クロウ編です、そこまで長くないです、多分あと1話で終わります。
正直に言うと、自分クロウは好きなんですよね。
作中ではヴィラン役を徹底していて、最後には周りに誰も味方がいない状況で、自らの信条を貫き通したところがかっこいいと思いました。
彼女にも安泰があってもいいじゃないか!!
と思いました笑
彼女のツンツンツンを通り越したらデレデレデレデレ………♾️になると思うんですよね!!笑
夕暮れの光が、喫茶ルポの店内を柔らかく包み込んでいた。
窓の向こうでは、人工的に作られたアークの夕焼けが、街並みを橙色に染め上げている。
仕事を終えた人々が帰路につき、昼間の喧騒に満ちていた商業区も、少しずつ静けさを取り戻し始めていた。
喫茶ルポ。
そこは、アークの人々にとって、ほんのひととき日常の疲れを忘れられる場所だった。
昼食を楽しむ者。
午後のひとときをコーヒーとともに過ごす者。
誰かとの会話を楽しむ者もいれば、ただ静かに一人の時間を過ごす者もいる。
そして、この店の主人は、そんな何気ない時間を何よりも大切にしていた。
だからこそ、閉店時間はいつも午後四時。
夜遅くまで営業することはない。
人々が一日の仕事を終え、帰路につく頃には、マスターもまた店を閉める。
明日のための仕込みをし、食材を買い足し、店内を整える。
それが彼の日常だった。
この日も、いつもと変わらない一日が終わろうとしていた。
店内に残っている客は、もういない。
テーブルは綺麗に片付けられ、椅子も整然と並べられている。
厨房では、明日の仕込みを終えた調理器具が静かに乾かされていた。
カウンターの内側では、マスターが一人、黙々とカップを拭いている。
大きな手に収まった白いカップ。
丁寧に布巾を滑らせ、光にかざして汚れが残っていないか確認する。
その表情には、いつもと変わらない穏やかさがあった。
もう間もなく閉店。
今日も無事に一日を終えられそうだ。
そう思っていた、その時だった。
カランッ。
小気味よい音が店内に響いた。
扉に取り付けられた小さなベルが鳴る。
客が入店したことを知らせる、喫茶ルポではお馴染みの音。
マスターは手元のカップを置くと、いつものように顔を上げた。
そして、心地よい低い声で客を迎える。
「いらっしゃ……」
言葉が止まった。
ほんの僅かに、目が見開かれる。
そこに立っていた人物を認識したからだ。
夕暮れの光を背に、ゆっくりと店内へ足を踏み入れる一人の女性。
黒いボブショートの髪。
細く、しなやかな身体。
その身を包むのは、肌の露出が多いパンク調の服装。
鋭い眼差しに、どこか挑発的な雰囲気。
彼女の姿を一目見れば、普通の人間ならば関わりを避けようとするだろう。
その立ち居振る舞いには、裏社会で生きてきた者特有の危うさがあった。
他人を信用せず、他人に踏み込ませず、自分自身さえも大切にしていないような、そんな空気。
彼女の名は――クロウ。
エキゾチック部隊の指揮官であり、アウターリムに生きる者たちの中でも、とりわけ危険な存在。
その彼女が、今、この喫茶店に立っていた。
クロウは店内を一瞥する。
整然と並んだテーブル。
カウンターの奥にある厨房。
そして、こちらを見つめる大柄な男。
その視線が一瞬だけ交わる。
クロウは何かを言いかけるように唇を動かしたが、結局、いつもの調子を取り戻すように小さく息を吐いた。
「……邪魔をする」
ぶっきらぼうな声だった。
歓迎されることなど期待していない。
追い返されても構わない。
そんな態度にも見える。
だが、その瞳の奥には、単純な敵意だけでは片付けられないものがあった。
冷たく、警戒心に満ちた眼差し。
それでいて、何かを諦めきれていないような、複雑な感情が揺れている。
おそらく彼女自身にも、その感情をどう扱えばいいのか分かっていないのだろう。
ここへ来るまでに、どれほどの葛藤があったのか。
何を期待し、何を恐れ、何を確かめようとしているのか。
