書けば書くほど、文ができてしまって、長くなってしまいました(T . T)
紅蓮視点を描きたくて仕方がないです笑
おや?……筆者の悲恋属性が発動しかけているのでは?
『マスター』
その呼び声は、ひどく柔らかく、甘やかで、耳の奥に溶け込むようだった。
ゆっくりと視線を上げると、そこにいたのは紅蓮だった。
『ふふ、君と話すと心が落ち着くようだ』
いつもの微笑み。
戦場の硝煙の中でも揺らがなかった、静かで気高い笑み。
その表情を見るだけで、どれほど心が救われてきたか分からない。
『もう一度、キスをしてくれないだろうか……?』
そう言って、紅蓮は少しだけ首を傾ける。
愛おしい存在。
命よりも、誇りよりも、大切だと思えた人。
――守ると誓った。
必ず戻ると、約束した。
『待っている。君を』
その言葉に、胸の奥がきつく締め付けられる。
だが次の瞬間、違和感が走った。
紅蓮の笑みが、ゆっくりと、確実に、剥がれ落ちていく。
温度が消え、光が失われ、そこに残ったのは――無表情。
『もう、戻ってはこないのだね』
低く、冷えた声。
『裏切ったのかい……?』
『わたしを……?』
否定しようと口を開いたはずなのに、声が出ない。
身体が動かない。
ただ、紅蓮の瞳だけが、深い闇のようにこちらを見据えている。
『マスター……助けて……!!』
その声は、悲鳴に変わり、砕け、空間そのものを引き裂いた。
「……は?!」
マスターは、勢いよく跳ね起きた。
視界に飛び込んできたのは、白く、無機質な天井。
戦場の空ではない。
荒い息。
心臓が耳元で鳴り響くほど激しく鼓動している。
身体中が汗で濡れ、背中に冷たい感触が張り付いていた。
額に手をやり、震える指で汗を拭う。
そこで、ふと異変に気づく。
――左腕が、ある。
あるはずのない腕。
確かに、あの戦闘で失ったはずのもの。
恐る恐る視線を落とすと、そこには無かったはずの右脚まで存在していた。
だが、それは生身のものではない。
精巧に作られた義手――人工の腕。
呆然と凝視していると、病室の扉が開く音がした。
入室した白衣を纏った人物が、起き上がっているマスターの様子を見ると、慌てた様子で駆け寄ってくる。
「……目が覚めたようだね……!」
医師は安堵と緊張の入り混じった表情で、すぐにマスターの側へ寄り、手際よく検査を始める。
脈、瞳孔、反応。
一つひとつを確かめながら、何度も頷いた。
「うん……問題はないようだ。どうかな、義手と義足の調子は?」
その言葉で、記憶が繋がる。
戦闘。
爆発。
失われた腕と脚。
そして――紅蓮たちに背を向け、治療のために別れた日のこと。
「あぁ……とてもいい。問題ない」
自分の声が、やけに遠く感じられる。
「先生……いつになったら、部隊へ戻れる?」
早く戻りたかった。
部下たちのもとへ。
紅蓮の隣へ。
共に戦い、背中を預け、彼女を支える――それが自分の居場所だった。
だが、医師は答えない。
視線を逸らし、言葉を探すように口を閉ざす。
胸の奥に、冷たいものが落ちた。
「……先生?」
自分でも驚くほど、声が揺れていた。
「どうしたんだ……何か、言ってくれないか?」
医師は、意を決したように息を吸い、静かに口を開いた。
「大尉。どうか、落ち着いて聞いてください」
――聞きたくない。
本能が、そう警告していた。
「貴方は、義手と義足を装着した後、身体が強い拒否反応を起こしました」
心臓が跳ねる。
息が、浅くなる。
「そのまま……昏睡状態に陥ったのです」
「……昏睡?」
絞り出した声は、あまりにも弱く、他人のもののようだった。
「5年……貴方は……5年間、昏睡状態だったのです」
五年。
「そして、ここはアーク内部に建設された病院です」
理解が追いつかない。
言葉が、現実として脳に入ってこない。
ふと、視界の端に鏡が映った。
そこにいたのは、見知らぬ男だった。
痩せ細り、頬はこけ、生命力を削り取られたような顔。
それが――自分。
その瞬間、視界が歪み、真っ暗になる。
――嘘だ。
――嘘だ、嘘だ、嘘だ。
「ま、待ってくれ……!」
必死に叫ぶ。
