「ようやくだ……ようやく俺がデザグラの勝利者になった!!」
数々のデザイアグランプリに参加し続け、心身共にボロボロになりながらも戦い続けた青年は、その喜びを表しよれよれになりながらも歩き続けた。
目の前にある炎を手にするために。
そこはデザイアタワーの頂点。未来からやってきた人間たちが、過去の世界へ赴き創り上げたデザイアグランプリのための建物である。
その台座の上に静かに燃える煌めく炎は、デザイアグランプリの勝利者のみに触れることが許され、そして触れた存在が持つどんな願いも叶えると言われている。デザイアグランプリに参加した人間はこの煌めく炎を手にするためにたった一つの願いを叶える願望器煌めく炎を巡って争うのだった。
「これで……アイツを……透を、蘇らせられる……」
そんなデザイアグランプリに参加した人間の一人である青年は、ゆっくりと手を伸ばし煌めく炎に触れようとする。その直後、青年の口から赤い血が飛び散った。
「えっ……?」
自分の胸を見てみれば突き破るように出た鋭利な刃。ポタポタと血を垂れ流し、そして噴水のように血が噴き出る。青年を刺し殺したのは全体的に植物を思わせる見た目をした謎の怪人だった。
「テテリララサポキョ。ロスデビビキョテルクテガトリラサラチャ*1」
その怪人は詫びるように青年に何かを言ったあと、おぼつかない足取りで前へと進み、そして煌めく炎を手にする。
「テテウビビアーヴビビキョルクセンルククラサルクビ*2……」
煌めく炎を手にした怪人は胸に抱くように持つと、床に倒れている青年の近くでしゃがみ背中に触れる。怪人の腕から生えた無数の植物が青年の肉体に覆うと、青年の体から光が植物に伝わり怪人の中へ入っていく。そして青年の腰に巻かれているデザイアドライバーを自分の腰に巻き、その姿を自分が殺した青年と同じ姿に変えた。
「コーコー*3……あーあー。よし、人間の言葉はこれで大丈夫そうだな。早く、願いを叶えて、俺もここを離れよう」
青年の姿となった怪人はなにかに脅えるようにその場から立ち去っていった。
〜〜〜〜〜〜
「あ~あ……ミオに怒られちゃったなぁ」
スーパーで買い込んだ商品の袋を片手に持ちながらトボトボと歩く獣人の少女――白上フブキは、約束をすっかり忘れてすっぽかしたことで、現在借りている家に戻った際に同居している大神ミオにこってりと絞られてしまった。
親友に怒られたこともあり普段はピーンと立っている狐耳も垂れ下がってしまっている。なによりフブキの感情が下がっている要因の一つが、ホロライブを支えるYAGOOに怒られることが確定してしまっているからだろう。
最悪の場合ホロライブ活動に支障が出るのではないかと色々不安になっていた。
「うぅ〜どうしよう……今回ばかりはミオも味方してくれないだ痛っ!?」
落ち込んだまま前を見ずに歩いていたためか誰かにぶつかってしまった。
「最近誰かにぶつかってばかりだなぁ……すいませ〜ん。ちゃんと前見てなか……」
尻をさすりつつ顔を上げ謝罪の言葉を出そうとした。だが、それは叶わなかった。
「チャキョピピファツワスビ*4?」
目の前にいたのがそもそも人間ではなく、仮面ライダーの敵役であるジャマトだったためだ。それも一体だけならともかくその数は多かった。
「ラサラチャテキョス*5?」
「クテウテキョスピスジガ*6!!」
「センラオビ*7?」
なにやらジャマト同士でなにやら会話をしているようでフブキの方を一瞥したあとヒソヒソとしている。その隙に逃げようとするが、いつの間にか背後にいたもう一体のジャマトに腕を掴まれてしまった。
「ツームタダガラサファ*8」
相変わらず何を言ってるのか理解できないが、自分が逃げられないことだけは悟ってしまった。フブキの手をを掴むジャマトの力は獣人の中でもひときわ強い白上一族であるフブキでさえも振りほどけないほど強く、僅かだが手首の骨がミシミシと音を上げている。
「テルククララサヴォッアガ*9?」
「ジケオツツームビテルクラサビツームキョテウジクダポスキョキョチャンツ*10」
ジャマトがグイグイとフブキを引っ張り連れて行こうとするが、何とか足を踏ん張って耐えようとするも少しずつ引きづられていく。フブキの顔に焦りが見え始めた。
(ヤバいヤバいヤバいヤバい!! そらちゃんが行方不明になってて今ホロライブわりとヤバい状況なのに……!!)
