わたくしという女の生涯最良の【推し】   作:一般通過炎竜

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キョウヤの凄まじい移動速度。ユカリは咄嗟に反応できない。

 

─────退屈だった。

 

わたくしの推しを集めてのわたくしだけのトーナメント。

 

最高の推し達と最高の推し達を戦わせ、最後には私と戦う……。これ以上の至高があるだろうか?いや、ない。

 

そう、思っていた。

 

それでもやはりわたくしは人間ということなのだろう。

 

飽きた、飽きてしまったのだ。

 

各地方の強者を集めても、ZAロワイヤルの猛者達を集めても、ハルジオをいじめても……。

 

この乾きは癒されなかった。いえ、ハルジオをいじめた時だけはちょっと癒されましたが……。

 

最早わたくしの乾きを癒してくれる【推し】はいないのでしょうか……と、思っていたある日。

 

わたくしのお耳に興味深い情報が入ってきたのです。

 

彗星の如く現れ、怒涛の勢いでロワイヤルを勝ち進み、見事高ランク獲得を成し遂げたという殿方のお噂。

 

曰く、彼はロワイヤル参加以前ポケモンバトル未経験。

 

曰く、彼は昨今話題となっている暴走メガシンカポケモンを鎮めた。

 

曰く、無辜の人々の悩みを解決するのが趣味。

 

曰く、彼は元々ただの旅行者だった……etc。

 

わたくし気になって色々なコネを使ってその方のバトルを拝見いたしました。だって、気になったんですもの。

 

結果と致しまして…その…大変お下品なのですが…ふふ…

 

お下品なのでやめておきますね……。

 

とにかく、わたくしは確信いたしました。彼こそ、わたくしの乾きを癒してくれる最高の【推し】になってくれる存在だと。

 

ハルジオを使ってバトルをけしかけてみたり、ユカリトーナメントに参加させる為にあれこれ根回しをしたり…色々な手段を使って彼と接触を計りました。

 

いざ彼と対面した時、わたくしは…その…大変お下品なのですが…その…

 

お下品なのでやめておきますわ。

 

何者も映さない漆黒の様なおめめ。整いすぎていて逆に畏怖を感じさせるご尊顔。スラリとした肉体のハズなのに強靭さを隠しきれていないオーラ。

 

ホント……ほんっっっっとに最高でしたわ……ズルいですわ、優しくて顔が良くて困っている人を見過ごせなくてポケモンバトルが最高に強い。逆に何を持ちえないのです?

 

その後も色々と彼のことを調べましたわ。気になったのが彼の手持ちポケモンの偏り…というか、こだわりですわね。

 

はじめてお会いしたとき、彼はガチゴラスにボスゴドラ、バンギラス、ハガネールにクレベース、最後にオーダイル。そういったパーティでした。

 

一定のタイプが好き、というより重厚で頑丈なポケモンを好むとの事でしたわ。その結果タイプが偏ったと。彼の様な人を【かいじゅうマニア】と呼ぶと、ハルジオが言っていましたわ。

 

そしてはじめてのわたくしとのポケモンバトル……。ああ、今思い出すだけでも紅茶三杯はイケますわ、間違いなく。

 

わたくしの可愛いフェアリーポケモン達は、彼の使役する、もはや災害とも言える猛攻に耐えきれる訳もなく……。

 

結果としてフロアの一部がバンギラスの『はかいこうせん』で吹き飛びましたが、悔いはありませんでしたわ。

 

わたくし、我慢出来ずに彼に言ってしまいましたの。

 

───どうか、そのお力わたくしの為だけにふるってくださいませんか?……と。

 

一般の方々が言えば傲慢の一言で済む話ですが、わたくしはユカリ。それが許される地位を獲得している女ですわ。

 

もちろんタダではありません。彼には望むもの全てを与えるつもりだったし、彼が望むのならばわたくしは一般観衆の前で彼に『てんしのキッス』を一発かますぐらいの覚悟はありましたわ。

 

でも……でも……でも…………!!!

 

───断る。

 

彼゛は゛そ゛う゛言゛っ゛て゛お゛帰゛り゛に゛な゛り゛ま゛し゛た゛わ!!!!!!

