勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜   作:大乃正生

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第三十五話「カガミvsアルディ」

 

メルルは、次の試合がアルディーナだと分かると、前のめりになるようにして演舞場を見つめていた。

 

「お、メルルさんそんなに乗り出して…楽しみでした?」

 

「…あぁ…」

 

「?…メルルさんすらも注目の対戦!!これは、目が離せませんね!」

 

メルルの態度に疑問を持つが、気にしないようにして実況を始めるエミリー。

 

エミリーから話しかけられていたが、心ここに在らずといった様子。

 

メルルは演舞場を睨むように見続けていた。出てくる選手を、アルディーナを見極めるために待っていた。

 

ところ変わり控え室では。カガミがアルディーナを見つめていた。

 

「…」

 

「ん?…どうした?……確か、カガミと言ったな」

 

「…お主、邪の気配がしおる」

 

「…ほう?」

 

「気を悪くしたのなら悪かった。もし、困ったことがあった時、私で良ければ話を聞かせてもらおう」

 

「そうか、その時は頼む」

 

アルディーナは、カガミからの言葉に軽く返しながら演舞場に入る。

 

演舞場に入っていくアルディーナの背中をカガミは見つめたまま、後を追いカガミも演舞場に入っていく。

 

演舞場に現れたアルディーナとカガミ。メルルは目を細め、睨みつけるようにアルディーナを見ていた。

 

「…ふっ、モテる男とはツライものがあるな」

 

「何を言うておる」

 

「いや、気にするな」

 

メルルからの視線に気付いたアルディーナが冗談混じりに言うが、カガミは気付いていなかった。

 

「では、始めようか」

 

カガミはアルディーナの言葉を不思議に思いながらも、始める意思を見せ、構える。

 

両手を合わせ、アルディーナを見据える。

 

「あぁ、始めるか」

 

それに応えるように、アルディーナから闘気のようなオーラが溢れ出し、戦闘の意思を見せている。

 

「…やはり…」

 

アルディーナから溢れ出ている闘気の中に、邪悪なものを感じ、より一層警戒するメルル。

 

「アルディ選手にカガミ選手、互いにやる気に満ちている!!何もしていないのに、暑くなっている気がするぞ!!!」

 

エミリーは、カガミとアルディーナの闘気を雰囲気で感じ取っていた。

閑話休題

 

 

「いざ、参る!!」

 

カガミが右足を上げ、地面に右足を叩きつける。すると、地面が隆起し爆発が起こったように砂埃が舞う。

 

首に巻いてある数珠を宙に浮かせる。そして、砂埃を死角にして土の中や、空高くに数珠を隠す。

 

「ふむ、隠しているつもりか?」

 

「……ッ!?」

 

アルディーナからの、小さな一言。けれど、その一言は確実にカガミの動きを見抜いている発言であった。

 

カガミは一瞬動揺するが、揺さぶりのための嘘の可能性を考え、冷静に数珠を動かす。

 

空高く飛ばした数珠を、アルディーナの頭に一気に叩き込む。風圧により、より一層砂埃が舞い、観客は何も見えなくなる。

 

「おい!何も見えねぇぞ!」

「おっさん、いい加減にしろ!!」

「勝負ついたか??」

「なんとかしろよ運営!」

「もう観戦するってレベルじゃねぇぞ!!」

 

観客席からは野次が飛び続けている。

 

「見えない!見えないぞぉ!!これじゃあ、どうなったか分からない!!…しかぁし!どうせ、負けていないんだろう!?今までの試合もそうだったからな!砂埃の中の選手は無傷だったからな!」

 

「……」

 

エミリーの言葉に、観客たちは笑うがカガミは冷や汗を流していた。

 

今まで数珠を避ける者はいたが、アルディーナは動かなかった。つまりは、直撃したはずなのに手応えがなかった。

 

「ふむ、意外と硬いのだな」

 

数珠を持ち、感触を確かめるように触っているアルディーナ。カガミは、アルディーナに触られている数珠を動かそうとするが、動かせなかった。

 

数珠を素手で掴み、そのまま握り潰さんばかりの力で止めていた。

 

「…全く、化け物のような膂力だな……!」

 

カガミは、余裕が少しずつ減ってきているが、虚勢を張りアルディーナを睨みつけている。

 

「ふむ、返すぞ。坊主」

 

アルディーナは一言言うと、軽く返すように数珠を投げる。軽く投げたように見えるが、かなりの速球でカガミに迫る。

 

「ぬ……!?」

 

カガミは反応できていなかったが、自身の周りに浮かせていた数珠が即座動き、自動で防御する。

 

アルディーナが投げた珠は、カガミの顔面目掛けて飛んでいたが、自動で動いた珠と飛んできた珠が当たり、凄まじい衝撃音と共に、二つの珠は粉々に砕け散った。

 

「…やはり、ある程度の動きは覚えているのか。その珠は」

 

数珠の仕組みの一部を当てられてもカガミは焦ることもなく、バレることは想定済みであったように、構えを解かずにアルディーナを見据え続けているカガミ。

 

「その珠は、魔法を防いでいたな。ならば、これも防げるか?」

 

そう言うと、右手を顔の横辺りまで持ってきて、指を鳴らす。

 

指を鳴らした時、アルディーナの周りに雷が現れる。バリバリと音が鳴り、槍の形を形成している。

 

「その珠で、防いでみよ」

 

 

「雷の槍!!!予選では、雷の龍を作り上げたアルディ選手だが、今回は槍!!派手さでは負けるが、今回のは圧倒的な殺意を感じるぞ!!」

 

「……」

 

雷の槍を作り上げた時に、エミリーが前のめりになっていた。メルルは、雷の槍を見つめ、自分ならどう動くかを考えていた。

 

「かなりの速さで、雷の槍が突っ込んでいくぞ!!」

 

雷の槍は空気を裂きながら一直線に走っていく。 通過した地面は黒く焦げ、石畳は砕け散りながら、 雷の槍がカガミへと真っ直ぐ突っ込む。

 

カガミは、アルディーナの雷を数珠で受け止めるが、受け止めていた珠が弾け飛ぶ。

 

「!…耐えきれぬか……ッ!」

 

珠が弾け飛び、宙に飛んでいた他の珠はカガミを守るのに間に合わず、雷が直撃する。

 

「直撃だぁぁぁ!!!」

 

「勝負がついたな…」

 

倒れ伏すカガミに近付いていくアルディーナ。

 

「お主…人間か?」

 

「…なに?」

 

「私の数珠を破壊するなど……人間にできる芸当ではない」

 

「私は、人間さ…心はね」

 

「!……ふっ、そうか」

 

アルディーナが差し出した手をカガミが握り返し、二人は並んで控え室へ戻っていった 。

 

 

「アルディ……底が見えなかったな…」

 

「はい?…メルルさん、何か言いましたか?」

 

「いや、なんでもない。………二試合とも、一歩も動かないとはな」

 

メルルは、アルディーナを見つめ続けていた。

 

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