勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜   作:大乃正生

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第三十六話「ヴェスティvsアルディ」

 

「やってまいりました!!最終の!最後の!!試合!!!」

 

エミリーの言葉に、観客は盛り上がる。

 

「もう、終わりかよ!」

「もっと試合見たいぜ!」

「悲しいよ~!」

「最後まで見届けるぞ! 」

 

観客席からは、様々な声が聞こえてくる。

 

「最後の試合ということもあり、かなり盛り上がってますねぇ〜!!この雰囲気は好きだぞぉ~!」

 

エミリーの言葉に、ますます盛り上がる。そんな中、メルルは険しい顔をしていた。

 

自分の愛弟子と呼べるヴェスタリアが、邪悪で危険なオーラを放っているアルディーナと戦うこととなり心配していた。

 

あれほどに危険なオーラを放っている存在が、ここまで大人しかったのには何か裏があるのではないのか。

 

この演舞場で、最後に何か大きな魔法を放ち大多数の命を奪うのではないか。

 

優勝しうる存在、今回の大会ではヴェスティ。ヴェスティを殺すつもりなのか。

 

など、さまざまな考えが浮かんでは消えていくメルル。

 

「真剣な顔ですねぇ〜、メルルさん!やっぱり、最後の試合は注目している感じですか!?」

 

「…まぁ、ある意味では、な」

 

「?…メルルさんも、期待している試合!早速、入場してもらいましょう!!ヴェスティ選手に、アルディ選手、二人の入場だぁー!!」

 

エミリーの呼び込みに、観客たちは大盛り上がりする。 そんな中で二人は演舞場に姿を現した。

 

「…ヴェスタリア…大丈夫だろうな…?」

 

メルルの言葉は、ヴェスタリアには届かない。しかし、心配するだけ無駄である。

 

一方、師匠に心配されているなど微塵も思っていないヴェスタリアは、アルディーナと呑気に歩いていた。

 

「アルディ…本気でやるつもりはないよね?」

 

「あぁ、ないさ。しかし、手を抜きすぎてバレるのもいけないからな」

 

「…分かってるよ」

 

緊張など感じていないかのように、二人は演舞場の真ん中に向かう間、話していた。

 

「今回の大会で、特に目立っていた二人!やはり、この二人が決勝に残るのか!!ということで、最終試合、スタートぉ〜!!!」

 

エミリーのスタートという合図と共に、アルディーナが魔法を使う。自分の周りに、三十センチ程の火球、風球、雷球の三種類の魔法を生み出す。

 

三十センチほどの属性球から、一メートルほどの魔法の槍が次々と放たれる。

 

ヴェスタリアは水の壁を展開し、それらを防ぐ。

 

「おぉっと!!いきなり、魔法のやり合い!」

 

「…しかし、最終試合にしては、今までのよりは見劣りするな」

 

「それは、確かに!!今までの試合も良かっただけに、残念な試合になるぞ!?」

 

メルルの言葉と、エミリーの煽りに、もう少しだけやる気を出すかと思い直すアルディーナ。

 

単なる球から槍を放つだけだった火・風・雷の三属性魔法。

 

槍を放つだけだったが、放つものを槍以外にも、球や五芒星、三角など様々な形にして放つ。

 

さらに、龍や獅子、兎や蜘蛛のような形の属性魔法も放つ。

 

「な、な、なんと!!色々な形の魔法が飛んでいるぞぉ!!?」

 

アルディーナが放った生き物の形をした属性魔法が、本当に生きているかのように動いているため、 エミリーは興奮していた。

 

水の壁で防ぐこともできるが、アルディーナがやる気を出したのだからと、ヴェスタリアも使う魔法を変える。

 

ヴェスタリア自身が得意とする光の魔法を発動する。

 

光の大きな龍を作り出し、アルディーナの魔法を全て喰らい尽くす。

 

「なんなんだぁ!?一体、私は、私たちは何を見ているんだァァ!!?」

 

「……最終試合だな」

 

「それは、分かってますッッ!!!」

 

メルルの的外れな発言に、若干キレながらもツッコミを入れるエミリー。

 

今まで、歓声や悲鳴などが響いていたが、今は圧倒され静かになっていた。

 

「…ふむ、終わりをどう決めるか…」

 

アルディーナは悩む。すぐに負けても良かった。しかし、それでは面白くない。かと言って、本気を出す訳にもいかない。

 

どうしようかと悩むアルディーナだったが、ヴェスタリアの出した光の龍〈光龍〉を見て、思い付く。

 

「良い、龍だな」

 

「…そりゃ、どうも…?」

 

「ならば、私も応えよう 」

 

アルディーナの言葉を不思議に思うヴェスタリア。どういう意味かと聞くよりも先に、アルディーナが動く。

 

三十センチほどだった三属性の魔法が消えてなくなる。

 

しかし、次に現れたのは真っ暗な霧のような闇の龍。アルディーナは、闇魔法を使い龍を生み出したのである。

 

「おぉーーー!!!光と闇の龍対決!!なんとも、ロマンチックじゃないかぁ!!」

 

「…っ…やはり、アイツは…」

 

エミリーは興奮し、目を輝かせている。静かになっていた観客たちも歓声を上げる。

 

そんな中で、メルルはやはりアルディーナの放つ邪悪さを見ている。

 

「では、いくぞ…ヴェスティ」

 

「あぁ!こい、アルディ!!」

 

アルディーナとヴェスタリアが出した、魔法の龍が高速で相手に向かって突っ込んでいく。

 

二龍が通った場所には砂埃が舞い上がり地面も抉れていた。

 

光の龍と闇の龍。二つの魔法がぶつかった時、二つの魔法は爆発した。

 

そのせいで、砂埃が一気に舞い上がり舞台が見えなくなる。

 

「なにも見えない!全ての試合で、砂埃が邪魔になっているぞぉぉ!!どうなってんだ運営ぃーー!!」

 

エミリーの怒りが響く中、演舞場の砂埃が晴れていく。演舞場では、ヴェスタリアが立っていた。

 

対する、アルディーナは倒れ込んでいた。

 

「…決着ぅ〜!!!呆気ない最後でしたが、優勝者は、ヴェスティ選手〜!!」

 

「……」

 

「良い試合でしたね、メルルさん!」

 

「……」

 

「?……では、優勝したヴェスティ選手は後ほど賞金や表彰がありますのでそれまでお待ちください!!」

 

メルルの態度が気になるエミリーだったが気にせず司会を進行させる。

 

そんな中で、ヴェスティはアルディーナに近付き話しかけていた。

 

「…なんで、負けたんだ?」

 

「お前の方が、強かった。それだけだよ」

 

「……本当は?」

 

「…単純に、表彰が嫌いだからな」

 

「おい!?僕も、表彰なんて嫌なんだけど…!」

 

ガックリと肩を落として、アルディーナと一緒に控え室に戻っていくヴェスタリア。

 

その、ヴェスタリアとアルディーナの背中を見続けていたメルル。

 

「…もしかして、ヴェスタリアのやつ…アルディとかいう邪悪な奴と知り合いなのか…?」

 

ヴェスタリアとアルディーナの親しげなやり取りを見て、メルルは疑問を抱いた。

 

「もし、親しいのならば…ヴェスタリアの根性を叩き直さないとな」

 

メルルの言葉に寒気がし、震え上がるヴェスタリアであった。

 

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