ホロライブの今を知る一人としてなんとしても行方不明になるわけにはいかない。その思いがフブキに力を入れる。だが、現実は甘くなかった。
「リダヴォツチャ、ケルルスボルガ*11」
焦れったいとジャマトの一体が触手を伸ばしフブキに振り下ろす。それを余っている方の手で顔を庇おうとした瞬間、
突如空から降ってきた少年が触手を掴みジャマトごとビルに向かって投げ飛ばした。そして唖然としているもう一人のジャマトの懐に入ると拳を入れ電撃を流し込む。
「コポスポスポスポスポスポス*12!?」
ポスポスと煙を噴き出しながら倒れたジャマトを蹴り上げた少年は、フブキに手を差し出す。
「……大丈夫?」
「え、あ……はい。大丈夫、だけど」
「じゃあ急いで逃げるよ。今ので他のやつらに気づかれたかもしれない」
少し幼い顔つきをした少年――天野迅はフブキが手を掴んだのを確認すると、逃げるために走り出す。できるだけジャマトに見つからないようにしながら。
「……ここらへんはジャマトの巣窟になってる。だから一般人は居ないはずだったんだけどね」
「それなら君だって……というよりも君は此処で何を……?」
「……ジャマト掃除」
フブキから見ても一緒に走っている迅は見た目だけなら普通の子供とそう変わらない。だがホロライブに所属しているフブキは人の身でありながらラスボスみたいな風格を持った頂点や、牛丼をこよなく愛する騎士など人間の領域を脱しているの人物を知っている。
だが獣人としての嗅覚が、迅が普通の子供ではないと訴えている。もしかしたらフブキが知らないだけで何かすごい力を持っているのかもしれない。
「くっ……囲まれた」
「なんか囲まれてるぅーーーー!?」
脳内で色々と考えていたら迅の声で自分たちが今ジャマトに囲まれていることに気づいた。
迅がフブキから手を離し少しだけ距離を取る。そして次の瞬間、小さくだが「……アマゾン」と呟いた。凄まじい熱気と風が吹き荒れ、迅の肉体を覆う。周囲を燃え上がらせるほどの熱気に包まれた迅の肉体は、傷だらけの赤い怪物――アマゾンアルファへと変異していた。
「わはぁ……!! アマゾンアルファだぁぁ!! アマゾンズシリーズだぁぁぁぁ!!」
「かかってこい……全員喰い殺してやる。あとお姉さんうるさい」
アマゾンアルファは野性味溢れる独特な構えと共にジャマトの群れに突っ込んでいった。小声でフブキに文句を言いながら。
「うらぁ!!」
素早い動きで駆け回りながらジャマトの群れを蹴散らしていくアマゾンアルファ。無駄のない動きで数の多いジャマトを確実に葬りながらフブキの方へ近づけないように動く。
野性的ながら一瞬の油断も隙もないアマゾンアルファは、背後から迫ってくる鋭い槍の刃先を首を傾けることで躱しその取っ手を掴みジャマトを地面に叩きつける。そしてそのまま槍を振り回してジャマトに打撃ダメージを与えていくと、槍を放り投げてジャマトに突き刺す。
まるで人類の敵たる黒きGの如く湧いてくるジャマトの群れに囲まれたアマゾンアルファは、全身に力を込めてバチバチと雷を纏う。
「ウォらああああ!!!!」
帯電状態から一気に放電させジャマト達のみを狙って貫いていく。凄まじい勢いで心臓部分を貫かれていったジャマト達は内側から焼かれながら黒焦げとなって消滅する。
「はぁ、はぁ……くっ!」
片膝をつき息を荒げる。もともとアマゾンズは雷に弱い性質を持つ。それは迅の変身するアマゾンアルファも同じである。とある事情により体内に発電器官を持つ迅だからこそできる芸当だが、その分自傷ダメージは大きく長時間の帯電状態は維持できない。
なんとか息を整え立ち上がる。周囲を見渡しジャマトがいないことを確認しアマゾンアルファから人間態に戻ろうとしたその瞬間、目の前に黒いオーロラカーテンが現れたのを見て警戒心を最大限高めた。
「……ここは? つぅか何でアマゾンアルファが居やがる……?」
「……誰」
突然現れた青年。緑の複眼のようなライトに赤いバイク――ジャングレイダーに乗った青年が周囲をキョロキョロと見渡したあと、目の前にいるアマゾンアルファを睨みつける。