その全てを、彼女は表情の奥に押し込めていた。
マスターは、そんなクロウをしばらく見つめていた。
驚きが消えたわけではない。
彼女がここへ来た理由も分からない。
それでも、彼はいつものように笑った。
先ほどまでカップを拭いていた布巾をカウンターに置き、ほんの少しだけ身体を起こす。
そして――
「いらっしゃい」
今度こそ、最後まで言葉を紡いだ。
その声は、いつもと変わらない。
低く、穏やかで、陽だまりのように暖かい。
相手が誰であろうと。
どんな過去を持っていようと。
どれほど危険な人物であろうと。
この店の扉を開けた客には、変わらず同じ言葉をかける。
それが、この男の流儀だった。
クロウは、ほんの一瞬だけ目を細めた。
予想していた反応とは違ったのかもしれない。
警戒も、拒絶も、問い詰める言葉もない。
ただ、一人の客として迎えられた。
それがかえって、彼女の心を僅かに揺らした。
「……ふん」
クロウは小さく鼻を鳴らす。
そして、カウンターの方へと歩き始めた。
靴音が、静かな店内に響く。
マスターは再び笑みを浮かべると、カウンターの客席を手で示した。
「お好きな席へどうぞ。……もっとも、もう閉店間際だがね」
そう言って、少しだけ申し訳なさそうに笑う。
クロウは足を止め、マスターを見た。
「……なら、追い返すか?」
試すような言葉。
しかし、マスターは困ったように笑うだけだった。
「まさか。せっかく来ていただいたお客様だからね。コーヒー一杯くらいなら、喜んでお出しするよ」
その言葉に、クロウは何も答えなかった。
ただ、カウンターの椅子を引き、静かに腰を下ろす。
夕暮れの光が、二人の間に長い影を落としていた。
ーーーーーー
クロウが喫茶店を訪れるより少し前。
アウターリム、エキゾチック部隊の隠れ家。
「ねぇ隊長? 次はなにをすればいいの?」
隠れ家の静寂を破るように、ジャッカルの明るい声が響いた。
アウターリムの片隅。
薄暗い路地をいくつも抜けた先にある、古びた建物の一角。
そこは、ジャッカルたちが所属するエキゾチック部隊のニケたちが待機する場所のひとつだった。
壁には古い傷がいくつも残り、使い古された家具が無造作に置かれている。
決して居心地が良いとは言えない場所だが、彼女たちにとっては慣れ親しんだ拠点でもあった。
もっとも、ここを安らげる場所だと思っているかは分からない。
アウターリム。
そこは、アークの暗部だった。
人類がラプチャーから逃れるために築いた地下都市、アーク。
その繁栄の裏側で、存在を否定され、居場所を奪われ、そこから弾き出された人々が行き着く場所。
アークの住民として認められなかった者。
何らかの事情で追放された者。
あるいは、最初からアークに受け入れられることのなかった者。
彼らは、アークの光が届かない場所で生きている。
当然、そこに暮らす人々の生活は決して平穏なものではない。
生きるために犯罪に手を染める者。
他人から奪うことを当然とする者。
アークへの憎悪を募らせ、復讐を目的にテロ行為を企てる者。
秩序も、正義も、善意も、ここでは必ずしも人々を守ってはくれない。
明日を生きるためなら、今日の誰かを犠牲にする。
そんな価値観が当たり前のように根付いてしまった場所だった。
そして、エキゾチック部隊は、そうしたアウターリムの人々がアークに対するテロ行為などを起こす前に、彼らを監視し、必要とあれば事前に排除するために駐在している。
彼女たちの任務は、決して表立って称賛されるようなものではない。
時には情報を集め、時には裏社会に潜り込み、時には対象を始末する。
アークの平穏を守るために、アークが見捨てた場所で、アークのために汚れ仕事をこなす。
皮肉な話だった。
しかし、そんなエキゾチック部隊の構成員である彼女たちも、元を辿ればアウターリムに生きていたはぐれ者たちである。
彼女たちは決して、中央政府に忠誠を誓っているわけではない。
ニケとして造られた身体。
