秋空の下、止まらない夢   作:冴月

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 休日の、お昼時。朝みんなで集まって、バンド練をする普通の日曜日。そのお昼には、いつもの中央に置かれているテーブルを囲んでいる5人だった。

 普段ならお菓子やらジュースやらが置かれている他に、ヤマブキパンの差し入れが置いてあるのだが……、今日は普段と異なる様相らしい。

 

「師匠。いつもはおかずを貰ってばかりだったが、今日はお土産があるぞ……。ずばり、白米で作った菓子だ! 煎餅と、米粉のみたらし団子があるぞ!」

 

「私はこの前香澄ちゃんが美味しいって言ってくれた二つと……。チョココロネならぬ、マロンクリーム・コロネだよ!」

 

「~~っ!」

 

 そう言って広げられた食べ物達に、目を輝かせる香澄が居た。声にならない声とはこれを言うんだろうな、と傍から見ていた有咲とたえは思った。

 

 どれかに手を伸ばそうとして……、いや、やっぱこっち……? でもこっちも捨てがたい……!

 

 手を伸ばし手は引っ込めて。ちょっと触れたと思ったら、やっぱり違うものに手を伸ばそうとして。そんな様子を傍から見ていると、ちょっと面白い。

 

 このままだといつまでもやっていそうなので、有咲は香澄に声をかけようとする……と。何やらいい匂いが漂ってくる。

 これは……炊きたてのご飯の匂い? それにしては、やけに香ばしいような……。

 たえと一緒に、鼻でくんくんと匂いを嗅いでしまう。ちょっと甘く、香ばしい醤油の匂い。それと、肉とかキノコの焼いたあの匂いとか、まるで五目ご飯のような……まさか。

 

 思わずりみの方を見ると、未だかつて無いほどのドヤ顔を見せていた。脇から炊飯器を取り出し、ボタンを押す。軽い音を立てて空いた炊飯器の蓋から、湯気と共に食材の香りが溢れ出す……!

 

「これが! ウチと獅子メタル殿の合作! "栗五目ご飯"だ!」

 

 いつの間に作ったのだろう。炊飯器いっぱいに入った艶やかな五目ご飯が、そこにはあった。

 パッと一目見るだけでも、栗、糸こんにゃく、ゴボウ、人参、鶏肉、キノコ……とにかく具沢山である。

 そして、極めつけは程よく味が付けられているだろうお米。濃すぎず、かと言って薄すぎず。けど、あくまで主役は自分だという主張もあった。

 

 あまりにも美味しそうな栗五目ご飯。りみ、沙綾を除く3人は、思わずゴクリと唾を飲む。

 そんな間にも、沙綾は手際よく皆にご飯を分けていく。蔵のどこからか茶碗を人数分見つけてきていたようで、シマシマの模様が入った茶碗に、しゃもじでご飯を盛る。

 今日のお昼は、五目ご飯とお菓子と季節の菓子パン。それとジュースとかお茶とか。炭水化物多めだが、育ち盛りの彼女達にはちょうどいい。

 

「……それじゃ、いただきます!」

『いただきます!』

 

 もう待ちきれない、といった様子で食べ出す香澄。まずは五目ご飯を手に取り、1口。目を閉じて、しっかりと噛み締めて、何度か頷く。また目を開いて、さっきよりも大きく1口。また目を閉じて、しっかり咀嚼して、心の底から味わって……。

 

「おいっ……しい!!」

 

 声を上げた。本当に美味しいのだろう、全身で美味しさを表現していた。なんとも言い難い、言いづらい動きだったが、美味しいんだろうなと言うのは、有咲達にしみじみ伝わってくる。

 そんな香澄にちょっと呆れてしまうが、ちょっと面白かった。悟られないようにちょっとジト目を香澄に向けてから、有咲は1口ご飯を食べる。

 

「え、美味しい」

「なんか、めちゃくちゃ美味しいっす!」

 

 同じくしてご飯を食べたたえも、似たような反応をした。驚いた事と、美味しさとの間のような反応を2人揃ってする。

 

「あんた、ほんとにこれ作ったわけ?」

「うむ。食材の選定、調達、調理まで全てウチだ」

 

 当たり前だろ、というように即答をする。

 何口か連続して食べ続けていたたえが、行儀よく飲み込んでから話し始める。

 

「白米炊けるのは知ってたっすけど、りみセンパイ料理出来たんすね」

「そうなんだよ、びっくりしちゃった、私が手伝ったのなんて、食材切るのと味見くらいだよ」

「くらいとはなんだくらいとは。料理は味見と切るのが一番大事なんだぞ」

 

 そういえば、りみがたまに味付きのご飯や丼物を無断販売していたのを思い出した。ライブした次の日とか、月初めとか。

 

「今日実入りがあった」

 

 なんて言って、炒飯やらチキンライスやら焼き飯やら。果ては唐揚げ丼やらハンバーグ丼やら。丼ぶりに入ったオムライスなんかも売りに出してた気がする。1杯100から450円とかで、営業時間は昼休み開始から先生に見つかるまで。なんていうおかしなことを定期的にしていたのだが、まさか全部手作りだったのか……。

 

「ん? そうだぞ。買って売るなんて転売だ転売」

 

 そう言って、パクパクとパンを食べ始めるりみ。米は普段から食べているからだろうか。

 もう一口食べてみるけど、やっぱり美味しい。栗も良いのを選んでいるのだろう、ご飯の味付けに負けてない。

 これ、本当に美味しいな……。手間かかるけど、販売できたら先生も買っちゃうんじゃないんだろうか……。とか思っていると、目の前に空になった茶碗が差し出される。

 

「りみりん、おかわり!!」

 

 米粒ひとつ残っていない。

 なんともまぁ、綺麗にすっからかんだった。いい食べっぷりを見せる香澄が、勢いよく茶碗を差し出していた。それを嬉しそうにりみは受け取り、しゃもじでご飯を山盛りにして、渡す。

 

「ありがとう!」

 

 大切そうに両手で受け取り、すぐさま1口。ペースは衰えず、変わらない。あっという間に2杯目がなくなりそうだった。

 

「香澄ちゃん、いい食べっぷりだねぇ。……ねぇ、マロンコロネはどう? 食べてみない?」

 

 香澄にずいと差し出されるマロンクリーム・コロネ。ゴクリとご飯を飲み込んで、沙綾の手にあるコロネにそのままかぶりつく。

 

 ほろ苦い中にほのかな甘さがある栗のペーストと、ホイップクリームのコラボレーション。しょっぱいものの後に甘いものを食べるのは最高だ。いくらでもいけると思う。

 

「師匠、甘いのなら団子があるぞ団子。山吹のパンも捨て難いけど、こっちの団子も手作りだぞ」

「香澄ちゃーん、こっちにはしょっぱい煎餅があるよー……」

「獅子メタル殿、それはウチが持ってきた……。ねぇ、ちょっと、それ、ウチ持ってきたやつ!」

 

 テーブルの向こう側から、香澄に差し出される旬の食べ物の数々。広げられるお菓子、注がれる飲み物。未だ良い食事ペースを維持している香澄は、存分に甘やかされていた。

 

「かすみんセンパイい食べっぷりっすね!」

「本当にねぇ……」

 

 香澄の食べっぷりが気持ちいいし、見ていてこっちも食べたくなるようなものがあった。本当に、美味しそうに食べるなぁと。有咲は、心のシャッターを静かに押していた。

 

 

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