勇者と魔王の遊戯〜責務から逃げた勇者と魔王の旅ーしかし、その旅は世界の運命を変える始まりであった〜   作:大乃正生

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第五十五話「歓迎会」

 

玉座の間では、歓迎会の準備が着々と進められていた。

兵士たちが料理を運び込み、長いテーブルの上に次々と並べていく。

 

並べられている料理はどれも豪華で美味しそうである。

肉料理に魚料理。サラダもあり、デザートには様々なスイーツに色鮮やかな果物まである。

 

「わぁ……!美味しそう!」

 

料理を見て目を輝かせ、声を上げるアレック。

 

「まだ食べるなよ」

 

「わ、分かってるよ!」

 

興奮気味なアレックにアルディーナが言う。

アレックは恥ずかしそうに少し顔を赤くして、手に取っていた料理を元の位置に戻す。

 

そんな二人の様子にヴェスタリアは小さく笑っている。

 

「…なぁ、これなんだ?」

 

アレックが近くにあった料理を指差してアルディーナに聞く。

脂身が多いお肉で、オレンジ色に近い見た目だ。

 

「ん?…おぉ!《水牛鬼》の肉ではないか」

 

「《水牛鬼》?」

 

「あぁ」

 

首を傾げるアレック。

 

「水がある場所に生息する《水牛》という動物がいる」

 

「ただの牛とは違うのか?」

 

「普通の牛とは違う。水を大量に飲むのだが、どういう原理か飲んだ水を油に変えるのさ」

 

「??…じゃあ、アブラウシとかじゃねぇのか?」

 

「それは……知らん」

 

アレックの素朴な疑問に、アルディーナは腕を組んでキッパリと答える。その態度にアレックはずっこける。

 

「ただ油に変えるのではない。脂質…つまりは、霜降りになるのさ」

 

「ふ~ん」

 

「柔らかくてジューシー。それが、水牛だ」

 

「……美味しそう……ん?じゃあ、水牛鬼って?」

 

アルディーナの説明を聞き、涎を垂らしていそうなアレックが質問をする。

 

「水牛鬼は魔獣だな」

 

「ま、魔獣……」

 

ドン引きしているアレック。

 

「アレックが想像しているのとは違うぞ」

 

「え?」

 

「ゴブリンのような人類の敵は魔物だが、魔力を持つ獣が魔獣だ」

 

「へぇ~…」

 

「そして、水牛鬼は高級肉だ」

 

「高級肉…!」

 

「あぁ、水牛鬼は海底の奥深くにいて捕まえにくい。しかし、ちゃんと調理すると噛めば噛むほど旨味が出てくる肉になる。調理に失敗すると、食えないほど不味くなるがな」

 

アルディーナの説明にますます目を輝かせるアレック。

料理の話をしている二人の会話を笑って聞いていたのだが、兵士が王様に耳打ちをしているのに気付いたヴェスタリア。

 

「…ん?」

 

魔力を耳に集中させて聴力を強化し、何を話しているのかを盗み聞きするヴェスタリア。

 

「陛下、あの者たちが…」

 

「まだ確定ではない」

 

「しかし…!」

 

「…あの者が言っていた特徴と合うが…断定はできない」

 

王と兵士の会話を聞いていたヴェスタリアは、怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「あの者…特徴…」

 

王と兵士の言葉を復唱するヴェスタリア。

そんなヴェスタリアの近くに来たアルディーナ。

 

「…聞こえていたか?」

 

「…聞いていたよ」

 

アルディーナとヴェスタリアは、王と兵士に鋭い視線を向けた。

王と兵士はまだ話している。

 

「陛下、水中都市はどうするおつもりですか?」

 

「…」

 

「陛下…!」

 

「お前が、お前たちが気にすることではない」

 

「…失礼いたしました」

 

頭を下げて兵士は下がっていった。

 

「やはり、ただの歓迎会ではないな」

 

「そうだね」

 

アルディーナの言葉に頷くヴェスタリア。

 

「どういうこと?」

 

二人に近づき話しかけるアレック。

アレックの口元に茶色いソースが付いていた。

 

「あぁ、この歓迎会は…おい、食べただろ」

 

「た、食べてないよ」

 

「じゃあ、このソースはなんだ?」

 

「うぇ、ソース……」

 

勝手に食べたことがバレて、アルディーナに怒られているアレック。

ヴェスタリアはその横で苦笑いしながらも、王からは目を離さない。

 

王と兵士の間で交わされた、謎めいた会話。

その真相を知る者は、まだ誰もいない。

 

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