勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
西の地区の観光地を目指すヴェスタリア一行。
歩き続け、現在は南の地区の中腹辺りに差し掛かっていた。
「広いなぁ…」
アトランタスの広さに、少しばかり辟易とした声を出すアレック。
「確かに広いよな…。でも、まぁ…詳しくは分からないが…何百万、何千万と暮らしているし、観光客も毎日たくさん来てるしな」
アレックの言葉に、ヴェスタリアは肯定しながらも説明をする。
「…ん?」
「どうしたの、アルディ?」
「いや、なんでもない」
アルディーナは立ち止まり、水路を見ていた。アルディーナが立ち止まったことに疑問を持ったアレックが話し掛けるが、なんでもないと誤魔化す。
不思議に思いつつも、アレックはすぐに切り替えて周りを見渡す。
綺麗に並んだ街並みを見ながら歩いていると、途中にお店を見つける。
観光地という雰囲気ではなく、住人が行くような飲食店や買い物場だ。
「観光かい?」
ヴェスタリアたちが歩いていると、おじさんが話しかけてくる。
「はい!観光です!」
アレックが元気よく返事をすると、おじさんはにこにことしている。
「そうかそうか、観光か…今はちょっと、おかしな事になっているが…楽しんでいきなさい」
「おかしなこと?」
おじさんの言葉にアレックは首を傾げている。
ヴェスタリア、アルディーナもまた、目を細めおじさんを見ている。
「あぁ…なんだかなぁ…まぁ、詳しくは違う人に聞いてくれ、ワシは今から畑仕事だからな」
「…それは、水路が止まっているのに関係あるのか?」
おじさんが去ろうとした時に、アルディーナが話しかける。
おじさんは一瞬立ち止まったが、そのまま振り返らずに去っていく。
「…水路が止まっている…?」
「あぁ、不思議な事にな…」
ヴェスタリアがアルディーナへと、問いかける。アレックは首を傾げたままである。
「…私たちは、どうやら本当に厄介な時に来たらしいな」
アルディーナは、水中都市のある方向へと目を向けていた。
「なぁ!そんな事より、早く行こうぜ!」
アトランタスがおかしいとか関係なく、ただただ観光をしたいアレックは大きな声を出して歩いていく。
「水路が、止まっていた……水の都市なのに……」
アルディーナの言葉を反芻するヴェスタリア。
何が起きているのか分からない。しかし、アレックの観光をしたい気持ちを邪魔する事はなく、西の地区を目指す。
色々な話をしながらも歩みを止めなかったヴェスタリア一行。
三人の目に、西の地区が見えてくる。
色鮮やかで、歓声なども聞こえてくる。
「!…なぁ!あそこ!!西地区だよね!」
「そうだろうな」
走り出すアレックの後ろを、ゆったりとヴェスタリアとアルディーナが歩いていく。
「…注意深く周りを見ておけよ、ヴェスタリア」
「あぁ、分かってる。忠告ありがとな、アルディーナ」
三人は西の地区、観光地へと足を踏み入れた。そこで、三人を待ち受けるものとはーー。