あー、もう、終わらん。
あとちょっとで終わるのに
もう少しお付き合い下さい(^◇^;)
感想やコメントお待ちしてます。
作者の栄養になります( ´Д`)y━・~~笑
次はどのニケで書こうかなーっと終わっても無いのに考えてしまいます。
大地が、震える。
突如として現れた巨影は、ただそこに存在しているだけで周囲の空気を変えていた。
まるで重力そのものが増したかのように、身体が軋む。
荒野を吹き抜けていた風すら、止まったように感じられた。
その異常を、最初に言葉へと変えたのはラピだった。
「…ッ!?後方にラプチャー出現!!」
鋭い声が響く。
反射的にライフルを構え、照準を向ける。
彼女の動きに一切の迷いはない。
だが――その瞳には、明らかな警戒と動揺が宿っていた。
それほどまでに、“それ”は異様だった。
「ウソでしょ?!いつの間に?!」
アニスが息を呑む。
目の前にそびえる巨体。
地面を割って現れたとしか思えないその存在は、あまりにも巨大だった。
普通ではない。
そんな言葉では到底足りない。
「大きいですね……!」
ネオンもショットガンを構える。
額には、冷や汗が浮かんでいた。
いつものような軽さはない。
目の前の存在は、本能的な恐怖を呼び起こす。
まるで――“生きていてはいけないもの”を見ているような感覚。
指揮官もまた、引き攣った表情でラプチャーを見上げていた。
巨大な機体。
幾重にも重なった装甲。
まるで山脈のような質量。
その全身から滲み出るのは、単なる兵器の威圧感ではない。
圧倒的な“捕食者”としての存在感。
そして。
ラプチャーが、ゆっくりと動く。
その巨大な頭部――おそらく顔に相当する部位が、こちらを向いた。
いや。
違う。
指揮官は気づく。
その視線は、自分たちには向いていない。
見ているのは――
マリアン。
その瞬間、理解が稲妻のように脳裏を貫いた。
『コイツは……我々ではなく。マリアンを追ってきたのか…?!』
背筋が凍る。
ただの遭遇ではない。
偶然でもない。
“目的”を持って現れた。
その事実が、指揮官の中で最悪の可能性を形にしていく。
だが――
突然すぎた。
理解が追いつかない。
誰もが、その異常な存在感に一瞬だけ動きを止めてしまう。
その時。
轟くような銃声が響いた。
重い発砲音。
ショットガン。
マスターだった。
「何をしている?!走れ!!マリアンを守れ!」
叫びながら、連続して引き金を引く。
放たれた散弾が巨体へと叩き込まれる。
火花が散る。
金属音が響く。
だが――
効いている様子が、ない。
それでも。
その叫びは、止まっていた時間を動かした。
指揮官が、はっと我に返る。
「分隊!!交戦しつつスノーホワイト達がいる方向へ走れ!」
即座に命令が飛ぶ。
その声には、焦りと強制的な冷静さが同居していた。
考えるな。
まず、生き残れ。
それが最優先。
全員が一斉に動き出す。
ラピが射撃を開始する。
ネオンが散弾を叩き込み、アニスがグレネードを装填する。
マリアンは息を呑みながら、それでも必死に足を動かしていた。
その隣で、マスターが後方を警戒しながら走る。
だが――
指揮官の胸中には、嫌な確信が広がっていた。
ロード級。
そう判断するのが妥当なはずだった。
だが。
違う。
本能が叫んでいる。
『そんな、甘いものではない』
あれは、もっと根源的な何かだ。
もっと“災害”に近い。
指揮官は走りながら振り返る。
そして――見た。
その巨体を。
そこに立つだけで、周囲の景色が歪むような存在感。
まるで、この世界に最初から存在していた絶対的な“怪物”。
時間すら意味を失うほどに、普遍的で、圧倒的な存在。
そして、理解する。
『間違いない…!あれは、タイラント級だ…!!』
血の気が引く。
タイラント級。
それは、単なる上位個体ではない。
“戦線そのもの”を崩壊させる災厄。
遭遇した部隊の生存率は、絶望的。
それが――今、自分たちの背後にいる。
カウンターズは後退しながら射撃を続ける。
逐次後退。
隊列を崩さず、互いをカバーしながら。
ラピの精密射撃。
ネオンの制圧。
アニスの爆撃。
マリアンの援護射撃。
だが。
その全てを受けながらも。
ラプチャーは、動かなかった。
避けようともしない。
怯みもしない。
ただ――
じっと。
マリアンだけを、見つめていた。
その巨大な“目”が。
まるで獲物を逃さぬように。
あるいは――
何かを確認するかのように。
執拗に。
異様なまでに。
ただ一人を、見続けていた。
ーーーーーー
感動の再会――
それは、物語の中では決まって美しく描かれる。