「人類は?! ラプチャーはどうなった?! ……紅蓮たちは?! 俺の部下は?!」
言葉は溢れるのに、身体が追いつかない。
喉が焼け、息が切れ、胸が痛む。
そのとき――
病室の扉が、静かに開いた。
一人の男が、ゆっくりと中へ足を踏み入れる。
ーーーーーー
「失礼する。先生、続きは私から」
低く、しかしはっきりとした声が病室に響いた。
その声に、マスターは反射的に視線を向ける。
扉の前に立っていた男を認識した瞬間、思考が止まる。
「……アンダーソン?!」
喉からこぼれた名は、驚愕と安堵が混ざり合ったものだった。
次の瞬間、張り詰めていた何かが、ふっと緩む。
「あぁ……よかった……」
深く息を吐く。
「貴方がここにいるってことは……紅蓮たちも無事なんだな? 俺の部下たちも。……今はどこにいる? ここか? それとも別の場所か?」
言葉が止まらない。
早く安心したかった。
この悪夢のような状況に、たった一つでも“救い”が欲しかった。
だが、アンダーソンは答えない。
ゆっくりと病室に入り、マスターのベッド脇に置かれた椅子に腰を下ろす。
その動作一つ一つが、妙に重い。
その姿を見て、マスターは気づく。
――痩せている。
以前の精悍さは影を潜め、疲労と老いが刻まれている。
「大尉……落ち着いて聞いてくれ」
アンダーソンは、抑揚のない声で語り始める。
「先ほど医師が伝えた通り、君がいるのはアークの病院だ。そしてアークとは、人類がラプチャーとの直接戦闘を避けるために建設した、人類最後の避難場所……巨大シェルターのことだ」
マスターは、ゆっくりと頷いた。
「あぁ……噂では聞いていた。だが、まさか完成していたとはな」
視線を落とし、静かに続ける。
「……そうか。人類は……負けたのか……」
胸の奥が、鈍く痛む。
これまで積み上げてきた戦い。
命を賭して守ってきたもの。
それらすべてが、無に帰したような感覚。
「……紅蓮たちは? 俺の部下は?」
その問いに、アンダーソンは一拍置いた。
「……ここからが、本題だ」
空気が、さらに重く沈む。
「紅蓮が所属していたゴッデス部隊、そして君が指揮していたキメラ部隊は……人類がアークへ完全に避難するまでの間、地上に残り、避難民を守るための防衛任務についていた」
マスターの顔に、わずかな安堵が浮かぶ。
「……そうか」
息を吐き、微かに笑う。
「ということは、任務は成功したんだな。……流石だ。紅蓮……お前たち……」
甲板で見送った紅蓮の姿。
笑いながら、指揮を待つ部下達の姿。
静かに、しかし確かに、自分を信じていた瞳。
だが――
アンダーソンは、顔を伏せたまま動かない。
「……防衛任務の結果、人類の大多数はアークへの避難を完了した」
一拍。
「……だが」
その一言で、嫌な予感が全身を貫く。
「ゴッデス部隊、ならびにキメラ部隊は……アーク防衛任務の最終局面において、避難民を守るため……犠牲となった」
「……は?」
思わず漏れた声は、あまりにも間抜けだった。
「……何を、言っている?」
言葉の意味を、脳が拒絶する。
「アークに避難できたんだろう? ……だったら、何故だ。何故、紅蓮たちが……俺の部下たちが……?」
冗談だ。
悪質な冗談だ。
そうでなければ、おかしい。
だが、アンダーソンは沈黙を貫く。
その沈黙こそが、答えだった。
「……おい」
声が震え始める。
「聞いてるのか……? 何故黙る……? お前は……ここにいるだろう……?」
ベッドから身を起こし、必死に問い詰める。
「紅蓮は? 部下たちはどこだ……? おい!!」
限界だった。
マスターは、よろめきながらアンダーソンの襟首を掴む。
「おい!! なんとか言えよ!!」
喉が裂けるほど叫ぶ。
「紅蓮は……みんなは……どこなんだ?!」
アンダーソンは抵抗しない。
ただ、静かに呟く。
「……本当に、すまない」
その一言で、全てが終わった。
マスターの身体から、力が抜ける。
脳裏に浮かぶのは――
甲板の上。
振り返り、微笑む紅蓮。
「待っている」と言った、あの表情。
次の瞬間。
