勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第二十八話 「予選Dグループ」

 

「さぁさぁさぁ!予選も大詰め!!残すは最後のグループだ!」

 

エミリーの声が会場内に響き渡る。

予選の試合と言えど、かなりの盛り上がりを見せていた。

 

選手を煽りつつも進行をしているエミリー。しかし、顔は赤くなっており予選だけで興奮しているのが伝わってくる。

観客たちも、その司会のエミリーに当てられより一層興奮している。

 

そんな、まだ予選にも関わらず

最高潮の盛り上がりを見せる武闘大会の最後のグループの選手たちが演舞場に入ってくる。

 

「やっと、アルディの番だな。頑張ってこいよ」

 

「あぁ、ド派手な魔法を見せてやるさ」

 

自信満々に演舞場に入っていくアルディーナ。彼の自信に満ち溢れた表情や立ち振る舞いは流石の魔王と言った様子。

ヴェスタリアも、そんなアルディーナに感心していた。

 

「選手たちが入って来たぞぉぉ!!」

 

エミリーが、選手の入場を言った瞬間、爆発的に歓声が上がる。最後の予選と言うことと、今までの予選もかなりの盛り上がりを見せたからこそ、期待値が高まっていた。

 

「さぁさぁ!最後の予選グループの選手たちは何を見せてくれるのか!?期待が止まらないぞ!!」

 

Dグループの予選が開始されたと同時に、やはり今までのように様々な魔法を繰り出す選手たち。しかし、その中で一人だけ空高く跳び上がった選手がいた。

 

空に跳び上がった者は、フードを深く被っており背丈が高いこと以外には性別も年齢も何も分からない状態である。

 

そんな、謎の人物が右拳を握り、腕を曲げて引き絞り地面へと振り抜く。

地面を空高い場所から殴ったのである。しかし、地面からかなり離れた場所からのパンチ。

 

観客たちは、笑いだす。

 

「おいおい!!パンチってのは誰かを殴るんだぜ!?」

「そんなとこでやっても意味ねぇぞ!!」

「ここは予選だぞ!練習する場所じゃねぇぞ!」

 

と、様々なことをフードの人物に叫ぶ。

しかし、観客内を含め上空から風が吹き始める。その風が強くなったかと思うと

 

ピシピシ、と音が鳴った後、地面に拳の形の罅ができ、その一瞬後にドンッ!、と言う音と物凄い衝撃が会場に響く。

 

そんなことが起きた時、静寂が起きる。

 

「な、な、な、なんとぉ〜!!??意味のない行動に見えたが、圧倒的なパワー!!!!ヤー!すごい!スゴすぎる威力のパンチだぁ!!」

 

しかし、一瞬で歓声が響き渡る。

観客からの歓声も、先の罵声を謝る声も飛び交っていた。しかし、その声もまた静かになりだす。

 

「...おいおい、なんだあの魔力密度...アルディは会場を吹き飛ばす気か...?」

 

そう、アルディーナである。アルディーナは演舞場内の端に立ち、両腕を曲げて腹と胸の間辺りで手を迎え合わせにし、手のひらの間には空間を作っていた。

 

その手の中の空間には、黒く霧のような魔力の塊が凝縮されており何が飛び出すのか分からずにいる。そのため、選手も観客も冷や汗を流していたり逃げ出そうとする者もいた。

 

「...こんなものだな」

 

アルディーナが呟いた後、姿勢は変えずに、両の手を水を掬うような形にして魔力の塊を空へと飛ばす。

 

空へと飛び上がった魔力は、霧のようにどんどんと空へと溶けて消えていく。何も起こらずに、拍子抜けしアルディーナに対して観客たちは罵声を飛ばそうとした瞬間

 

空には、雷の龍が現れる。

雷の龍は、演舞場の上辺りを飛び続け、たまに演舞場内に雷を落としている。

雷を落としている中で、雨が降り出し雷の勢いが増していた。

 

