるし視界もある。

 泳ぎだって何不自由なく素早く泳げるし──、

 

 

 

 

『GYAAAaaa──!』

 

『(がぶ)』

 

 

 ──キバの生えた口はちゃんと噛み付ける。

 海底から飛びかかる【クローフィン・デミドラゴン】をひらりとかわして首元を噛みちぎる。

 

 

 

 

『GGyAe⁉︎』

 

『(んむんむ……)』

 

 

 

 

 そうして【トヨタマヒメ】の口に入れた食べ物はわたしの口の中に送れるのでこういうおやつも慣れたもの。

 残念ながら【トヨタマヒメ】ではお魚以外の竜や哺乳類、甲殻類、軟体生物、スライムやエレメンタルなんかとは話せないので襲われたらやり返すか逃げるしかない。

 

 

 

 

『(んむんむんむ……)』

 

 

 ──じゃあお魚とはちゃんと話せてるのか?

 

 

 おやつをもぐもぐしながらどんどん海底へと潜る。

 

 

 

 

『(えーと……)』

 

 

 光はかなり無くなってるけど、わたしには暗くなってはいるけどちゃんとあたりが見えてる。

 けど、ここはまだ行きたいところからは離れた場所みたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ねぇ、すぱすぱ、まっすぐのいわ、あった?』

 

 

 

 

 ──そこで通りかかった小魚のみんなに聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぶ』『にげ』『ひめ?』『ひめ』『いい』『あん』『で』『すぱ』『いわ』『……かも?』『むこ』『ほう』『かな』『ごめ』

 

 

 み(・)ん(・)な(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)と(・)答(・)え(・)て(・)く(・)れ(・)た(・)。

 

 

『いいよ、ありがとう』

 

『うれ』『ひめ』『がんば』

 

 

 みんなにお礼を言って、教えてくれた方に泳ぐ。

 

 

 【トヨタマヒメ】はお魚としゃべれるようにしてくれるけど、そもそも大半のお魚は言葉未満のことばしか持ってない。

 これもなれると楽しいけど、探し物は工夫して伝えないといけない。

 そうして工夫しても必ずしも伝わってるわけじゃないし、そもそも見間違い感じ間違いだってある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『(よし)』

 

 

 ──でも今回はうまくいった。

 

 

 海底に沈み、流された三強時代の船。

 侵略国家アドラスターの船に再びたどり着けた。

 

 

 

 

『姫さま』

 

 

 すると、久しぶりの声。

 

 

 

 

『クエじい』

 

『久しぶりですな、姫さま』

 

 

 【トヨタマヒメ】からずぼっ、と顔を出しながら──顔を出すだけなら【トヨタマヒメ】の機能ははたらいたままだ──振りかえれば、そこにいたのはクエに似たお魚。

 わたしのクエじいという呼び名を気に入ってくれたこのあたりの長老さんだ。

 

 

 ──大半のお魚は言葉未満のことばしかもってないけど、人間と同じ以上の言葉を持ってるクエじいみたいなお魚もたくさんいる。

 

 

『こっちこそひさしぶり、クエじい。でもしばらく来てなかったのに姫さまは、はずかしいし、申しわけないよ』

 

『いえいえ、久しぶりに会ったからとそうしてヒトの顔を見せてくださる心配(こころくば)り、私めの心胆に沁み渡ってございます。それに姫さまが授けてくださる恩恵は、この海が滅びるその日まで必ずや我らを導いてくれましょう』

 

 

 そしてそういうお魚はだいたい──最近はだんだん普通のお魚も──わたしのことを『姫』『姫様』と呼んで一目置いてくれる。

 それはどうも【トヨタマヒメ】の必殺スキル《至海の系譜、その一滴より(トヨタマヒメ)》の『海棲恩恵』という謎の効果が関係しているみたいなんだけど──。

 

 

 わたしにはその効果が分からない。

 

 

 

 

『そうかなあ』

 

『そうですとも』

 

 

 

 

 

 

 

 

『まあ、いいや。クエじいはあの船の詳しいことなにか知ってる?』

 

『いえ、申し訳ありません。あのフネは中々堅牢かつ、我らを遠ざける不快な気配を放っております故、幾百年前に此処に流れ着いた事以外は存じ上げません』

 

『そっか、ありがと』

 

『いえ。──どうかお気を付けて』

 

 

 そうして船内探索も視野に入れた追加調査へと泳ぎ出す。

 

 

 

