TSメスガキ転生者がオタクくんをからかいたかった話   作:ソーラン節

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ヒロアカ世界の「公共の場で個性使用してはいけない」という法律は、現実世界で言うところの「自転車は原則車道を走らなければならない」みたいなものなのかなと勝手に解釈しています。作中でも、誰にも迷惑をかけないちょっとした個性使用なら見逃されているので。


これってNTRだよね

 時はあっという間に過ぎ、気がつけば私は中学三年生になっていた。

 

「うーん、めっちゃメスガキ」

 

 鏡に映るピンク髪ツインテールの美少女、もしくは美幼女を見て呟く。

 

 薄々勘づいていたことではあるが、どうやら私の成長は止まっているらしい。

 もしかしたら、単にたまたま成長が止まっただけという可能性もあるが、どちらかと言えば個性による影響という可能性が高いだろう。

 

 私の個性「治癒」はおばあちゃん、もといリカバリーガールの個性である「癒し」とは少し異なる個性だ。対象への好意によって効力が変化するところもそうだけど、もう一つ決定的に違う点がある。それは「治癒が行われる原理」だ。

 

 おばあちゃんの個性の本質は「対象の自然治癒力の活性化」だ。だから重症が続くと体力消耗し過ぎて逆に死ぬなんてことが起こるし、欠損した腕を新しく生やすなどの無茶はできない。

 対して私の個性の本質は「対象の肉体を正常な状態に修復すること」だ。つまり生物の自然治癒力を使うのではなく、直接傷そのものにアプローチをかけて足りない細胞を補う形になる。

 

 この性質による善し悪しは置いておいて、恐らくこの個性の性質が私の体に影響を及ぼしている。

 私は、常時自分の肉体に対し個性を使っている。これは個性強化訓練になるからというのもあるけど、単純に体調が良くなるからという理由でもある。

 常時個性使用を始めてからは、頭痛や腹痛、低血圧などのトラブルから解放され非常に快適な日常を過ごせている。

 

 そして、爪や髪も伸びることがなくなった。

 これは恐らく、私が思う「正常な状態」に肉体が近づけられた結果だ。つまり私は、爪や髪の手入れがキチンと行き届いた状態を「正常」と認識しているため、個性によって肉体がその「正常」な状態であり続けているということだ。

 

 ここにきて、私の自認がメスガキであることが強く影響してくる。

 つまり、私は「メスガキ」が自分の正常な状態だと認識しているのだから、その「正常」に合わせて私の肉体も「メスガキ」のまま保たれるのではないのか、という話だ。

 そしてどうやらその説は正しいらしいことが、ここ最近の成長ストップによって裏付けられた。

 

 恐らく、このまま高校生になっても成人しても三十路になっても、私の肉体はロリロリしいままなのだろう。

 それで問題があるかと言うと……ぶっちゃけあまり問題ない。この世界、異形系個性がいることからも分かる通り、個性によって容姿が大きく変わる。そして、歳をとっても幼い容姿のままの人……いわゆる合法ロリが結構いる。

 だから、私が歳を取らないことで周囲から浮いてしまう、などといったことはおそらく起こらない。なんならメスガキムーブをしていることの方が浮く原因になりうるだろう。

 

 というか、メスガキを目指して日々邁進している現在、容姿が理想的なまま固定されるのは得でしかない。流石私の個性だ。よくやった。

 まあ、どうしても老いたくなったら自分に個性使うのをやめればいいだけだからね。そんなに怖がることもないだろう。

 

「おい治優、早くしろ」

「は〜い♡ そんな急かさなくてもすぐ行くよ、かっちゃん♡」

 

 さて、朝練の時間だ。私はいつもの短パンとTシャツを着てかっちゃんの元へ急いだ。

 

 あっ、別にNTRってわけじゃないから安心してね♡

 私は変わらず出久くん一筋だよ♡

 

 出久くんとかっちゃんの戦闘訓練が始まってから数ヶ月経った頃、かっちゃんは出久くんに負け始めた。

 まあ、私の個性で肉体改造してる出久くんと個性使用なしで戦うのだから当然のことだとも言える。というかむしろよく数ヶ月も無敗のままいられたものだ。そこは流石かっちゃんと言うべきだろう。

 

 それで、ある日かっちゃんは私に頭を下げて「俺にもデクにやってる訓練を受けさせろ」と言ってきた。

 言葉遣いは相変わらずだけど、あのかっちゃんがまさか頭を下げるとは思わなかった。思わず固まって、暫しかっちゃんのつむじを眺めてしまったくらいだ。

 どれだけ出久くんに負けるのが嫌なのさ、かっちゃん……。

 

 まあそんなわけで、私の個性訓練も兼ねて出久くんのついでにかっちゃんの訓練の面倒も見ることになったのだ。

 と言っても、かっちゃんの方は出久くんとは違ってメニューは自分で考えてもらってるけどね。私がやるのは筋トレ後に個性を使って即時超回復をさせるだけだ。

 