そして、首元に装着されたチョーカー。
それは、中央政府に逆らうことを許さないための首輪だった。
命令に背けば、あるいは反逆の意思を示せば、いつでも爆発する。
彼女たちは自由を与えられているようで、その実、自由など持ち合わせてはいなかった。
そんな事情を知ってか知らずか、ジャッカルは今日もいつも通り、明るく無邪気な声を上げていた。
「まだなにも指示はきていない。だから、休め」
ソファに深く腰を沈め、気怠げに答えたのはエキゾチック部隊の隊長、クロウだった。
片肘をソファの背もたれに預け、気の抜けた様子で天井を眺めている。
任務の指示が来るまでは、特にすることもない。そう言わんばかりの態度だった。
その言葉を聞いたジャッカルは、ぱっと表情を明るくした。
「じゃあじゃあ!! またマスターのところに行ってきてもいい?! アークに入れるように、許可は貰ってるんだよね?!」
まるで、待ちに待った休日を告げられた子供のようだった。
先ほどまで次の任務を気にしていたはずなのに、休めと言われた途端、頭の中は別のことでいっぱいになっているらしい。
その様子を横目で見ていたバイパーが、口元に妖艶な笑みを浮かべた。
「なぁにぃ? この前の任務から、やたらとアークに行きたがるけどー……誰かに惚れちゃった?」
甘く、からかうような声。
その一言に、ジャッカルの身体がぴたりと止まった。
そして、みるみるうちに頬が赤く染まっていく。
「はぁ?! そ、そんなんじゃないもん!!」
慌てて否定するものの、その声にはどこか余裕がない。
「マスターは、なんていうか、一緒にいると、ここがポカポカするというか、とにかく! 一緒にいたいだけ!!」
ジャッカルは自分の胸元に手を当てながら、言葉を探すようにして説明した。
うまく表現できない。
自分でも、その感情が何なのかはっきりと分かっていないのかもしれない。
ただ、あの場所に行くと嬉しくなる。
あの大きな身体のマスターが、いつもの優しい声で迎えてくれると安心する。
名前を呼んでくれるだけで、胸の奥が温かくなる。
それだけは、間違いなかった。
バイパーは一瞬、目を見開いた。
そして、ジャッカルの顔をじっと見つめると、さらに楽しそうに笑みを深める。
「……えぇ〜? その反応、図星じゃない〜」
「ち、違うってば!!」
「ふふっ。ジャッカルにそんな顔させるなんて、私も興味出てきちゃったな。その『マスター』に」
その言葉を聞いた瞬間、ジャッカルの表情が変わった。
先ほどまで赤くなっていた顔が、今度は不満げに膨らむ。
「ダメだからね! マスターは私のなんだから!!」
隠れ家に、ジャッカルの大きな声が響き渡った。
バイパーは両手を軽く上げ、悪びれる様子もなく笑っている。
「あらあら、怖い怖い。まだ何もしてないのに」
「絶対ダメだからね!!」
「はいはい」
二人のやり取りを聞いていたクロウは、深く息を吐いた。
手元にあった煙草を口元へ運び、火をつける。
ゆっくりと煙を吐き出すと、心底面倒そうな表情で二人を見た。
「お前達、少しは静かにしろ。うるさくて頭が痛くなってきた」
「えへへ、ごめんなさーい!」
まったく悪びれていないジャッカル。
クロウはそんな彼女を一瞥すると、続けて言葉を付け加えた。
「……あとジャッカル。アークに行くのは無しだ。許可を貰ってるとはいえ、頻繁には無理だ」
「えっ……」
ジャッカルの表情から、見る見るうちに笑顔が消えていく。
「むぅ〜〜……」
頬を膨らませ、あからさまに不満を表す。
先ほどまであれほど楽しそうにしていたというのに、たった一言で、まるで世界の終わりでも告げられたかのような顔になってしまった。
「分かったよ。隊長がそう言うなら、従う」
そう言って、ジャッカルは肩を落とした。
その姿は、まるで叱られた犬がしょんぼりと尻尾を垂らしているかのようだった。
もちろん、ニケである彼女に尻尾などない。