「誰でも良いだろうが。つぅかここ何処だよ……? あの植物みてぇなのは何だ?」
「詳しくは知らない……でも多分、世界の敵」
わらわらと湧いてくるように現れたジャマトの群れを指差しながらそう言う青年に対して、アマゾンアルファはそう答える。
「なぁるほどな。なら、身に降りかかる火の粉くれぇは払わせてもらうぜ」
青年は懐からアマゾンズドライバーを取り出し、それを腰に付ける。
「そ、れは……アマゾンズドライバー!? ということは、お前は……!!」
起点部分となるコアユニットの左手側に配置された「アクセラーグリップ」を捻りコアユニットを作動させる。それにより装着者である青年のアマゾン細胞を刺激させる。
『O・ME・GA』
「…………アマゾン」
『EVOLU - E - EVOLUTION!』
周囲一帯に爆風を吹き荒しながら緑色の炎に包まれる。もう一度爆風が吹き荒れると、その姿を爬虫類であるトカゲをモチーフの緑色を特徴としたアマゾンオメガへと変えた。
「アマゾン……アマ、ゾン……!! アマゾンはすべ」
「ふおぉぉぉお! アマゾンオメガじゃないですかぁ!!すごい!! まさか今アマゾンズが見れるなんて!! すっっっばらしいことですよ!!」
「危ないから下がっててね?」
アマゾンに対する殺意を剥き出しにしていたアマゾンアルファだったが、言葉を遮るように興奮したフブキにテンションが下がり腕をだらりと下げてしまった。
「……コイツは何言ってんだ? まぁいいや。取りあえずまずはお前らから狩らせてもらうぜ?」
そしてそんなフブキのテンションが理解できずにいたアマゾンオメガはジャングレイダーから降りるとジャマトの群れに突っ込んでいく。
殴り、蹴り、時に腕についたアームドカッターで斬り裂き……暴力的でありながら知能を感じさせるその戦い方にアマゾンアルファはゴクリとツバを飲み込んでしまう。
自分にはできない戦闘方法。だからこそ危険な存在だと思ったアマゾンアルファは、戦闘中のアマゾンオメガに対して改めて殺意を抱き、いつでも飛びかかれるように戦闘態勢を取る。
「さぁて、そこの赤い奴は俺の敵って事か? 殺気がウザいんだけど」
あらかたジャマトを狩り終えたアマゾンオメガはゆっくりとした動作で背後を振り返り、今にも襲いかかりそうな雰囲気を醸し出しているアマゾンアルファを睨みつける。
「アマゾンは全て殺す」
「ふおぉ!! これは……これはすごい光景が見られそうですよ!! アマゾンアルファVSアマゾンオメガ!! というアマゾンズの名シーンになるのか!!」
「……危ないから下がってようね?」
またもや二人の殺意を下げてくるフブキのテンションの上がった熱意に、アマゾンオメガは呆れアマゾンアルファはこの場所から遠ざけようとする。フブキは動く気配はなかったが。
「ちっ、まぁ俺もお前がアマゾンである以上は放置は出来ねぇけど……」
「殺す!! アマゾンは全て残らず殺す!!」
「それはこっちのセリフなんだよ!」
まさに今ぶつかる……と思った瞬間急にアマゾンオメガがフブキのほうを指差す。
「あっ、そこの煩いのはちょっと退いてろ。巻き込むかもしれねぇし」
「いや煩いってのはちょっと酷くないですか!?」
ガビーンと効果音が聞こえてきそうな表情で文句を言いつけるが、もうすでにアマゾンオメガの視線はアマゾンアルファに向いていて聞こえてはなさそうだった。そんなフブキの肩を優しくアマゾンアルファが叩く。
「怪我でもしたら大変だし、わりと邪魔だから本当に離れててほしい」
「うえぇん……」
フブキはシクシクと泣きながら離れていった。さすがに言い過ぎたかなと罪悪感が二人の中に芽生えた。
「はぁ……お前のツレか? アイツ……」
「いや違う。成り行き。襲われてたから助けただけ」
「あっ、そうなのか……」
「というわけで殺す!!」
「脈絡無いぞそれ」
凄まじい速度で目の前に現れたアマゾンアルファの蹴りを楽に避けたアマゾンオメガは左腕のアームカッターで切り裂く。
「くっ……まだまだぁ!!」
