色々ありまして。
あれやこれやと、召喚サークルの設置が完了した。
触媒には、立香の令呪を用いた。
彼女も言っていた通り、宝具として昇華されたそれは縁の集約物であり、試しにと触媒に使ってみれば、上手くいったという次第だ。
立香はマシュを召喚したがっていたが...魔力は節約するに限るからな。我慢して貰った。
現在、僕たちは情報集めにと街へ向かっている。
その道中で、ジャンヌ・ダルクから聞けるだけの情報を聞いておくことにした。
「ジャンヌ・ダルクを名乗る何者か...偽ジャンヌとでも呼びましょうか。偽ジャンヌは、オルレアンにて居を構えているようです。ですのでそこへは行けませんが、その付近の街には沢山の情報があるでしょう」
「同意だな。ところで...その偽ジャンヌについて、何処までアンタは知ってるんだ?」
「すみません、私も貴方たちよりほんの少し前に召喚された身でして...あまり知らないというのが正直なところです。それはもう、不確かな情報ばかり...」
「でも、参考にはなる筈だ」
「はい...その、先程、ジャンヌ・ダルクを名乗る何者かによって国が侵略されていると言いましたが、実際には少しばかり違うんです。実のところ、私を...ジャンヌ・ダルクを見たという者はいなくてですね」
「え、いや...それはおかしくないか?なら、なんでジャンヌ・ダルクがこの国を侵略しているなんて話が出てくるんだ?」
「正しくは、ジャンヌ・ダルクの遣いを名乗る者がこの国を攻めているらしいのです。その者の名は、ジル。いえ、ジル・ド・レェ」
「え!?おるt...偽ジャンヌ出てきてないの!?」
少し後ろを歩いていた立香が、驚いて出てきた。
「は、はい。しかし事実、王は惨殺され、街は滅ぼされ...生き残った者たちは皆等しくジルを見たと証言している...らしいのです。ジルは、『これは復讐!再びこの地に舞い降りた聖女による復讐なのですよ!!』等と宣っているとか...けれど不可思議なのです。だって、この時代においてジルはまだ生きていますから...」
『サーヴァントなんじゃないかな?その二人目のジル・ド・レェは』
「なるほど...その可能性は大いにありますね」
「偽ジャンヌが戦前に出てこないなんて、なんだか妙じゃないかしら?私の記憶では、というか史実の記録において、ジャンヌ・ダルクは軍の先頭に立ってオルレアンを解放した...と聞くわ」
「そうですね、そこにも、引っ掛かりを感じます」
「う、うーん?」
立香が渋い表情を浮かべている。
どうやら、記憶との相違が激しいらしい...これは、単なるズレとして見過ごしていいのだろうか。
何か、嫌な予感がする。
気のせいだといいのだが....
「ところでカドック。これから向かう街で、ジャンヌ・ダルク・オルタに鉢合わせる可能性が高い筈なんだけど...」
ボソッと、立香が僕にだけ聞こえる音量で言った。
「あれか。一回目のエンカウント...」
「うん。けど、今の話を聞く限り...あんまりあてにならない気もする。私の時は、オルタ自身が戦火を振り撒いていたから...竜の魔女なんて言われてたんだけどね....」
「だとしても、やることは変わらないさ。出会わないならそれはそれでいいだろうし...いや待て、そう言えば、これはマリー・アントワネット、そしてアマデウス・モーツァルトとの初邂逅の場でもあったよな...なら、必要なイベントと考えることも出来るのか....」
「けど、それも確実じゃないのがタチの悪いところだね」
「違いないな。一体どうしたもんか」
ともかく、先ずは情報集めか...
