その気になればビーストも召喚できてしまうのでは...??
「な、なんですってぇぇぇぇーーっ!?」
「バッ!?静かにしてくれオルガマリー、敵が寄ってくる」
「こ、これが落ち着いていられるわけがないでしょ!?
どういうこと!貴方何をしたの!?その姿はデミサーヴァント...いえ、完全なサーヴァントじゃない!?」
いつにも増してヒステリーなオルガマリーが、危険を省みず喚くものなので、それをどうにか宥めたいが...
まぁ、彼女の気持ちも分かってしまう。
マシュの中には確かに英霊が宿っていたらしい。
しかし、当のマシュはその英霊の力を扱えなかった。
何故なら、他ならぬ英霊本人がそれを良しとしなかったから。
...じゃあ、このマシュはなんだ?
デミサーヴァントどころか、完全なるサーヴァントとして、彼女はそこに立っている。
目を凝らして観察してみる。
何故か、マシュはオルガマリーに目を輝かせていた。
「せ、先輩!オルガマリー所長です!ノットプレジデントなオルガマリー所長がいらっしゃいます!」
「そうだねマシュ。ノットビーストノットアンビーストなノーマルオルガだね」
「ノットノット煩いわね!なんとなく馬鹿にされてるってことは分かるわよ!」
「ソンナコトナイデスヨー」
「あの...悪いが漫才は後にしてくれないか?」
思わずため息が零れた。
「え...あ!?か、カドックさんですか!?」
「...?あぁ、そうだが」
「それは...えっと、え?ここは、冬木ではないのですか?所長の姿が見えたので、てっきり特異点Fだと思ったのですが...」
「いや、特異点Fで間違いないが...」
「????????(宇宙猫)」
「マシュ、それは私も不思議に思っていたけど...取り合えず、考えるのは後にした方がいい。サーヴァントならそういうこともあるでしょってことで!」
「な、なるほど!流石は先輩です」
...どうやら、この二人の間には、僕らの知らない情報が共有されているようだ。
薄々思ってはいたが、このマシュは僕の知っているマシュではないのかもしれない。
なんと言うか、そう。立香が召喚した存在としてのマシュなんだろう。
それが意味するところは、今のところは分からない。
「うぅ...聞きたいことは山ほどあるけど、一旦忘れるわ。
マシュ、貴方のその盾は宝具よね。それを触媒にしてカルデアと連絡を取るから、地面に置きなさい」
「了解しました所長」
マシュは壊れ物を扱うみたいに、静かに盾を地面に置いた。
「あとは、召喚サークルを、」
...そして、次の瞬間辺りに光が舞い始める。
視界一杯に光が充満して、気づけば周りの風景が一変していた。
「...ここは、カルデアにあった召喚実験場と同じ.....」
『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻ったぞ』
声と共に、ホログラム体のロマニが空中に映し出される。
どうやら成功したらしい。
『よくやってくれた、カドック君。これで空間固定に成功したし、通信も物資補給も──』
「はぁ!?なんで貴方が仕切っているのロマニ!?レフは?レフを出しなさい!」
『うひゃぁあっ!?し、所長!?生きてらっしゃったんです?あの爆発で?しかも無傷で!?どんだけ!?』
「どういう意味ですかっ!!いいからレフはどこ!?
医療セレクションのトップが何故その席にいるの!?」
『何故?と言われても困る...自分でもこんな役目は向いてないと自覚してるし』
「ならッ!」
『...でも、他に人材がいないんですよ、オルガマリー』
言いにくそうに、ロマニは告げた。
...やはりか。
最初の通信でロマニが出てきたから、なんとなく予測は立っていたが。
『現在、生き残っている正規カルデア職員は僕含め20名にも満たない。僕が作戦指揮を任されているのは、僕より上の階級の人間がいないからです。レフ教授は管制室でレイシフトの指揮を取っていた...爆発の中心にいた以上、生存は絶望的だ』
「そんな──レフが?いえ、待って。待ちなさい、待ってよね。生き残った職員が20名にも満たないですって?カドック以外のAチームは?他のマスター適性者は?」
『47名、全員が危篤状態です。医療器具も足りません。何人かは助けることが出来ても...全員は....』
危篤...生きてはいるのか!