腕でガードしてからアマゾンオメガを蹴り飛ばして宙返りして距離を取る。その強さを警戒してか距離を取ったまま近づこうとしない。
「がっ! やったなクソガキ!」
アマゾンズドライバーのバトラーグリップを引き抜き鞭に変化させるとアマゾンアルファの腕に巻きつけ拘束する。
「ぐっ……うらぁぁぁぁ!!」
アマゾンオメガがムチを振り回すことで何度も地面に叩きつけられたが、アマゾンアルファはすぐさま帯電状態へと移行すると全身からバチバチと放電させて電撃を鞭に通してダメージを与えようとする。
「電気ナマズかよ!」
すぐさま鞭を放り投げて退避する。さすがに雷を喰らうわけにはいかないからだ。
「アマゾンアルファはピラニアだバカヤローー!!」
遠くの方で戦闘を眺めていたフブキが我慢ならずと言ったふうに叫んだ。
「そこ煩い」
「ピラニアが電気出すわけねぇだろ!!」
ごもっともすぎる言葉にフブキは黙り込んだ。
「がっ……!!はぁはぁ」
アマゾンアルファは帯電状態による自傷ダメージにより膝をついて胸を抑える。肩が大きく上下していることや、つい先程までも雷の力を使っていたことからそのダメージは大きくなっていたことがわかる。
「ちょ、ちょっと大丈夫なんですか!?」
さすがに心配になったフブキが駆け寄ろうとするが、それをアマゾンアルファが手で制す。
「電気使うアマゾンかよ……こりゃ油断出来ねぇな……」
「はぁ、はぁ……殺す……アマゾンは、全て、殺す」
なんとか立ち上がりよれよれながらもハルカに近づいていく。それに対してアマゾンオメガの方はまだまだ余裕がある感じだった。
「はぁ……こちとら全員潰したはずのアマゾンが何で生き残ってんのかマジで理解出来ねぇが……そっちが突っかかってきた以上潰させてもらうぜ」
アマゾンアルファととアマゾンオメガがぶつかり合う……その瞬間、その場に似合わない口笛の音が響いた。
「あ? 何だこの口笛……?」
急に聞こえてきた口笛の音に二人の動きが止まる。口笛の主は二人から少し離れた瓦礫の上に座っていた。茶色のレザージャケットを着込んだ男性が、鋭い目つきで二人の戦闘を観察している。
「ここらへんには頭のおかしい奴らがいるんだなぁおい」
「だ、誰ですか!?」
「おい、誰が頭おかしいだとゴラッ」
瓦礫の山から軽々しく飛び降りた男性は頭を掻きながらアマゾンオメガを睨む。
「テメェらに決まってんだろ、どアホ。なにくだらねぇことで争ってやがる」
「こちとら命掛かってんd・・・テメェ、アマゾンの気配がするな? 誰だテメェ」
「霧島龍真……通りすがりのアマゾンさ」
龍真と名乗った謎の男性の言葉に、二人のアマゾンが驚愕する。
「アマ、ゾンだって……!?」
「……んとにココどうなってんだ。アマゾンのバーゲンセールか?」
「いいや? ここらへんにいるアマゾンは俺らだけだ」
飄々といったふうにアマゾンアルファとアマゾンオメガの殺意をスルーし、アマゾンオメガの言葉を否定する。
「……ちっ、あの黒いモヤといい、どうなってんだコレ……」
「あのいけ好かない狐野郎が俺らを呼び寄せたんだろうよ。あわよくば共倒れってな。だからアマゾン同士殺し合ってる今がくだらねぇって言ってんだ」
「……狐ねぇ。そいつに踊らされてたってか? ちっ、白けるな」
完全を戦う意欲が削がれたのかアマゾンオメガから殺意が消える。それでもなおアマゾンアルファは殺意を漲らせている。
「だとしても……アマゾンは全部殺す!!」
「あーやめとけやめとけ。お前らがかかってきても俺にゃ勝てんから」
「…………やってみないとわからない」
アマゾンアルファが苛ついたように少しだけ声を荒げながらそう言う。
「俺からすれば俺に突っかかってきたコイツと遊んでただけだし、お前がこっちに掛かってこねぇ限りどうでも良いけど」
「へぇ~そりゃ珍しいな。アマゾンは全員敵に突っかかっていくアホだと思ってたぜ」
「勘違いすんな。こっちの事も大体分かったしな。元々俺は俺に襲いかかってきたアマゾン以外狩ってねぇよ。最も、襲いかかった奴は全員狩るけど」
「なるほどなぁ」