その後の方針については、ロマニとオルガマリーを交えて話し合わない限り決められないしな。
「あ、見えてきましたよ、皆さん」
ジャンヌ・ダルクの声に、僕は顔を上げるのだった。
・・・
「...嘘だろ」
街に到着して間もなく、僕は脱力感に苛まれながら呟いた。
眼前に広がるは、ただの荒れ果てた光景。
ほとんどの民家は半壊し、地面は激しい戦い...いや、侵略を思わせる数多のクレーターを作っている。
人の気配は当然皆無。
立香からの情報通り...既に、手遅れと言わざるを得なかった。
「酷い有り様ね...」
『既に襲われた後だったか...ワイバーン、いやこの徹底さは人為的過ぎる。話に聞くジル・ド・レェかな...』
「ッ...私、生存者がいないかどうか探してみます!」
『いや、残念ながら付近に生命反応は見られない...完全に手遅れのようだ』
「そんな....」
一見、立香の話通りに事が進もうとしているように思える。
するとこの後は、ジャンヌ・ダルク・オルタが現れ...そしてマリー・アントワネットたちと邂逅。
という流れになる可能性が高かったんだけど...どうなるだろうか。
『...ッ!?いや、これは!?』
その瞬間、ロマニが狼狽を見せる。
「生存者ですか!?」
『いや、違う。この魔力反応は...間違いない、サーヴァントだ!しかも複数!』
「...これは、もしかして?」
オルガマリーが、僕に視線で問いかける。
恐らく考えていることは同じなので、頷いておいた。
『敵性反応多数!...あ、そうか。これはあれか...いやでも...みんな、そこから離れるべきだ!明らかに数の分が悪い』
「いえ、その必要はありません。何故ならば...既に手遅れなのですからッ!」
刹那、高らかに声が響いた。
暗く、深く黒い...背筋が冷えるような闇を孕んだ声。
怒り、いや怨念...分からない。とにかく不気味だ。
殺人鬼やら狂人やら、その類いの生き物って感じがする。
「...ッ、貴方は...ジル?なのですか?」
ジャンヌがその美しい瞳を大きく見開いた。
その視線の先に、奴らはいた。
「えぇ然り!我が名はジル・ド・レェ!我が希望我が光我らが聖女、ジャンヌ・ダルクの使者でございます...彼女は全てを破壊せよと仰せです。えぇ、えぇ!当然でしょう!国に、民に、神にさえ裏切られたその怨嗟の念!私が余さず、この国へと分からせるのです!」
「...じ、ジル?」
現れたのは、六騎のサーヴァント。
そのうちジル・ド・レェ以外はジャンヌ・ダルク・オルタによって召喚され、狂化を施された者たちだ。
「あら不思議。ジル、貴方のその濁りきった瞳は節穴なのかしら?あの小娘は見紛うことなく....」
「止めておけ、アサシン。マスターの言の葉を忘れたか?
「あら、王様は紳士ですこと...ならば、私も黙っていましょう」
闇を彷彿とさせる、漆黒の貴族服に身を包み...ニヤリと残酷な笑みを浮かべた瞬間に、僅かに見える牙。吸血鬼、バーサーク・ランサー、ヴラド三世。
そして、ベネチアンマスク越しからでも伝わってくる冷徹な眼差し、アイアンメイデンのようなスカート...バーサーク・アサシン。カーミラ。
狂化しながらも静かに佇むバーサーク・セイバー、シュヴァリエ・デオン。
同じく静観に徹する、バーサーク・アーチャー、アタランテ。バーサーク・ライダー、マルタ。
しかしその中に、ジャンヌ・ダルク・オルタの姿はなかった。
「ねぇ、だ、大丈夫なのよね?予定通りよね?」
「分からない...どう思う?立香」
「...何か、おかしいよ。ジルの目...ジャンヌが、見えてない。いや、見えてるけど...ジャンヌだと認識してないのかな?」
「だよな。本物のジャンヌを前にしてあんなふざけた台詞を...これは
「だと思うけど...いや、そんな生易しいものじゃないような...気もする」
「...ッ!ジルッ!」
その瞬間、ジャンヌが怒気を孕んだ声を上げる。
「この惨状は、全て貴方の仕業なのですか!?何故?復讐のために?それは、誰の復讐なのですか!?もしそれが私のものなのだとしたら、今すぐにこんな馬鹿げたことは止めなさい!私がこのようなことを望まないことくらい...貴方なら分かる筈でしょ!?」
「静粛に、慌てずとも良いのです...行き着く先は、いずれにせよただ一つ。少しでも楽に逝きたいのならば、膝を立て、首を差し出すことです」
「んふっ...ふふ、あはっ...アハハハハハハハハハ!!あぁ、なんて滑稽、なんて道化...このような...んふふ、失礼...私としたことが...んふふっ!」
「...あのジル・ド・レェ、どう考えても正常じゃない。ジャンヌの声がまるで届いてないじゃないか...」
明らかな異常性...そしてそれを認識していないのは、どうやらジル・ド・レェ本人だけらしい。
他のサーヴァントたちは、嗤う者、憐れむ者、蔑む者、無関心な者、様々に反応を見せる。
「では...サーヴァントの皆さん、鏖殺の時です。思う存分、嬲り!殺し!その血肉を!魂を!ジャンヌへと捧げるのです!!」
「...て、敵サーヴァント、戦闘態勢よ!?やるのね!?」
『く...こうなったらやるしかないか!けれど、無理だと判断したらすぐ撤退だ!いいね!』
「この数に手加減は出来ない。フルスロットルでいくよ!
「あぁ...戦闘開始だ!!」
カドック君初の簡易召喚ッ!
上手く書けるかなぁ。