嘘だ。
はいすみません。
紅蓮視点を描いてみたくて描いたらクッソ長くなりました!(T . T)
そして、まだ終わらないという(^◇^;)
あとちょっと、本当にちょっとなんです!
信じてください!
では、続きを書いてきます!!
あ!!
いつもアンケート協力ありがとうございます。
思いの外、ほかのニケがいいという結果に感謝一杯です。
作者自体、ニケの好みが偏りますので、どんなニケがいるのか、教えて欲しいくらいです笑
感想など、お待ちしてます!!
『――紅蓮』
誰かが、自分を呼んでいる。
その声は、不思議な声だった。
耳元で囁かれているわけではない。
遠くから響いてくるわけでもない。
まるで、心そのものに直接触れてくるような声音。
暖かく。
優しく。
そして、どうしようもなく――愛おしい。
聞くだけで胸の奥が熱くなる。
凍えていた何かが、ゆっくりと溶けていくような感覚。
なのに。
紅蓮には、その声の主が誰なのか分からなかった。
顔も。
名前も。
姿も。
何一つ。
ただ、その声だけが、まるで傷痕のように、心の深い場所へ残り続けていた。
『――紅蓮』
もう一度、呼ばれる。
その瞬間。
胸の奥が、鋭く痛んだ。
懐かしい。
愛しい。
会いたい。
なのに、“誰に”そう感じているのか分からない。
その矛盾が、胸を締め付ける。
そして――紅蓮は、静かに目を覚ました。
滝の音が聞こえる。
絶え間なく流れ続ける水音が、静かな隠れ家の空気に溶け込んでいた。
薄暗い天井。
木と石で作られた質素な室内。
長年使い込まれた家具。
焚き火の残り香。
人類の文明から遠く離れた、孤独な隠れ家。
紅蓮は、ベッドの上でゆっくりと身を起こした。
白い髪が肩を滑り落ちる。
まだ完全には回復していない身体が、鈍い痛みを訴えていた。
だが、それ以上に。
夢の余韻が、胸に残っていた。
「ふぅ……」
小さく息を吐く。
そして、紅蓮は苦笑するように微笑んだ。
「……ふふ。本当にキミは、一体誰なのだろうね……」
その笑みは穏やかだった。
だが同時に、どこか悲しかった。
夢の中でしか聞こえない声。
名前すら知らない誰か。
なのに、その声を聞いた朝だけは、不思議と寝起きがいい。
身体が軽い。
心が少しだけ温かい。
……その代わり。
目覚めた瞬間、胸の奥に鋭い喪失感が走る。
まるで、“本当に大切な何か”を失っているかのような痛み。
理由は分からない。
分からないのに、痛い。
その感覚が、紅蓮にはどうしようもなく奇妙だった。
やがて彼女はベッドから降りる。
裸足で床を踏みしめ、ゆっくりと姿見の前へ立った。
そこに映る自分の姿を見て、紅蓮は小さく目を細める。
腕。
脚。
腹部。
肩。
全身のあちこちに、ニケ用修復シートが包帯のように巻かれていた。
白い肌には、まだ消え切らない裂傷や打撲痕が残っている。
戦い慣れた彼女ですら、ここまで損傷することは珍しい。
二か月前。
スノーホワイトに集められ、協力してほしいと頼まれた。
アーク所属の指揮官が、一体のニケをこちらへ預けたいと言っている――と。
その護送と合流のため、紅蓮はスノーホワイト、ラプンツェルと共に地上を移動した。
そこまでは、覚えている。
だが。
記憶はそこで、唐突に途切れていた。
合流地点に向かった記憶。
荒野を進んだ記憶。
仲間達と会話した記憶。
そこまでは鮮明だ。
なのに、その先だけが、まるで黒く塗り潰されたように思い出せない。
次に目を覚ました時。
紅蓮は、“クラウン王国”のベッドの上にいた。
最初に視界へ入ったのは、隣に座るラプンツェルの姿だった。
