勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第二話 「転生と判明」

 

(......本当に、転生したのか...)

 

テロに巻き込まれ、銃弾を受けて命を落とした。それから転生して、もう1年。

最初の頃は夢か何かだと思い込んでいた蒼月。けれど、周りの情報を整理していくと転生したことが判明。

 

木々に囲まれたのどかな村。

自然と共に生きているかの様な素朴な生活。いくら田舎だと言っても

現代の日本ならば、スマホやテレビはある筈だと思っていたが何もなく、窓から外を見てみれば、物凄く大きな鳥が空を飛んでいたり、見た事もない虫の様な生き物がいたりと

 

様々な理由からここは異世界だと断定した蒼月。何よりも大きな要因の1つが〈魔法〉という言葉。

 

前の世界。つまり、現代の日本ならば

ファンタジーで片付けてしまう言葉を度々耳にし、更には目の前で掌から火を出したりしている所を見て疑いが確信へと変わり、異世界に転生したのだと理解した。

 

母親、リリー・ヴァリエンテ

明るい茶髪でおさげ。おっとりとした性格。家の事をしながら畑仕事なども少しばかり手伝っている。

 

「ヴェスタリア、こっちよ」

 

「あぅあ!」

 

青華蒼月。改めヴェスタリア。

〈ヴェスタリア・ヴァリエンテ〉それが今世での蒼月の新しい名前。

 

裕福でもなく、貧乏でもない

平凡な村の平均的な家族のもとに生まれて不便なく暮らしていた。

海外風な名前に中々慣れずにいたのだが、1年も過ごし呼ばれ続ければ誰でも慣れるのかヴェスタリアも慣れている。

 

(ムズイな......!)

 

今、何をしているかというと

歩く練習だ。1歳となり立つ事も出来る様になり、少しならば歩く事も可能になったヴェスタリア。歩行距離を少しでも伸ばすべく、練習中...。

 

父親、イーサン・ヴァリエンテ

金髪を短く切り揃え、筋肉質で豪快な父親。畑仕事をメインに狩りをしたりしている。

 

「良いぞ!パパの方においで!」

 

「ママの方においで!」

 

(どっち、行けば良いんや...!?)

 

ヴェスタリアが歩ける様になってからというモノ両親は毎日のように歩く練習に付き添い「こっちへおいで」と

ヴェスタリアを困らせていた。

困らせると言っても、ヴェスタリアは本当に困っている訳ではない。

 

どちらかと言うと嬉しい気持ちが強かった。何故なら、ヴェスタリアの前世

つまり蒼月の時は幼い頃に両親を事故で亡くしていた。なので、祖父母と暮らしていたのだが今の両親からの愛情が嬉しいのである。

 

このようにして両親からの愛情を感じながらすくすくと平凡な村で過ごし、友人も少しながらもでき、ヴェスタリアが12歳の時のこと。

この世界では12歳になると、一度教会にて『加護』を持っているかどうかを調べてもらう。ヴェスタリアも例外なく教会に行く身支度をしていた。

 

「ヴェスティ、準備出来た?」

 

「うん。出来てるよ、母さん」

 

ヴェスティとはヴェスタリアの愛称。

家族と仲の良い友人には、そう呼ばれている。そんなヴェスタリアは仲の良い友人や家族と共に教会にやって来た。

 

「......では、次に...ヴェスタリア・ヴァリエンテ。前へ」

 

「はい」

 

「頑張って...ヴェスティ...!」

 

「何を頑張るの...」

 

順々に呼ばれ、遂にヴェスタリアの番になり、リリーからの謎の声援に苦笑いしながらも少し緊張しながら前へ出る。

加護次第でこれからの生き方が決まるからこそ、誰でも緊張しながら加護の発表を待つ。

 

今まで数多の加護を見て来ている筈の神父が目を見開き、額から一粒の汗を流す。

神父の表情から読み取れるのは

驚愕、困惑、動揺。そう言った類の感情。

誰もがどうしたんだとざわめき出す。

 

