〜〜〜僕のヒーローアカデミアの世界〜〜〜
紫色で統一されたライダースジャケットを身に纏い、髑髏をあしらった指輪を付けた冷たい印象を受ける青年――チェイスは見知らぬ町中で目を覚ました。
「……ここは、どこだ?」
ゴルドドライブとなった蛮野天十郎との決戦のとき、仲間を守るため自爆をしたはずだった。なぜ自分が生きているのか、ここはどこなのか……謎は多く存在する。
「剛はどうなった……蛮野は倒されたのか? それよりもここは一体……」
人口の約8割が"個性"という名の超能力を持ち、その能力を活かしたヒーローが活躍する世界。個性を悪用する存在を「ヴィラン」と呼ぶ世界で、チェイスは取り敢えず探索することから始めた。
体から炎を出している者もいれば、超パワーを発揮する者もいる。また何らかの能力が肉体に出ている存在もいた。街の中を探索しながら今自分がいるここが、元いた場所ではないと推測する。
「やはり、俺はあの時に死んだのか」
蛮野を道連れにする勢いで自爆したのだ。むしろ生きている方がおかしいだろう。
「もう少し、調べてみる必要がありそうだ」
今のチェイスにはかつて霧子から託されたマッハドライバー炎とシグナルチェイサーが手元にない。シグナルチェイサーは剛に託しているし、マッハドライバー炎は蛮野によって破壊されている。よって仮面ライダーチェイサーに変身することは不可能である。現在手元にあるのはブレイクガンナーのみ。必要になれば魔進チェイサーに変身するしかないだろう。
それから数日、チェイスはこの世界を調べるため動き回った。必要があれば困っている人間を救助し、また必要であればヴィランと呼ばれる存在を倒したりして……この世界がどういうものなのか、ある程度理解できてきた。
プロヒーローとは、主に超常への警備・悪意からの防衛を行う公務員のようなもの。ヒーロー公認制度により国家資格ヒーロー活動認可資格免許(以下、免許)を取得した個性持ちの人間が、公的な場所での個性の使用を許可されている者が自身の個性を活かし、民衆への奉仕活動をする公務員の一種である。
ヴィランとは、能力違法行使者の中でも特に悪用・他者への害意が強いものを指す。超常により得た力を振るう悪人。一部の凶悪犯には本名の他にヴィランとしての名前があり、名持ちのヴィランとして特に危険視される。
雄英高校とは、静岡県にある国立高校であり、オールマイトやエンデヴァーなどの有名かつ大物ヒーローを輩出した国立の名門校。全国の小中学生の憧れであり入試倍率300・ヒーロー偏差値79を誇るエリート校。さらにヒーロー科の定員は2クラスで36名の超狭き門。ここのヒーロー科の生徒は様々なヒーロー事務所から狙われており、一時期生徒の取り合いで問題になった事もあるのだとか。
調べ上げたことを全てメモに書き写したチェイスは、そこまで書くとため息を吐く。全くもってくだらない。それがチェイスの感想だった。
「この個性と言われている能力は、俺達ロイミュードの使うものに似ている部分がある」
この世界を調べている間、チェイスは何人かのヴィランやヒーローと呼ばれる存在と出会っていた。チェイスにとって人間を助けることはプログラムされた命令に従っているだけに過ぎない。
今は誰も使っていない廃墟化した建物を拠点に活動しているチェイスは、外の方でなにやら騒がしい物音がすることに気づく。気になって外に出てみればヴィランが暴れているではないか。
「どこに行ってもこういうのは居るものか」
暴れているヴィランの近くに泣いている子供がいる。ヒーローたちはヴィランが無闇に暴れるために近づくことすらできていない。なんなら子供に気づいているのかすら怪しい。
「……仕方ないか」
チェイスの体はロイミュードと呼ばれる機械生命体であるため、彼に備わっている機能は人間以上の身体能力だけではなく、重加速という時間の流れが遅くなったように感じられる怪奇現象を起こすことができる。
重加速を起こしヴィランやヒーロー達の動きが遅くなると、チェイスは子供に向けて降ってきた瓦礫をブレイクガンナーで撃ち落とし子供を抱える。
子供をヒーローの近くに優しくおいた瞬間、重加速が解除され時間の流れが普通の速度に戻る。
「なっ……子供!? なぜここに!?」
「……お前たちが見逃していた存在だ。あとは俺に任せてその子供を守っていろ」
「な、何を言って……!? ヒーローでもない一般市民は離れてなさい!」
ヒーローの言葉にチェイスは眉をひそめる。
「離れろ? 何を言っている。ヒーローを名乗るお前たちが動かないから、俺が動くだけだ」
ブレイクガンナーの銃口を手の平にあて、その中にあるスイッチを押し込んだ。
[break・up]
瞬間、チェイスの身体に紫電が纏わりつき周りに金属のパーツが出現し、それらがチェイスの全身に装備される。
バラバラになったバイクのパーツをくっつけたような紫を基調としたカラーリング。オレンジ色の複眼のうち、右目は完全にではないがパーツで隠れている。
「お、お前は……一体なんなんだ!?」
「……俺はロイミュードの番人、そして死神だ」