 

『────』

 

 

 

 

 ──クエじいが生きててくれて、よかった。

 

 

 海は厳しい所だ。

 人間だって普通に死ぬけど、お魚達海の生き物はもっと死ぬ。

 食べる為に、強くなる為に、楽しむ為に、殺す為に、増える為に。

 生きる為に。

 日々おびただしい数の生き物が死んで、それ以上に生まれてる。

 今までわたしが会った人と同じ以上の言葉を持ったお魚だって七割くらいは二度と会えてない。

 

 

 

 

 だからこそ、また会えるという事は。

 とても尊いんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『『──……海の形、ですかな?──暗き所でしたとも』』

 

「(ふふ)」

 

 

 

 

 ふと、クエじいに聞いた海の形を思い出した。

 ぐるん、と上向きにひっくり返って、高く、広く、厚い海を見た。

 

 

 

 

 ──確かに、真っ暗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






|アブル
 冒険船団所属のマスター。
 リアルはグアム在住の女の子。
 父親が日本好きなのでその周りで育った彼女も古事記など知ってた。
 ネームは泡・あぶくとバブルでアブル。
 慣れた人相手だと顔しまったサメ状態で接する事もあるが、リアルみが強いので(※捉え方は人によります!)アバターからサメにした気合いの入ったサメマニアだと誤解される事も。

 魚好き。

|【鮫衣恵承 トヨタマヒメ】
 日本神話風の装束を着たサメの着ぐるみ型のアームズ。
 到達形態は第Ⅵ。
 モチーフは古事記に記された海神の娘、豊玉毗売(トヨタマヒメ)。
 彼女の正体は巨大なサメであったという。
 陸でも大変ではあるもののよちよち歩いて活動はできるが、本領は海中でこそ。
 耐水などの為かファスナーやマジックテープの類いどころか裂け目の一つも無いのにすぽんと着れたり、穴が空いてなかったはずなのにすぽっと顔を出せたりするエンブリオならではの不思議着ぐるみ。
 能力特性は海棲恩恵。
 これには二つの意味あいがあり、一つは着用者のアブルに海中活動能力を与える事。
 戦闘能力も担保されてる。
 ……もう一つは超長期的に見るととんでもなくヤバい。
 TYPEがインベイジョンアームズになりかねないくらい。
 魚達から姫様と呼ばれるのはそこら辺を理解されての事。

|魚との会話
 そもそも人間とするような会話ができる魚系モンスターは全体から見れば少数派。
 あと好感度を操作する事なくただ話せるようにするだけな為、言葉は通じても話は通じず襲われたり、そもそも無視されたりサメの姿をしてるからと逃げられたりする事も。

 ……だがだんだんとそんな事例も減っていってる。

|アブルと海の食
 〈デンドロ〉では魚は基本的に食べない。
 だが海の厳しさも知っている為魚食を否定したり、咎めたりもしない。
 練り物好きだったが豆腐やがんもどきに宗旨替えした。
 ……ただしプレイ初期に↑で話が通じず襲われる事が多く、今もあんまり親しい個体がいないサメやカサゴ・ウツボ系などはたまに食べる。

 魚以外の海老やカニ、貝や海藻、タコやイカやオウムガイ、それにスライム、海竜や鯨肉や海鳥といった海産物は普通に食べる。
 生でも食べる。

 なんにせよ「いただきます」は決して欠かさない。

 最近のお気に入りは歯の生えたペンギン、あるいは古代生物のヘスペロルニスに似た大型の海鳥の肉を肉自体の脂でソテーしてチーズをかけてとろかした海鳥のチーズソテー。
 鳥肉らしからぬ濃厚な、しかしすっきり引いて行く旨味に脂でカリっ、じゅわっと焼き上がった食感と、とろっととろけてかかるチーズのしっかりした味がマッチしていくらでも食べられてしまう一品。
 サフランっぽいライスのドリアと食べても美味。

 ちなみにアブルは生食や寄生虫への対策も兼ねてサブジョブに【餓鬼】を取ってる。

|クローフィン・デミドラゴン
 半陸棲の海竜種の亜竜。
 主に海底にその爪で身体を固定し、獲物が通ると急接近、優れた肉体的ステータスに鋭い鰭と爪で肉弾戦を仕掛けて来る。
 人間相手だとよく船によじ登って来たり、転覆させたりしてくる。

|クエじい
 クエに似た魚系のモンスター。
 とっても長生きで物知り。

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