「紅蓮? 目が覚めましたか?」
いつもの、柔らかな声。
その声に、紅蓮はぼんやりと目を瞬かせた。
「……ラプンツェル?」
頭が重い。
思考が霞がかっている。
紅蓮は周囲を見回しながら、小さく眉を寄せた。
「……ここは、どこだい?」
ラプンツェルは安堵したように微笑む。
「ここは、クラウンの王国です」
そして、少しだけ真剣な顔になる。
「……何があったか、覚えていますか?」
その問いに、紅蓮はしばらく黙り込んだ。
記憶を探る。
だが、やはり途中から曖昧だ。
「……たしか、スノーホワイトと共に、アークの指揮官に会うため、合流地点へ向かっていたのではなかったかな?」
「ええ。その通りです」
ラプンツェルは頷く。
「……その後は?」
紅蓮は苦笑した。
「その後は……はぁ、すまない。覚えていないようだ。何があったんだい?」
その答えを聞いた瞬間。
ラプンツェルの瞳に、微かな陰りが落ちた。
「……紅蓮。私達は、アークの指揮官と合流することは出来ました」
静かな声。
「ですが、その場所で……タイラント級との戦闘になったのです」
紅蓮の目が見開かれる。
タイラント級。
その名が意味するものを、彼女は誰より理解していた。
「……そう、だったのか」
紅蓮は自分の傷を見下ろす。
そして、小さく笑った。
「それで、私はこんなに傷だらけなのかい?」
軽口のように言った後、すぐに真剣な顔になる。
「それよりも、皆は無事なのかい?」
ラプンツェルは頷いた。
「えぇ。皆無事です」
その答えに、紅蓮は安堵の息を漏らす。
だが。
ラプンツェルは続ける。
「……貴女は、タイラント級との戦闘で深刻な損傷を受けました。そして、意識を失ったのです」
「治療のため、預かったニケ――マリアンと共に、この王国まで運ばれました」
そして。
ほんの少しだけ、言葉を選ぶようにして。
「……紅蓮。貴女は、損傷の影響で記憶が混濁しているようです」
そう告げた。
紅蓮は苦笑した。
「いやはや、まさか私が記憶を失うほど負傷するとはね。鈍ったものだ」
冗談めかしたその言葉。
だが、ラプンツェルは笑わなかった。
代わりに。
どこか怯えるように、問いかける。
「……紅蓮?」
「なにか、“他に覚えていること”はありませんか?」
その声音には、祈るような響きがあった。
紅蓮はその様子に違和感を覚えながらも、首を横に振る。
「いいや?」
「記憶が曖昧なのは、その戦闘くらいだよ。それ以外は全部覚えている」
そして、少しだけ得意げに笑った。
「なんなら、ゴッデス時代のことだって、ちゃんと覚えているさ」
その瞬間だった。
ラプンツェルの顔に、ほんの一瞬だけ。
悲しみが浮かんだのは。
切なく。
苦しく。
まるで、“失われた何か”を悼むような顔。
だが彼女は、すぐに微笑み直した。
「……それは、良かったです」
優しい声だった。
けれど、その奥にある痛みを、紅蓮は見逃さなかった。
「今は、しっかり身体を休めてください」
そう言い残し、ラプンツェルは部屋を後にした。
扉が閉まる。
静寂。
残された紅蓮は、ぼんやりと天井を見上げた。
なぜ。
あの時、ラプンツェルはあんな顔をしたのか。
その疑問だけが、胸に残り続けた。
そして――その夜からだった。
夢の中で。
あの声が、自分の名前を呼ぶようになったのは。
ーーーーーーー
「……やはり、紅蓮はマスターの事を全く覚えていないようです」
静かな声だった。
だが、その声には、隠し切れない痛みが滲んでいた。
薄暗いクラウン王国の一室。
石造りの壁に囲まれたその部屋で、ラプンツェルは通信機を耳元へ当てながら、静かに目を伏せていた。
