ハイスクールD×D ― 禁断の契約   作:ハーレム人気者

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第2話誤解

重たい空気が、部屋の中をゆっくりと流れていた。

何かを言おうと、ヴァルトが口を開いた――その瞬間。

 

「……ごめんなさい。今のは忘れて」

グレイフィアはかすかに笑みを作りながら言った。

「ごめんなさい。ちょっと、用事を思い出したわ」

 

そう言って彼女は、背を向ける。

階段を上がる足取りは静かだったが、その背中はどこか危うく、

まるで一歩踏み外せば壊れてしまいそうなほど儚く見えた。

 

扉の向こうに姿が消えたあと、

ヴァルトはしばらく何も言えず、ただその場に立ち尽くしていた。

 

やがて、ぽつりと呟く。

「……すまない」

 

その声は小さく、悲しみに滲んでいた。

それが二階に届いたのかどうかは、誰にもわからない。

 

けれど――それが、今の彼にできる唯一の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヴァルト様に頼まれて屋敷を出たのはいいけど……」

リアスは森の中の細い道を歩きながら、眉をひそめた。

 

「……完全に道に迷ったわね」

辺りを見回すが、見えるのは木々ばかり。

鳥の声と風の音だけが響いている。

 

「肝心のスマホも圏外……まいったわ」

小さくため息をつき、髪をかき上げた。

慣れない人間界の土地、そして見慣れない道標。彼女にとっては未知の世界だった。

 

そんなリアスを、少し離れた木陰からじっと見つめる影があった。

 

「……あれ? これって、もしかして迷ってる感じ?」

木の陰から顔を出した少女が小声で呟く。

 

黒髪を高く結い上げ、忍装束のような軽装をまとったその少女の名は――飛鳥。

ヴァルトに仕える、リアス専属の“極秘護衛”である。

 

「助ける? うーん……でも私は彼女の存在を“護る”だけの任務。

姿を見せちゃいけないって、主様に言われてるし……」

 

そう呟きながら、飛鳥は頭を抱えた。

 

彼女の任務は明確だ。

 

> 『仮に俺とリアスが別々に行動するときは――リアスを最優先に護れ。だが、決して気づかれるな』

 

 

 

その主の命令が、今まさに彼女を苦しめていた。

 

「でもこのままじゃ……夜になったら危ないし……」

飛鳥は木陰でぐるぐると回り始めた。

 

「はぁ〜もう! どうしたらいいのよ!」

「無理だよ……柳生ちゃん、主様、助けてよぉ〜!」

 

泣きそうになりながら、飛鳥は地面にしゃがみ込む。

けれど――本当に助けが必要なのは、今まさに森の中で迷っているリアスの方だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うそ。ここ、どこ?」

リアスは木々の間を見回すが、どこも同じような景色ばかり。

焦りと不安が胸を満たしていく。

 

「やっぱり、グレイフィアに言われた通り一人で出るべきじゃなかったかしら……」

彼女の足取りは、次第に弱くなっていった。

 

その様子を、木の陰から見つめる影がひとつ。

 

――飛鳥。

リアスの護衛を任された、若き忍び。

 

(やばい……完全に迷ってる……)

心の中でつぶやきながら、飛鳥は頭を抱えた。

 

助けるべきか、それとも指示通り“影”に徹するべきか。

 

忍の世界では――一秒の遅れが命を落とす。

それを教えたのは、ほかでもない主・ヴァルトだった。

 

けれど、その教えを知っているからこそ、今の飛鳥は動けない。

心臓が早鐘を打つ。

 

いくら“忍”として生きているとはいえ、彼女はまだ十六歳。

恐怖と責任の狭間で、パニックになるのも無理はなかった。

 

そんなとき、ふと頭に過ったのは――三年前の記憶。

 

 

---

 

「いいか、飛鳥」

訓練場に響くヴァルトの声は鋭く、そして重かった。

 

「忍の世界では、一秒の遅れが命取りになる」

 

「は、はい!」

緊張で背筋を伸ばす飛鳥。

 

「じゃあ、相手に正体を隠したまま助けるときはどうする?」

 

飛鳥は腕を組み、うーんとうなった。

そして、ぱっと顔を上げて答える。

「私なら――隠れて助けます!」

 

その横で柳生が呆れたようにため息をつく。

「バカか。先生は“どうやって”助けるか聞いてんだよ」

 

「ひ、ひどい、柳生ちゃん……!」

 

柳生はそっぽを向いて「ふん」と鼻を鳴らす。

 

ヴァルトが少し笑い、柳生に尋ねた。

「じゃあ柳生、お前ならどうする?」

 

「俺なら……変装して相手を助けます」

 

「……さすがだな」

ヴァルトは柳生の頭を軽く撫でた。

 

「……!」

柳生の顔が真っ赤になる。

 

それを見た飛鳥は頬を膨らませた。

「ブーブー、柳生ちゃんだけずるい!」

 

柳生は冷たい笑みで答える。

「ふん。先生は、俺のものだ」

 

 

---

 

――その瞬間を、飛鳥は今も鮮明に覚えていた。

 

「……そ、そうだ! 変装して助ければいいんだ!」

顔をぱっと輝かせた飛鳥は、思わず叫んでしまった。

 

「これだぁーーーっ!!!」

 

森中に響く大声。

 

「っ……だ、誰!?」

リアスが振り向き、身構える。

 

当たり前だ。

この森は人がほとんど通らない。

そんな中、突如響いた叫び声――警戒しない方がおかしい。

 

(し、しまったぁぁぁ!)

飛鳥は木の陰で顔を真っ青にしていた。

 

「だ、誰なの……? まさか……はぐれ悪魔……!?」

リアスの声がわずかに震える。

 

(あわわわ……どうしよう! 完全にバレた! 主様ぁぁぁ!!)

 

飛鳥の心の中は、もはや修羅場だった

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