秋空の下、止まらない夢   作:冴月

7 / 10
全然間に合いませんでした。

文字書きはfgoみたいなストーリーかけたら嬉しいね。




 翌日、朝6時。

 早起きして、いつもより数本も早い電車に乗って香澄が向かったのは公園だった。

 有咲の家から数分下った所にある公園で、林を切り取って造られたかのように木々が生い茂っている。春には桜が舞い散り、夏には若々しい新緑が見れ、秋には鮮やかな紅葉が見られる場所だった。

 

 ちょうど公園の中央辺りには、広場があった。大きな滑り台がその真ん中な鎮座していて、数メートルある滑走面がちょっと離れて2つある。滑走路の間には階段があって、上へと登れるようになっている。

 

 そんな公園で、今日からダイエットが始まるのだった。

 ちょっと早めに有咲の蔵に上がらせてもらって、通学とかの荷物を置いて準備して。そうこうしているとたえちゃんがやってきて、二人で公園へと降りていく。

 長い長い下り坂を、滑り落ちないよう降りながらたえと行く。

 

 

「ちょっと肌寒くなったね」

「そうっすね! もうパーカーの季節っす!」

 

 そういうたえは、青色のビニール製パーカー……というよりは、ジャンパーを羽織っていた。

 動きやすそうなショートパンツの下には黒のアンダーウェアを着て、いかにも運動しています、という感じだ。

 かく言う香澄も似たような感じで、朱色が所々に入った黒のセット品スポーツ・ウェアにアンダーウェアを着込んでいる。運動ができる方の姉のお下がりだった。

 

 公園の中央、広くなっているところに立った香澄達は、軽く準備運動をした。体育でやる時は嫌な気持ちが少なからずある動きだったが、仲間と一緒に、たえと一緒にやると、嫌な気持ちは芽生えなかった。

 

 数分程たえと体を動かす。ちょっとずつ身体がほぐれて、じわじわあったまってくる。そんな時に、たえは「よし」と、声を上げる。

 コンクリートの道の上にたえと立つ。準備運動は嫌じゃなかったとしても、ランニングはちょっと嫌だった。香澄は、運動が決して得意ではない。コンクリートの道が、舗装された長い、とてつもなく長い。無限に続くかのように錯覚しそうだった。

 

「最初はゆっくりにするっすから」

 

 ──じゃあ、行くっす!

 

 それだけ言って、たえは駆け出した。

 追従するべく、香澄も右足を蹴って前に進み出す。

 

 大きく手を振る。地面を蹴る。風を切って進む。普段使わない部分が悲鳴をあげる。息が上がる。鼓動が早くなる。呼吸が浅くなる。それでも前に進む。ライブの為、自分の為、仲間の為と前に進む。

 

 りみ程では無いにしろ。普段、ライブで飛び跳ねたり、走り回ったりしてるはずだけど、なかなかキツかった。

 きっと、ほぼ間違いなく、昨日までの不摂生が祟っていると考えるまでもなかった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 手足を回すように駆ける。いつも以上に身体が重く感じられる。

 最初こそ多少軽やかな足取りだったが、段々と重く、深い足音へと変わっていった。

 

 一方のたえは、未だ軽やかな足取りだった。足音軽く、まるで跳ねるように軽く走る。兎は跳ねて移動するけど、彼女の軽やかさはまさにそれだった。

 

 そんな二極化してる2人組が休憩に入ったのは、更に数分後のことだ。

 

「……大丈夫っすか?」

 

 吹き抜けのある、時計の付いたトンガリ屋根の休憩小屋。そのベンチに香澄は座りこんでいた。

 俯むいて下がる髪。その先から滴り落ちる汗は、嫌なものよりだった。

 

 思わず嘔吐しそうになっている、気分の悪そうな香澄の背中を優しく擦りながら、たえは声をかける。

 

「あれっすね。運動不足のヒトが、急に運動するとなるやつ」

 

 もうちょっと、ゆっくりやった方がいいっすね。と、水のペットボトルを差し出しながらたえは言った。

 お礼を言って、ペットボトルのキャップを開ける。何の変哲もない、ただの天然水を、一口だけ煽る。香澄は、火照った身体の中を、ゆっくりと水が流れ落ちて行くのを感じた。

 少しだけ、気分が良くなった香澄はふぅ、と大きく息を吐いた。気分が良くなったとはいえ、思考は下降気味のままだった。

 

 ──初日でこんな調子なのだ、この後どうなってしまうんだろうか。明日とか、筋肉痛で動けないんじゃないんだろうか。ああ、布団に包まって、貝になりたい……。あわよくば、ジュースとかお菓子とかと一緒に……。

 

 そんな甘えた考えは、耐えには見透かされているようだった。

 

 イタズラ好きな子供が浮かべるような、ちょっと小悪魔じみた笑顔を浮かべてたえは言う。

 

「まだ時間もあるし、もうちょっと走ってから帰るようにするっすよ。ちょ帰りはクールダウンがてら、ゆっくり行くっす」

 

「うえええ……」

 

 正直、結構ギリギリだった。トドメの一言を刺された香澄は、思わずベンチに横になる。

 仰向けになって、端っこの方に張った蜘蛛の巣を見つめる。住人不在の小さな蜘蛛の巣は、流れるそよ風で僅かに揺れた。

 

 ぼうっと蜘蛛の巣を眺めながら、いかに走らない言い訳をするかを考える香澄だった。

 人に乗って色んな考え方の物差しが違うように、人それぞれ個性があるように。人の納能力も人それぞれなのだ。

 つまり、香澄はできない側、物差しが短い側なのだ……。そんな言い訳を頭の中で考えていると、ひょいっと、端からたえの顔が現れる。

 

 長い髪が下に流れる。艶やかな毛先が、香澄の頬を優しくくすぐる。

 最初は、不満気な顔だった。口をへの字にムッと曲げて、如何にもちょっと怒ってます、と言うように眉が八の字に寄る。

 

 そんな状態で、たえと見つめ合う。綺麗な瞳、長いまつ毛。大人と子供の間のような、良いとこ取りの容貌。ちょっとくすぐったくなるくらいに、刹那か永遠か、どっちか分からない時間。そんな間見つめあっていると、不意にたえの顔が明るく瞬いた。

 

 

「ほら、かすみん!」

 

 笑顔、そして手を差し伸べてくれた。

 一瞬だけ、その表情の変わりように香澄はドキマギしてしまう。

 

 不意にくる表情。それも、可愛い子の表情というものは、やはり、こう、心に来るものがある。香澄はそう思う。

 

 たえちゃんの言うように、ちょっとずつ。ゆっくり、頑張っていこう。

 香澄はきゅっと、優しく、握り返した。




つきましては、完結は来年になります。

復帰からはじめ、今年もありがとうございました。
来年もよろしくお願いします!

中、長編の構想もあるので、来年はキリキリ頑張ってきたいですね……。
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