勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第二十九話 「本戦開始直前」

 

「予選も終わって残すは、みんなお待ちかねの!本戦だァァァァ!!!」

 

エミリーの声に応えるように、空気が揺れるような雄叫びが聞こえてくる。その雄叫びを受けたエミリーは様々なポージングをしていた。

 

「エミリーちゃぁん!可愛いぞー!」

「本戦が楽しみなだけだぞ!!?」

「エミリーちゃんに何言ってんだ!?」

「謝れよ!...謝れよっ!!」

「なんで二回言ったんだ!?」

 

色々な声が聞こえてくるが、半分以上の声がエミリーを褒めていた。そんな中で、エミリーの横に真っ赤な髪に褐色の肌をした犬耳のようなものが見える半獣人の女性が現れる。

 

現れたときに、会場内の先ほどまでの熱狂的な声が嘘のように静まり返る。エミリーは、そんな会場に対して文句を言おうとした瞬間に会場中から声が響く。

 

「うぉぉーー!!!”メルル団長”!!」

「メルルさんだ!」

「様ダロォ!?」

「メルルさま〜!!」

 

半獣人のはずの人物が受け入れられているだけに留まらず、好意的な声が広がっていた。その声に、エミリーが困惑するが先にメルルが話しだす。

 

「...初めましての方もいるだろう。王国騎士団団長のメルルだ、今大会の本戦解説を頼まれた。不慣れなところもあるが大目に見てくれ」

 

その言葉に、またしても雄叫びが聞こえてくる。

 

「メルルさ〜ん!!解説、よろしくお願いします!」

 

「あぁ、精一杯頑張らせてもらう」

 

「か、固い...さ、さぁさぁ!!団長も来てくれたところで!一旦、休憩〜!」

 

エミリーの言葉に、観客たちはズッコケそうになっていたがエミリーは気にせずメルルと話していた。

 

休憩となり、皆が好きなことをやりだす中でヴェスタリアは汗を大量にかき挙動不審になっていた。

 

「おい、ヴェスティどうした?」

 

「ど、ど、ど、どうしよう!?あの解説席に来た人...!」

 

「あぁ...王国騎士団団長と言っていたな、メルルだったか?」

 

「僕の師匠なんだよ...!」

 

「なにぃ!?」

 

ヴェスタリアの言葉を聞いたアルディーナは慌てたように解説席を覗き込む。メルルはキョロキョロと周りを見ており、何かを探しているようであった。

 

「メルルさん?何か、探してるんですか?」

 

「いや、予選に見知った人がいた気がしたのだが...気のせいだったかな」

 

エミリーの質問に答えたメルル、二人の声は拡声魔法により会場に響いていた。響いてきた声にヴェスタリアはゆっくりとアルディーナを見て、顔を真っ青にしていた。

 

「絶対に僕のことだよね...」

 

「うぅむ、そうだとは思うが...違う可能性もあるからなぁ...」

 

「ぬぉ〜!!」

 

アルディーナの煮え切らない言葉に、唸り声を出しながら頭を抱えるヴェスタリア。アルディーナは腕を組み、考えていた。

 

「ヴェスティよ、試合外では認識阻害のマントを被れば良いのではないか?」

 

「それで大丈夫かなぁ...」

 

心配そうなヴェスティの肩に手を置き爽やかな笑顔で「知らん」と応えるアルディーナ。

 

「知らんのかい!」

 

案外平気そうなヴェスタリアであった。

 

「休憩も終わりますよ〜!さてさて、今からは本戦!!このバトロイドの名物でもある一対一の戦い!戦う順番は予選と同じくAグループから!」

 

「一対一だと...実力、相性、地形、運...様々な要因が絡むからな、目が離せない戦いになるだろう」

 

「そうです!メルルさんの言う通り!!では、最初の戦いはAグループを突破したエレナ・カワードとヴェスティだぁ!」

 

「ヴェスティ...?」

 

「ん?どうしました?」

 

「いや、気のせいだろう、気にしないでくれ」

 

メルルの言葉に不思議そうに首を傾げるエミリーだが、本戦を始めるために司会を続ける。

 

「なんだか気になるけど...そんなことよりも!!本戦開始だぁぁぁ!!!!」

 

エミリーの言葉に、またしても雄叫びが聞こえてくる。

 

「ど、どうしたら良い!?アルディ!」

 

「腹を括るんだな。認識阻害のマントもある」

 

「ぐぬぉ〜...」

 

ヴェスタリアとアルディーナが話しているところにエレナ・カワードがやってくる。

 

「私と戦うのは、君だよね!私のゴブちゃんは強いから、怪我しないようにね!」

 

一方的に言うと、そのままエレナは演舞場に向かっていく。ポカン、と呆気に取られたヴェスタリアだが、そのヴェスタリアの背中を押すアルディーナ。

 

「行ってこい、後のことをうだうだ考えていても仕方ないだろう」

 

胸を張り、堂々と入場するエレナとは反対に頭を抱えたまま、重い足取りで入場するヴェスタリア。

 

二人が入場した瞬間、歓声が響き渡る。

 

「...あれは...」

 

メルルがヴェスタリアをじっと見ていたが、それを遮るようにエミリーが声を張り上げる。

 

「さぁ!第一試合開始だぁぁぁ!!!」

 

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