勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第三十三話「ゼファvsアルディ」

 

エミリーに釘を刺されまくっているメルル。背を伸ばし、今は大人しくしているメルル。

 

「今からは、第四試合!!Dグループの試合!グループ訳での試合はこれで最後!次からは、勝ち上がった者同士の戦いになる!」

 

「どんな試合になるか、見ものだな」

 

客席からは、少しの不満のような声が聞こえてきていた。

 

Dグループの突破者は、アルディとゼファ。

 

ゼファは獣人。メルルは受け入れられているが、それはメルルの立場込みでのこと。

 

 

ゼファや、獣人族そのものへの偏見は完全には消えていない。

しかし、不満の声が大きくならないのはメルルがいるからである。

 

そんな、客席の雰囲気を感じ取りながら、少し悲しそうにしながらも前を向き演舞場に入っていくゼファ。

 

それと対称的に、落ち着いた状態で余裕を感じさせながら入っていくアルディ。

 

「お!選手たちの入場だぁぁ!!」

 

「…ほう、半獣人…私と同じだな。対戦相手は…」

 

メルルはアルディを見たときに、全身の鳥肌が立ち、少しだけ震え恐怖を感じた。

 

それは、獣人の力量を測る能力が優れているのはもちろん。

メルルの、卓越した力量や観察眼。

 

そして、団長になるほどの経験があったからこそ、力をある程度隠しているアルディの本当の危険度を見抜いていた。

 

「な、なんなんだ…アイツは…」

 

アルディを見ながら呟くメルル。

 

「ん?…あー、アルディという方ですね!あの人、予選でも凄かったですよ!天候すら操って、雷のドラゴン出してましたね!」

 

「…え…?」

 

エミリーの言葉にメルルは目を見開き、冷や汗を流し恐怖した。そんな魔法を扱えるなど、人間ではない、と。

 

演舞場に現れた二人。正確に言うと、アルディを注視するメルル。注意深く見て、人類の敵なのかを見極めようとする。

 

そんなことを知らない、ゼファとアルディはお互いを見つめている。

 

「…来ないのか?ゼファ」

 

「…っ!!!」

 

相対しているアルディを見て震えているゼファ。ゼファの本能が「戦うな」と警報を鳴らしていた。

 

「なんなんだよ…っ!!」

 

「来ないのなら、こちらから行くぞ?」

 

ゆったりと歩き、ゼファに近づいていくアルディ。一歩ずつ近づくごとに、震えが大きくなるゼファ。

 

そして

 

「お、オレの負けで…っ」

 

「獣人族とは、こんなにも腑抜けなのだな」

 

降参、と言おうとするゼファの言葉を遮りゼファを煽るアルディ。

 

「…っ」

 

「ガッカリだ」

 

「オ、レは…っ!」

 

「全ての獣人がそうなのだろうな。あそこに座る、騎士団団長とやらも」

 

「…っクソがぁぁぁ!!」

 

アルディの煽りに、恐怖よりも怒りが上回り、アルディへと突っ込んでいくゼファ。

 

ゼファを見て、口角を上げるアルディ。

 

「いきなり、走り出したぞ!?いったいどうしたのだ!?」

 

「…悪手、としか言えないな」

 

エミリーたちには、アルディの煽りは聞こえていなかった。なので、ゼファがいきなり突っ込んだようにしか見えなかった。

 

「う、おおぉぉぉ!!」

 

雄叫びを上げながら、ゼファはアルディの腹を殴るがアルディは一切動じない。

 

一ミリも動かないアルディ。しかし、アルディの後ろはゼファの拳圧によって、地面は抉られる。

 

「な、なんという威力のパンチだぁ!?拳の風圧で、客はオールバックになっている!地面も抉れている!!けど!アルディには全く効いていないぞ!!?」

 

「あの威力の拳を…魔力の反応もなかったぞ…」

 

「なにぃぃ!?魔力で守った訳ではない!?なのに!なぜ!!平気なのだぁ!!??」

 

エミリーが興奮しながら話すが、メルルは冷静にアルディを見続けていた。

 

「では、こちらからいくぞ?」

 

一言、言ってからアルディは腰を落とし、ゼファのお腹に左の手のひらを当てる。

 

「耐えてみろ」

 

その一言の後、アルディは魔力を込めた手のひらをぐっと押し込む。魔力や魔法で強化していない肉眼では何をしたか見えない。

 

そのため、観客たちは困惑していた。

 

「な、なにしてるんだ…?」

「お、俺に分かる訳ないだろ!」

「腹、触るのが攻撃なのか…?」

「予選の魔法…?を使えば一瞬なのに…」

 

ゼファも戸惑っていたが、いきなり激痛がゼファを襲う。

 

「ぐ…ああぁぁ!!!」

 

アルディは、魔力を込めた手のひらで”強化された振動”を起こしていた。

 

その振動は体の奥深くまで届き、内臓や筋肉を容赦なく揺さぶった。

 

数十秒の間苦し気な声を上げていた。そして、痛みが引いたが立ち上がることができないゼファ。

 

「この戦い方が、お前の目指す道だ」

 

「う…ぐっ…オレの目指す道…っ?」

 

「あぁ。頑張れよ」

 

簡単な言葉を最後に、先に帰っていくアルディ。

 

「え、えぇっと…勝者、アルディィ!!」

 

ヌルっと終わったため、締まりが悪くエミリーは困った顔をしていた。

 

そんな横で、メルルはアルディから目を離さないようにしていた。

 

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