勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜 作:大乃正生
兵士に連れられて水中都市への入口の前まで来たヴェスタリア一行。
兵士がこめかみに人差し指と中指を当てているのが見える。
「…あれは」
アルディーナが、兵士を見て呟く。二本の指をこめかみに当てるのは通信魔法。誰と話しているのかなど想像がつく。
水中都市にいる兵士に通信しているのだろう。
「アルディ」
「あぁ、分かっている」
ヴェスタリアも兵士の動きに気付いていた。
アルディーナに確認をするヴェスタリア。アルディーナは頷き、理解しているのが分かる。
大きな金属の扉がある。その金属の扉の向こう側に水中都市がある。
兵士がこめかみに当てていた指を離した。通信魔法を解除したのだろう。
「では、今から水中都市へと入る!着いて来い!」
大きな声を出す兵士。すると、金属の扉が「ゴゴゴ…」と音を鳴らし、左右に襖のように開いていく。
扉が開くとーーー水の壁があった。
「水の壁!?すごい!!」
アレックがはしゃいでいる。他にも連れて来られた人たちもざわざわと話している。
「え、扉が開いたのに…」
「水中都市だからじゃないのか?」
「息は?」
「…死ね、ってことかよ…!」
さまざまな声が聞こえている。
「あ、確かに。息はどうしてるんだろ?」
アレックが、ヴェスタリアを見上げて聞いている。
ヴェスタリアがアレックに何かを話す前に兵士が声を張り上げた。
「今から、全員この〈水流壁〉を通って水中都市に入ってもらう!」
反発の声がそこかしこから聞こえてくる。
「水流壁を通れば分かる!息はできる!」
必要最低限の説明も話さずに、数人の兵士が先に水流壁を通っていく。
「…大丈夫だよね?」
アレックが不安そうに聞いてくる。
「大丈夫だ。ま、行ってからのお楽しみな」
アレックの頭を撫でて安心させるヴェスタリア。
そして、順番に水流壁を通っていきヴェスタリアたちの順番になった。
「次!」
「それじゃ、先に行くな」
兵士の指示に従い、ヴェスタリアが最初に水流壁を通っていく。
水流壁を通っていくヴェスタリアをアレックは心配そうに見ている。
そんなアレックの頭を撫でるアルディーナ。
「次は、アレックが行きな」
「オレが?」
「あぁ」
アレックとアルディーナが話していると、兵士の「次!」という声が聞こえてきた。
「行ってこい」
「わ、分かった!」
緊張した面持ちで水流壁の前まで行くアレック。
「よ、よし…!」
両手を前に突き出し、ゆっくりと水流壁を通る。
「わぁ…!!」
水流壁を通り過ぎて、水中都市に入ったアレックの目に飛び込んだのは幻想的な街であった。
海の中に街が広がっている。しかし、息が出来る。
「…大丈夫だっただろ?」
「あ!ヴェスティ!!うん!!」
感動しているアレックに話しかけるヴェスタリア。
「海の中じゃないのか?」
「上、見てみな」
「上?…なにあれ!?」
上を向いたアレックの目に映ったのは、水が街を避けるように広がり、ドーム状に水が街を囲っている。
「水中都市は、水上都市から展開されている魔力障壁で守られてるんだ」
「…そうだったんだ」
綺麗な街並みに見とれているアレック。
水中都市は、中央の王城を核として街は同心円を描くように広がっている。王城から放射状に伸びる街道が、年輪のような堀と交差している。
水中都市へ招かれた答えは、中央に聳え立つ王城に行かなければならない。
「…扉の目の前で待っていてくれてもよくないか?」
「あ…悪い」
不貞腐れたアルディーナが合流した。あとは、兵士の指示を待つだけだーー。