それでも、その場にいた二人には、今にも見えない尻尾が床に着きそうなほど、落ち込んでいるように見えた。
バイパーはその様子を見て、また小さく笑った。
クロウは煙草をくゆらせながら、何も言わずに目を閉じる。
隠れ家には、再び静けさが戻ってきた。
だが、ジャッカルの頭の中は、まだアークのことでいっぱいだった。
あの喫茶店。 あの温かい匂い。 そして、自分を見つけるといつも優しく笑ってくれる、大きなマスター。
次に会えるのは、いつになるのだろう。
ジャッカルはソファの端に腰を下ろし、膝を抱えるようにして小さく呟いた。
「……マスター、元気にしてるかなぁ」
その声は、先ほどまでの賑やかさとは違い、ひどく小さかった。
アウターリムの片隅。 今日もまた、彼女たちの任務のない一日が過ぎていこうとしていた。
ーーーーーー
隠れ家に、再び静寂が戻っていた。
ジャッカルはソファの端に腰掛けたまま、膝を抱えるようにしている。
先ほどまでの賑やかさはすっかり鳴りを潜め、どこか遠くを見つめるその横顔には、隠しきれない寂しさが浮かんでいた。
「……マスター、元気にしてるかなぁ」
小さく漏れた呟き。
その声を、クロウは横目で捉えていた。
煙草を指先で挟み、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
ジャッカル。
自分たち以外には、ほとんど心を開こうとしなかったニケ。
警戒心が強く、野生動物のように周囲を見回し、気に入らない相手には牙を剥く。
そんな彼女が、今では自分やバイパーに向けるものとは明らかに違う表情を、たった一人の男に向けている。
その相手こそ、件『マスター』だった。
クロウは目を細める。
自分たち以上に、ジャッカルの心を掴んだ男。
一体、何者なのか。
思い返すのは、先日の任務の後のことだった。
任務を終えたジャッカルが、部隊からはぐれた。
通信も途絶え、捜索を続けていたところ、彼女がアークにある一軒のカフェに身を隠しているという情報が入った。
迎えに行った先に、あの男はいた。
喫茶店のカウンターの向こう側。
大柄で、頑強な体躯。
精悍な顔立ちに、鍛え上げられた身体。
立ち姿だけを見れば、アークの一般市民というより、裏社会で幾度も修羅場をくぐり抜けてきた人間のようだった。
少なくとも、クロウたちが普段相手にしている連中の中にいても、何ら不思議ではない。
いや、むしろ、そちらの世界の人間だと言われた方が納得できるほどの風貌だった。
だが、奇妙でもあった。
そんな男が、カフェの中ではまるで別人のように振る舞っていたのだ。
客に向ける穏やかな眼差し。
誰に対しても変わらない、柔らかな笑顔。
そして、耳に届く、陽だまりのように暖かな声。
『いらっしゃい』
その一言を聞いた瞬間、クロウは咄嗟に心の中へ壁を作った。
理由は分からない。
ただ、これ以上あの声を聞いてはいけない。
あの笑顔を正面から見てはいけない。
そんな直感が、彼女の中で警鐘を鳴らしていた。
あのまま、あの声を聞き続けていたら。
あの男の笑顔に触れ続けていたら。
自分が、今まで知らなかった何かを知ってしまうような気がした。
それが何なのかは分からない。
分からないからこそ、気味が悪かった。
クロウはあの時、ジャッカルを連れて早々に店を出た。
そしてアウターリムへ戻った後、あらゆるツテを使って男の素性を調べさせた。
中央政府の記録。
アークの住民情報。
過去の職歴。
交友関係。
家族構成。
裏社会に流れる噂や、非公式の情報網にまで手を伸ばした。
しかし――何も出てこなかった。
何も、だ。
男がどこから来たのか。
いつからアークに住んでいるのか。
家族はいるのか。
過去に何をしていたのか。
まるで、最初からそこに存在していなかったかのように、何一つ掴めなかった。
「…………」
クロウは煙草を口元へ運ぶ。
吸い込んだ煙が肺に満ちる。
それでも、思考は止まらなかった。
『あの男は、何者だ?』
