ティーパーティーとの会談が無事終了し、こちらも無事にゲヘナ学園に戻ることが出来ました。ティーパーティーの"攻撃"と"誘い"に上手く対処できたからか、帰りのマコト様とサツキ様は上機嫌でしたね。特に会話は無かったのですが、雰囲気で感じ取れましたよ。
ゲヘナ学園に戻ってきたら、やけにイロハ様が疲れ切ってましたね。毛量のせいで赤モップに見えたのは気のせいではないと思います。どうやらサボりもせずに虎丸でずっと巡回してたみたいです。もっともイロハ様としては、イブキちゃんがやる気に満ち溢れていたからサボれなかったとの事。
実はチアキ様もしっかり活躍されてたみたいで、
まあ、知らない事を気にしても仕方ないですね。
マコト様から今日の報告書は明日でいいとの事なので、今日はこのままお開きになりました。まずチアキ様とイブキちゃんがイロハ様を互いに支えながら帰りました。マコト様は多分そのまま残るつもりだったのでしょうね。終始不敵な笑みを浮かべながら議長席に鎮座してましたから。
「じゃあ、情報部寄るから、先に帰るわね」
「あぁ、気を付けて帰れ」
「お疲れ様です。サツキ様」
「ええ、また明日」
万魔殿の扉をゆっくり閉じ、情報部の部室のある方向とは逆の方向へ歩を進める。マコトちゃんにはああ言ったけど、実際情報部に用事は無い。そもそも最近はマコトちゃんがよく動くから、情報部の出番なんか無いもの。
連邦生徒会長の情報は進展なし、エデン条約も今日の限りじゃ平行線。その他自治区の不穏な動きも無し、外に調べる事なんか無いわ。でも……とある人から依頼されちゃったのよね。その人にこれから会うんだけど。
とある部室の特別な部屋。依頼者に指示された、私にとってもひどく懐かしい場所。
扉を開けると、既に依頼者は待っていたみたい。一体いつから待っていたのかしらね。
「……思ったより早かったじゃない?」
「どうして疑問形なの?」
「トリニティに行ってたんでしょ?時間かかると思って」
状況次第では間違いじゃないかもしれないわね。でも今日はマコトちゃんが絶好調だったし、ティーパーティーも上手く罠に嵌ってくれたから。
「というか、よくここに来れたわね。私なら無理よ」
「あら、私にとっても思い出の場所だもの」
「そう……」
「貴方の後輩が聞いたらびっくりするんじゃないかしら?」
「そうね……」
「京極サツキが、元風紀委員だなんて」
「………」
「そろそろ、結果を教えてもらえる?」
ええ、他ならない貴方の頼みだもの。応えないわけにはいかないわ。
「結論から言えば、貴方の言うとおりね。それで、その原因は……」
「"万魔殿のメイド"……とか?」
「あら、貴方にも思い当たる事が?」
「ええ、随分と"万魔殿のメイド"に甘いみたいじゃない?」
「私も直接見たわけではないから、確証は無いけど」
「それこそ、貴方がもう一度マコトちゃんを『マコト先輩』と呼べる日が来るかもしれないわね」
「………」
「じゃあ去年の私達に対する仕打ちはなんだったの?」
「むしろ去年が異常だったのよ」
「異常で片づけられるならこうなってないのだけれど」
私に言われても困るわ。でもどこか安心した顔をしている。去年のかなり初めの頃かしらね。貴方のその表情はよく見れたわ。まだマコトちゃんが、おかしくなってない頃だもの。
「ねえ、貴方と私の違いって何かわかる?」
「………」
「私はマコトちゃんの目指す事に憧れた。貴方は……」
「……私の理想の『マコト先輩』に憧れた」
「そう、その通り。だから私は万魔殿に移り、貴方は風紀委員会に残った」
「じゃあ……何?私の方が劣ってるって言うの?」
「まさか、そんなわけないじゃない。むしろその逆よ」
「去年、あれ程の仕打ちを受けてもなお、『一心』だけで風紀委員会に残り続けた。貴方の方がマコトちゃんに対する想いが強いわよ」
ちゃんと自信持っててほしいわね。
「そう……」
「それじゃあ、これでいいかしら?」
「もう一つだけ、聞いていい?」
「今年の情報部長って誰になったの?」
「去年まで情報部は
「そうね……」
「正直に言えば、情報部長は居ないわ」
「え……?決めてないって事?」
「どうなのかしらね。でも、私には何となく答えが出てるわ。どうして情報部長の席を誰にも座らせないのか」
「マコトちゃんの中で、情報部長は"貴方"なのよ」
「………何を……言ってるの?」
「特別調べたわけじゃないけど、"万魔殿のメイド"が来て確信に変わったわ」
「………本当に、また呼ぶことが出来るの?」
「期待はしてもいいと思うわ」
本当なら、私は多分、私で無くなってしまう。一年以上も暗闇に包まれて出てこなかった私が。後輩達に見せる事なんて到底できない、私じゃない私が、現れてしまうから。