魔進チェイサーに変身するとゆっくりヴィランに向けて歩く。ヴィランは小さな獲物がやってきたことにニヤリと嫌らしく笑い拳を突き出してくる。それを見てヒーロー達が「危ないぞ!」と叫ぶが、その拳を魔進チェイサーは掌で受け止める。
「なっ!? ぐぅぅぅ……う、動かねぇ!?」
「当たり前だ。仮面ライダーでもないお前たちのような存在に、俺は倒せない」
受け止めた拳を払い除けブレイクガンナーでヴィランを何度も撃つ。
「く、くそぉ!! こ、こうなったら!!」
「それは……なぜそれをお前が」
ヴィランが取り出したのはマッハドライバー炎だった。
「俺様は転生者ってわけじゃないが、この世の中奪い合いなんでなァ! 転生者だとかオリ主だとかうるせぇガキから奪っておいたのさ」
「それはお前には使いこなせない」
「うるせぇ!!」
マッハドライバー炎を腰に巻き、同じく取り出したシグナルチェイサーをマッハドライバー炎に装填する。そしてマッハドライバー炎を起動させようとするが、マッハドライバー炎はうんともすんとも言わない。
「なぜだ!? なぜ動かねぇこのポンコツ!!」
「言ったはずだ。それはお前には使いこなせないと」
ブレイクガンナーでヴィランの足を撃ち抜き転倒させると、腰に巻かれたマッハドライバー炎を奪い取る。
「く、くそぉ!! だ、だが!! お前にだって使えないはずだ!!」
「それは見ていればわかることだ」
魔進チェイサーからチェイスの姿に戻り、奪い取ったマッハドライバー炎を腰に巻き付ける。
「変身!」
シグナルチェイサーを手に持ち低い声でそう言ってからマッハドライバー炎に装填する。
『SIGNAL BIKE!』
『RIDER! CHASER!』
一瞬だけ魔進チェイサーの姿になった後、まるで羽化する様に装甲が剥がれ落ち、仮面ライダーチェイサーの姿になる。全体的にシルバーをベースに紫と黒という、先ほどまで変身していた魔進チェイサーの要素を残しつつも正反対の印象になっている。また、全体的に装甲が多くゴツい印象だった魔進チェイサーの時と比べると装甲が極端に少なくなっている為、かなりスラっとした見た目をしている。
「俺の名は仮面ライダーチェイサー。お前を倒す死神の名だ」
「ちくしょうが!! このくそやろう!!」
怒り狂ったヴィランはその姿を怪人のものに変える。それは牛と鬼を掛け合わせたような見た目をしていた。とある世界では鬼達の間で「伝説の鬼」として語り継がれ恐れられてきた幻の存在でもある。
その名は牛鬼。
チェイスが仮面ライダーチェイサーに変身を終えた瞬間、どこからともなくチェイサーの専用バイクであるライドチェイサーがやってくると、収納されていたシンゴウアックスがチェイサーのもとへ飛んでいく。それを見ずにキャッチしたチェイサーはシンゴウアックスを振り回しながら牛鬼となったヴィランを斬り裂いていく。
「ふん!」
牛鬼の大振りな拳を避けながらシンゴウアックスの斬撃を浴びせていく。
豪快かつ重々しくも力強い戦い方に牛鬼は徐々に押され気味になっていく。振り回されたシンゴウアックスに斬り伏せられ吹き飛ぶ牛鬼。
「これで終わりだ」
シンゴウアックスの頭部分に付いているシグナルランディングパネルにシグナルバイクを装填した後、グリップ下部のシンゴウプッシュボタンを押す。
【ヒッサツ!】
シンゴウアックスを振り上げ斬り落とそうとしたとき、
【マッテローヨ!】
「なに!? そうか……忘れていた」
信号機を模したE-コンディションランプのレッドランプが発光しカウントダウンを鳴らしながらエネルギーがチャージされる。久しぶりに感じるこれに仮面の下で苦い顔しながら仕方なくシンゴウアックスを地面に突き刺す。その際襲ってきた牛鬼をブレイクガンナーで何度も撃ち続ける。
【イッテイーヨー!】
エネルギーがチャージ完了しランプが青く発光するのを確認するとシンゴウアックスを持ち上げ、トリガーを引いてからエネルギーを解放した重い斬撃を横断歩道のようなエフェクトを放ちながら敵に叩き込む。
「嘘だ……嘘だぁぁぁぁ!!」
斬り伏せられた牛鬼は現実が信じられないように喚きながら爆発する。仮面ライダーチェイサーは爆発した牛鬼がヴィランの姿に戻ったのを確認するとライドチェイサーに乗り込みエンジンを吹かす。
「あ、待って!」
「……なんだ?」
今すぐ走り出そうとしていたチェイサーを止めたのは、緑色のもじゃもじゃした髪をした少年だった。私服でも制服でもなく緑色のヒーローっぽいコスチュームをしていることから、こよ少年もヒーローの一人なのだろうとチェイサーは推測する。
「え、と……その……僕たちの代わりに彼を倒してくれてありがとう」
「礼を言われる必要はない。俺は俺のすべきことをしたまでのことだ」
「それでもありがとう。君がいなかったら、あの子は助からなかったかもしれないから」
「そうか……言いたいことはそれだけか?」
少年が頷くのを見てチェイサーはライドチェイサーを走らせる。他のヒーローたちがなにやら騒いでいるがチェイサーには関係なかった。
「剛……俺は必ず、お前たちに会いに行く」