長い旅路の果てに主人公とヒロインは再び巡り会い、涙を流しながら互いの無事を確かめ合う。
離れていた時間を埋めるように抱き締め合い、失われたはずの想いを取り戻す。
そして、物語は終わる。
困難を乗り越えた者たちに与えられる、優しい結末として。
だが。
そんなものは、本の中だけの話だ。
現実は違う。
戦場は、そんな都合のいい奇跡を許さない。
再会の多くは、間に合わない。
抱き締める前に失い、言葉を交わす前に終わる。
悲劇的で。
理不尽で。
救いなどないまま終わることの方が、遥かに多い。
――それでも。
紅蓮は、奇跡というものを信じたかった。
なぜなら。
今、その奇跡が、目の前にあったからだ。
夢にまで見た人。
待ち続けた人。
何度、夜の中で名前を呼んだか分からない。
何度、その背中を思い出しながら眠ったか分からない。
その人が、今、確かにそこにいる。
距離にして、およそ一キロ。
遠い。
だが、もう届かない距離ではない。
あと少し。
あと少しで――触れられる。
紅蓮は、その奇跡を噛み締めるように、一歩ずつ歩いていた。
涙で滲む視界の中、それでも確かに彼を見据えながら。
だが――
その奇跡を。
踏み躙るようにして。
“それ”は、現れた。
「…アレは…!タイラント級か?!」
スノーホワイトの声が、驚愕と共に響く。
彼女ほどの存在ですら、その声音を隠せない。
タイラント級。
その名は、災厄そのもの。
数は少ない。
だが、一体一体が戦線を崩壊させるほどの力を持つ。
撃破には、大規模な戦力と入念な準備が必要。
遭遇した時点で“終わり”と認識されることすらある存在。
そんなものが――
今。
突如として、目の前に現れた。
しばらく、紅蓮は呆然としていた。
再会。
奇跡。
感情が溢れすぎて、思考が追いつかなかった。
だが。
その時。
視界の向こうで。
マスターが、何かを叫びながらタイラント級へ攻撃している姿が見えた。
その瞬間――
紅蓮の意識が、一気に現実へ引き戻される。
「…スノーホワイト!ラプンツェル!援護は任せる!!」
叫ぶ。
ほとんど反射だった。
同時に、彼女の身体は駆け出していた。
刀へ手を添えながら。
風を切る。
砂を蹴る。
ただ、前へ。
「分かった!早く行け!セブンスドワーフ!!」
スノーホワイトが即座に応じる。
巨大火器《セブンスドワーフ》を展開しながら、タイラント級へ狙いを定める。
「無理はしてはいけませんよ!相手は並大抵ではありません!」
ラプンツェルの声が飛ぶ。
だが、紅蓮は返事をしなかった。
返せなかった。
今の彼女には、返事をする余裕が無かったからだ。
一キロ。
たった、それだけ。
それなのに。
今は果てしなく遠い。
近づいても。
近づいても。
まだ届かない。
タイラント級は、まだ動いていなかった。
だが、その存在だけで分かる。
狙われている。
マスターたちが。
カウンターズが。
マリアンが。
そして。
マスターは、射撃を続けていた。
ショットガンを連射しながら、後退する仲間たちを庇うように。
数秒間、撃ち続ける。
そして――
振り返る。
走り出そうとした、その瞬間。
視線が、交わった。
マスターと、紅蓮。
距離はまだある。
声は、届かない。
だが――顔は見えた。
はっきりと。
「マスター!!」
紅蓮が叫ぶ。
マスターの口が、動く。
声は聞こえない。
それでも、分かった。
『紅蓮』
そう呼んだのだと。
その顔には、笑みが浮かんでいた。
優しく。
安心したように。
――よかった。
間に合った。
紅蓮は、そう思った。
本気で。
心の底から。
だが。
現実は、物語ではない。
ふと。
紅蓮の視線が、タイラント級へ向く。
そして――気づく。
巨大な腕。
それが、ゆっくりと持ち上がっていた。
ゾッ、とした。
本能が悲鳴を上げる。
危険だ。
逃げろ。
間に合わない。
次の瞬間。
世界が、砕けた。
轟音。
大地が爆ぜる。
タイラント級の腕が――
マスターのいた地点へ、叩きつけられた。
衝撃波が荒野を走る。
地面が抉れ、砂塵が吹き荒れる。
そして。
その衝撃に巻き込まれたマスターの身体が。
まるで玩具のように。
凄まじい勢いで、吹き飛ばされた。
「……は?」
紅蓮の口から、間の抜けた声が漏れる。
理解が、追いつかない。
つい今しがたまで。
そこにいた。
笑っていた。
名前を呼んでくれた。
やっと会えた。
その人が――
もう、いない。
視界から消えていた。
音が、消える。
風も。
銃声も。
叫び声も。
何も聞こえない。
ただ。
空白だけが、そこにあった。