窓の外では、王国を囲む草原が風に揺れている。
穏やかな景色だった。
だからこそ、その言葉の重さが際立っていた。
「……思考転換を防ぐためとはいえ、私達は彼女の何よりも大切な記憶を……奪ってしまったのです」
通信の向こう側。
しばし、沈黙が落ちる。
その沈黙だけで、相手――アークの指揮官が、どれほど重くその言葉を受け止めたかが分かった。
やがて。
『……わかった』
低く、掠れた声が返ってくる。
そこには疲労と、後悔と、そして諦めきれない願いが滲んでいた。
『……だが、何かの拍子に思い出すことがあるかもしれない』
その言葉は、希望だったのか。
あるいは、願望だったのか。
ラプンツェルには分からなかった。
彼女は静かに目を閉じる。
そして、ゆっくりと言葉を返した。
「……えぇ。そう願うばかりです」
その声は優しかった。
だが、どこか痛々しかった。
「ですが、無理に思い出そうとすると、それは紅蓮の負担になります」
思考転換寸前まで追い詰められた精神。
その崩壊しかけた心を、強制休眠剤は無理やり繋ぎ止めた。
だからこそ、今の紅蓮は非常に脆い。
無理に失われた記憶へ触れれば、再び精神の均衡が崩れる可能性すらある。
「今は……見守りましょう」
それしか出来ない。
それしか、許されない。
ラプンツェルは静かに続ける。
「……マリアンのことは任せてください。ちゃんと守りますから」
通信の向こうで、小さく息を呑む気配がした。
『……すまない。頼む』
その返答だけで。
指揮官がどれほど多くのものを背負い、苦しみながら決断を下したのか、ラプンツェルには理解できた。
だからこそ、彼女は責めなかった。
誰も悪くなかった。
誰もが必死だった。
それでも。
失われたものは、あまりにも大きかった。
通信が切れる。
静寂。
ラプンツェルは、ゆっくりと通信機を下ろした。
そして、小さく息を吐く。
長い、長いため息だった。
彼女は窓の外へ視線を向ける。
空は青かった。
雲がゆっくり流れていく。
そんな穏やかな空を見上げながら、ラプンツェルは静かに目を伏せた。
「……主よ」
掠れるような声。
「どうか、あの二人に……少しだけでも、救いを」
その祈りは、誰にも届かない。
それでも、祈らずにはいられなかった。
ーーーーーー
最初、その声を聞いた時。
紅蓮は正直、不気味だと思った。
夢の中で。
知らない誰かが、自分の名前を呼ぶ。
それだけなら、まだいい。
だが、その呼び方が問題だった。
あまりにも優しく。
あまりにも愛おしそうに。
まるで壊れ物を扱うように、大切そうに名前を呼ぶのだ。
『紅蓮』
その声を聞くたび、胸の奥がざわついた。
だから紅蓮は、夢の中で何度も罵倒した。
「うるさい」
「消えろ」
「貴様は誰だ」
苛立ち紛れに、そう吐き捨てる。
だが。
罵倒するたびに、胸が痛んだ。
鋭く。
苦しく。
まるで、自分自身を傷つけているように。
それが、紅蓮には理解できなかった。
夢の中で、その声の主の姿は見えない。
見えそうで見えない。
まるで深い霧の向こう側に立っているように、輪郭だけが朧げに浮かぶ。
男なのは分かる。
背が高いことも。
こちらを優しく見ていることも。
なのに、それ以上が分からない。
そして、その男は。
夢で会うたび、必ずこう言った。
『待たせた。紅蓮』
優しい声だった。
懐かしくて。
泣きたくなるほど、温かい声。
だが、紅蓮には意味が分からない。
何を待った?
誰を待った?
何故、自分はその言葉を聞くたびに胸が締め付けられる?
