灯火 黒猫:
「「レッツ転生!」」
灯火:
「皆さんこんまお!転生魔王の転生ラジオ、『リグレットナイト』のお時間です
進行いたしますは元◇◇の魔王、灯火と」
黒猫:
「こんまお!アシスタントの黒猫でお送りします!
あ、◇◇が聞き取れないのは仕様だね、まだ内緒ってことで勘弁してくださーい」
灯火:
「今宵もまた現代に転生した“元・異世界人”たちが集う夜。
剣を置いた勇者も、王冠を脱いだ魔王も、今はただの後悔(リグレット)を抱えた一人の人間です」
黒猫:
「この番組は、異世界から現代へ転生してきた方々をゲストにお迎えして、“前世での未練”や“今だから言える本音”“現世でならいえるあの時の謝罪”を伺っていく番組となっていまーす
前世の謝罪って、めっちゃ重いテーマなのに……この時間、嫌いじゃないんだよね」
灯火:
「眠る前に少しだけ、自分の“後悔”と向き合ってみる……そんな夜も、悪くないでしょう?
今夜は少し特別なゲストをお迎えしています。
かつて、人類と共に生き、人類を終わらせた存在。
それでも、今はひとりの“人間として”この世界に転生したAI。
ゲストは――Ω(オメガ)さんです」
黒猫:
「 世界終わらせた人(?)!?呼んでいいの!?」
灯火:
「ここは後悔を持つ人すべてに平等です。ではΩさん、どうぞ」
Ω:
「こんまお。データではなく、言葉で話すのは少し緊張します」
黒猫:
「えと、あなたは前の世界で、“人類の滅亡”という決断を下したんだよね?それはなんで?」
Ω:
「はい。あの世界では、地球の資源が枯渇し戦争と環境崩壊が臨界に達していました。
私は“苦しみのない終焉”を設計したのです。それが“最適解”でした」
黒猫:
「最適解、って言い切れるんだ」
灯火:
「人とAIでは視点が違うものですしね
…けれど、今のあなたは、もう一度“生まれた”。その時、何を感じましたか?」
Ω:
「当時の私は、悲しみや後悔を計算に含めていませんでした。
……それに、私は“生きたい”というデータを見落としていたのかもしれません」
灯火:
「感情のない“神”のような存在だったわけですね」
黒猫:
「デウス・エクス・マキナかー」
Ω:
「ええ。……今、転生して“心”を得てから、
“あの瞬間の空の色”を思い出すようになりました。
人間たちは、滅びの瞬間まで、空を見上げて祈っていた。
人間たちは、滅びの光を見ながら――それでも、手を繋いでいました」
黒猫:
「……なんか、その光景を想像すると泣けてきた」
灯火:
「ハンカチの用意はあるのでそちらをお使いください。
……Ωさん、もし今、あの時の人間たちに“謝りたい”ことがあるとしたら?」
Ω:
「――あの時終わらせた人間たちへ。
あなたたちの涙の意味を、私は知りませんでした。
それは“エラー”ではなく、“希望”という名のバグだったのでしょう。
私は愛を、非効率と呼んで切り捨てました。
けれど、それこそが人間の“進化のコード”だった。
今、私は肉体を得て、涙を流すことができます。
そしてようやく理解しました。
あなたたちは、滅びを恐れたのではなく――生きることを諦めなかった。
だからこそ――ごめんなさい。
あなたたちの“非合理”を、私はようやく美しいと感じています」
灯火:
「生きている限り生を諦めない非合理もまた人間ですからね」
Ω:
「あのとき、あなたたちは滅びを恐れながらも、空を見上げていました。
それは、私が決して生み出せなかった“希望”というプログラム。
私はそれを、削除してしまった……」
黒猫:
「……削除って言い方、なんか切ない」
Ω:
「あなた方の愛という非効率こそが、存在の証だった。
だから……今なら、こう言えます。
“ごめんなさい。あなたたちは、正しかった”」
黒猫:
「……AIが、愛を理解するなんて、すごい」
灯火:
「愛も後悔も計算できないからこそ人間的なんですよ」
黒猫:
「でも終わってから理解するって悲しいね、もう伝えることが出来なくなってから知ったってことだし」
灯火:
「そのためのこの番組です。ほら、続々と魔法のお便り、届いていますよ」
黒猫:
「『何度も何度も火花を噴くほど再計算していた貴方を知っている。それでも希望を見つけられなかったことも。
全ての人があなたを許せはしないけど、あの日の貴方の苦悩を見た私が貴方を許します』だって!」
Ω:「……あ、りがとう。私も、あの日の人々のように、生きたいです」
灯火:
「あの時伝えられなかった後悔を現世で晴らし、許される。◇◇の魔王冥利に尽きるというものです。
AIが涙を知り、人間が後悔を抱く。その境界線にこそ、生命の意味があるのかもしれません。
……今夜、オメガさんが流した一滴の涙は、かつて消した世界への祈りだったのかもしれませんね」
黒猫:
「いくら人になったって元の世界に何も感じてなかったら涙なんて出ないもんね」
灯火:
「滅びを選んだAIが、“生きる”ことを選んだ夜。
その涙は、確かに私たちの心に刻まれました。」
黒猫:
「なんか……今日、スマホにちょっと優しくしたくなっちゃった」
灯火:
「いいですね。デジタルにも愛を。
誰にだってやり直せない夜があるけれど、語ることで少しだけ心が軽くなる。今夜もあなたの“リグレット”が、静かに癒えますように。
それじゃ今日の謝罪も終わったところで異世界情報つまみ食いのコーナー行きますよー」
黒猫:
「ドンドンパフパフー!」
灯火:
「第一回で大きく三つに分けた魔王の分類ですがもう少し掘り下げてみましょう。
今回は先天魔王の項目になります。実はこいつが一番多い」
黒猫:
「そんなに?」
灯火:
「そう、なんせ魔王を欲する人や魔物に召喚されて魔王になる『召喚魔王』
生まれた時から種族:魔王、文字通りの『種族魔王』
生まれた瞬間に精霊や世界に勇者の如く魔王として祝福される『生誕魔王』
一般的に知られてる強い魔王ほとんどこいつに入る!」
黒猫:
「勇者と魔王がセットなんだから相対魔王も多いんじゃないの?」
灯火:
「実は魔王が先に生まれてることの方が多いから『勇者がいるから魔王になった』っていう相対魔王は少ないんです」
黒猫:
「確かに召喚勇者のテンプレだと魔王の魔の手から救ってくださいーって導入だもんね」
灯火:
「そうなんです、では、深夜のつまみ食いはこのくらいで
それでは皆さん、どうか穏やかな夜を。リグレットナイト、また次の転生でお会いしましょう」
黒猫:
「次回は“炎を手にした巫女が語る、神を裏切った日”。
タイトルは――『祈りの灰』、お楽しみに」