TSしたら幼馴染がやたらと近い件   作:ヤマがら

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二話

 先生の話で帰りのホームルームが締めくくられる。それと同時に、蜘蛛の子を散らしたように生徒たちが席を立っていく。教室はあっという間に喧騒に包まれた。

 

「悠哉、課題、まじサンキューな!」

 

 将は、背後から悠哉の席に勢いよく近づくと、まるで大型犬がじゃれつくように、悠哉の頭をガシガシと雑に撫でた。その大きな手に、悠哉の髪は乱される。

 

「痛いって、将」

 

 悠哉は軽く抗議するが、その口元は緩んでいた。昼休みに課題を見せた時の「助かった!」という将の心の底からの感謝の言葉が、まだ耳に残っている。

 

「悠哉のおかげで、先生のお説教回避! お前は俺の救世主だわ!」

 

 将はそう言って、悠哉の肩を力強く叩いた。その強烈なスキンシップは、男同士の遠慮のなさ、絶対の信頼を示すものだ。

 

「そろそろ部活いかねぇと。じゃあな、悠哉。また明日な!」

 

 将は背を向け、クラスの隅で待っていたバスケ部の仲間たちと合流する。彼らが部活へ向かうために教室を出ていく後ろ姿は、まさに青春を謳歌する光の群れだった。

 教室の入り口付近で、クラスメイトの女子数人が将を取り囲むように集まっている。

 

「将くん、今日の昼休みのシュート、めっちゃカッコよかった~!」

 

「え、マジ? 見ててくれたんだ!」

 

 将は照れ臭そうに頭を掻きながら、満面の笑みを浮かべた。

 白い歯が覗く、太陽みたいに眩しい笑顔。

 いつも悠哉に向ける笑いとは、どこか違う。

 柔らかくて、優しくて、ちょっと甘い。

 将の一言が、笑顔が、たちまち女子たちの頬を赤く染め上げる。

 悠哉は、胸の奥に小さな棘が刺さるような感覚を覚えた。

 

 ……あんな顔、俺には見せないな。

 

 嫉妬、という言葉はまだ浮かばなかった。

 ただ、将の笑顔が自分以外に向けられていることが、ひどくもどかしくて、腹の底が熱くなった。

 

 悠哉は将の背中を見送る。将を中心に笑い合う者たち。彼らの周囲だけ、空気の密度と輝きが違うように感じる。それは、悠哉には決して混ざることのできない、眩しすぎる世界だった。

 

「──また明日、か」

 

 悠哉は、将が残していった熱の残る肩を触り、誰にも気づかれることなく教室を後にした。

 

 

 帰宅後、自室のベッドに横になり、制服から着替えもせずにスマホを手に取る。将が輝かしい「ヒーロー」なら、自分はベッドと一体化して固まった「石ころ」だ。この薄暗い部屋だけが、唯一誰にも邪魔されない悠哉のテリトリーだった。

 通知をチェックする。当然着信はゼロ。

 次にゲームのログインボーナスを受け取る。今日はメンテナンスの補填でガチャ石が配布され、少し心が躍る。適当にスタミナとデイリーミッションを消化した。

 それから、ホーム画面に戻ってSNSを開いた。バズっている投稿を上から下へと流していく。

 

 そんなルーティンをこなしている時、ホーム画面の隅に見慣れないアイコンがあることに気づいた。

 

 

 

 

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