まなちゃんってそんなキャラだと思います。
次回作で彼女がどうなったのか、ちゃんと描かれるといいな…
初めてこの世界を目にした時、そこにあったのはとても愛らしい顔をした女の子の姿だった。長い髪は手入れが行き届いていてサラサラで、目は大きいのに顔は小さく愛らしい見た目をしていた。
だけど顔に虫が止まったというのにピクリともしない。よく見れば腹部からは血が流れ出ており、瞳はドス黒く澱んでいて光なんて灯っていなかった。目の前にいた女の子は、中身の無い空っぽな抜け殻だったのだ。
いつのまにか背後にいた男が言った。彼女は失敗作だったと。望む力を与えたというのに命令に背き、あろうことか逃げることを選んだ。
それを聞いた瞬間、馬鹿だと思ったし、哀れだとも思った。私達は子どもだ。子どもの力なんてたかが知れてる。大人の言うことに従っていれば、子どもは幸せに過ごせるのだ。誰が教えてくれたかは知らないが、私はそう認識していた。
男が言った。次は君の番だと。彼女と同じ力を与えたと。やることは同じだと。私を失望させるなと。
笑わせるな。私はこうはならない。生きて、生き続けて、アイドルになるといういつから抱いていたか分からない夢を叶え
「君の名前は純田まな。君に与えられた仕事は同じアイドルグループのメンバーである三角初華を殺すことだ」
命令を理解した時、虫籠から一気に解き放たれた昆虫のように、純田まなの記憶が流れ込んできた。
歌。夢。願。叶。sumimi。嬉。楽。好。隣。永。AveMujica。離。寂。奪。苦。辛。妬。嫌。望。
三角初華。
なんて醜い。それでいてなんて綺麗なんだろうと思った。キラキラと輝いていたこの子の世界は、彼女と引き裂かれたことで簡単に壊れてしまった。引き止めることも、行かないでと口にすることもせず、ただいつも通りニコニコしているだけだなんて。だけどそれが私なんだ。純田まなは、そういう人間だったんだ。
「どうして初華ちゃんを殺さないといけないの?sumimiは初華ちゃんと一緒じゃなきゃ出来ないよ?私に見返りがないと、貴方達の言うことには従わない」
この男にとって私は利用価値がある。だからすぐに消されることはないだろうと思い、一つ提案することにした。ただの道具に成り下がるつもりはない。私は生かされるのではなく、自分の力で生きていくんだ。
どんな反応をするのかと男を見れば、一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔を浮かべて言った。
「私達の本来の目的はその先にある。三角初華を殺すことは、その為のキッカケでしかない。君が期待通りの働きをすれば、再び三角初華とアイドル活動が出来ると言っておこう」
殺した人間とアイドル活動なんて出来るわけがないとは思わなかった。ここに私がいることが、その証明になっている。三角初華であって三角初華では無い。男が用意するのはそういったものだろう。
「詳しいことは別室で話そう。着いてきなさい」
二人きりになった部屋の中で、私は抜け殻となった女の子に目を向ける。
彼女はこのあとどうなるんだろう。幸せな日々を過ごしていたのに、裏切られ、絶望に堕ち、それでも再び幸せを掴むために立ち上がったが、何も得られなかった。死んだ人間がどうなるなんて、気に留めるのはおかしいかもしれないけど、彼女が一人ではなかったことを証明するために、力いっぱいその手を握った。
「……私が叶えてあげる。貴方の願い」
血溜まりに写る私の顔と同じ顔をした女の子。
この世界で初めて見た綺麗なものの願いを叶えるために、私は男を追って部屋を後にした。
どうして初華ちゃんに正体がバレちゃったんだろう?
