万魔殿のメイド   作:狐ノ陽炎

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14話 vs風紀委員会

ダダダダダンッ!!!!

 

ドガーンッ!

ボガーンッ!

 

廃ビル群という、人気のかけらもない場所で銃声や爆発音が鳴り響く。

 

「どうなってるんだアコちゃん!?委員長をここに呼んだんじゃなかったのか!?」

 

「このままでは便利屋の皆さんを抑えることが出来ません…!」

 

廃ビル群を知り尽くし、逃げ足の速い便利屋は時折姿を消しながら風紀委員会をじりじりと追い込んでいく。

 

「死んでください死んでください死んでください!!!」

 

「くふふ~、いいよ~ハルカちゃんその調子!こっちも爆弾設置終わったよ~!」

 

ハルカが持ち前の耐久力と破壊力で風紀委員会のモブ達を蹴散らしていき、その間にムツキが爆発物を設置する。イオリが前に出てくればアルが撃ち抜き、チナツがサポートに回ればそれを裏からカヨコが乱していく。

 

「社長はイオリだけに集中して。それ以外は私達で十分戦えるから」

 

『ええ!私の社員達はみんな優秀だもの、当然じゃない!』

 

ここがゲヘナ地区の中心地や学園内であれば有利に戦えるのだが、明らかに便利屋のお得井場と化している廃ビル群では、アコのサポートもあまり意味を成していない。つまり風紀委員会は"空崎ヒナが居なければ便利屋を抑える事が出来ない"のである。

 

「アコちゃん!委員長はまだなのか!?」

 

『ヒナ委員長は……』

 

 

『"万魔殿のメイド"に動きを封じられています!!』

 

「はっ!?」

 

『想定外です……。このままでは……』

 

 

 

 

どうなってるの……?この子……。私の攻撃が、当たらない……。

 

ドガガガガガンッ!!!

 

この子も確かに素早いけど私よりはまだ遅い。戦闘力も私が上だし……。

 

でもこれは違う。

なんとなくわかってきた。この子が自信満々に私の相手を買って出た理由。

 

一度お互いの攻撃が止み、一つの間が出来る。

 

「気付きましたか?ヒナ委員長」

 

「………」

 

「私とヒナ委員長。その実力差は明確です」

 

「……ええ、そうね」

 

「ですが委員長は私には勝てません」

 

「……」

 

「私とヒナ委員長では()()()()()()()()()んです」

 

「………」

 

そう、相性。

私がマシンガンで、この子が槍。簡単に言ってしまえば超近距離型と超長距離型。これの相性が悪いだなんて、イチイチ言われなくても分かる。それでも今までならその相性も私の技術と経験でカバーしてきた。

 

だけど、この子は何かが違う。決して私が追いつけないスピードじゃない。私が防ぎきれない攻撃でもない。なのに、私の攻撃は当たらない。

 

「……レイラ、貴方一体何者なの?」

 

「私の事ならよくご存じでは?」

 

「……」

 

 

「"神速の槍者"とでも言っておきますか」

 

 

「………」

 

「今だけは立場が違いますからね」

 

 

私には今、選択肢があった。

このまま戦闘を続け、不毛な戦いを続けるか。それとも戦闘を止め、風紀委員会全員を撤収させるか。

 

………。

 

「これ以上は不毛ね」

 

「不毛……とは?」

 

「貴方に免じて、風紀委員会全員を撤収させるわ」

 

「ええ、そうしてもらわないと困ります」

 

今回のは元々アコが便利屋が悪いと決めつけて起こってしまった事。今便利屋が悪い事をしてたわけじゃなさそうだし、このままじゃお互いの為にならない。アコは納得しないだろうけど……。

 

 

 

「アコちゃん!このままじゃ本当にマズイッ!!」

 

「ヒナ委員長は……」

 

モブ委員会達はほとんど爆発でやられ、イオリもアルの狙撃を何発か食らってしまっていた。チナツも何回か回復のサポートに徹していたが、カヨコの妨害でまともに動けなくなっている所だった。

 

 

 

「はーいハルカちゃん!一旦ストップね」

 

「え……ええ!?あ、あの……レイラ…さん?」

 

「あれあれ~?もう決着着いちゃった感じ?もうちょっと遊びたかったのに~」

 

 

「社長、一旦狙撃ストップ。レイラと一緒にヒナが現れた。多分また流れが変わる」

 

正直、私達の目の前に現れた二人に何があったのかは分からない。状況だけ見れば、確かに戦闘はあったんだろう。

 

私の思った通り、この圧倒的に便利屋が有利な状況の中、流れがまた変わる。いや、変わってしまう……。

 

『ちょっと、それは大丈夫なの!?』

 

「私も見に行くけど、社長はとりあえずいつでも撃てるように準備しといて」

 

『分かったわ!』

 

 

 

「イオリ、チナツ。もうお終い」

 

「い、委員長!?それはどういう……」

 

「そのままの意味、引き上げよ」

 

『委員長!!?で、ですが……』

 

なるほど、お互いの為にならないから……か。まあ実際そうではある。私達はただの濡れ衣だし、向こうは向こうで怪我人を出しただけ。()()()()()()()()()()()()やりあうなんて不毛以外の何物でもない。というか、こういう風に仕向けたのは誰か、よく分かってるし。

 

まあこれも、私の撒いた種ではあるけど。当然私としても、私の種で皆に迷惑を掛けたくはない。だからこそここで、この場で終わってほしい。

 

「______とりあえずこれ以上はもう不毛だから。アコは帰ったら反省文ね」

 

『なっ!?どうしてですか!!?』

 

「……特定の生徒を厳しくしないで」

 

イチイチ面倒な人に絡みたくないから、とでも言いたげだね。アコには悪いけど、それに関しては私も同感。

 

「つまりヒナ委員長は負けてしまったんですね……」

「ちょっと待って?別に負けてないから、交渉しただけだから」

 

……。

 

「冗談言ってないで、帰るわよ」

 

「いいえ、ヒナ委員長は負けましたよ」

 

 

「……え?」

 

ほらね、やっぱり。

 

「あのまま続けていれば私の体力切れで決着がついたんですが、何を焦っていたんですかね」

 

「な……何言って……」

 

でもさっきも思ったとおり、私はこれ以上の事は望んでない。当然、ヒナも同じ。

 

「これはこれは、マコト様に報告が必要ですね?」

 

一見レイラは私と同じ冷静沈着に見えるけど、実態はハルカやムツキと同じ戦闘狂枠。こんな好戦的な奴が"万魔殿のメイド"やってるのは正直信じられなかった。マコトが姉だったから起こった起用でしかない。

 

「この……ふざけんな!!」

 

「………」

 

ヒナもなんとかこの場を収めたい気持ちが見えるけど、レイラの煽りに堪えかねている。当然委員会のメンバーはこんなこと言われて耐えられるわけがない。宿敵である万魔殿の奴から言われてしまったらね。

 

ダァンッ!!!

 

イオリが放った一発が、確実にレイラの胴体を直撃した。だけどレイラは、全く動じていない。

 

「嘘……だろ……?」

 

「嬉しいですね。わざわざ煽った甲斐がありましたよ」

 

 

「もう少し、遊んでもらってもいいですか?」

 

あーあ、結局こうなっちゃうのか。はぁ……こうなれば仕方ない。

 

「社長、第二フェーズ入るよ」

 

気が済むまで手伝うよ。

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