勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜   作:大乃正生

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第三十八話「同行」

 

アルディーナが忘れていたことに、少なからずショックを受けたアレックだが、すぐに切り替える。

 

「泥棒と間違われて居たとき、助けてくれただろ!?」

 

「あー…たしか、アレック・フィンセント…だったか?」

 

「そうだ!オレは、アレック・フィンセント!闘技場で、お前らが強いのを見て確信したんだ!!オレを強くしてくれるって!」

 

アレックは、縋るような顔で二人を見ている。

 

「そうは言ってもなぁ…まだ、子どもだし…」

 

ヴェスタリアが子どもだからと、断る理由を考えていたが、アルディーナが口を開く。

 

「いいんじゃないか?」

 

「アルディ…?」

 

「ホントか!?」

 

キラキラした目で、アルディーナを見るアレック。

 

「…強くなりたいんだろう?」

 

「あぁ!!」

 

「ちょっと待ってくれ、アルディ。君」

 

「君じゃねぇ!オレは、アレック!」

 

「すまない。アレック、家族は?」

 

「…もう、いねぇ」

 

「っ…すまない」

 

「いや、いい」

 

「……それから、どうして、強くなりたいんだ?」

 

「……今は、言いたくない。けど、強くなりたいってのは本気だ!」

 

「んー…」

 

アレックとヴェスタリアがやり取りを続けていると、 そこにアルディーナが割って入る。

 

「アレック。私たちは、しがない旅人だ」

 

アルディーナは、アレックの目を見る。

 

「先ほどは、少しばかりアレックのことを軽視していたな」

 

「なんだよ、お前もダメだって言うのかよ…っ!」

 

「いいや。ただ、私たちと来ると言うことは、この国を出るということだ」

 

「…」

 

「もう、帰ってこれないかもしれない」

 

「…あぁ…」

 

「死ぬかも、しれない」

 

「…っ」

 

「それでも、来るか?」

 

ヴェスタリアも何も言わない。いくら、ヴェスタリアとアルディーナが強いと言っても常にアレックを見続けることはできない。

 

だからこそ、脅すように言い、覚悟を確認していた。

 

「…っ…なに言われたって、オレはいくぞ!!そんで、お前らに鍛えてもらうんだ!!」

 

「ふ…そうか。だったら、私は何も言わぬよ」

 

「!」

 

目をキラキラさせるアレック。それを、微笑ましそうに見ているアルディーナであった。

 

「…はぁ…分かったよ。一緒に行こうか」

 

ヴェスタリアも折れて、アレックが付いてくることを認める。

 

「っしゃーー!!!」

 

大喜びのアレックであった。

 

「そんでそんで!どんな技教えてくれるんだ!?雷の龍か!?」

 

大興奮してまくし立てるアレックだが、ヴェスタリアとアルディーナは苦笑いをする。

 

「あのような技は、アレックにはまだ早すぎる」

 

「そうそう、段階的に進まないと」

 

「ちぇっ…」

 

大技を教えてくれないと知り、不貞腐れるがすぐに切り替える。

 

「じゃあさ、旅人なんだろ?今から、どこ行くんだよ?」

 

「空島、ラピリアさ」

 

アレックの疑問に答えるヴェスタリア。しかし、行く場所を聞いたアレックは口をポカンと開けていた。

 

「空島って、御伽話じゃないのか?」

 

「違うよ」

 

ヴェスタリアは、アレックの反応に微笑んでいる。

 

「子どものころは、御伽話だと思うよな」

 

「うむ、しかたあるまい」

 

「空島かぁ…どんなところなんだろ…」

 

夢を広げ、目をキラキラしているアレック。

 

「どうやって行くんだ?」

 

「ふむ、海から天空まで突き上げる海流に船で…」

 

「そ、そんな行き方が…!?」

 

「アルディ!嘘を言うな!」

 

「嘘だったのか!?」

 

「はっはっは!すまないな」

 

謝っているが、反省の色は見えないアルディーナ。

 

「じゃあ、ホントは?」

 

「ふむ、魔法で行くのさ」

 

「えぇ…夢がない…」

 

「アルディ…」

 

「これも、嘘だ」

 

「もう、お前の言葉は信じねぇ!!」

 

完全に怒った顔をするアレックと、爆笑しているアルディーナ。アレックは、すでに馴染んでいた。

 

「…はぁ…ある町まで行く」

 

「ある町?」

 

「あぁ、その町で…ま、後は着いてからのお楽しみだな」

 

「…!!」

 

ヴェスタリアの言葉にワクワクを隠せていなかった。

 

「なぁなぁ、町の名前は!?」

 

「アリーラピール。空島と似た名前なんだよ」

 

ヴェスタリアが答えてあげると、アレックは、さらに目を輝かせた。

そんなアレックを見ていたヴェスタリアが、疑問をぶつける。

 

「あれ、そういえばアレック」

 

「なんだ?」

 

「年齢は?」

 

「十二歳だ!」

 

「んなっ……小六…」

 

年齢を聞き、この歳ですでに家族を失っていることに胸を痛めたヴェスタリアは、アレックの頭を撫でていた。

 

「??」

 

頭を撫でられている理由や、小六の意味がよく分かっていないアレックだが、目を細め気持ちよさそうにしていた。

 

「十二か…」

 

アルディーナも、少し憐れむような目を向けていたーー。

 

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