「ふざけないで!すぐに凍結保存に移行しなさい!蘇生は後回し、死なせないことが最優先よ!」
『あぁ!そうか、コフィンにはその機能がありました!至急手配します!!』
「...いいのか?」
「何がです?」
「凍結保存を本人の許可なく行うのは...その、犯罪だろ?」
しかし、オルガマリーはそれを躊躇なく選択した。
つまり、自分の立場よりも人命を優先したってことだ。
僕はそれが...素直に、尊敬に値すると感じた。
魔術師はどこまでも利己的と言わざるを得ない。
しかもアニムスフィア家は名家中の名家、その思想は顕著だろう。
「そんなの、生きてさえいれば後からいくらでも弁明出来るからに決まってるでしょ!
それに...私が、47人の命なんて背負えるわけないじゃない...」
「そ、そうか...」
忘れがちだが、所長と言ってもオルガマリーはまだ若い。
47人の命なんて...そりゃあ重いだろうな。
...ところで、ロマニとの通信が繋がった瞬間何処かへ隠れた立香とマシュはなんなんだ?
『...現在、カルデアは機能の8割を失っています。残されたスタッフの出来ることには限りがあります。そこで、こちらの判断で人材はレイシフトの管理、カルデアス、シバの現状維持に注いでいます。外部との連絡は通信が回復次第...それからカルデアの建て直しってところですね』
「結構、私がそちらにいても同じ方針を取ったでしょう」
...それから、ロマニとオルガマリーはいくらか話をまとめ...
僕らはレイシフトの修復が完了するまで、この冬木。
特異点Fで待機することとなった。
「...待機とは言ったけど、戦力を鑑みて、可能なら特異点の調査を行いたいわね。どうやらここは低級の魔物しかいないようだし」
通信を終え、向き直ったオルガマリーは告げる。
「...あ、終わった?」
すると後ろの物陰から、ひょっこりと二人が顔を出した。
「...貴方たちは一体どうして隠れてたわけ?」
「その、あんまり話をややこしくしたくないでしょ?時間がないんだし。マシュなんて見せたらドクター失神しちゃうよ」
「...ロマニは、僕以外のマスター候補者47名全員が危篤と言ってたな。つまり、マシュも同じように今は危ない状況にあったはずだが」
「そのようですね。本来なら、私はデミサーヴァントとなってこちらに渡ってくるはずなのですが...」
「本来なら...あぁもう!考察は後々!まずは比較的安全そうな民家を探すわよ!マシュ!カドック!カルデア所長として命ずるわ、しっかり私を護衛しなさい!」
オルガマリーは声高々に指令を下した。
しかし、マシュの表情は芳しくない。
「...申し訳ありません、オルガマリー所長。そうしたいのは山々なのですが...」
見ると、マシュの肉体が爪先から少しずつ、ほどけていくように消え始めていた。
「え!?な、なんで!?」
「どうやら、簡易召喚の霊基ではここまでの現界が精一杯のようです」
「困るわよそんなの!キャスターだけじゃ何となく不安なのに!」
「え、ちょ、どういう意味です???」
「大丈夫です所長!先輩ほど頼りになる方はいません!それにカドックさんだっていらっしゃいます。このお二人がいれば、当面は安全かと」
「...サーヴァントである立香はともかく、僕はそう役に立てないと思うけど」
「いえ!カドックさんはとても強い
「え...あ、あぁ」
...真正面から恥ずかしいことを言わないでくれ。
「で、でも...」
「所長、また必要になりましたら、いつでも召喚に応じます。ですので、どうか心配なさらないで。私も先輩も、全力を尽くすことをお約束します」
「...ッ!?分かったわよ!」
オルガマリーは拗ねたように、プイッとマシュに背を向けた。
マシュはその後ろ姿に優しく微笑みかけながら...静かに、四散していった。
「...所長」
「...ふん。カルデアの所長ともあろう者が、見苦しいところを見せてしまったわね」
「ううん?所長が案外打たれ弱いってことは知ってるから大丈夫だよ」
「え?なに?喧嘩売ってるの?」
「...まったく、相性が良いのやら悪いのやら分からない組み合わせだな」
さっきまでの良い雰囲気は何処へと、また通常の空気感に戻ってしまう。
立香はオルガマリーの殺気に苦笑しながら、僕へと向き直った。
「...じゃあ、改めてこれからよろしくね、
快活な笑顔が花開く。
マスターという呼び方のむず痒さに、僕は後頭部を掻いた。
こっからカドぐだ成分を全面に押し出していきたい!
苦手な方はブラウザバックを推奨ですね....