万魔殿のメイド   作:狐ノ陽炎

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4話 万魔殿のメイドと棗イロハ

3日前に、マコト先輩は一人の1年生の子を万魔殿に迎え入れた。名前は鷺辺レイラといい、入学試験をトップレベルで合格した子らしい。私も詳しく知らないし、調べた事は無い。名前しか知らなかった、性格も素性も何も……。

 

でもある意味というか、あぁこの子もゲヘナ生徒だなって思わせてくれた事が一発目からあった。それは1週間前、あの子がこの万魔殿に突然現れた時……。

 

 

1週間前・・・。

 

 

「……誰ですか、あなたは」

 

突然万魔殿の扉が開いたと思ったら、何故かゲヘナ学園の制服じゃなくて、どこから持ってきたのかメイド服でいきなり現れた。一応ノックはしてたかもしれないけど、誰も反応出来なかった。

 

「ここが万魔殿の教室で合ってますか?」

 

教室……と言っていいのか定かでは無いが……間違いではない。

 

「ええ、あってますよ」

 

彼女を見た第一印象。不思議な子というより、私とは明らかに違う。かと言ってマコト先輩やサツキ先輩とも何か違う。つまり……万魔殿のメンバーとは誰とも似ず合わず……という感じだった。

顔は可愛いし1年生だからか若干の幼さもある。でもマコト先輩やサツキ先輩とは違って角が無いから、普通の人感がすごくあった。

 

「万魔殿にはどうやって入ることが出来ますか?」

 

万魔殿に入りたい。そうは言われてもここは部活じゃなくて、他校で言う所の生徒会。実質的ゲヘナの全権限を握る最高機関であり、簡単にホイホイ入れる場所じゃない。私はてっきり万魔殿を部活か何かと勘違いしているのかと思ったから、一応聞いた。

 

「……入れませんよ。というか、ここがどういうところか分かってます?」

 

「もちろん。生徒会みたいなものですよね?」

 

顔色一つ変えない。メイドさんは笑顔を絶やす事は基本無いらしいけど、この子はメイドさんじゃない。笑顔で当然じゃないですか、わかってますよって言われたから私も困ったものだ。

 

……今思い返してみれば多分、この子についてあまりにも知らなさすぎる状態だったからだろう。よくもまあ、困った感情だけで済んだなと自分ながら不思議に思う。恐怖心の一つや二つ、それだけじゃない。イブキを守らなきゃという直感も不思議と湧かなかった。

 

「万魔殿に入りたいのか?」

 

この時万魔殿(ここ)には私の他にイブキとマコト先輩、サツキ先輩もいた。対応に困っている私が気になったのか、それともこの子が気になったのか……マコト先輩が話に加わってきた。

 

「はい。是非私をメイドとして使っていただければ」

 

正直何を言ってるのか分からなかった。この子自身が万魔殿に身を置く為のアピールポイントがあるわけでもなく、ただメイドとして使えと。

この時やっと私には恐怖心と、直感的にイブキを守らなければならないという感情が浮かんだ。すぐさまイブキを背後から抱き、いつでも逃げれる態勢を取った。イブキは不思議そうな顔をしていたが、私はそれに応えらるほど気が気じゃなかった。

 

「ふむ、そうか……」

 

この位置からマコト先輩の表情は見えなかった。

 

「何か問題でも?」

 

あの子が一言発する度に、イブキを守らんとする私の手に力が入る。

 

「いや、メイドとしてはともかく、もう役職が埋まっていてだな」

 

今考えれば、この時もう一つ疑問点があった。

 

「数日待て、結果を私が直接伝えよう」

 

恐怖心で警戒度MAXだったこの時の私には、たった一つの疑問点なんぞ気にしている余裕は当然無かった。

 

「名前は何という?」

 

「鷺辺レイラと申します」

 

「そうか」

 

マコト先輩が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

「それでは、私は少し用事があるのでな。イロハ、後を頼む」

 

とんでもない。とても頼まれる状態じゃない。そんな私の顔はこの時どんな表情だったのだろう。

 

そんな私を見て、あの子は小さく微笑んだ。

分からなかった。

その微笑みの意味が。

 

「とりあえずマコトちゃんの判断次第だから、今日は帰ってくれるかしら?」

 

私の状態を察してか、サツキ先輩から帰るように促してくれた。

 

「分かりました。それでは失礼いたします」

 

深くお辞儀をし、そのままあの子は帰っていった。

 

 

 

その数日後、週が変わった後だった。

マコト先輩は何の相談も無く、私やサツキ先輩にあの子を迎え入れる決断を下した事を伝えてきた。役職はメイドという、生徒会どころか部活でさえあまり聞いた事ないもの。

 

サツキ先輩は予想していたのかあまり驚かなかったけど、私は心底驚いていた。表情に出さなかっただけで。

 

その日の午後、あの子は来た。鷺辺レイラ、万魔殿のメイドとして。

 

マコト先輩から私が教育係につけという指示を受けた。少なくともあの日よりは安定していた私は、あまりあの子の事を気にしないように教える事は教えた。

 

話してみて分かった感想としては、とてもいい子だなって思った。初めて会った時の恐怖が嘘のように、ゲヘナ生徒とは思えないくらいのいい子。メイドという役職だから普段以上に気を遣っているのかとも思えた。

 

あの子の本性がどっちなのかは知らない。だけどイブキにとても懐かれているから、多分違うのだろうと思った。いや……もうそういう事にして、考えるのを辞めた。どうせ同じ万魔殿の所属だし、マコト先輩も普通に受け入れているから、めんどくさくなった。

 

 

今考える……いや、もう考えるのはやめよう。はぁ……めんどくさ。

 

「イロハ様。どうなさいました?」

 

いつのまに風紀委員会から帰って来たのか、私の横に鷺辺レイラは居た。

 

「……おかえり。どうだった?風紀委員会」

 

何気なく聞いた。

会話をしたかったわけでもない。

好奇心なんかも特にない。

 

「ええ、とても面白いところでしたよ」

 

どういう意味で言ってるのやら。

 

「煽り甲斐があって、一度戦ってみたいですね」

 

……。

 

前言撤回。

私らしくは無いかもだけど、やっぱり少しは考えた方がいいかもしれない。

 

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