もしもカドックがぐだ子を召喚したら?   作:ぬぬっく

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プロローグ・4

あれから少し、歩を進めた。

あちらこちらに、という程でもないけど、少なくはない数の魔物が闊歩している。

 

一応、私サーヴァントだし?

戦闘自体は出来ると思うんだけど、二人は極力省エネで行きたいらしい。

幸い対獣魔術を生業とする家の生まれのカドックは、気配や痕跡を限りなく消すための装備を幾らか持っていた。

 

流石カドック。

 

『さて、重傷者たちの凍結処置も終わったので、サポートに戻ってきたよ』

 

前触れなく、ホログラムロマンが現れる。

隠れる暇のなかった私は当然目についたようで、ロマンは驚愕と共に声を上げた。

 

『あれぇっ!?え、ちょ、見ない間に一人増えてないかい!?』

 

「喧しいわよロマニ!一時とはいえカルデア預かっている立場の人間が、一々大仰に反応するものじゃないわよ!」

 

精神的ストレスのせいか、所長は苛立ちを隠しきれないみたいだった。

 

「...でっかいブーメランが刺さってないか?」

 

「人の振り見て我が振り直せ、だよ所長」

 

「う、うるさいわね....」

 

「...説明するよロマニ。彼女はキャスターのサーヴァント。今さっき召喚して、契約を結んだんだ。この作戦において心強い戦力になるはずだ」

 

心強いなんて、ちょっと照れくさいなぁ!

そんなこと言われたら私めちゃくちゃ頑張っちゃうよ?

 

『サーヴァントの召喚に成功したんだね。ナイスだよカドック君...でも、くれぐれも無理しちゃ駄目からね?』

 

「あぁ、善処するよ」

 

『そして、えっと...キャスターの君。召喚に応じてくれたこと、感謝するよ。現状は厳しいの一言に尽きるが...君の存在は凄く頼もしい。どうかカドック君をサポートしてあげて欲しい』

 

「うん。任せてよ、ロマン!」

 

『...あ、あれ?今僕のことをロマンと呼んだかい?おかしいな、その呼び方はこの場の誰もしていなかったはず...』

 

「あ、あぁ~。ロマニ、だったっけ?ちょっと聞き間違えていたみたい」

 

『そ、そうかい?...うん、けど、ロマン呼びはむしろ大歓迎だから、引き続きロマンで頼むよ』

 

そう気の抜けた笑みを浮かべるロマン。

確かにこのお人好しオーラは、良くも悪くも場の空気を和ませてしまうようだった。

 

「コホン...ともかく、今からオルガマリーの案で、一時的に身を隠せる民家を探そうと思う。肉体的にもだが、精神的にかなりまいってきてるようだし...特にオルガマリーが」

 

「わ、悪かったわね」

 

「ん?あ、いや。別に責めてる訳じゃないんだ。実際、精神的負荷が一番かかっているのは君だろ?そして、休みたいのは僕も同じだ」

 

「え、あ...そう?へ、へぇ。気を遣ってくれるのね...ありがとう」

 

気を遣われることに慣れてないからか、所長はやけに素直な反応を見せる。

 

むっ...なんだか少し良い雰囲気を感じましたよ。

所長は満更でもなさそうだし。

もしかして、意外なカップリングが成立するフラグかな!?

 

所長とカドック...実は結構お似合いだったりして...

 

「...あれ?」

 

不思議と、少しだけ胸の奥がキュッとなる。

 

なにこれ?

もしかして私、妬いてるのかな?

やばい、なんだかいてもたってもいられなくなってきた。

 

実のところ、私は生前のカドックとの関係を、あまり覚えていなかった。

勿論、人理修復の旅路の記憶はある。

あまり覚えてないのは、その後。人理を修復した後だ。

 

オーディール・コールで、カドックは大令呪を使用し...その魂を燃やし尽くした。

けれど、人理修復を成したことで、時間は遡及した。

カドックの死はなかったことになった。

 

けどその代わり、カドックは記憶を失っていた。

 

きっと私は、そのカドックと再び友達になろうとしただろう。

そこから、私が彼とどんな関係を築くことになったのか。

私はそれを知らない。

サーヴァントの私は、その記憶を引き継いでいないのだ。

 

でも、何となく、良い関係だった気はする。

 

そうじゃなきゃ、召喚された直後にあんなことをするはずがないもん!

