勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
アリーラピールへ向けて歩いていた一行。その道中で村を見つけ、寄ることに。
「おや、旅の方かい?」
「はい。そんなところです」
村に入ると、村長らしきお爺さんがヴェスタリアに話しかける。
ヴェスタリアは素直に答えながら、村を見渡す。その村は、農村でゆったりとした時間が流れている。
「ここは特になぁんもないけど、ゆっくりしてってください」
「ありがとうございます」
「なぁなぁ!オレに修行もっとつけてくれよ!」
村に着き、ゆっくりしようと思っていたところにアレックの声が響く。
「…ちょっと、ゆっくりしよう、アレック」
「えぇ〜…」
不服そうなアレックに、ヴェスタリアは困ったように笑っている。
そんな二人を置いてアルディーナは、村を見渡せる場所に来ていた。
「…ふむ、牧歌的な…良い村だな」
村全体を見ながら呟くアルディーナ。
木でできた家が少しだけ間隔を開けて、十五軒ほど建っている。
アルディーナが村を見ていると、ヴェスタリアとアレックが立ち上がる。恐らく、修行だろう。
「ふ…アレックはやる気に満ちているな」
少しだけ笑みを浮かべるアルディーナ。
何をするのかとワクワク状態のアレックの前には少し考えているヴェスタリアがいる。
「…いきなりの実戦と、魔法…今からは、模擬戦にするか」
「もぎせん?」
「そう、模擬戦。僕と戦ってもらう。」
「ヴェスティと…戦う…!?」
「あぁ。……いや、もちろん本気じゃないけどな」
「ほっ……」
いきなり戦うと言われ焦っていたアレックだが、本気の戦いではないと分かり、心底安心している。
「ただ、剣や拳だけだと偏るからな」
「かたよる?」
「…魔法も使った模擬戦だ」
「魔法も、使った…!」
キラキラと目を輝かせていくアレック。
「そう、魔法も剣も、なんでも使って良い模擬戦だ」
先ほど、ヴェスタリアと戦うと聞かされ不安になっていたとは思えないくらいにワクワクしているアレック。
一人百面相のようだ。
戦おうか、という時にアルディーナがやって来る。
「模擬戦、か」
「あぁ、模擬戦。やっぱり、実戦も大事だけど経験がないとさ」
「…確かにな。失念していたな」
「おい、アルディ!!」
ヴェスタリアとアルディーナが話している内容を聞いていたアレックだが、アルディーナが"経験"の大切さを失念していたと言うことに、怒っているアレック。
当然だ。
そのせいで、アレックは怖い思いをしたのだから。
「さて、模擬戦だが…さっきも言った通りなんでもあり、僕は手加減をする。いいな、アレック?質問はないな?」
「あぁ、ない!」
シュッシュッと殴るモーションをするアレック。
「やる気に満ちてるな」
「おう!」
「…じゃあ、私が見届けようかな」
ヴェスタリアとアレックの戦いの審判をアルディーナがするとのこと。
「よし、アレック、そこに立ってろよ」
ヴェスタリアとアレックは少し離れ、構えをとる。
「いつでもいいぞ」
ヴェスタリアが開始の合図をした瞬間、アレックが魔法を発動するーー。