勇者と魔王の遊戯   作:大乃正生

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第五話「魔法と旅立ち」

 

お風呂での一件にて

恥ずかしさがあり、その日の夜は顔を見ようとしていなかったヴェスタリア。

しかし、メルルが何も変わっていないため気が抜け、元に戻った。そんな修行一日目が終わり二日目の朝がやってきたーー。

 

二日目にして、魔法の発動をすることにーー。

 

「...それじゃあ、魔法を発動させようか」

 

「はい!...まずは空気中の魔力を感じとる。ですよね?」

 

「確かに、それも大切だが体内の魔力から感じることだ。そちらの方が簡単であり重要だからな」

 

その言葉と共に、坐禅の姿勢をとるメルル。その姿勢を見て、同じように坐禅の構えをするヴェスタリア。だが、メルルはその動きを手で制する。

 

「私のこの体勢が良いわけじゃない。自分がリラックスできる姿勢をとれば良い」

 

「自分がリラックスできる...」

 

そう呟くとヴェスタリアは仰向けに寝転び空を見る。「あぁ、いい天気だなぁ」と心の中で思いながら、目を瞑る。

肌を撫でる優しい風、緑の香り、鳥の声、自然の中にいる。と思えて優しい気持ちになり、目を瞑った所で腹部に強い衝撃が走った。

 

「いたぁ!!」

 

「...リラックスできる体勢とは言ったが、寝て良いとは言っていない」

 

「...すいません...」

 

メルルの言葉を聞いたヴェスタリア。寝転んだ体勢からあぐらの体勢になり、背筋を伸ばした状態でメルルの話に集中した。

 

「まず、最初にするべきなのは自分の体内の魔力だ。”人族”は誰しもが必ず流れているものだ」

 

そう言いながら、目を閉じるメルル。

数秒経つとメルルの周りで風が吹き、ヴェスタリアは片目を瞑った。

 

「魔力を練り上げただけだ、最低ライン...それが今のだ。まずは、魔力を探してみろ。...目を閉じて、体の中に意識を向けると血液のように流れているものを感じ取れるはずだ」

 

「分かりました!」

 

そう言い、ヴェスタリアは目を閉じ集中する。すると、体内で流れているものを感じとる。

「これが魔力か...」と認識し、目を開くとメルルが満足そうに頷いた。

 

「流石だ、感じとれたようだな、次はそれを練り上げる。...腹筋に力を入れ、その力を込めた箇所を徐々に全身に広めていくイメージだ」

 

「い、いきなり難しい...」

 

そう言いながらも、腹部に力を込める。そして、力を全身に広げるイメージを行いながら実行する。すると、体全体が暖かくなり始め驚いて集中を切らし力が霧散する。

 

「い、今のは......」

 

「勇者の権能...ここまでとはすごいな。魔力を感知することは人によって大きく変わる。が...魔力を扱うのがここまで早いのはあり得ないと言っても良い」

 

権能の凄さを感じたメルルの言葉を聞き、嬉しさのあまりニヤニヤとするヴェスタリア。ニヤケ顔に一発拳を入れようかと考えたメルルだが、ため息を一つ入れ頭を撫でる。

 

「嬉しいのは分かるが、修行を続けるぞ」

 

「〜ッ!はい!!」

 

興奮が続いているヴェスタリアは頭を撫でられたことに気付かず修行を再開する。

同じように腹部に力を入れ、広げるとメルルの時と同様に風が吹いた。

 

「...合格だな」

 

「ありがとうございます!」

 

「それじゃあ、体内魔力を先程同様全身に巡らせた状態を維持しろ」

 

その言葉通りに、今度は集中を切らさないように注意しながら魔力を全身に巡らせる。風が吹き、髪が乱れているところに次の行動へ。

 

「全身に巡らせた魔力を体外に出すイメージをするんだ。...うんこを捻り出すイメージだな」

 

「きたない!」

 

思いきり叫びながらも集中を切らさず

体外に出すイメージを行うと、その通り体外に魔力のようなモノが体から出ていくのを感じ取るヴェスタリア。

 

「ふむ...いい感じだな。そのまま、体外に出した魔力を体内に戻してみろ」

 

「...もどす......」

 

「空気を鼻から吸うだろう、それを全身で行う様にしてみろ」

 

今までのようにイメージを行うと魔力が戻り始めた。しかし、ヴェスタリアは違和感を覚える。自分の魔力だと感じるものもあるが”異物”と感じる別のものが入り込んできたのだ。

 