雷に当たりたくない、と逃げ回ったり控え室に逃げ込もうとする選手たち。

殆どの選手はアルディーナを畏怖の目で見ている。しかし、フードの人物だけは動かずにアルディーナを見つめ続けていた。

 

「すごい...スゴすぎる!!雷のドラゴンが現れたぁぁ!!それに、雨も降り出した!!!??これは、銀髪ロン毛の契約獣なのか魔法なのか、天候を操っているのか...!!!一体なんなんだぁぁ!!?この男は何者なんだ!?」

 

銀髪ロン毛。アルディーナのことである。アルディーナはその渾名を聞き苦笑いしつつ、観客たちに手を振っていた。

 

観客たちは雷の龍の被害に遭っていないため、アルディーナをただただスゴイ人としか思っていない。そのため、アルディーナの容姿の良さも合わさり、黄色い歓声が聞こえてくる。

 

そんな、アルディーナに近付くフードの男。誰から見てもDグループの予選突破者はこの二人である。一体、何が起きるのかと固唾を飲み見ていると、フードの人物がフードを外す。

 

皆が、身を乗り出すように見ていると、フードの中から現れた姿。それは、人ではなく〈獣人〉であった。しかし、耳が犬のような形なだけでそれ以外は人の見た目。

 

それはつまり、半獣人の証拠である。

アルディーナは目を見開き、ヴェスタリアも驚いていた。

アルディーナが動く前に、観客席から声が響いてくる。

 

「人間モドギが何やってんだ!」

「人のなり損ないが来る所じゃねぇぞ!」

「イヤァァァ!!獣人よ!」

「臭いんだよ!!」

「食べられるわ!」

「とっとと帰れ!」

「近寄らないでッ!」

 

帰れコールが始まる始末。アルディーナは眉を下げ、半獣人を見るが半獣人は俯き表情は見えない状態であった。次の瞬間

 

「うるさぁぁぁぁい!!この大会は、種族も何も関係ない!とにかく派手なことをしたら良い!!本戦では、予選を突破した人同士が戦う!!それだけ!!!文句があるなら、客が帰れッッ!!」

 

エミリーの怒声が響き渡った。半獣人の者は驚きエミリーの方を見る。しかし、エミリーは観客たちを威嚇するように睨んでおり、半獣人の目線には気付いていなかった。

 

「...こうなるのは分かっていただろうに、なぜ素顔を晒した?」

 

「......すまん、迷惑を掛けるつもりじゃ...」

 

「気にするな。それで、私は理由を聞いたのだが?」

 

「あ、あぁ...オレはゼファ。アンタみたいな強者には挨拶をしたくてな」

 

「そうか、これからよろしくな」

 

そう言い、アルディーナはゼファの手を取り握手をする。ゼファは握手したことを驚きアルディーナの目を見る。

 

「アンタは、偏見とかないんだな」

 

「ないさ。私も人間ではないからな」

 

「は...?...ふっ、冗談がうまいな」

 

ゼファは、アルディーナの言葉を笑い背を向け帰っていく。そんな、ゼファの背中を見ながらアルディーナは声を掛ける。

 

「私はアルディだ。お前とは、また会うだろうな」

 

「...だったら、オレは嬉しいぜ」

 

ゼファは、口を数回開閉した後、微笑みながらアルディーナに言葉を返していた。

その言葉を貰ったアルディーナも控え室に帰って行く。

控え室にて、ヴェスタリアの元へと行く

 

「中々に、決まったのではないか?」

 

「やりすぎな気もするけど...丸焦げになった人とかいないよな?」

 

「...多分な」

 

「不安すぎる...っていうか、雨もアルディが?」

 

「いや、あれは自然現象だな。運がいい」

 

アルディーナの言葉を聞きズッコケそうになったヴェスタリア。

 

そんな、ほのぼのとした二人だが

予選は終わり、次は本戦。本戦ではどんなことが繰り広げられるのか、またヴェスタリアとアルディーナの二人はどんなことをするのか。

 

そんな二人を眺めていたゼファ、彼は拳を握り決意を目に宿し、闘志を燃やしていたーー。

 

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