何一つ分からなかった。
夢を見る頻度は不規則だった。
何日も連続で見る時もあれば、まったく見ない日もある。
見た朝は、不思議と気持ちが軽かった。
逆に。
理由も分からぬまま、涙を流して目覚める日もあった。
頬を濡らす涙に触れながら、紅蓮は何度も困惑した。
何故、自分は泣いているのだろう、と。
だが。
それでも。
いつしか紅蓮は、その声を聞くことを待つようになっていた。
「君は誰なんだい」
「姿を見せてはくれないのかい」
夢の中で、何度も問いかけた。
返事はない。
ただ、優しく名前を呼ばれるだけ。
それなのに。
その時間だけは、妙に心が満たされていた。
まるで。
失っていた何かが、少しだけ戻ってきたような気がして。
――そして時は流れ。
紅蓮は、クラウン王国での治療と療養を終えた後。
昨晩、自らの隠れ家へ帰還していた。
もちろん、一人ではない。
ラプンツェルも一緒だった。
隠れ家の中。
姿見の前で、紅蓮は包帯代わりの修復シートを確認していた。
傷は大分塞がっている。
まだ完全ではないが、戦うことは十分可能だろう。
そう考えていた時だった。
ギィ、と扉が開く。
「おや? 紅蓮、起きましたか」
柔らかな声と共に、ラプンツェルが中へ入ってくる。
その両腕には、野菜の詰まった籠が抱えられていた。
採れたばかりなのだろう。
葉には朝露が残っている。
「では、朝食にしましょう。流石は紅蓮の農園です。野菜が豊かに育っていますね」
穏やかに笑うラプンツェル。
その姿を見て、紅蓮は苦笑した。
「全く……過保護すぎやしないかい?」
肩を竦めながら、腕を軽く振る。
「ほら。もう傷は大分良くなった。私一人でも大丈夫だが?」
ラプンツェルは、本来なら各地を巡る旅を続けているはずだった。
それなのに。
紅蓮が回復するまで、彼女は側を離れようとしない。
その理由を、紅蓮は何となく察していた。
だからこそ、わざと軽口を叩く。
だが。
ラプンツェルは、ただ優しく微笑むだけだった。
「無理はいけませんよ、紅蓮」
その声には、どこか母親のような温かさがある。
「傷が癒えたと判断したら、私もまた旅を続けます」
そう言って、彼女は竈へ向かう。
まだ火種の残る炉へ薪を足し、慣れた手つきで火を起こしていく。
「さぁ。まずは朝食が先です」
その背中を見ながら。
紅蓮は小さく笑った。
「わかった、わかった。感謝するよ」
そう言って、籠から野菜を取り出す。
包丁を握る。
静かな朝だった。
滝の音。
燃える火の音。
包丁が野菜を刻む音。
その穏やかな時間の中で。
紅蓮はふと、胸の奥に微かな痛みを感じた。
理由は分からない。
だが。
痛みと共に、“誰かの記憶”があるような気がした。
けれど、その“誰か”だけは、どうしても分からなかった。
ーーーーーーー
朝食を終えた後。
隠れ家の中には、静かな時間だけが流れていた。
ラプンツェルは外へ出ている。
農園の様子でも見に行ったのだろう。
残された紅蓮は、一人、窓際の古びた椅子へ腰掛けていた。
窓の外には、穏やかな川が流れている。
滝の麓から続くその水流は、陽光を反射して淡く輝き、絶え間なく優しいせせらぎを響かせていた。
風が吹く。
木々の葉が揺れる。
草が擦れ合う音。
遠くで鳥が鳴いていた。
世界は、あまりにも穏やかだった。
戦場の硝煙も。
ラプチャーの咆哮も。
血と鉄の臭いも。
ここには何一つ存在しない。
まるで、この隠れ家だけが世界から切り離されているようだった。
紅蓮は、そんな景色をぼんやりと眺めながら、小さく息を吐く。
「いい天気だね」
誰に向けたわけでもない言葉。
独り言。
返事はない。
それでも、言葉は自然と零れた。
静かな時間だった。
心が鎮まるような、穏やかなひととき。
――なのに。
気づけば。
紅蓮の思考は、また“それ”へ向かっていた。
夢の中の声。
自分の名を優しく呼ぶ、知らない誰か。
顔も。
名前も。
姿も。
何一つ分からない。
なのに。
その存在だけが、どうしようもなく心を揺さぶってくる。
胸の奥に、ぽっかりと穴が空いているような感覚。
何かが欠けている。
何かが足りない。
それが何なのかも分からないのに、その喪失感だけが、いつも胸の奥に居座っていた。
「……君は、本当に誰なんだぃ……?」
弱々しい声が漏れる。
紅蓮は椅子の上で膝を抱え、その上へ額を預けた。
目を閉じる。
すると、またあの声が脳裏に蘇る。
『紅蓮』
優しい声。
愛おしそうに、自分の名を呼ぶ声。
それを思い出した瞬間、胸が締め付けられた。
痛い。
苦しい。
なのに、離したくない。
その矛盾に、紅蓮は小さく眉を寄せる。
「……まるで」
掠れた声。
「……大切な誰かを、“忘れている”みたいじゃないか……」
その瞬間だった。
紅蓮は、はっと顔を上げた。
忘れている。
今、自分はそう言った。
だが。
何故?