 それから今日に至るまで、毎朝私と出久くんとかっちゃんで走ることになっているのだ。

 ちなみにいつものごとくテストの点数で賭けをして私が勝った結果、かっちゃんからの呼び名を「ツインテ女」から「治優」に変えることに成功した。

 あの時のぐぬぬ顔は傑作だったよ♡

 

「おまたせ〜♡ じゃ、行こっか♡」

「おう」

 

 凄まじいペースで走るかっちゃんの後ろを自転車に乗って追いかける。

 本当は私もヒーローを志す以上は体を鍛えた方がいいのだが……多分、鍛えても意味ないんだよね。この体が成長しないというのなら、鍛えてもこれ以上筋肉が付くこともないのだから。

 

 それに、マッチョなメスガキというの……まあそれはそれでアリではあるのだけど、私が目指す「メスガキ像」からは少しズレる。

 そんなわけで、私は早々に体を鍛えるのを諦めた。とはいえ、こうやって有酸素運動に付き合って自分の体に個性を使うのはいい個性訓練になるので、悪くないんだけどね。

 

「……デクは今日もいねェのか」

 

 ふと、いいペースで走るかっちゃんが呟いた。

 

「そうだね……」

 

 なんだか最近、出久くんの集まりが悪いんだよね。

 ヘドロ事件が起きたあたりから急に、「ごめん、用事があって……!」と断ることが増えた。

 

 ヘドロ事件。世間でそう呼ばれている事件は、人の身体を乗っ取るヘドロの異形ヴィランがとある男子中学生を襲った事件だ。まあ、その中学生ってのがかっちゃんなんだけどね。

 

 かっちゃんは、身体を乗っ取ろうとしてくるヴィランに対し持ち前のタフネスで長時間粘った。

 かっちゃんの個性がなまじ強力な分、かっちゃんがヴィラン相手に暴れると派手な爆発が何度も起きて、周囲のヒーローは二次被害を警戒して迂闊に手を出せない状態だった。

 

 そんな中、たまたまそこに通り掛かった出久くんは、自分が爆発に巻き込まれることを恐れずに、周囲のヒーローが様子見で遠巻きに見ているだけだった中かっちゃんの元へ走り出した!

 

 後で出久くんに話を聞いたところ、「考えるより先に体が動いていた」だって♡ それってやっぱりヒーローの資質だよね♡

 

 出久くんは日頃の戦闘訓練の甲斐があってか、ヘドロヴィランに囚われたかっちゃんの腕を掴んで引っこ抜き、()()()()()()()

 持っていたカバンをヴィランに投げて視界を遮り、かっちゃんへの注意を逸らしたのが功を奏した感じかな。

 

 ちなみにその後は駆けつけたオールマイトがPOWERで全てを解決してくれた。流石オールマイトだよね♡

 

 問題はその後の世間の反応だ。

 ヘドロヴィランにタフネスで抗い続けた、()()()のかっちゃんは世間から賞賛を受けた。だけど、ヒーロー達が迂闊に手を出せない緊迫した状況の中、激情に任せて無謀にも飛び出してしまった()()()の出久くんには少なくない非難が集まった。

 

 まあ、実際のところプロ視点で見れば出久くんの行動は褒められたものではない。人質を取って立て篭もっている銀行強盗に、一般人が雄叫び上げて突撃して行ったようなものだ。

 でも安心して♡ 私だけは出久くんのヒーロー性を分かってるよ♡ かっちゃんが助けを求める顔をしてたんだもんね♡

 

 閑話休題。

 出久くんはこのヘドロ事件を境に、私との特訓への参加を断ることが増えてきた。

 

 初めは、何かヘドロ事件が精神的に悪影響を及ぼしたのかと心配したのだが……その後の出久くんを見るにそんな心配は杞憂だった。

 それどころか、最近は以前にましてより精力的というか、明るくなった気がする。

 

「まさか、女?」

 

 NTR。WSS。不吉な文字列が脳裏を過ぎる。

 あの出久くんに限ってそんなことは……。そこまで考えて、ふとこの世界が超常に溢れていることを思い出す。

 

 そうだ、個性なんて超常がある世界なのだから「オタクに優しいギャル」がいてもおかしくない。

 私のあずかり知らないところで出久くんがそんな超常に出会って、気付かぬうちに仲を深め、ある日私のところに一通のビデオレターが送られてきて……。

 

『いえ〜い、彼女さん見てる〜?*1

『今からァ、彼女さんの大切なオタクくんにとんでもないことしちゃいま〜す!』

 

「あっあっあっ……。嘘だよね出久くん……」

「おいポニテ女。何壊れてンだ」

 

 私が脳破壊の被害に苦しんでいると、前を走るかっちゃんが話しかけてくる。

 ちなみに、ランニング中にお喋りする余裕があるのかと思われるかもしれないが、このお喋りも訓練の一貫だ。ヒーローはサイドキックとの連携も大事だからね。戦っている最中に無線で仲間とやり取りすることを想定するなら、こうやって走りながら会話をする練習もしておいた方がいい。

