勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
「まず、魔力を感じる所からなのだが…」
「魔力を感じる?」
「…その前に、加護はあるのか?」
「知らねぇ」
「そうか」
アレックの言葉にアルディーナは静かに返事する。
本来、十二歳になったときに加護を調べるのだが、知らないということは〈なにか〉があったということだ。
しかし、そのことを言及せず、アルディーナは続ける。
「…すまないな。私は、加護を調べられん。…ヴェスティはどうだ?」
「いや、僕もできない」
「その加護ってのは、そんなに重要なのか?」
「あぁ、重要だ。しかし、知らないのであれば仕方ない。このまま進めよう、知らなくてもできない訳ではないからな」
「なにするんだ!?」
「目を閉じろ」
「はい!」
アレックは言われるがまま目を閉じる。
「返事はいらない。体の中に意識を集中しろ」
言われた通りに体の中に意識を向けるアレック。
「何か感じるか?」
「…なにも…」
その時、黙って見ていたヴェスタリアが口を開ける。
「アレック。心臓の音が聞こえるだろう?その音だけに集中してみて」
アレックは心臓の音に集中する。ドクン、ドクン、と鳴っているのを感じていると、体の中に温かな何かを感じとるアレック。
「…ん…温かい…」
驚いたように目を開き、アルディーナとヴェスタリアを交互に見る。
「それが魔力だ」
「これが……」
自身の中に流れる魔力に気付く。
「筋が良い。魔法に関する加護を持っているんだろうな」
「そ、そうか…?」
照れたように頭を搔いて嬉しそうな表情のアレック。
「それを操るんだが…」
「…どうやって?」
「うぅむ…」
「アレック。利き手の手のひらを見つめて。そう、そして…見つめている箇所だけに意識を集中させて」
「んっ…!」
すると、アレックの右手のひらに風が集まるようになり旋風が発生する。
「!!み、見てる!?あぁっ!!?」
手のひらから意識を外した瞬間、旋風が霧散する。
「意識を外したからだな。もう一度だな」
「は、はい!」
元気よく返事をして、もう一度手のひらを見る。
そして、旋風が発生。
「!!!」
「分かってる、見えてるから」
旋風に大興奮のアレックにヴェスタリアは苦笑いしながら、落ち付かせる。
「アレック、その旋風をそのまま維持しろ」
「は、はいっ!」
言われた通り手のひらに意識を向ける。
「いい感じだぞ!そのままそこの木に投げてみろ!」
「えいっ!」
ヴェスタリアの言葉で木を見るアレック。
ボールを投げるようにして、手を振る。すると、旋風が木に直撃する。
木に当たると、ポスッと旋風が消える。
「…あぁー…」
「…ふむ」
ヴェスタリアとアルディーナがなにかを言う前にアレックが口を開く。
「ぃやったぁぁぁ〜!!!初めての魔法だよ!!」
「あ、あぁ…そうだな」
「や、やったな!」
慰める言葉を考えていたが、喜んでいるため急いで褒める方向に言葉を変える。
「??…なにかダメだったのか?」
二人の反応がおかしいため話しかけるが、二人は激しく首を横に振る。
勇者と魔王は、初めての魔法を発動出来ているだけで凄いことを忘れているのだ。
「さて、魔法は歩きながら…いや、動きながら出来ないとダメだからな。アリーラピールに向け歩き出すぞ」
「はい!」
初めての魔法に大興奮のアレックを連れ、一行は再び歩き出した。