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
獣のような叫びと共に、アンダーソンを突き飛ばす。
「ふざけるなぁぁぁ!!」
涙と怒りが混じった叫び。
「何故お前が生きてて、紅蓮達が死ぬ?! お前は指揮官だろうが!! ゴッデス部隊を導くのがお前の役目だろう?!」
拳を振り上げる。
だが、力が入らない。
震える拳が、虚しく宙を切るだけだった。
その瞬間、病室の扉が勢いよく開く。
数人の軍人が飛び込んでくる。
「アンダーソン副司令官! ご無事ですか?!」
数人の軍人がマスターを押さえつけようとしてくる。
しかし、マスターは軍人達のその言葉に、一瞬だけ身体が硬直し、愕然とした。
「……副、司令官?」
押さえつけられながら、叫ぶ。
「貴様……!! 彼女たちの……俺の部下たちの犠牲で、昇進したのか?!」
マスターの叫びに、アンダーソンは何も言わず俯くだけ。
「なんとか言え!! おい!! くそ!!離せ!! 離せぇぇぇ!!」
暴れようとするが、押さえつけられ何もできない。
叫び声が、病室に虚しく反響する。
その声を最後に――
意識は、深い闇へと沈んでいった。
ーーーーーー
『……スター?』
遠く、深い闇の底から、微かな声が届く。
柔らかく、懐かしく、胸の奥を締めつける声。
『……マスター?』
それは確かに、紅蓮の声だった。
『…起きなくて良いのかい?』
『……ふふ、いつまで寝ているつもりなんだい?』
からかうような、その笑みまで思い出せてしまう。
あぁ、とマスターは心の中で応じる。
――もう起きるよ。今、行く。
その声に引かれるように、意識が浮上していく。
「……マスター?」
現実の声が、はっきりと耳に届いた瞬間。
マスターは弾かれたように目を開き、反射的に身体を起こす。
次の瞬間、ホルスターから拳銃を抜き放ち、声の主へと銃口を向けていた。
「……!」
荒い呼吸。
指は引き金にかかったまま。
視界に映ったのは――
こちらを撃つ構えも見せず、ただ心配そうに見下ろしてくる、ラピの姿だった。
「マスター……私です」
静かで、落ち着いた声。
「もう、敵はいません」
その言葉で、張り詰めていた何かが、音を立てて崩れ落ちる。
マスターは、ゆっくりと拳銃を下ろした。
「……すまない」
かすれた声で呟き、再び壁に背を預ける。
「少し……寝ていたようだ」
ラピは一歩下がり、周囲を見渡す。
そこには、もはや“戦場”としか言いようのない光景が広がっていた。
エターナルスカイの作り物の太陽が、傾き、部屋が琥珀色に染まっている部屋の中。
荒くれ者のような服装の男たちが、無秩序に転がっている。
正規軍の装備を身につけた兵士の亡骸も混じっていた。
血と油と火薬の匂いが、室内に濃くこびりついている。
戦闘は、とうに屋外からコマンドセンター内部へと移っていたのだ。
立て続けの襲撃。
休む間もない迎撃。
その果てに、マスターは壁を背に、武器を手放すこともなく、死臭の中で眠りに落ちていた。
「……大丈夫ですか?」
ラピが、そっと顔を覗き込む。
その問いが出るのも当然だった。
この四日間で、襲撃の回数はすでに十を超えている。
中央政府の部隊。
アウターリムの荒くれ集団。
賞金稼ぎ。
――全て、人間だった。
そして、その全てに、マスター一人が対処していた。
銃。
ナイフ。
爆薬。
時には、アニスのグレネードランチャーを借りて。
時には、マリアンを狙って同時に現れた敵同士を、巧みに誘導し、互いに殺し合わせることさえした。
ラピの問いに、マスターは微かに笑う。
「……問題ない」
そして、すぐに問い返す。
「みんなは……無事か?」
その笑顔には、誰が見ても分かるほどの疲労が刻まれていた。
ラピは、あえて笑顔を作る。
「……マリアンも、他のみんなも無事です。マスターのおかげで」
マスターは、安堵するように目を細めた。
「……そうか」
立ち上がろうとする。
「今日で四日目が終わる。……あとは、地上へ行くだけだ」
だが、足に力が入らない。
身体が大きくよろめぐ。
その瞬間、ラピが素早く身体を支えた。
「……すまない。助かる」
