幼女「もらえる経験値、人>魔物では?」   作:北川ニキタ

19 / 30
19話 神の加護とゲーマーの勘

 わたしはセーラにしたのと同じ、「神様の加護が~」という説明を、ルスカーさんにも手短にした。

 彼は最初こそ「はあ?」と半信半疑だったが、わたしの本気の目を見て、何かを察したらしい。

 

「……なるほど。それで、俺と手合わせを、と。そういうわけすか」

 

「うん! それにね、わたし魔王に狙われてるんだ」

 

「……は? 魔王? あの、ゲオルグ大司教様が殉職なさったって話すか」

 

 ルスカーさんの表情から、完全にふざけた色が消えた。

 

「そうなの。だから、わたし、本気で強くならなきゃいけないの。この力がどれくらい通用するのか、試してみたいんだ」

 

 わたしは木剣を握る手に力を込める。

 

「でも、こんなこと、お父様やお母様に知られたら……きっと心配して、わたしをまたお部屋に閉じ込めてしまう。それじゃ、強くなんてなれない。だから、ルスカーさんには、内緒でわたしの訓練相手になってほしいの!」

 

「……ハッ!」

 

 わたしの必死の訴えを聞いたルスカーさんは、次の瞬間、堪えきれないといった様子で腹を抱えて笑い出した。

 

「ハハハ! おもしれえ! ただのお嬢様じゃねえと思ってやしたが、まさかここまでとは!」

 

 ルスカーさんの表情から、完全にふざけた色が消えた。

 

「そう。だから、わたし、本気で強くなるためにも、この力がどれくらい通用するのか、試してみたい。騎士団の中でも腕利きだって噂のルスカーさんなら、わたしの本気の訓練相手になってくれると思ったんだ」

 

「……ハッ! 魔王ねぇ。面白すぎるぜ、お嬢様!」

 

 ルスカーさんは、次の瞬間、腹を抱えて笑い出した。

 

「いいでしょう! その企み、乗ってやりますよ! そのためなら、本気の手合わせっぐらいやってやりますよ! お怪我されても、俺は知りやせんからね!」

 

 彼はそう言うと、木剣を構え直した。

 その瞳には、もう油断はない。

 獲物を前にした、本物の騎士の目だ。

 

「さあ、かかってきなさい、お嬢様! 神様の力がどれほどのものか、このルスカーが、直々に試して差し上げましょう!」

 

 こっちだって望むところだよ!

 わたしはドレスの裾をたくし上げ、ゲーマー【ミライ】の全神経を研ぎ澄ませた。

 模擬戦が始まる。

 ルスカーさんは、さすがに本職の騎士だ。レベルは知らないけれど、その構えに一切の隙がない。

 だが、わたしにはレベル33のステータスと、長年のゲームで培った経験がある。

 

「――はぁっ!」

 

 わたしは、床を蹴った。

 レベル1の時とは比較にならない速度で、一気に間合いを詰める!

 

「なっ……速っ!?」

 

 ルスカーさんの驚愕の声を置き去りにして、わたしは木剣を横薙ぎに振り抜く。

 ガキン!

 重い手応え。ルスカーさんが、わたしの剣を辛うじて受け止める。

 でも、遅い!

 

「――こっち!」

 

 わたしは即座に剣を引き、今度は下から上へと切り上げる。

 超高速の二連撃!

 ゲーマー時代に培った、対人戦のセオリーだ!

 

「くっ……!」

 

 ルスカーさんが、体勢を崩しながらも、必死に防御する。

 いける! 押してる!

