勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
「真っ直ぐ行くと、水中都市だから…右から行く?」
入国審査を終え門をくぐり、アトランタスに入って来たヴェスタリア一行。
アレックは、右から行こうとヴェスタリアとアルディーナに提案する。
アトランタスは、ドーナツのような形の街である。その形を均等に四等分し、東西南北に地区を分けてある。
外に繋がる門があるのは東地区だ。東地区から入り右に向いて歩くと北地区である。
「あぁ、確か北地区だな。ここアトランタスに住む人たちが仕事をする地区だったかな」
「へぇ~…」
「…興味なかった?」
「だって、仕事場に興味は…」
「それもそうか…」
ヴェスタリアが、右側に何があるかを話すとあからさまにガッカリするアレック。
「左が南地区で住宅街だな。その先に西地区があって、その西地区が観光地…かな」
「えぇ〜!?観光地まで遠いよ!」
「そんなこと言われてもな…そもそも、一番の観光地は中央地区の水中都市だからなぁ…」
「分かってるけどさぁ…」
アレックの文句にヴェスタリアは困った笑顔を見せる。
アルディーナは一歩引いたところで、ヴェスタリアとアレックが話しているのを見ていた。
「それじゃあ、西地区に行くか。アレック」
「うん!」
観光地でもある、西地区へ行くためにまずは住宅街でもある南地区を通る。
「綺麗な街並みだね、アトランタスは」
少し歩き、南地区の住宅街を歩くヴェスタリア一行。
水路が走り、綺麗に並んだ家々。寄り添うような形で、家の間を細い道が縫うように伸びている。
「ん~?…綺麗な街並みだけど…住民が全然いない…」
「まぁ、仕事だろう」
アレックの言葉に、アルディーナが返す。
今は太陽が真上に来ており、昼間であるのが分かる。仕事に出ている住民も多いだろう。
「いや、そんなこともないぞ?」
アレックが、住民がいないと言ったことに対してヴェスタリアは否定する。
ヴェスタリアが指さした方向に、主婦らしき人たちが集まり井戸端会議をしていた。
「あ、ホントだ」
ヴェスタリアが指さした方向を見て、住民が普通にいたことに気付くアレック。
ヒソヒソと何かを話している主婦たち。声が小さくなんて言っているのかヴェスタリアたちには聞こえない。
主婦たちはヴェスタリアたちの方を何かを探るような、好奇心のような視線で見ている。
「なんなんだよー、アイツら」
チラチラと見られ、不満気にアレックは愚痴をこぼす。
「…ヴェスティ、何かおかしくないか?」
「あぁ…観光地のはずなのに人が少なすぎる…」
アルディーナの言葉に、ヴェスタリアは同意する。
アトランタスへと来て、まだ一日も経っていない。それでも、二人は街に違和感を覚えていた。
嫌な予感を振り払い、西の地区の観光地を目指すヴェスタリア。
アルディーナもまた周囲を見渡している。
そんな二人に気付かずにニコニコ笑顔のアレック。
目的地の西地区までは、まだ長いーー。