マスターの言葉に、ラピは首を振る。
「こんなこと……大したことじゃありません」
そのやり取りに、マスターはふっと笑う。
「こんな美人に介抱されるなら……負傷するのも、悪くないな」
その言葉と同時に、ラピは、装備越しにも分かる筋肉の隆起、汗と血と火薬の匂い、それとマスター自身の匂いを感じ取ってしまう。
頬が、熱を持つ。
「……ッ」
慌てて視線を逸らし、俯く。
「……みんなが、待っています」
少し早口で続ける。
「行きましょう。しっかり、掴まってください」
そうして、二人は歩き出す。
ーーーーーー
「戻ったわ」
ラピの声が響いた瞬間、指揮官室にいた全員が反応する。
真っ先に動いたのは、マリアンだった。
部屋の片隅で膝を抱えていた彼女は、駆け寄り、マスターを支える。
「マスター!!」
涙を浮かべて、必死に顔を覗き込む。
「よかった……怪我は、していませんか?」
「無事に……帰ってきたのね……!」
アニスが、胸をなで下ろす。
「……ボロボロじゃないですか……」
ネオンが、眼鏡の奥で目を見開く。
この四日間、彼女たちは屋上の監視所ではなく、指揮官室にバリケードを築き、ただ待つしかなかった。
マスターは苦笑しながら、涙目のマリアンの頭に手を伸ばす。
「……あぁ。大丈夫だ」
優しく、何度も撫でる。
「心配をかけたな」
そして、ふと思い出したように問う。
「……ところで、指揮官は?」
アニスが答える。
「指揮官様なら、地上に行く準備をしてるわよ」
その言葉の直後、扉が開き、指揮官が入室してくる。
彼はマスターの前に立ち、深く頭を下げた。
「四日間……我々を、そしてマリアンを守り抜いてくれたこと、感謝する」
真っ直ぐな目で続ける。
「貴方のおかげで、無事に地上へ行ける」
マスターは静かに首を振る。
「……安心するのは、まだ早い。次の襲撃がいつ来るかも分からないんだ」
その声は低く、揺るぎない。
「準備が整い次第、すぐにでも地上へ行こう」
その言葉に宿る覚悟と警戒心に、指揮官は背筋を正す。
――戦いは、まだ終わっていない。
そのことを、全員が改めて理解するのだった。
ーーーーーー
「ところで、マスター」
張りつめた空気の中で、ふいにアニスが口を開いた。
「対ラプチャー用の装備、持ってるの? ……ていうか、使えるの?」
その問いは、軽い雑談のようでいて、核心を突いていた。
対ラプチャー用武器。
それは、分厚い装甲と異常な耐久性を誇るラプチャーを想定して作られた、専用弾薬と銃器群だ。
発射時の反動、衝撃、エネルギー量――そのすべてが、生身の人間の使用を前提としていない。
仮に人間が撃てば、引き金を引いた瞬間、骨が砕ける。
それほどの代物。
つまりそれは、ニケのための武器だった。
マスターは、その問いに対し、静かに首を横に振る。
「いや。俺が持ってきているのは、人間用だけだ」
そして、少しだけ口元を緩める。
「人間やニケ相手に、対ラプチャー装備は過剰火力だからな」
その言葉に含まれる“当然”という響きに、アニスは一瞬言葉を失い――やがて、深いため息を吐いた。
「……使えるのね」
乾いた声で続ける。
「……もう、何にも驚かないわ……」
マリアンだけは、目を輝かせていた。
「さすがはマスターです!!」
何が嬉しいのか、満面の笑みだ。
指揮官は顎に手を当て、考え込む。
「だが……武器庫は破壊されている。使える対ラプチャー用装備は、ほぼ残っていない」
ラピも頷く。
「そうですね。マスターにも、ラプチャーに対抗できる装備を渡せれば安心ですが……」
その時だった。
「私のでよければ、ありますよ?」
あまりにも無邪気な声。
全員の視線が、一斉にネオンへ向く。
「……一応聞くわね?」
アニスが、嫌な予感を隠しきれない顔で言う。
「……なんで?」
ネオンは、眼鏡をクイッと押し上げる。
「皆さん、お忘れですか? 私は火力を崇拝しているんですよ?」
胸を張り、誇らしげに続ける。
「なので、火力に通じるさまざまな武器をコレクションしています!」
それを聞いた瞬間、指揮官の顔色が一段階悪くなる。