 わたしは内心でドヤ顔を決めながら、さらに攻撃の速度を上げた。

 わたしの予想以上の強さに、ルスカーさんの顔から完全に余裕が消える。彼は数合、本気で打ち合うと、一度大きく飛び退いてわたしと距離を取った。

 

「……ハッ! お嬢様、あんた、本物だ。まさか俺が本気を出さなきゃいけないとはね」

 

 ルスカーさんは荒い息を整え、木剣を構え直した。

 その瞳には、もう遊びの色はない。

 

「お嬢様。騎士が自分のレベルを明かす時がどういう時か、ご存知ですかい?」

 

 わたしは首を横に振る。

 

「それは、相手に最大の敬意を払い、一切の手加減なく叩き潰すと誓う時。……俺のレベルは、35です」

 

 レベル35。わたしより、2つも上か。

 

「わたしのレベルは、33だよ」

 

 わたしが平然と答えると、ルスカーさんは一瞬驚いたように目を見開き、そしてすぐに獰猛な笑みを浮かべた。

 

「いいですか、お嬢様。この世界じゃ、レベルが1違うだけで、それはもう圧倒的な差になるんすよ。あんたがどれほどの神の加護を受けてるか知らねえが、俺には絶対勝てないですよ!」

 

 レベル差が絶対?  はっ、笑わせる。

 こっちはレベル1の時に、レベル53のゲオルグを倒してるんだ。

 だけど、レベルを明かしたルスカーさんの動きは、さっきまでとは別次元だった。

 

「お嬢様! 動きは速えが、大振りすぎるぜ!」

 

 バキン!

 ルスカーさんの木剣が、わたしの剣を弾き飛ばす。

 やばっ! 体勢が崩れた!

 

「――もらったぁ!」

 

 ルスカーさんの木剣が、わたしの小さな肩めがけて振り下ろされる。

 だけど、わたしは最強のゲーマー【ミライ】。

 この程度で、負けるわけにはいかない。

 わたしは、あえて体勢を崩したまま、無理やり身体を捻った。

 振り下ろされる木剣を、紙一重で回避! そして、がら空きになったルスカーさんの懐に、潜り込む!

 

「――わたしの、勝ちだよ!」

 

 ドンッ!  わたしが突き出した木剣の切っ先が、ルスカーさんの胸当てのど真ん中を、正確に捉えていた。

 

「……うそ、だろ」

 

 ルスカーさんは、自分の胸に突き刺さった(もちろん寸止めだけどね)木剣と、息一つ乱していないわたしの顔を、信じられないという表情で、ただ呆然と見つめていた。

 

「ふふん。どうよ!」

 

 わたしは木剣を引くと、今日一番のドヤ顔で、胸を張った。

 やっぱりわたし、最強かな! ドヤァ!

 

「……は、はは……。ハハハハハ!」

 

 ルスカーさんは、やがて、乾いた笑い声を上げ始めた。

 

「降参だ、お嬢様。完敗っすよ……。まさか、神様の加護ってのが、これほどとはね」

 

 彼は木剣を放り投げ、その場に大の字に寝転がった。

 

「あー、面白かった。……魔王、ね。こりゃ、旦那様に知られたら、大騒ぎになりますよ」

 

「黙っていてよね?」

 

「当たり前じゃないすか。俺はもうお嬢様の虜ですよ。お嬢様の命令ってなら、絶対に聞きますよ。あぁ、俺ももっと強くならねぇとな」

 

 ルスカーさんはニヤリと笑うと、空を仰いだまま呟いた。

 その言葉は、まるでわたしの心を代弁しているかのようだった。

 そうだ。

 レベル33じゃ、まだ足りない。

 あの快感……ううん、じゃなくて、わたしは、みんなを助けないといけないのだから。

 

「うん。わたしも、もっともっと強くなりたい」

 

 わたしは、まだジンジンと痺れる小さな拳を、強く、強く握りしめた。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

118 名無しのダイバー

おいおいおいおい!!

今の見たか!?

Lv35のルスカーさんが、アリス様に完敗したぞ!

 

119 名無しのダイバー

見てた! なんだあの動き!? 速すぎだろ!

 

120 名無しのダイバー

ルスカーさんがレベル明かした時、「あ、終わった」と思ったのに…… まさかのカウンターで一本取りやがった!

アリス様、最強すぎだろ!!!

 

121 名無しのダイバー

「わたしのレベルは、33だよ(キリッ」じゃねえのよwww

かっこよすぎんだろ やっぱアリスたんは最強かよ!

 

122 名無しのダイバー

いや、天使だよ(真顔)

 

123 名無しのダイバー

そもそもレベル33ってなんだよwww

この前までオール1だったじゃねえか!