何度考えても、答えは出ない。
得体の知れない人間。
調べても正体が分からない人間。
そして、ジャッカルが自分たち以上に心を許した人間。
警戒する理由なら、いくらでもあった。
それなのに。
思考の中に浮かんでくるのは、あの男の正体でも、調査で得られなかった情報でもなかった。
あの日、ジャッカルを連れて帰ろうとした時。
男が自分に向けてかけた言葉だった。
『貴女もまた来るといい、コーヒーを飲みに』
何気ない一言。
特別な意味などないのだろう。
客に向ける、ごく普通の挨拶。
店主としての社交辞令。
それだけのはずだった。
なのに。
どうして、こんなにも胸の中に残っているのだろう。
「……チッ」
クロウは小さく舌打ちした。
気持ちが悪い。
吐き気がするほど、胸の奥が落ち着かない。
自分の中に、正体の分からない何かが入り込んでいるような感覚。
それを吐き出そうとしても、どうにもならない。
不快だった。
今まで、こんな感情を抱いたことはなかった。
他人の言葉など、必要な情報か、聞き流すべき雑音か、そのどちらかでしかない。
誰かの笑顔に心を乱されることもなければ、何気ない一言を何度も思い返すこともない。
そうやって生きてきた。
それなのに、あの男は。
たった一度、言葉を交わしただけで、自分の中に妙な痕跡を残していった。
気持ち悪い。
理解できない。
関わりたくない。
そう思う一方で――
心の奥底に蠢く、何かを確かめたい。
そんな考えが、頭の片隅から離れなかった。
「……くそッ」
クロウはおもむろに手を伸ばし、灰皿に煙草を押し付けた。
じゅ、と小さな音を立てて、赤い火が消える。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
「隊長?」
その動きに気付いたジャッカルが、顔を上げる。
クロウは返事をせず、壁に掛けてあった上着を手に取った。
袖を通し、襟元を軽く整える。
「どこ行くの?」
ジャッカルが不思議そうに尋ねる。
「少し出る」
それだけだった。
「えっ? お仕事?」
「違う」
「じゃあ、お買い物?」
「違う」
「……?」
ジャッカルは首を傾げる。
その隣で、バイパーが興味深そうにクロウの様子を眺めていた。
「へぇ〜? 隊長が自分からお出かけなんて珍しいじゃない。どこに行くの?」
「お前には関係ない」
「ふぅん。そう?」
バイパーは口元に笑みを浮かべた。
その視線が、ほんの一瞬だけジャッカルへと向けられる。
そして、再びクロウへ。
「……もしかしてぇ?」
「黙れ」
短く、鋭い声。
それ以上の追及を許さない声音だった。
クロウは二人に背を向け、外へと通じる扉へ歩き出す。
「隊長! 気をつけてね!」
背後からジャッカルの声が飛んでくる。
「……ああ」
短く返事をして、扉に手を掛けた。
外には、アウターリム特有の薄汚れた空気が広がっている。
錆びた鉄の匂い。
遠くから聞こえる怒号。
路地裏で鳴る銃声。
どこかの建物から漏れ出す、荒々しい笑い声。
いつもと変わらない、見慣れた景色。
クロウにとっては、これこそが日常だった。
だが、今から向かう場所は違う。
アークの中。
人々が昼食を楽しみ、穏やかな時間を過ごす場所。
自分たちのような人間には、似つかわしくない場所。
そして、あの男がいる場所。
クロウは一度だけ足を止めた。
自分が何を確かめに行こうとしているのか、まだ分からない。
男の正体か。
ジャッカルがあれほど懐く理由か。
それとも、自分の胸に残った、この不快な感情の正体か。
どれも違うようで、どれも正しいような気がした。
「……くだらない」
自分に言い聞かせるように呟き、クロウは歩き出す。
クロウ編書こうと思ってますけど、紅蓮編の後日譚とか興味ありますか?
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ある!!
-
クロウ編が、見たいかな?