勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
アレックの文句は勢いを無くしてきたが、足は止めずに歩き続けている。
アリーラピールへ向けて歩いている一行。
ゴブリンとの戦闘以降、休まずに一時間以上歩いていたのだが、アレックが疲れたため休むことに。
道は整備されていないが、今まで歩いた人たちのおかげで、獣道のようになっており歩きやすくなっていた。
「なぁなぁ!!鍛えてくれよ!」
ヴェスタリアへと、笑顔で話しかけるアレック。
道の脇に生えていた木の下に座り、休もうとした時のことだ。
「さっそくだな…」
「いいだろ!?ヴェスティ!」
満面の笑みを浮かべるアレック。
アルディーナは周りを警戒しながらも、アレックとヴェスタリアの話を聞いていた。
「うーん…」
「わくわく!」
悩むヴェスタリアの横で、アレックは態度にも言葉にも「わくわく」が溢れていた。
「口に出すか…?」
「…なに?」
「…なんでもない」
アルディーナが口に出してわくわくと言っているアレックに突っ込む。
突っ込まれたアレックは不機嫌そうにアルディーナを睨む。
文句は言わなくなったが、まだ許していない様子。
「それじゃあ…魔法、やってみるか」
「魔法!?」
目をキラキラさせているアレック。
「あぁ、魔法っていうのは大きく分けて二種類ある」
「ふんふん」
「体内魔法と体外魔法。教えられるのは、体外魔法だけだ。いいな?」
「はい!」
キラキラした目のアレックを見て、昔の自分を見ているようで微笑ましくなるヴェスタリア。
「メルルさんも、こんな気持ちだったのかな」
「…メルルって、騎士団長だろ?」
「あぁ、そして僕の師匠だよ」
「……つまり、オレにとって、師匠の師匠…」
「ま、そうなるかな」
アレックの言葉に笑いそうになりながらも、肯定する。
「体外魔法とは…まぁ、見せた方がいいか」
そういうと、十メートルほど離れた場所にある岩に右手を向ける。
左手は右手首を抑えている。
岩は六十センチ程の大きさだ。
「総てを浄化せし聖なる光よ、清めたまえ!〈ホーリーライン〉!」
そういうと、手のひらから光輝く光線を放つ。
光線が当たった岩は、砕け散り。砕けた岩は光輝いている。
「い、岩が…!」
興奮しているアレックはヴェスタリアの周りをうろちょろしている。
初めて魔法について聞いた時の自分と同じで苦笑いしてしまうヴェスタリア。
「アレック」
「…なに?」
アルディーナにはまだ冷たい様子。
「総てを焼き尽くす地獄の業火よ、顕現せよ〈ヘル・フレイム〉」
平原に向けて放たれた、圧倒的な火の魔法。
「す、すごいすごい!!アルディってば、やっぱすげぇ!」
目をこれでもかと見開きキラキラさせるアレック。
アルディーナに対して怒っていたのを忘れたのか、アルディーナの周りにも纏わりつく。
「ふん、こんなものだな」
偉そうに、何でもないかのように言っているが、その顔は嬉しそうだ。
「…大人げないなぁ…」
アルディーナのドヤ顔を見て笑っている。
「なぁ!オレも魔法つかいたい!」
「そうか、じゃあ私の言う通りしろよ」
「分かった!」
こうして、アレックが初めて魔法を放つ時がやってくるーー。