勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
西の地区へと入った三人。
そこには、南地区とは全く違う景色が広がっていた。
色鮮やかな花、水路を利用した店や、出店に屋台。水上に作られた遊歩道。
観光客も多く、南の地区とは違い活気がある。
その光景を見たアレックは、一気にテンションが上がる。
「スゲェスゲェ!!これが…観光地!!アレはなんだ、ヴェスティ!?アルディ!アレは!?」
興奮気味に捲し立てているアレック。
気になる店を見つけては立ち止まり、花を見て笑顔になり、食べ物の匂いに誘われて…。止まらないアレック。
ヴェスタリアは、そんなアレックを微笑ましく見ている。アルディーナもまた、離れた位置から静かにその様子を見ている。
「…アルディは、はしゃがないんだな?」
王国にて、美少女を見て騒いでいたアルディーナを思い出しているヴェスタリア。
「ふ…子どもじゃないからな」
「ま、近くに美少女いないもんな」
「……」
ヴェスタリアの言葉に、無言になってしまうアルディーナであった。
閑話休題
「わぁ…これ乗れるのか!?」
ヴェスタリアとアルディーナが話していると、アレックの一際大きな声が聞こえてくる。
声のした方を向くと、アレックが水路に浮かぶ船を見ていた。
アレックは船の上にいる人に聞いていたのだ。
「…いや、今は乗れねぇ…」
「えぇー!」
今は乗れないと聞き、残念そうなアレック。
そこへ、ヴェスタリアとアルディーナが歩いて来る。
「仕方ないだろ、アレック」
「でもぉ…」
アレックの相手をするヴェスタリア。二人が船から少し離れた時に、アルディーナが船乗りに聞く。
「今は、ってのは…水路が止まっているのと関係があるのか?」
「…あぁ、俺も詳しくは知らねぇが…ったく、商売上がったりだぜ」
「なんで、水路が止まってるんだ?」
「さぁな、王様が決めたことだからよ。俺ら庶民にゃ、王様の崇高な考えなんて分かんねぇよ」
「…だが、水上都市としておかしすぎるな」
「ま、俺は知らねぇからよ。ギルドか、酒場か…情報の集まる所に行けよ」
「あぁ、ありがとな」
「いいってことよ。…あぁ、それと、今は観光客が少ないからな。目立つだろうし、カモられる可能性がある。せいぜい気を付けろよ」
船乗りのおじさんに、片手を上げるだけの挨拶をして別れたアルディーナ。
「…見るだけなのかよ」
不貞腐れたアレック。苦笑いしながら、機嫌をとっているヴェスタリア。
そんな二人のもとへ、アルディーナが合流する。
「これだけおかしなことが起きてるのは、王様が何か関係しているみたいだな」
「王様が…?」
ヴェスタリアとアルディーナの話しているのを、下から覗き盗み聞きしている。
「王様が…殴ってやる!」
「やめとこうな」
フンス、と意気込むアレックを落ち着かせる。
「…まぁ、殴るにせよ殴らないにせよ、情報が必要だな」
「うんっ!」
「殴らないからな?」
ヴェスタリアの声が聞こえないのか、アレックはシャドーボクシングをしている。
「…まぁ、情報なら…アトランタスのギルドか、酒場か…」
「…ギルドに行こう。アレックの登録もしないとダメだろ」
「それもそうか」
「登録?」
ヴェスタリアとアルディーナが話に付いていけないアレックは不思議そうにしている。
次の目的地を決めたヴェスタリア一行。
アトランタスの王様の不可解な行動の真意を知るために、ギルドへ行くことにーー。