第3回~転生巫女・アマリア~
灯火 黒猫:
「「レッツ転生!」」
灯火:
「皆さんこんまお!転生魔王の転生ラジオ、『リグレットナイト』のお時間です
進行いたしますは元◇◇の魔王、灯火と」
黒猫:
「こんまお!アシスタントの黒猫でお送りします!
あ、◇◇が聞き取れないのは仕様だね、まだ内緒ってことで勘弁してくださーい」
灯火:
「今宵もまた現代に転生した“元・異世界人”たちが集う夜。
剣を置いた勇者も、王冠を脱いだ魔王も、今はただの後悔(リグレット)を抱えた一人の人間です」
黒猫:
「この番組は、異世界から現代へ転生してきた方々をゲストにお迎えして、“前世での未練”や“今だから言える本音”“現世でならいえるあの時の謝罪”を伺っていく番組となっていまーす」
灯火:
「今夜のテーマは――“神を裏切った巫女”」
黒猫:
「ダニーの時にも出たけど裏切りって言葉は強烈だね……。
しかもよりによって相手が“神”って、スケールがでかすぎる!」
灯火:
「彼女は、“信仰”と“愛”の狭間に揺れ、最後に炎を選んだそうです」
黒猫:
「炎は、燃やし照らすものだけどなんだかもっと激しい炎な予感!」
灯火:
「それでは今夜のゲスト、元・炎の巫女、アマリアさんです」
アマリア:
「……こんばんは。神を捨てた巫女として呼ばれる日が来るとは、思いませんでした」
黒猫:
「別に裁くとか糾弾するとかそういう番組じゃないので、肩の力を抜いてリラックスしてねー」
アマリア:
「よろしくお願いしますね」
灯火:
「早速ですがアマリアさんは、“神に仕える巫女”でありながら、人を愛してしまった――と。」
アマリア:
「ええ。その人は、神殿に仕える警護兵でした。
神を讃える私の声なんかより、彼の笑い声の方が……心に響いたんです」
黒猫:
「おやおやこれは……禁断の恋、ってやつですね!響きだけならロマンチック」
灯火:
「ですが神に捧げた物を奪う形になった彼にとっては危険な状態だったのでは?」
アマリア:
「神は私に“炎”を与えました。清め、照らし、裁くための炎。
ですが私は、その炎で神殿を焼いた。彼を――神の罰から逃がすために」
灯火:
「神を裏切った、というのは……そのことでしたか」
アマリア:
「はい。神の声すら聞けなくなった私の心の中で、愛だけが燃えていました」
黒猫:
「うーん、情熱的」
アマリア:
「――あの夜、私は神の御名を呼びながら彼の名を叫びました。
祈りと恋は同じ場所にあってはいけない、そう教えられてきたのに。
私が燃やしたのは、神殿でも律でもなく――自分の“信仰”そのものでした。
それでも彼を救いたかった。
炎が灰になるその瞬間まで、炎よりも熱を帯びた彼の手を、離せなかったのです」
黒猫:
「はぁ……綺麗なのに、なんだか苦しい話だね、巫女だから出会えて巫女だから問題かぁ」
灯火:
「愛は、時に神よりも残酷です。けれど、それでもなお、人は誰かを愛し神に祈る。
アマリアさん、もしあの神に再び祈れるなら、何を伝えたいですか?」
アマリア:
「あれだけの事をしでかした私に“赦し”はいりません、と。あの夜、私は確かに御身を裏切りましたから。
けれど、あの人の命の中に、私が灯したあなたの炎が焼き付いているのなら――それだけで私は何も望まない、と」
黒猫:
「……それはもう祈りだよ。形も祈るものも変わってしまったけれど信仰じゃないか」
アマリア:
「ふふ……そうかもしれませんね。
私は“神を信じること”より、“誰かを愛し、忘れないで、と祈ること”を選んだのです」
灯火:
「信仰と愛――どちらが正しかったのかは、きっと誰にもわかりません。
けれど、燃え尽きた灰に残った温もりだけが、彼女の祈りの形を語っています」
黒猫:
「“燃え尽きた祈り”って言葉がこんなに綺麗に聞こえる夜はないね」
灯火:
「っと今日も魔法のお便りが届きましたね、差出人の所為か少し煤けてはいますが、黒猫さん、どうぞ」
黒猫:
「はいはい、『炎の神が恋の炎に身を焼いた我が巫女の何を嫌うものか、赦す事など何もないお前は何も裏切ってなどいないのだから』…ですって。他にも書いてるけど意訳したら『恋焦がれたらそのくらいの熱量出るよね、よくあるよくある、今の管理している神社は燃やさないように気をつけなさいね』」
アマリア:
「……これは、神様からなんですか?」
灯火:
「はい、侵略すること火の如く、燃え盛る情熱が神殿を炙った程度の事、日常茶飯事といわんばかりに寛大なお答えでしたね」
アマリア:
「私の悩みなど、神様から見ればほんとにちっぽけなんですね。
恋焦がれたらよくある、なんていっそ笑っちゃいそうです」
黒猫:
「ってちょっと待った!魔法のお便りは現世からしか届かないんでしょ!神様も転生したの?!」
灯火:
「神が人界に降りて来る逸話などよくある事です、その依り代からのお便りだと思いますよ」
アマリア:
「神から目をそらした私を、それでも神は見守ってくれていた…そう思うと救われますね」
灯火:
「はは、それはよかった。――誰にだってやり直せない夜があるけれど、語ることで少しだけ心が軽くなる。
今夜もあなたの“リグレット”が、静かに癒えますように。
それじゃ今日の謝罪も終わったところで異世界情報つまみ食いのコーナー行きますよー」
黒猫:
「ドンドンパフパフー」
灯火:
「今回は後天魔王の項目ですね、といってもほぼ先天魔王以外で勇者が関わらない魔王全般がこちらになります」
黒猫:
「大雑把すぎる!」
灯火:
「代々装備を引き継いでそれを担うもの、装備に選ばれた者が魔王になる『装備魔王』
自称他称とわず世界に広く魔王と認識される『認識魔王』
元の種族から何らかの要因で進化した『進化魔王』
もしくは上記の複合なんて場合もあります。私の場合は認識と進化の魔王にあたりますね」
黒猫:
「ハイブリット魔王…!」
灯火:
「後天魔王はそういうのがよくいます。では、今日のつまみ食いはこのくらいで
それでは皆さん、どうか穏やかな夜を。リグレットナイト、また次の転生でお会いしましょう」
黒猫:
「次回は――“愛した人間を運命という言葉で見捨てた精霊”。
タイトルは『風は、彼を置いて吹いた』、お楽しみに」