「違和感を感じるだろう?それが体外魔力。自然に存在している魔力だ」

 

「これが...」

 

「自身の魔力、つまり、体内魔力。それから自然の魔力、体外魔力を練り合わせ丸太に打ってみろ。魔法は全てイメージが必要だからな」

 

そう言われ、丸太を睨んだのち目を閉じて集中する。頭の中で〈手のひらから頭部並みの大きさの火球を出す〉イメージをする。すると、丸太に向けている手のひらに光の玉が形成され始める。

 

形成が終わり、光の玉が綺麗な球状になったところでヴェスタリアは目を開け

丸太にもう一度目線を送る。次の瞬間光の玉から火花がちり、火の玉に変わりヴェスタリアは狙いを定めた。

 

「...よし、いくぞ!”ファイアボール”!!」

 

「!!」

 

ヴェスタリアの手のひらから火球が飛び出し丸太に直撃する。そのことに興奮や喜びもあるが、それ以上に驚くヴェスタリア。自分がイメージしたのは頭くらいの大きさの火の玉だったからだ。

 

「...驚いたな。流石は勇者の権能だ」

 

その言葉を聞いて顔を地面に向け、小さく震え出すヴェスタリア、そして数瞬後――。

 

「煽ってるんですかぁぁ!?なんなんですかさっきの!!ぼ、僕の魔法...”生活魔法”以下じゃないですか!!本当に合ってるんですか!?この修行で!」

 

「当たり前だ。合っているし煽ってなどいない」

 

「だ、だって...だってぇ...!」

 

涙目になりながら座り込むヴェスタリア。

落ち込み、泣きそうになっているヴェスタリアの目を見ながら頭を撫でる。

 

「泣くな、ヴェスタリア。...確かに、火の威力は弱いかもしれない。けれど、普通はいきなり魔法は発動しない。...魔法を発動できずに亡くなっていく人だって沢山いるのだから」

 

「え...?」

 

「さっきも言ったが、体内魔力の感知をするのは個人差がある。生まれた瞬間からできるヤツと百年経ってからできるヤツとさまざまだ」

 

その言葉を聞き驚くヴェスタリア。

自分はすぐにできたが、百年経たないと感知できない人がいるのだと分かり

これが、権能の力なのかと。

 

「しかし、権能に驚いたのはそこじゃない、”魔法の発動”自体だ。魔法の発動を行うのにほとんどの者が三年以上かかる。にも関わらずだ、ヴェスタリア。お前はすぐに発動させた」

 

「!」

 

「お前の才能もあるのかもしれない、しかし、権能の力。これでしっかり分かっただろ?」

 

権能の力を聞き俯く。

自分の才能ではないのか、という悲観的な意味で俯いたのではなく改めて権能とは戦わなければならず、勇者として早く成長し人類のためにならなければならないのかと、不安が押し寄せてきたのだ。

 

「...大丈夫だ。今すぐ戦場に立つ訳じゃない。今のお前ではスライムにだって負けるだろうからな。お前を立派な勇者にする、そのために私がいるんだからな」

 

「...はい!」

 

「!」

 

ヴェスタリアはメルルの言葉を聞いて、覚悟を決める。勇者として戦う、その覚悟は決まっていないが家族を含め大切な人を守るためにも強くならなければ、という覚悟をし顔を上げメルルの目を見た目返す。

 

その強い意志を宿したヴェスタリアの瞳を見たメルルは微笑み、頭を撫でる。

 

「...メルルさん?」

 

「ふっ...すまない、いい目をしている。その意気だ。ビシバシ、厳しくいくぞ!」

 

厳しくいく。という言葉に引き攣りそうになりながらも力強く頷き返し修行を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェスティ、大丈夫?ハンカチもった?お弁当は?忘れ物はない?」

 

「大丈夫だって、母さん」

 

「...本当に行くんだな」

 

「うん、行ってくるよ父さん」

 

「...いってらっしゃい、ヴェスティ」

 

「行ってこい、ヴェスティ!」

 

「〜ッ...いってきます!」

 

 

ヴェスタリア、十七歳。

メルルとの修行でさまざまなことを学び、勇者としてのあり方に悩み、考え、経験を積み重ね、成長した。彼は家の扉を開ける、朝日の光が目に当たり細めそうになりながら外へと出る。

 

彼の心には、勇者としてのあり方を体現できるかという不安があるが

大切な人を守るという、勇者として一番大切なものを宿していた。

 

そして、ヴェスタリア・ヴァリエンテは

勇者としての第一歩を踏み出したーー。

 

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