「……なんだ、この、感じ? この気配は……」
突然なにもない空間を迅が見つめる。その視線の先には黒いオーロラカーテンがまたもや開いた。
「あん? あれは……俺をここに連れてきた黒いモヤじゃねぇか!! それにこの感じ……アマゾンの気配は感じるが、何か妙だぞ……?」
黒いオーロラカーテンの奥から感じるその気配に3人の警戒心が高まる。
「へぇ……アマゾンがそろい踏みかよ? これはいいコレクションになりそうだな」
黒いオーロラカーテンから突然現れた謎の男は、ニヤリと3人のアマゾンを見る。その目はまるで獲物を定める獣のごとし。
「……誰だ!?」
「……なるほどなぁ。お前、以前俺に突っかかってきた奴だな?」
「ふん。以前は取り逃したが今度はそうはいかんぞ! 今度こそ俺のコレクションに加えてやる」
「あいにくだがお断りだ」
謎の男の言う「コレクション」という言葉にアマゾンオメガは苛ついたように声を低くする。それに対して龍真が何者なのか問いかけるが、謎の男はそれを鼻で笑う。
「ってかテメェ誰なんだよ」
「コレクションの獲物にわざわざ言う奴があるか?」
謎の男はジクウドライバーを取り出し腰に巻き付けると、青と黄色のライドウォッチを起動させる。
【ザモナス】
「ほう……? なんとも珍しいもん持ってるじゃねぇか」
ジクウドライバーとライドウォッチを見た龍真が目を細めてながら呟く。
「変身」
周囲一帯に爆風が吹き荒れ、凄まじい熱気を纏う。その熱気と爆風に3人は顔を守るように隠す。そこから現れたのは背びれのような頭部に鱗状のアンダースーツなど、全体的に魚類のようなデザインをした仮面ライダーだった。右肩からは翼のような形状のマントを纏っている。
「おい、アイツの持ってる時計みてぇな奴には気ィつけろよ。あれに触れると俺達の力と歴史を奪っちまうからな。アイツはそれをコレクションとして集めてる」
アマゾンオメガが二人にそう忠告し、警戒しながら構えをとる。
「くっ……ん? あの腕についてる色のついた時計は……」
「あぁ、コイツ? 俺のコレクションだよ……5歳のガキにはもったいねぇ力だったからなぁ!!」
ザモナスは取り出したアマゾンネオのウォッチを起動させる。
【アマゾンネオ】
「……溶原性細胞のオリジナルか!!」
「ネオ……ネオだと!!それは、それはお前が持ってていいものじゃない!!!!」
ライドウォッチの音を聞いたアマゾンアルファが激昂しながら帯電状態になり、凄まじい勢いで雷を放電する。二人は巻き込まれないように咄嗟に飛び上がり距離を取った。
「おいおい、そうカッカすんなよ」
だがそんな放電もあっさり避けたザモナスはアマゾンネオのライドウォッチの力によって作ったニードルガンで迅を撃つ。
「うぉらぁぁぁ!!」
帯電状態の腕で受け止めると突き刺さったそれを引き抜き投げつける。針は雷を纏い目に見えぬ速さとなるが、ザモナスはその針をマントを翻すことで避ける。
「あーらら。なんか怒らせたって感じだな」
戦闘を傍観していた龍真がジャケットのジッパーを下げる。そこにはアマゾンアルファやアマゾンオメガの使うアマゾンズドライバーとは形状の異なるドライバーが巻かれていた。
腰に巻かれているドライバー――ヴェノムドライバーのレバーである「ヴェノムグリップ」を引き倒し、ヴェノムドライバーの複眼が紫色に発光する。そして起動したコアユニットが龍真のアマゾン細胞を刺激させた。
「…………アマゾン」
一瞬だけ瞳の色が黒から紫に変化したあと毒々しい紫色の炎に包まれた龍真は、腕を一振りして炎を振り払う。その姿は先ほどまでの人としての姿ではない……アマゾンヴェノムへと変身した。
「はぁ……まぁ、改めて名乗ろうか。俺の名は霧島龍真。またの名を、アマゾンヴェノムだ。よろしく」
ヴェノムという名が表す通り毒々しい紫色の体色をした新しいアマゾン。黄色の複眼が3人の仮面ライダーを睨むと、瞬きをした瞬間にはアマゾンヴェノムの姿が消え、そしてザモナスの眼の前に現れていた。
「なっ……!?」
「おら」