 

……ごほん、失礼。

 

わたくし自他ともに認める我儘お嬢さまですから、その程度では諦めませんでしたわ。その後も彼にアプローチし続けました。

 

それでも彼は日頃の人助けが忙しく、そもそも会えること自体稀になってしまいましたわ。メールも必ず彼が寝る前である夜にしか帰ってこないのです。

 

ハルジオを使って彼を探させたこともありましたが、彼ってすっごいのです。わたくしは一度しかお目にかかったことはありませんが、なにが凄いって彼の普段の移動方法ですわ。

 

屋根という屋根、足場という足場から走って飛んだりスマホロトムを使って疑似飛行を使いこなして移動してましたの。あれって確かパルクールってやつですわ。それのレベル100みたいなのをやっていましたの。

 

貴方はどこまでわたくしの心を掴んで離してくれないの…… ?

 

そして、あの事件…プリズムタワー暴走のあの一件以来、彼は瞬くまにミアレシティの英雄としてその名を轟かせることになりましたわ。

 

わたくしは自他ともに認める最高のお嬢様なので、彼に媚びを売る不届き者が現れない様に根回ししたり、ハルジオを使って不逞の輩を殲滅させていましたが…。正直いらない世話だったと思いますわ。

 

だって、彼ったら負け無しなんですもの。公式記録にもわたくしがかき集めたデータにも、彼の敗北は残っていない。

 

完全無敗の絶対王者。人々は彼を伝説のポケモントレーナーとして称えてやまないですわ。わたくしもその中のひとりですが。

 

「はぁ……【キョウヤ】さま……」

 

彼はいつになったらわたくしに振り向いてくださるのかしら。

 

わたくし……このままですと……このままですと……

 

 

我慢出来なくなっちゃいますわ…………

 

「ユカリさま!」

「───なに?ハルジオ」

 

ああ、驚いた。ハルジオったらいつの間にわたくしの背後にいたのかしら?それでもわたくしは完璧なお嬢様。表情には出しませんことよ。

 

「わたくしの近くで大声だなんて、いつの間にそんなに偉くなったのかしら?」

「いえ、キョウヤさまがお目見えですが…先程から返事が無かったので」

 

「なんでもっと早く言わないのこの高身長とスタイルの良さと顔の良さだけがとりえの駄竜は!!!」

 

「えぇ……(取り乱しすぎだろユカリ)」

 

わたくしは急いで、かつ的確にキョウヤさま用のメイクを済ませエントランスへ。ええ、もちろんガチ本気メイクですわ。

 

「キョウヤさま♡♡♡来て下さるとのでしたらこちらから迎えを寄越しましたのに♡♡♡」

 

エントランスに彼はいた、相変わらず凄まじいオーラですわ。思わず使った事が無いくらいの猫なで声が出てしまいましたわ。

 

というか、一体なんの御用時で……?

 

「突然すまない、ユカリ。今日は暇か?」

 

「はい!!♡退屈過ぎてヤドンになったと思うくらいに暇ですわ!!♡♡♡」

 

「あれ、ユカリさまって今日大事な会合あるから上に上がるなって……」

「シッ、あんた消されたいの?」

 

なにやら周りが騒がしい様な気がしますがそんなの知ったことではありませんわ。

 

ああ、キョウヤさま……相変わらずな漆黒の瞳。わたくしを映している様でどこか遠くを見ているかの様な…どうかわたくしだけを見て……。

 

「フェアリーポケモン相手のバトル練度を練り上げたくてな。俺が知る限り、君以上のフェアリー使いはいないから」

 

 

 

………………………はっ、いけない。至ってましたわ。

 

ヨダレが出そうになりましたわ、え、今キョウヤさまなんて仰いました?

 

君以上のフェアリー使い、君以上のフェアリー相手、君以上の妖精、君以上はいないって言いました!!??

 

え、結婚ですか?ですわよね?そう聞こえましたわ。

 

………………いけないいけない、冷静になりなさいユカリ。貴女はパーフェクトエレガントお嬢様。この程度の誘い文句にホイホイと乗っかる淑女ではありませんこ

 

「…ユカリ、大丈夫か?…熱でもあるんじゃないか?」

 

いまきょうやさまがわたくしのおでこをさわっててててあっかおがいいまつげながっがががががががががが

 

「はぅっ……」

 

「ユカリ!?だ、大丈夫か!?誰か!医者を呼んでくれ!!」

 

我が生涯に一遍の悔いなしですわ……。





かなり一発ネタなので続くかは分かりません。
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