悟られないように、うまくsumimiのまなを演じてきたと思ったのに。でも、バレちゃったんなら仕方ない。私は、私達のために命令通り動くだけ。
「う、うわああああッ!!」
「助けて!!誰か、助けて!!」
腕を薙ぎ払えば射出された爆弾が辺りを焼け野原に変える。悲鳴、泣き叫ぶ声が周りから溢れ出て、とても気持ちいい。
「あはははは!楽しいね〜初華ちゃん!」
爆風を身を任せて上空へ飛び上がり、更に爆撃で威力を乗せて初華ちゃん目掛け足を振り下ろす。
間一髪のところで避けた初華ちゃんは、涙を浮かべながらも私を鋭く睨みつけ、すぐさま立ち上がると公園の奥へ駆け出していった。
「いつまで逃げられるかな〜ッ!」
すぐ終わっちゃつまらない。私はゆっくり歩きながら
邪魔なものを爆弾で吹き飛ばし、初華ちゃんを追いかけていく。公園から逃げ出した人がデビルハンターに通報する可能性は十分ある。大勢に囲まれると流石に面倒だが、初華ちゃんとの時間を妨害されるのは何よりもムカつく。
「その時は、みんな殺しちゃえばいっか」
人の気配がだんだんと消え、木々が生い茂るエリアを歩いている途中、私は彼女に誘導されていることに気がついた。
「周りに被害が出ないように?優しいね〜初華ちゃん」
脚に力を込め、爆撃の加速で初華ちゃんとの距離を一気に詰める。彼女は驚いた顔をするがもう遅い。お互いの距離はゼロ。私は初華ちゃんにしっかりと抱きついた。
「そういうところ大好き」
私の体は眩しいくらいに発光し、次の瞬間大地が鳴り響くほどの爆音が鳴り、黒煙が全てを覆い隠した。
下半身の感覚はあるが、腰から上の部分は何も感じない。しばらくして腰の辺りからナニかが伸び、上半身の形を作っていく。頭部が出来上がると同時に視力も戻り、つくづく化け物となった自分に嫌気がさした。
「流石に服は戻らないか」
一応女の子なので、自身の能力でダイナマイトと爆竹生成し、連ねることで肌を隠すことにした。
「初華ちゃん死んじゃったよね……あ、初華ちゃんの遺伝子が必要だから、何か残ってないといけないんだった。うー、これじゃ何がなんだか分からないよ」
木々は燃え盛り、大地は黒く焦げている。そんな大地に立っている黒い人形は、かわいそうなことに偶々近くにいた人間だったものだ。
あの子と私の願いを叶えるためにも、初華ちゃんの一部が必要なのだが……そうして辺りを見渡していると、彼女の特徴の一つであるクリーム色が目に入った。
「初華ちゃん!」
喜びのあまり駆け出してしまったが、すぐに気づくべきだった。さっきの爆発で今までの景色は赤と黒で塗り潰された。それなのに彼女の髪色が残っているのはおかしい。それはつまり、先程の爆撃が彼女に届いていないことを意味する。
気づけなかった私は彼女に手を伸ばし、機会を狙っていた彼女はいつの間にか手にしていた小型の銃を私に向かって発砲した。
幸か不幸は、放たれた弾丸は私の頬を掠めただけだった。
「まなちゃん!もうやめようよ!」
初華ちゃんが叫ぶ。
「私は、まなちゃんと戦いたくない!」
純田まなの原型なんて無いのに、初華ちゃんは目の前にいる化け物をまなちゃんと呼ぶ。
「また一緒に、sumimiやろうよ…」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが壊れた。
ーなんで今?なんでもっと早く言ってくれなかったの
ーまなちゃんはずっと、ずーっと初華ちゃんを待ってたのに
ー勝手に違うバンドのメンバーになって、勝手にまなちゃんを一人にして
ーまなちゃんがどんな気持ちだったか…まなちゃんがどんな思いで一人で抱え込んでいたか
ーまなちゃんが、どれだけ初華ちゃんを見てたか、想っていたか知らないくせに
ーお前のせいで、まなちゃんが不幸になったことなんて知らないくせに
「まなちゃん、帰ろう、一緒に」
「無理だよ」
爆撃による加速。勢いが乗った私の拳は初華の体を吹き飛ばした。
「どの口が言ってんの?」
「ま、まなちゃん…」
「誰のせいで、まなちゃんが不幸になったと思ってんの?」
「……何を、言ってるの?まな」
「私は純田まなじゃない。純田まながもう一度sumimiを求めた結果産まれたクローンだよ。オリジナルの純田まなはもう死んでる」
読んでいただきありがとうございます
また次回も楽しみにしていただければ幸いです