 

あれは反射の行動だった。

 

絆レベル10以上はあってしかるべきだ!!

 

よってこの嫉妬心も仕様なのです!

QED!

 

「カドック、私も疲れた!」

 

思わず、二人の間に滑り込むように入る。

 

「あ、あぁ。魔力は足りてるか?必要なら今から魔力供給をするけど」

 

「え、いやごめん。そこまでじゃないや」

 

真面目に心配されて、不覚にも冷静になってしまった。

そのやり取りを見ていたロマンが、黄色い歓声を上げる。

 

『まったく!そんなに可愛い子と魔力のやり取りが出来るなんて羨ましいぞカドック君!』

 

「その発言、かなりおっさん臭いわよロマニ」

 

『え』

 

所長からピシャリと苦言を呈されたロマンは、ショックが大きかったようで放心状態のまま黙り込んでしまった。

 

なんというか、うん。

たまにそういう節あるよね、ロマン。

 

「...っと、あの家なんて良いんじゃないか?」

 

「あ、ほんとだね。あんまり壊れてないし、崩れる心配もなさそう」

 

「決まりね。少しの間、あの家で休息を取りましょう」

 

そうして私たちは「おっさん臭い...か」と小さく呟くロマンをよそに、その住宅にお邪魔するのだった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

「あ?誰だお前ら」

 

玄関の扉を開いてみれば、奥の方に全身青タイツの男の姿が見えた。

気だるげに廊下に座りつつも、脇には槍を備えている。

 

所長はそっと、扉を閉じた。

 

「...人が...住んでたみたいね」

 

「んなわけあるかぁ!!」

 

「おぉ、カドックがキャラ崩壊するレベルのツッコミを....」

 

「うるせぇなぁ、家の前ででかい声出してんじゃねぇよ」

 

そっ閉じした扉が、律儀に開き返される。

 

「って、クー・フーリン?」

 

「ん?なんだ嬢ちゃん、俺を知ってるのか?...って、嬢ちゃんサーヴァントじゃねぇか!クラスは、キャスターってとこだな。こりゃあいい!」

 

よく見たらクー・フーリンだった。

しかも、そのクラスはランサーであってキャスターじゃない。

 

「知り合い!?知り合いなのね!少なくとも敵ではないのね!?」

 

「いんやぁ?そりゃお前さんたち次第だな」

 

クー・フーリンは所長を見てニヤニヤと言う。

あれだね、からかいがいのある奴を見つけたって顔だ。

 

「少なくとも俺にとっちゃ、そこの嬢ちゃんは初対面だね。だが、サーヴァントである以上どっかで縁を作ってたって不思議じゃねぇ...てことでだ、その縁にあやかって、いっちょ共闘といこうぜ」

 

クー・フーリンは私の肩に手を置きながら、共闘の意思を示す。

言っていることの内容はただの提案に過ぎないけど、有無を言わせないような圧を感じた。

クー・フーリンはそこんとこシビアだ。

多分、断った瞬間このフランクな手は私の首をハネる凶器へと変わる。

 

「...ちょっと待ってくれ」

 

グッとカドックに腕を引かれて、私は二歩後ろに退いた。

代わりに、カドックが一歩前に出る。

 

「カドック?」

 

「問題ない。立香は下がっててくれ」

 

「あん?なんだい?坊主がその嬢ちゃんのマスターか?」

 

「あぁ。魔術師のカドック・ゼムルプスだ。話なら僕が聞こう」

 

「ほぉそうかそうか!いいねぇ、お前みたいな奴ぁ嫌いじゃないぜ...それで?共闘の件、呑んでくれるのかい?」

 

値踏みするように、クー・フーリンはカドックの瞳を見つめる。

カドックは、目を逸らさない。

何でもないように装いながら、強い眼差しで応返する。

 

クー・フーリンは、ニヤリと口端を吊り上げた。

どうやらお眼鏡にかなったらしい...まぁ、当然だけどね。

 