「……“また”集めているのか?」
ネオンは即答した。
「当然です!!」
自信満々だった。
その様子に、マスターは思わず苦笑する。
「……では、案内してもらおうかな。その“コレクション”に」
ーーーーーー
「ちょ、ちょっと!! 待ってお願い!! ちょっとだけ待って!!」
居室の扉の前で、アニスが全力でマスターを制止する。
マスターは首を傾げた。
「何故だ? この中にネオンのコレクションがあるのだろう?」
アニスは、叫ぶように告げる。
「ここは!! 私とラピとネオンの居室なのよ!!」
「あー……」
マスターは、すべてを察したように呟く。
アニスはキッとネオンを睨みつける。
「ネオン!! アンタね!! 居室にあるなら、あるって言ってよ!!」
ネオンはきょとんとしたまま言う。
「別に、部屋に入るくらい、いいじゃありませんか」
一瞬間を置き、にやりと笑う。
「……ははーん。アニス。さては、また脱ぎ散らかしたままなんですね?」
「うぐっ!!」
アニスは言葉を詰まらせる。
ラピがため息を吐いた。
「アニス。時間が無いわ。早くしましょう」
「で、でも!! ラピだって片付けるものとかないの!?」
「無いわ」
即答。
「ネオンは!?」
「ありませんけど?」
完全敗北だった。
グヌヌ……と唸るアニスをよそに、マリアンがマスターの手を引く。
「マスター! 入ってください!! 私の大好きなぬいぐるみもあります!」
元気よく、部屋へと引きずり込んでいく。
「ちょっとーーー!!」
アニスの悲鳴が、廊下に虚しく響いた。
ーーーーーー
「よっしゃ!! 準備オッケー!!」
先ほどまでの地獄を忘れるかのように、アニスが元気よく宣言する。
「装備品に異常はありません、指揮官」
ラピが淡々と報告する。
「私の火力も、いつでもいけます」
ネオンが眼鏡を押し上げ、自信満々に言う。
「アンタはホントに……」
アニスはゲンナリした。
指揮官は、その光景を見て微笑む。
「了解だ。そろそろ出発しよう」
そのやり取りの中で、マスターの腕が、そっと包まれる。
マリアンだった。
「……マスター。本当に大丈夫ですか?」
不安を隠しきれない声。
「……疲れていませんか?」
マスターは、優しく彼女の頭を撫でる。
「……君は、本当に優しいな……」
「大丈夫だ。マリアンは、指揮官とラピたちから離れないようにな」
「はい……」
少し間を置いて、彼女は続ける。
「……でも、マスターも離れちゃダメですよ?」
マスターは苦笑する。
「もしもの時は……助けてくれるか?」
「はい!」
迷いのない返事だった。
ーーーーーー
完全に太陽が落ちた夜。
前哨基地には月明かりと、基地内の灯りだけが光源となっていた。
「よし、出発だ」
指揮官の号令に、
「了解です」
「さっさと行こう!」
「やっと私たちの出番ですね」
カウンターズが応じる。
その瞬間だった。
マスターの背筋を、冷たい悪寒が走る。
反射的に、彼は指揮官室から“ある一点”を見つめた。
「……?」
指揮官が気づく。
「どうかしたのか?」
だが、マスターは答えない。
ただ、見続ける。
指揮官は双眼鏡を取り、マスターの視線の先を見る。
――エレベーターの扉が、静かに開いたところだった。
エレベーター内の灯りを背に、出てきたのは、全身を黒の装備で包み、ガスマスク、ナイトヴィジョンを装着した一団。
言葉は交わさず、独特なハンドサインだけで連携し、寸分の無駄もなく展開していく。
それを見た瞬間、マスターの口から低い声が漏れた。
「……あのハンドサインは……」
それは、これまでの“襲撃”とは、明らかに質が違っていた。
――本物が、来た。
そんな予感だけが、夜の前哨基地に重く垂れ込めていくのだった。
あれ?このマスター。
ニケ誑しか?
紅蓮編の結末予想ーー!
-
やっぱり、ハッピーエンドだよね!
-
このクソ作者の癖が全開になりバッドエンド
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紅蓮さんとマスターが2人旅するんだ!
-
アークに戻って喫茶店を営む日常に戻る