「......こ、これは...!?」

 

あまりの動揺具合に他の神父も結果を見に行く。そうすると他の神父たちもざわめき、動揺を見せる。

何か良くない加護でも出たのかと、戦々恐々としているヴェスタリアとリリー。

 

「...なんとも...この教会から.......」

 

「あ、あの...ヴェスタリアは、その...良くない加護...だったのでしょうか?」

 

教えてもくれず、挙げ句の果てに神父全員がざわざわとしている。その為、リリーは我慢出来ずに神父に声を掛ける。

いつもの神父ならば、穏やかな笑みを浮かべ優しく物事を教えてくれる筈がコチラを一瞬だけ見た後、神父同士でまた話しだす。あまり緊張していなかったが流石にただ事ではないと思い、ヴェスタリアにも緊張が走る。

 

体感にして、5分。もしかしたらもっと経っていたかもしれないが、それ位経った時に神父がヴェスタリアとリリーの元へ近付いてくる。

 

「...すまない、心配した事だろう。悪い事ではない、むしろ良い事...だな」

 

何処か歯切れの悪い神父。

その事にまだモヤモヤとしていると、即座に神父が口を開く。

 

「...彼は、ヴェスタリア・ヴァリエンテ君は...加護も素晴らしいモノを”複数”持っているだけでなく『勇者の権能』を持っている」

 

「『勇者の権能』......っ...!」

 

その言葉を聞いたリリーは額に汗を流し、目を見開く。

そんな訳がない。ありえない。そのような感情が聞こえてくる様な表情で口元を手で抑える。

 

「『勇者の権能』って、なんですか!?」

 

大人たちの反応を含め、何も教えてもらえていない子どもたちの内の1人でヴェスタリアの友人が声を上げる。

その声にどうするか悩む神父たち。けれど、いつまでもこのままではダメだと考え説明を始める。

 

「『勇者の権能』とは......その名の通り、今代の勇者に現れる”権能”......権能とは加護を内包しているが全くの別物......うぅむ、説明が難しいが......一言で言うならば......”人を超越した能力”と、言った所ですかな」

 

「すっげぇ〜〜!!」

 

目をキラキラと輝かせて、ヴェスタリアに尊敬の目線を向ける子どもたち。

そんな中、『勇者の権能』についての説明を聞いたヴェスタリアは戸惑っていた。

 

自分にその様な素質があったのか。

自分がそんな大それた器なのか。

 

嬉しさよりも困惑や、謙遜の様な気持ちが強く出ていた。

ヴェスタリアにとっての『勇者』とは自己犠牲を顧みず全ての人々を助けて導く存在。その様な人物ではないと思っていた。

 

その心を読んだかの様に、神父は語り出す。

 

「『勇者の権能』、聞こえ方は『勇者』その者の様に聞こえるが、その実『勇者候補』なのです。......実際、『勇者の権能』を持っている者は既に”数人”確認されています。......まぁ、勇者の候補の1人には変わりはないですがね」

 

微笑みをたたえ、ヴェスタリアを含めたその場にいる者に説明をする。

それを聞いたヴェスタリアは安堵する。自分が勇者なのであれば無理をしてでも勇者として役割を果たすべきなのか、と考えていた。

 

だが、その様な考えを晴らす様に

他にも勇者としての資格を持つ者がいるのならば、自分が無理をしなくても良いんだと言う安堵。

しかし、リリーは息子の気持ちに気付いているのかいないのか、目をキラキラさせながら話し出す。

 

「ヴェスティ...まさか私の子が勇者の権能を持つ事になるなんて想像もしていなかったけど......明日から、家庭教師を雇って頑張らなくちゃね!」

 

「か、母さん!?何言ってんの!そんな 事が出来るくらいの余裕、家にないでしょ!?」

 

「大丈夫よ。勇者を鍛える為の資金は国から出るから」

 

(ま、マジかよ......)

 

かくして、ヴェスタリア・ヴァリエンテは運命に導かれる様に

 

勇者としての道を歩み出すのであるーー。

 




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