勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第三十一話 「グレース・ドレイク・ウォーカーvsアムス・ウォード・ハルター」

 

怒り心頭といった様子のメルル。肩で息をしながら、辺りを睨み続けている。

 

「あ、あの~…め、メルルさん…?」

 

「…なんだ?」

 

「な、なんでもありません!!!すいませんッッ!!第二試合スタートです!!」

 

メルルの眼光に震え上がり、なにも言えなくなったエミリー。膝をガタガタと貧乏ゆすりをし、体全体で怒りを表しているメルルの横でエミリーはプルプルと震え涙目になっていた。

 

「あ、あらためまして…第二試合のクソ…おっほん!貴族同士の戦いです!グレース・ドレイク・ウォーカー対アムス・ウォード・ハルター!!憎たらしい貴族同士の戦いだぁ!!」

 

最初は、涙目で震えていた声も貴族を貶し始めた辺りから安定したいつものエミリーになっていた。話し始めのときに、エミリーファンの男の観客たちは心配そうにしていたが、いつものエミリー節が出たときに「うおぉぉぉ!!」と雄叫びを上げ笑っていた。

 

「…やっぱり、お前か」

 

演舞場の真ん中で、一定の距離をとっている。対峙している二人、アムスが先に声をかける。アムスに声をかけられたグレースは、腕組みして目を閉じていた。閉じていた目を開きアムスを見るグレース。

 

「…むしろ、お前と私以外に腕のたつ者がいないじゃないか」

 

「それもそうか」

 

グレースの言葉にニヤリとするアムス。

 

「おぉっと!余裕な態度を見せている!!」

 

「…それだけ、自分の腕に自信があるんだろう」

 

「あ、元に戻った」

 

メルルとエミリーの言葉がきっかけになったのか、グレースとアムスが同時に飛び出す。二人が立っていた場所は、砂埃が舞い上がりグレースとアムスの姿は観客たちの目には消えたように見えた。

 

そして、観客に見えたときには演舞場のど真ん中で、二人の剣がぶつかり合っていた。

 

「速さは互角か」

 

「…癪だがな」

 

いがみ合うグレースとアムス。観客には剣でぶつかった後すぐに離れたように見えていた。

 

「な、な、なんという速さだぁぁ!!観客のみんなは見えたかぁぁ!!?クソとか言って悪かったなぁ!!」

 

「…貴族にしては、中々の速さだな」

 

「おぉ!!王国騎士団長からもそれなりの評価だぞ!!」

 

「…グレースの上段からの剣を、アムスは剣を横にして受け止め、受け止めた直後にグレースの腹に蹴りを入れようとしたアムスだが、その蹴りをグレースは咄嗟に左手で受け止めたんだ。…片足を掴まれたアムスと、咄嗟に剣を離したため軸がズレたグレース、二人ともバランスが崩れたために一旦距離をとったんだろうな」

 

「おぉ…そんなやり取りが…っていうか、そんなに分かるならさっきの試合ももっと解説してくださいよ!!」

 

「…先ほど、醜態を晒してしまったからな。名誉挽回だ」

 

「もう、遅いと思いますけど?」

 

「え…?」

 

「さぁさぁ!次はどう出るんだ貴族の二人!!」

 

「お、遅いのか…?」

 

不安そうなメルルを置いて試合は進んでいく。肉弾戦で戦っていたグレースとアムス、二人は魔力を練り上げ魔法を発動させる。グレースの周りには、火の玉が浮かび上がり漂っている。

 

メラメラと燃え上がった、火の玉が五つ。その火の玉の一つに剣を突っ込む。すると、火の玉が剣に纏わりつき火剣となる。火の玉は四つになったが、その四つがグレースの周りをグルグルと回っている。

 

「私の火炎を止められるかな?」

 

「…完璧に止めて見せるさ」

 

完璧に止めると言ったアムスは、無属性の魔力の塊を作り出す。グレースの火の玉がアムスに向かって飛んでいく。予選の時と同じように、アムスは魔力弾を放つ。火の玉と同等の魔力が込められた魔力弾で正確に相殺した。

 

「きたきたきたぁぁ!!予選のときのような、派手な魔法とっ地味な魔法だ!!」

 

「…確かに、見た目は地味だが技術力はとんでもないな」

 

「あの魔法はそんなに凄いんですか?」

 

「あぁ、グレースの魔法は確かに派手な上に魔力量も相当なものだ。しかし、アムスの魔法はグレースの魔法に込められた魔力量と同等の魔力量を込めたもので相殺している。それは、かなりの技術がないとなしえないことだな」

 

「急に饒舌ですね!」

 

「え…?」

 

「おっとぉ!?正確無比に叩き落していたのに火の玉が直撃したぞ!?決着がついたか!?」

 

グレースの火の玉がアムスの顔面に直撃した。アムスの顔の周りに煙が、発生したため顔がどうなったか分からない。

 

「イケメン顔なんて消し呼ばせ!」

「アムス様ぁぁ!!?」

「いいぞぉぉ!!!」

「いやぁぁぁッッ!!」

 

「女たちの悲鳴と、男たちの妬みが飛び交ってるぞ!!」

 

煙が晴れ、顔が現れるとアムスは無傷であった。苦虫を嚙み潰したような顔になるグレース。

 

「…直前に魔力壁を作り、防いだか」

 

防がれたからといってすぐには諦めずに、火の玉を無数にアムスに叩き込む。しかし、アムスはすべてを完璧に防ぐ。

 

「次は、こっちからだ…!」

 

アムスは防戦一方だったが、攻撃に転じる。綺麗な丸の魔力弾を十個作り出す。アムスの周りにある十個の魔力弾が不規則に動きながらグレースに襲い掛かる。

 

「くっ…!」

 

アムスの魔力弾を剣で弾いていたグレースだが、捌ききれなくなり何発か当たりだす。痛みに耐えながら反撃のチャンスを伺っていたが当たった魔力弾は消えず、十個の魔力弾はグレースを襲い続ける。

 

「これ以上は…!」

 

グレースが弱音を吐いたとき、十個の魔力弾が少し離れたグレースの周りを囲むように浮遊し一気にグレースに突撃する。その魔力弾をグレースは回転しながら剣で弾き飛ばす。

 

「周りをよく見るんだな」

 

「はぁ…はぁ…なにを…!?」

 

グレースの真上から十一個目の魔力弾が飛び込み、グレースに直撃する。

 

「今度こそ決まったかぁ!?」

 

「あの攻撃は、防げていなかっただろうな」

 

「ということは…!?」

 

砂埃が晴れたときには、膝をつき肩で息をするグレースがいた。その光景は、勝者を決めるには充分であった。観客たちの声も響く。

 

「勝者は、アムス・ウォード・ハルターだぁぁぁぁ!!!」

 

エミリーの声に反応し起き上がろうとするグレースだが、喉元に剣を突きつけ、完全に勝負を決めるアムス。

 

「お前は、無駄が多いんだよ」

 

「…うるさい、私に指図するな」

 

最後も言い合いをやめる気のない二人であった。

 

「では、第三試合までお待ちを〜!!…メルルさんはどこにも行ったらダメですよ?」

 

「……」

 

威厳があったのに、今では犬耳がヘタレ落ち込んだ様子が見えるメルルであった。

 

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