何故、自分は“忘れている”などと思った?
知らないはずなのに。
会ったこともないはずなのに。
なのにどうして、自分はその声の主を“失った誰か”のように感じている?
「……忘れて、いる……?」
呆然と呟く。
胸がざわつく。
思考の奥底で、何かが軋んでいた。
まるで閉ざされた扉の向こうから、“何か”が叩いているような感覚。
「……私は、誰かを……?」
思考が深く沈み始める。
あと少しで。
何かに触れられそうな気がした。
だが、その時だった。
ふと。
紅蓮の視線が、部屋の隅へ向く。
そこには、小さな棚があった。
古びた木製の棚。
普段なら気にも留めない場所。
なのに。
その瞬間だけ、不思議なほど存在感を放って見えた。
紅蓮は、ゆっくりと目を細める。
妙だった。
紅蓮自身、自分が片付けの得意な性格ではないことくらい理解している。
実際、この隠れ家のあちこちには物が雑多に置かれている。
だが。
その棚だけは、異様なほど綺麗に整理されていた。
埃一つない。
まるで。
“何かを大切に保管するため”だけに整えられた空間のようだった。
そして。
その棚の中央に。
ぽつん、と、小さく折り畳まれた手紙だけが置かれていた。
それを見た瞬間。
ドクン――
紅蓮の心臓が、大きく脈打つ。
息が止まる。
何故だか分からない。
だが。
“それが大切な物だ”ということだけは、本能で理解できた。
紅蓮は、ゆっくりと立ち上がる。
足が震えていた。
まるで、近づくことを恐れているかのように。
それでも。
吸い寄せられるように、棚へ歩み寄る。
指先が微かに震える。
恐る恐る。
壊れ物へ触れるように。
その紙を手に取った。
軽い。
あまりにも軽い。
なのに。
どうしてこんなにも重く感じるのだろう。
紅蓮は、息を呑む。
そして。
震える指先で、ゆっくりと紙を広げていく。
丁寧に。
破いてしまわないように。
それは、ひどく古びた手紙だった。
長い年月を経たのだろう。
紙は黄ばみ、端は擦り切れ、何度も折り畳まれてきた痕跡が深く残っている。
破れた箇所は、何度も丁寧に補修されていた。
透明なテープは変色し、それでもなお、“失わないように”必死に繋ぎ止められている。
そして。
そこに書かれた文字は。
もう掠れていて、完全には読めない。
だが。
それでも。
そこに込められていた“想い”だけは、何故か伝わってきた。
その瞬間だった。
ぽたり。
涙が落ちる。
紅蓮は、呆然と目を見開いた。
「……え……?」
理解できない。
何故、自分は泣いている?
何故。
こんなにも。
胸が苦しい?
止まらない。
涙が、次から次へと溢れてくる。
まるで。
心の奥で堰き止められていた感情が、一気に溢れ出したかのように。
紅蓮は、慌てて口を押さえる。
嗚咽が漏れそうになる。
だが、抑えきれない。
身体が震える。
胸が痛い。
苦しい。
寂しい。
会いたい。
誰に?
分からない。
なのに。
どうしようもなく、“その誰か”を求めている自分がいた。
紅蓮は、その紙を破かないように、そっと胸へ抱き締めた。
まるで。
失いたくない宝物を抱き締めるように。
そして。
力が抜けるように、その場へ崩れ落ちた。
膝をつく。
肩が震える。
静かな部屋の中へ。
押し殺した嗚咽だけが、静かに、静かに響いていた。
もし次するなら 基本1話完結で考えてます
-
D(リメイク)
-
ルドミラ(続き)
-
アイラ(続き)
-
メアリー(続き)
-
ジャッカル(続き)
-
デルタ(続き)
-
クロウ
-
エード
-
ヘルム
-
マクスウェル
-
この中に無い!笑