 

「出久くんが最近訓練に参加しないのってやっぱり女ができたからなんじゃないかな……」

「女ァ? あのクソナードに?」

「かっちゃん。メスガキはいたでしょ? オタクに優しいギャルもそう。必ず存在するんだよ……」

「何言ってンだお前」

 

 その後も私は出久くんのNTRを案じながらランニングを続けた。

 

 日課となっているこの朝ランだが、走るルートは日によって異なる。これはもちろん意図的なものだ。

 ヒーローの戦場は市街地から被災地まで幅広い。コンクリートの平らな地面だけでなく、坂や土、瓦礫の上だって走れなければならない。だからできるだけ多くの条件の場所を走るようにしているのだ。

 

 本日のランニングコースは海辺を通る予定だった。足場が悪い砂浜を走る経験もしておいた方がいいというのが理由だ。

 まあ、単純に海辺は走る時に見れる風景が良さそうだからというのもあるけどね。

 

 前を走るかっちゃんの様子を見るに、運動の負荷はちょうどいいくらいかな。これなら途中で休憩を挟まなくてもキチンとコースを走り切れそうだ。

 うんうん、ペース配分も完璧だね♡

 

 そろそろ海が見えてくる頃かな。そんなことを考えていたところで、思わぬ光景が飛び込んでくる。

 

「出久くん……?」

 

 そこには、海辺で何やら見知らぬ痩せこけた男に戦闘指南を受けている出久くんがいた。

 どういうことだろうか。出久くんは、私との訓練を拒否してまでこの男の人との訓練を選んだ……?

 

「……これってNTRだよね」

「寝てから言えや」

 

◆side出久

 

 ヘドロ事件をきっかけに、僕は()()()()()()()()()()()()()、その特訓が始まった。

 特訓の内容は主に個性「ワンフォーオール」の威力制御だ。具体的には、海浜公園に不法投棄されたゴミの掃除をする。

 

 この海浜公園にはペットボトルから冷蔵庫まで、大小様々なゴミが棄てられている。その重さに合わせて適切に個性を使うというのが特訓の内容だ。

 

 内容としては単純なのだが、やるとなると想像以上に難しい。

 僕としては生まれて初めて授かった個性だ。使い勝手が分からなくて、初めは出力をミスして個性を100%で使ってしまい()()()()()()()()()()()()こともあった。

 

 あの時は、後で治優さんに見つかって物凄い心配されたな……。

 しかし、ワンフォーオールは、オールマイトの秘密は軽々しく教えてはいけないものだ。オールマイトと秘密を守ると約束を交わした以上、それを破るわけにはいかない。

 

 最近は個性の使い方にも段々慣れてきた。特に、個性を体の一部分に使うのではなく、全身に薄く纏うやり方*2は使い勝手が良い。

 個性使用時の負担が全身に分散され、少ない反動でより強い力が得られる。

 

 今日も今日とてフルカウルを用いて海浜公園を疾走し、小さなゴミは精密な個性使用で素早く拾い上げゴミ袋にまとめ、粗大ゴミには強めに個性を使って持ち上げる。

 ゴミによって持ち上げる時や運ぶ時に使う筋肉が違うから、そこも考慮してワンフォーオールの使用強度を筋肉ごとに変える。

 我ながら、なかなか形になってきたように思える。

 

「よくやった緑谷少年! 一旦休憩にしようか!!」

「はいッ!」

 

 気がつけば、ノルマとして決めていた区画の掃除が完了していた。

 段々と掃除に要する時間も減ってきた。この分なら、思ったよりも早くこの海浜公園に水平線が蘇るかもしれない。

 そんなことを思いながら、オールマイトに渡された特製ドリンク(プロテイン入り)を飲んで休憩していると……。

 

「出久くん……」

 

 聞き慣れた声が聞こえてきた。

 声のした方を向けば、そこには治優さんとかっちゃんがいた。格好からしてどうやらランニング中らしい。

 

「治優さん! かっちゃん! おはよう……って、あっ!!」

 

 反射的に挨拶をしてから、この状況がまずいことに気づいた。

 そうだった! オールマイトとの特訓は秘密にしなきゃいけないんだった!

 TRUEフォルムの痩せこけたオールマイトと目を合わせて、二人そろってあわあわとどうしたものか考えていると、治優さんがこちらに近づいてきた。

 

「……のに」

 

 その顔を見て面食らう。治優さんはかつて見た事がないほど真剣な顔をしていた。

 

「私の方が先に特訓してたのに〜!!」

「え、ええっ!?」

 

 その後、WSSやNTRなど、よく分からない言葉を発して地団駄を踏む治優さんを何とか宥めるのだった。

*1
彼女ではない

*2
ワンフォーオール・フルカウルと名付けた

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