あのデブ(ゲオルグ)殺したの、やっぱり……

 

124 名無しのダイバー

>>123

そんなわけあるか!

あれは「魔王の奇襲」でアリス様は「神の加護」を授かったんだろ!

アリス様がそう言ってた!

 

125 名無しのダイバー

神の加護、やべええええええ!

いきなりレベル33になって、岩とか持ち上げて、騎士より強くなるとか!

チートすぎんだろ!

 

126 名無しのダイバー

俺も神様の加護ほしいわ……

このクソゲーみたいな現実じゃなくて、向こうで活躍したい

 

127 名無しのダイバー

いや、お前ら、ちょっと待て

俺は神の加護とかよりも、アリス様の「動き」の方がヤバいと思う

 

128 名無しのダイバー

>>127

わかる

ルスカーさんの剣、全部紙一重で避けてたよな

最後のカウンターとか、達人の動きだったぞ

あれが6歳児の動きか?

神の加護で身体能力が上がっただけじゃ、あんな芸当できねえよ

 

129 名無しのダイバー

ルスカーさんがレベル明かして本気出した時、俺もうダメかと思った

「レベルが1違うだけで、それはもう圧倒的な差になるんすよ」ってセリフ

あれ、この世界の常識なんだろ?

 

130 名無しのダイバー

>>129

そう

レベル差は絶対

なのに、アリス様、レベル差をひっくり返したぞ

最後の決め顔、最高に可愛かった(昇天)

 

131 名無しのダイバー

「ふふん。どうよ!(ドヤァ)」

あそこで俺は悶え死んだ

 

132 名無しのダイバー

>>128

だよな

戦闘経験がゼロの子供が、いきなり歴戦の騎士相手に立ち回れるわけがない ステータスが上がっても、中身は6歳児のはずだろ

 

133 名無しのダイバー

……まさかとは思うが アリス様が「神の加護」って言ってるの、全部ウソだとしたら?

ゲオルグも魔王ではなく、アリス様が直々に殺した

だから、レベルも高くなった

モンスターではなく、人でもレベルってあがるはずだよな?

 

134 名無しのダイバー

>>133

は?

不謹慎すぎだろ

あんなかわいい天使が嘘ついているわけねえだろ!

セーラさんのために命懸けた姿見てなかったのかよ!

 

135 名無しのダイバー

>>133

アホか

6歳児がLv53の大司教をどうやって殺すんだよ

「魔王の奇襲」以外ありえねーだろ

アリス様がガチ泣きしてたのがなによりの証拠だ!

 

136 名無しのダイバー

でも、一応「アリス様=救世主」説もあるにはあるだろ?

もし中身が「記憶持ち」のヤベー奴だとしたら……

 

137 名無しのダイバー

>>136

憶測乙

仮にどんな天才だろうが、レベル差なんて普通は覆せねえよ

神の加護がチート性能だった、それだけ

あんな純粋な天使を疑うとか、お前こそ悪魔だろ

 

138 名無しのダイバー

>>137

だよな!

俺もアリス様を信じる!

あの方は、メイドの妹のために私財を投げ打って、自分の命すら懸けた聖女なんだぞ!

あのドヤ顔も、天使のドヤ顔だ!

 

139 名無しのダイバー

でも、ルスカーさんを完封したあの戦闘スキルは、どう説明すんだよ…… 神様が、戦闘技術までインストールしてくれたってのか?

 

140 名無しのダイバー

わからん

もうアリス様がすごすぎて、何が起きても驚かんわ 神様ならそれくらいやるだろ(適当)

 

141 名無しのダイバー

どっちにしろ、アリス様が「もっと強くなりたい」って言ってるのがヤバい

レベル33でも、まだ満足してねえぞ、あのお方

 

142 名無しのダイバー

魔王に狙われてるんだから、当然だろ

ああもう! 俺が代わって守ってやりてえ!

 

143 名無しのダイバー

お前じゃ無理だろw

 

144 名無しのダイバー

アリス様、次はどんな活躍するんだろうな……

ワクワクが止まらねえ!

 

まとめサイト【グノーシス速報】より引用

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。