勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜   作:大乃正生

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第三十四話 「ヴェスティvsアムス・ウォード・ハルター」

 

「トーナメントも、折り返しを過ぎました!ここからは、一回戦を突破した者たちだ!!」

 

「全てではないが、手の内を晒しているからな。戦い方に注目だな」

 

「では!!ヴェスティvsアムス・ウォード・ハルター!!!」

 

「!!」

 

「…動かないでくださいね?」

 

「わ、分かっている…」

 

罰の悪そうな顔で、エミリーを横目で見るメルル。エミリーはメルルをジトっとした目で見ている。

 

メルルは言われた通り、動かずに待っていたのだが、ヴェスタリアが入ってきたときに、殺気とも闘気とも言えるオーラのようなものが、メルルから溢れ出る。

 

「うぉぉ…隣からの圧が凄いですが…第五試合の始まりです!!」

 

ヴェスタリアとアムスが演舞場に入ってくる。

 

実況席からの鋭い視線に冷や汗を流し、堅くなっているヴェスティ。

 

「…無理もない、棄権してもいいんだぞ?」

 

「え…?」

 

堅くなっているヴェスタリアに、自身と戦うのに怯え緊張していると勘違いしたアムスが見当違いの声を掛ける。

 

「いや、棄権しないさ」

 

「…そうか」

 

二人は目を見つめたまま動かない。アムスの頬に汗が伝い、地面に落ちたときアムスは一気に距離を詰める。

 

「一気に距離を詰めて剣の上段切りだぁ!しかし!!」

 

「表情すら変えず受け止めているな」

 

「私のセリフ!?」

 

エミリーとメルルの言葉通り、ヴェスタリアは表情すら変えていない。魔力を込めた手で上段からの剣を受け止め、アムスを見ていた。

 

剣の一撃を受け止めたヴェスタリアの足元には亀裂が走り、地面が数センチ陥没していた。

 

「くっ…!」

 

「かなり、重たい一撃だが……この程度か?」

 

「…っ!!」

 

ヴェスタリアの純粋な疑問。けれど、煽りにしか聞こえない言葉に苦虫を潰したような顔をする。

 

「だったら、これはどうだ!?」

 

両手を前に出すアムス。周りに無属性の魔力で出来た、魔法の剣を作り出し剣先をヴェスタリアに向けている。

 

「受け止めきれるかッ!?」

 

ヴェスタリアとの力の差に気付いたのか、グレースとの闘いの時のような冷静さが見えない。

 

「どうしたどうした!?貴族様の闘い方や、言葉使いが違うぞ!!」

 

「余裕がなくなっているな」

 

「なるほど…!ということは、ヴェスティの方が強い…?」

 

「それも、数段な」

 

「…なんだか、嬉しそうですね、メルルさん?」

 

「い、いや、そんなことはない」

 

実況席の言葉に、観客たちが笑ったりと反応しているが、一番反応しているのはアムスであった。

 

顔を怒りで真っ赤に染めている。

 

「ふざけるなよ…!!」

 

しかし、冷静さを欠き突っ込むなんてことはせず、ヴェスタリアを観察している。

 

「…来ないなら、こちらから行くぞ?」

 

一言言い、ヴェスタリアはアムスの方へ歩き出す。堂々とした歩みに、アムスは後退し警戒している。

 

ヴェスタリアは手を合わせる。合わせた後、ゆっくりと手を離すと手の間に火の玉が現れる。

 

その火の玉は、回転を始める。物凄い速さで回転している火の玉は速度を上限なく上げていき弾け飛ぶ。

 

「な、なんだぁ!?火の玉が弾け飛び、辺りに散り散りになったぞ!!魔法の不発か!?」

 

「…いや、散り散りになった火の玉をよく見ろ」

 

「?…!弾け飛んだ火が、火で出来た小さな鳥の形なっている!?火の鳥だ!」

 

「ふっ…あんな芸当が出来るようになったのか」

 

「やっぱり、ヴェスティ選手となにか…?」

 

「……」

 

下手くそな口笛を吹くメルル。

閑話休題

 

呑気な実況席と打って変わり、演舞場では

 

「くっ…!!」

 

「…受け止めきれるか?」

 

「!!…く、そぉ!!」

 

自身が言った言葉をそのまま返され、驚きと屈辱に顔を歪ませ悪態を吐くアムス。

 

しかし、手は止めずに火の鳥を剣で弾いていた。

 

 

「…中々、やるな」

 

「それは、どうも…ッ!」

 

「じゃあ、これならどうだ?」

 

右腕を前に出し、手のひらを上に向けると小さな火の鳥が集まりだす。

 

「な、なんなんだ…?」

 

アムスは汗だくになりながら、警戒していた。

 

「火の鳥が集まりだした…何が始まるのだ…?」

 

「…私にも、分からないな…」

 

その時、小鳥たちが渦を巻くように集まり、一つの巨大な炎の鳥へと姿を変える。

 

「ん…!?集まりだした火の鳥が…一体の大きな火の鳥に…!いや、炎の鳥になった!!?」

 

「…ここにいても、熱いな」

 

「こんなデカい鳥を受け止められるのか!?」

 

「汗が止まらないな…」

 

「…なんで急に褒めなくなるんですか?」

 

熱さばかりを言及し、魔法自体にはなにも言わないメルル。

 

「ふ、ぐぅぅ…!!」

 

演舞場では、実況席よりも近い、目の前に炎の鳥が現れたため汗が吹き出し、立っているのがやっとなアムス。

 

「…頑張ってみろよ」

 

アムスに向かって炎の鳥が飛んでいく。目を見開き、剣の腹で受け止める。しかし、受け止めた箇所が溶け始めていた。

 

「!?」

 

「もっと魔力を込めないと、その立派な剣が溶けてなくなるぞ?」

 

「く…っ」

 

魔力保護をしているが、ヴェスタリアの魔法が強すぎて守れないアムス。そして、とうとう耐えきれなくなり炎の鳥が直撃する。

 

「勝負ありぃぃ!!勝者、ヴェスティ!!!」

 

エミリーの声が響く。観客の歓声を聞きながらヴェスタリアはアムスの所まで歩く。

 

「…敗者を笑いに来たのか?」

 

「そんな訳ないだろ。お前の魔力操作はすごい。」

 

「ふ…嫌味にしか聞こえないな」

 

「…お前の魔力操作はすごい。だが、魔法と魔力についてもっと学べば、もっと強くなれる」

 

ヴェスタリアはアムスを立たせて、控室に戻っていく。

 

「…ヴェスタリアめ、師匠気取りか」

 

メルルの呟いた言葉は優しく、表情も微笑んでいた。

 

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