気だるそうな声とは裏腹に強烈な拳がザモナスの腹に当たる。それは衝撃となってザモナスを吹き飛ばし、積み重なった土管をぶち壊し砂煙を上げる。
「ほら、どうした? お前の獲物は今動いていないぞ?」
まるで挑発するように手をひらひらさせる。それにキレたのかザモナスがニードルガンを放つ。
「芸が無いなお前」
パシパシとニードルガンの針を掴んで握り潰す。ゆったりとした動作でザモナスに近づくと首根っこを掴み上げ、2人の方に投げ捨てる。
「がぉらぁ!!」
駆け出していたアマゾンアルファがザモナスが地面に落ちる前に雷を纏った拳を顔に当て、その横から現れたアマゾンオメガがアームドカッターで斬り裂く。
息の合った連携によりザモナスは瞬く間にボロボロとなっていく。
帯電状態のアマゾンアルファがアマゾンズドライバーのグリップを捻る。先ほどよりも強烈な雷を身に纏ったアマゾンアルファは光を超えた速度で何度も何度もザモナスを殴りつけていく。なお、雷を纏った際の余波でアマゾンオメガとアマゾンヴェノムは少しだけ焦げた。
「おらぁ!!」
「ぐはぁ!?」
アマゾンアルファがアマゾンオメガの方へザモナスを蹴り飛ばすと同時に、アマゾンオメガもアクセラーグリップを捻り前腕部のヒレ状カッター「アームカッター」を大型化させ、ザモナスをすれ違いざまに斬り裂く。
「終わりにさせろ!!」
「任せておけ」
アマゾンヴェノムがヴェノムドライバーのヴェノムグリップを2度引き倒し、脹脛部にあるフットカッターを大型化させ飛び上がると同時に踵落としの動作でフットカッターを突き刺す。
【ヴェノムストライク】
フットカッターから猛烈な毒がザモナスの肉体に流し込まれる。アマゾンヴェノムはザモナスを蹴り飛ばし、ヴェノムレバーを引き上げる。
「ほれ、これくれてやるよ」
突然アマゾンアルファの方に向くと手に持っていた何かを投げ渡す。いきなりのことで落とさないようにしながらキャッチしたそれを見てみると、それはザモナスが持っていたアマゾンネオのライドウォッチだった。
「お前と何の関係があるのかはわからねぇが、大事なもんなんだろ? ちゃんと持っておけよ」
「うん……ありがとう」
アマゾンアルファが感謝を述べ大事そうにアマゾンネオのライドウォッチを胸に抱かえる。アマゾンオメガとヴェノムは吹き飛んでいったザモナスの方を見る。
「ま、まだだ……っ!!」
「やれやれ……もう殺したほうが早いんじゃねぇの?」
「だ、駄目だよ!! 殺すのは駄目だ」
「ふぅん? 甘ちゃんだねぇ」
ボロボロでありながらも立ち上がるザモナスを見てそう言ったオメガに対してアルファが止めるように叫ぶ。それを見てヴェノムが少しだけ笑った。
「ぐっ……!? ぐぉおお!? ぐぁぁぁぁぁああああ!!、な、なぜ……俺は、まだ……まけて……な……」
そんな3人の雰囲気をぶち壊すように突如ザモナスの体が崩壊を始め、ひび割れた箇所から光が溢れ出す。
「……っ!! みんな逃げて!!」
それを見たアルファが危険を感じて2人に叫ぶ。
「!!」
「……!!」
その言葉に従って2人は凄まじいスピードで後ろへ飛び退く。隠れて見ていたフブキはアルファが回収して同じように飛び退いた。
「がぁぁぁぁぁ!!」
ザモナスだった何かは周囲を巻き込む形で盛大に爆発した。
「無事か、小僧ども」
立ち上がったヴェノムが確認するように振り返る。
「まぁ、なんとかな」
「僕は全然無事じゃない」
普通に立ち上がったオメガと違い、なぜか地面に頭から突っ込み埋もれているアルファ。上半身が完全に埋もれてしまっているが、足でアマゾンネオのライドウォッチを掴んでいた。
「お、おい!? お前大丈夫かよ!!」
「足でライドウォッチを持ってやがる……随分と器用なことしてんなぁお前さん」
「ふんぬーー!! だ、駄目です。白上の力じゃ引き抜けません」
心配するオメガと呆れた様子のヴェノムが駆け寄る。アルファの両足を掴み引き抜こうとするフブキだったが努力虚しい感じに終わった。
「やれやれ……手のかかるガキだなぁおい」
結局オメガとヴェノムでなんとか引き抜いた。