勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第三十二話「カガミvsグスチン・ポレナーレ」

 

「いつまでも落ち込んでいないで、次の試合ですよ!」

 

エミリーからの言葉に驚きながらも、俯いていた顔を上げ背筋を伸ばし、姿勢を正すメルル。普段は威厳もあり尊敬されているが、今は威厳がなく騎士団団長には見えない。

 

「お、落ち込んでなど…!」

 

「さぁさぁ!…私、さぁさぁって何回言ってます?…そんなことよりも!第三試合ですよ!」

 

メルルの言葉を遮り、声を張り上げるエミリー。その態度に少しだけ悲しみながらも仕事だと気持ちを切り替えるメルル。

 

「今から、Cグループを勝ち抜いた者が戦うのだが…」

 

「そうですね、Cグループは…ぷぷぷ、ハゲと下品な名前の人ですよね!」

 

「あぁ…あの者たちだな。…言い方は、考えるべきだぞ」

 

「…メルルさんも、すぐに分かってるじゃないですか」

 

「…おほん!では、登場していただこう」

 

「私のセリフ!」

 

エミリーとメルルが言い争っていたが、エミリーからの鋭いツッコミを誤魔化すように選手を呼び込むメルル。

 

本来はエミリーが選手を呼び込む筈だったのに、メルルが選手を呼び込む。そのことに、少し頬を膨らませ、不貞腐れるエミリー。

 

「…ちっ」

 

「そう怒るでない」

 

怒っているグスチンを宥めながら登場するカガミと、名前を馬鹿にされ慣れているとはいえ、ムカつき舌打ちをしながら演舞場に入るグスチン・ポレナーレ。

 

二人が演舞場に立ち、向かい合う。

 

「落ち着いたかな」

 

「オレは最初っから落ち着いてる」

 

「そうか、では始めるとするか」

 

少し話してから、構えをとる二人。

 

両手を顔の位置に持っていき、何かを持っているように少しだけ空間を開けている構えをとるカガミ。

 

腰を少し落とし、両腕を少し後ろに引いた構えのグスチン・ポレナーレ。

 

 

 

「では、参る!!」

 

カガミが一言言ったと同時に、両手を合わせる。両手を合わせたときに音が鳴る。その時、首に掛けてある顔の大きさもある大きい数珠が弾け飛び、演舞場内を縦横無尽に飛びまわる。

 

「ハゲの首に掛けてある玉が、弾けたぞ!」

 

エミリーが興奮したように、話し出す。

 

「ハゲが増えたように見えるぞぉ!?」

 

「あの玉は、火ノ国にある数珠というものだな」

 

「じゅじゅ…ずじゅ…言いにくい!!とにかく、赤玉を操るハゲにどう立ち向かうんだ!」

 

エミリーの実況など聞こえていないかのように、グスチンは魔力を練り上げ、グスチンから魔力が溢れだしていき、グスチンの背後に人の形をした魔力の塊が形成される。

 

「なんとも、奇怪な術よの」

 

「オレのオヤジが言っていたぜ、この術は漢のロマンだってなッ!!」

 

グスチンは獰猛な笑みを浮かべ、魔力の巨人を操り、飛び回っている数珠を巨人の右腕で殴る。

 

「こんなので倒せると思っているのか!?」

 

「気付いていないのか?」

 

「あぁ!?…ッ!?」

 

グスチンは怒りの声を上げたが、すぐに驚愕の顔に変わる。

 

「き、巨人の右腕が消し飛んでいる!!??一体、何が起きたんだ!?」

 

「…あの数珠から、特殊な魔力を感じるな」

 

「なるほど…だから、触れただけで消えたと…」

 

メルルの解説に、客席からは「魔法使いの天敵じゃないか…」などの動揺の声が聞こえてくる。

 

「その通り、タネが分かってもどうにもできぬぞ」

 

「ッ…だったら、本体を狙うまでだッ!!」

 

戦いが始まってから、二人とも一歩も動いていなかったが、グスチンが先にカガミに向かって駆け出す。

 

駆け出したグスチンは、カガミが射程距離に入った瞬間に左腕を後ろに振り上げ、殴る構えをとる。

 

すると、魔力の巨人も同じ構えをとる。そして、カガミを殴りつける。

 

「おぉ!あんな、デカいのに殴られればひとたまりもない!!ハゲの負けかぁ!?」

 

「…いや」

 

興奮状態のエミリーとは対照的に冷静な態度のメルルは、カガミの負けを否定する。

 

殴った巨人の左腕をよく見ると、削られている。

 

「直前に、その玉を目の前に移動させたのか」

 

「少し、違うな。私の周りに常に二つの数珠がある」

 

「…へっ、なるほどな。だから、突破方法がないってか?」

 

「その通り」

 

冷や汗を流し、カガミを睨み続けているグスチン。しかし、その目には諦めがない。

 

「仕方ねぇか…」

 

「む?」

 

「できれば、使いたくなかったんだけどよ!」

 

グスチンが、使いたくなかったと言いながらカガミに突進し、巨人でラッシュをする。

 

「む、なぜ腕が…」

 

「単純だぜッ!削れた分の魔力を、補充しただけだ!!」

 

「なるほど…!」

 

グスチンの単純な作戦に呆れと、笑みが浮かぶカガミ。

 

「こ、これは!漢の殴り合いか!?…ハゲは防戦だけで、下品名だけが殴ってるだけだけど…」

 

「しかし、これが使いたくなかった作戦なのか…?」

 

メルルが疑問を呟いた瞬間、グスチンの背後の巨人とは別に、さらに巨大な魔力の腕が空から現れる。 空から現れた腕はカガミに向かって殴りつけるように落ちてくる。

 

「ぐっ!?」

 

「奇襲ってのは、嫌いなんだけどよ。アンタに勝つにはこうするしか…!」

 

悔しそうな顔をするグスチン。カガミは殴られ地面に叩きつけられている。

 

「こ、今度こそ…勝敗がついた…のか…?」

 

エミリーが戸惑いながら、声を発するがカガミはゆっくりと立ち上がる。

 

「お、おいおい…マジかよ…」

 

グスチンが引きつった顔でカガミを見る。

 

「…この、数珠の真価を見せよう!」

 

そういうと、数珠がグスチンの周りをぐるりと囲むように浮遊する。

 

「なんだ…!?」

 

「破ぁぁ!!」

 

カガミが、右腕を前に出し発声したときに数珠から火球や光線、雷撃などの様座な魔法が飛び出す。その魔法は、予選の時に見た魔法に酷似していた。

 

「私の数珠は、魔法を消しているのではない。閉じ込め、好きな時に解き放っているのだ」

 

「ぐあぁぁ!!」

 

瞬時に巨人の腕で自身を守ったが、その腕も数珠によって消され、全ての魔法がグスチンに直撃する。

 

魔法の雨が止んだとき、グスチンは膝から崩れ落ちる。

 

「…すごい、すごいぞ!ハゲに下品名!…いや、カガミにグスチン!」

 

「うむ、良い試合だったな」

 

エミリーとメルルからの賞賛を皮切りに、様々な歓声が鳴り響く。

 

「まっことに、強いの。グスチン」

 

「…アンタには、負けるよ」

 

二人の会話の後も、二人への歓声は止まらなかった。

 

「第三試合勝者、カガミぃぃ~!!」

 

雄叫びを背に浴びながら、帰っていく二人。

 

「…ちょっと用事が…」

 

「メルルさんはここから動かないでくださいねっ!」

 

「ふぐぅ…」

 

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