「共闘自体は願ったり叶ったりだが、その前に、幾つか確認しておきたいことがある。そもそも共闘と言っているが、それじゃあまるで、僕たちに共通の敵がいるようだ...だから、聞いておきたい。アンタは、今どんな状況にある?」

 

「...あぁ~」

 

クー・フーリンは、何かを悟ったように後頭部を掻いた。

 

「まぁそうなるか、なるほど。人間がいる時点で変だと思ってはいたが...部外者だったかお前ら...この狂った聖杯戦争の」

 

「...なんですって?」

 

「聖杯戦争、だと?」

 

『突然すまないみんな!少し話を聞いてくれ』

 

その時、突如として現れたホログラムロマンが横槍が入れる。

 

「お、珍妙な兄ちゃんだな。そいつは魔術による連絡手段かい?」

 

『珍妙で悪かったね!ではなくて、周囲200メートル以内に強力な敵性反応を感知した!これは...恐らく、サーヴァントだ!数は3!分が悪い、今すぐそこから離れるんだ!』

 

「サーヴァントですって!?嘘、ここには低級の魔物しかいないと思っていたのに....」

 

「ふーむ、確かに、その反応に嘘はないみてぇだな。ってこたぁ、本当に部外者か。まぁいい、なら、敵を蹴散らした後にこの状況についてしっかり説明してやるよ。代わりに、お前らの状況も教えてもらうぜ」

 

『まさか戦う気なのかい!?...いや、待てよ。クー・フーリン、だって?まさか、ケルトの大英雄クー・フーリンかい!?』

 

「あーあー、自己紹介についてはまた後でだ。取り敢えず、ほれ、坊主」

 

クー・フーリンは、カドックに向けて手を出す。

 

「な、なんだ?」

 

「仮契約だよ。一応、ここまでマスターの魔力供給なしでやってきたんだ。流石にそろそろ限界でよ。契約する以上、俺はお前らに危害は加えないと約束する...悪い話じゃないだろ?」

 

「...分かった、さっきも言ったが、共闘は願ったりだ」

 

 

・・・

 

 

「...っし、これで契約完了だ!」

 

クー・フーリンに、魔力が漲る。

 

「そんじゃ、いっちょやるか。指示を頼むぜ坊主」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

「なんだよ嬢ちゃん、まさかまだ逃げろなんて言うつもりか?」

 

「当然です。ケルトの大英雄クー・フーリン...確かに貴方は強力なサーヴァントなのでしょうね。けど、数の利は簡単に切り崩せるものじゃない。そうでしょ?」

 

「へっ、この嬢ちゃんはかなりのチキンのみてぇだな」

 

「んなっ、」

 

『待ってくれ!確かに彼女はチキンだが、間違ったことは言っていないと思うよ?実際、勝算はあるのかい?』

 

「ちょっとロマニ!?」

 

「...たく、少しはお宅らのサーヴァントを見習ったらどうなんだ?見てみろよ、あの凛々しい顔。負けるかもなんて微塵も考えてねぇぞ」

 

突然、クー・フーリンに指をさされる。

 

「うぇっ!?そんな顔してたかなぁ」

 

「してたしてた、中々に肝の座った嬢ちゃんだ、気に入ったぜ」

 

「...まぁ、やれるだけのことはするつもり...だよ?」

 

「...」

 

カドックは、なにも言わず考え込んでいる。

まぁ、仕方ないか。

カドックにとって、これは初めてのサーヴァント戦になるはずだ。

どれだけ訓練を積んでいても、本番と練習じゃ押し掛かってくる精神負荷の桁が違う。

 

...だから、

 

「...カドックが決めて欲しいな」

 

「...え?」

 

「確かに、3対2は不利であることに違いない。リスクは大いにあると思う。だから、カドックが逃げるって選択するなら、私はそれに従うよ」

 

「...立香」

 

「...ま、仮とはいえマスターの指示なら、俺も従うしかねぇな」

 

「......」

 

10数秒の長考の末。

カドックは意を決したように、顔を上げた。

 

「...戦おう。力を貸してくれ、二人とも」




わりと特異点Fの尺が伸びちゃうの、あるあるだと思います
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