今日は本来であれば休校日である。だがこの万魔殿の議長であるこのマコト様は休日だろうと関係ない。昨日までに片づけるつもりだった学園予算の確認が終わっていない事。一応風紀委員会が出勤しているとの事だったからな、学園のトップであるこのマコト様が出ないわけにはいかない。それにここにいれば風紀委員会の嫌がらせ内容の一つや二つは思いつくだろうと思ってな。まさかレイラも来ているとは思っていなかったが。
大方暇だったから休日に来て掃除して昼までには帰るつもりだったんだろう。まあしかし万魔殿の部屋はレイラのおかげで掃除が行き届いている。平日の掃除内容だけで十分だ。後でレイラにも伝えておこう。
しかし、ティーパーティーとの会談の報告書だと……?万魔殿のトップはこの私だというのに、誰に提出するんだこの紙は。まあ会談内容の事実と私の考えを上手くまとめておけばいいだろう。提出先は……私にもよく分からないから風紀委員会に丸投げしておくか。
で、学園予算についてだが。
まずはこの私、マコト様を知ってもらうための羽沼マコト銅像をこのゲヘナ学園にいくつか建てる事にした。その銅像の建設費を大まかに出したのだが、万魔殿だけではどうしても足らん。だから風紀委員会から持ってくるとして、風紀委員会の予算を一部減らしておいた。弾薬の補充だけでどれだけ金がかかっとるんだコイツ等は。
それとイブキ用のおやつか。
とりあえずプリンを50個セット3つ分とか買っておくか。これも予算が足らないから風紀委員会から回しておく。風紀委員会の予算を減らせば自動的にゲヘナ地区の損害賠償金額も減る。温泉開発部や美食研究会はゲヘナ学園内以外であれば無視しておけばいいからな。
……学園内で騒動が起こらないように給食部は少し増額してやるか。少なくとも美食研究会からの被害を抑えることが出来るだろう。これも風紀委員会の予算から回しておくか。
で、最後にチアキの新聞か。
相変わらず購読者は少ないがそれでも万魔殿を知ってもらえる直接的ないい手段だ。チアキの趣味でもあるからな、今度写真保存用の新しいPCを買ってやるか。これらも風紀委員会から回せば……。
風紀委員会の予算がゼロになってしまったわけだ。たかが一ヶ月ゼロになったところで問題は無いだろう。どうせ天雨アコの事だ、私対策で余計な貯蓄があってもおかしくはないからな。
さて……。
ここからは少し、未来についてだ。
未来と言ってもほんの少し先のことだが。
エデン条約について、だ。
昨日、何故か空崎ヒナから私の考えを書類に書いて送るように言われた。デタラメを書いても良かったのだが、それでは後に奴が直接私に聞いてくるだろう。奴に直接話すこと自体に問題は無いが、私の考えをイロハやサツキに聞かれるのは少々まずい。私にしては珍しいかもしれないが、今回だけ大真面目に書いてやろうと思う。
まずエデン条約についてだが、私は反対だ。
連邦生徒会長の提案したものは別に問題ないが、やはりゲヘナとトリニティのお互いの憎悪の念は根深いものだ。私としては
エデン条約の……ETOの中身についてだが、一応は賛成だ。新たな武力集団を作る事、それによってゲヘナとトリニティを上手く統治するものだ。実際調印するとなればティーパーティーと万魔殿はETOの最上層部となり、最高権力をこの私も握る事になる。……と考えてはいるが、ティーパーティー側がどう解釈しているかは分からない。
もし私の思う通りなら『本当の目的』の達成に大きく近づく。桐藤ナギサの思う事はこの事を指しているのだろう。だが、それでも私はエデン条約に反対だ。理由は、この条約が未来永劫守られているという保証が無いからだ。ただでさえ連邦生徒会長が失踪し、連邦生徒会のあてにならない状態が続く今この状況下でだ。大前提としてレイラの為、という事もあるが……。
ティーパーティーも、いや……トリニティもゲヘナも、皆が皆私の事を勘違いしている。私がこの一件で何も考えていないと思ったら大間違いだ。
……しかしここで、一つの不確定要素がある。
明日、会談を予定しているアリウス分校の奴らだ。まだ一度しか会談をしていないが、恐らく奴らの目的はエデン条約の阻止に乗じたゲヘナとトリニティの崩壊だろう。エデン条約に調印するとなれば、万魔殿とティーパーティー、そしてその周りを固める……トリニティであれば救護騎士団やシスターフッド、ゲヘナであれば風紀委員会。それらを一度に潰せる絶好の機会だからだ。
私としては、それらもさせるわけにはいかない。それこそ『本当の目的』が達成されなくなってしまうからだ。だがしかし……私は一つ悪い事を考えてしまった。それは……。
ガチャッ……
「……ん?」
ノックもせず扉を開け、入ってきたのはレイラだった。
「レイラか、どうだった?風紀委員会の奴らは……」
レイラは私の声に反応する事無く、そのまま私の胸に顔をうずめた。
「…!!? ど、どうした、レイラ!?」
震えていた。
そう、こういう時に使うのだろうな。
小鹿のように……だ。