真灯真美は魔王である   作:灯乃葵

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01 晴れやかな魅力

「ーーーーです。皆さんよろしくお願いします」

 

4月24日。高校二年生に進級してから少し過ぎた春の日。真灯真美は教室の一番隅の席で頬杖をつきながら外を眺めていた。

 

「ふわぁ.......」

 

腰まで伸びる長い黒髪と整ってはいるがあまり感情豊かではない顔はどこか冷たい印象を相手に持たせる。その印象に反せず、真美はかなり冷めた性格をしていた。

真美は視線を前に向ける。教卓の横には今日転校してきた少女がいた。

 

「(おお)」

 

そう思うほど転校生は魅力的な容姿をしていた。肩まで伸びた銀髪におっとりとした優しそうな顔立ちをしている。しかしそれに反して胸元は制服の上からでもわかるほど凶悪だった。自分のスレンダー(笑)な胸元を見て真美は舌打ちする。

転校生の自己紹介が終わり、担任が空いている席を探し始める。その視線が真美の隣に向けられた。

 

「それじゃあ星城さん、真灯さんの隣があなたの咳よ真灯さん、星城さんにいろいろと教えてあげてくださいね」

「はぁ」

 

返事だけはするが、真美は話しかけられても無視しようと決めた。どうせ真美が相手しなくても周りのお節介焼きが相手をしてくれるだろう。そう考えていたら、転校生が隣に座った。視線だけ動かして改めて見ると、やはりかなり整った容姿をしていた。すると見られていることに気付いたのだろう、転校生がニッコリと微笑んできた。続けてその可愛らしい小さな唇が動いた。

 

「えへへ、よろしくねまーちゃん」

 

瞬間、真美は初めて思考が停止するという感覚を味わった。まさしく空白といった感じで、何を口にすればいいかが全く思い付かない。たっぷり1分程使って、ようやく真美は返答する。

 

「あの、まーちゃんって誰?」

「まーちゃんはまーちゃんだよぉ。あれ?それともまっちゃんの方が良かった?」

「待って待って。え、もしかして私のことなの?」

「いえすいえす。というわけで改めてよろしくまーちゃん!」

「やめなさい」

「えーそれじゃ、まっちゃん?」

「違う!あだ名を付けるのをやめなさいと言っているのよ!普通に真灯さんでいいじゃない!」

「えー、おもしろくなーいー」

「いいから。あだ名とかやめて」

「わかったよぉ、真美ちゃん」

「はいストップ。なんでファーストネーム&ちゃん付けなのかしら?」

「だってあだ名はイヤだって言ったじゃない」

「言ったけど!え、私「真灯さん」って呼んでって言ったよね?」

「まーにゃんはワガママだなぁ」

「もうこいついやだ!」

 

頭を抱えて絶叫する真美。久しぶりに他人とまともな会話をしたこともあるのだろうが、この少女と喋るととても疲れる。

だがまだ終わらない。真美は顔を上げて周囲を見回して愕然とした。何故なら、クラスメイト全員が真美の方を見てヒソヒソ喋っているのだ。

 

「私、真灯さんがあんなに喋ったの初めて聞いたんだけど.....」

「真灯さんも慌てふためく時があるんだ、意外......」

「ていうか同じ人間だったのか。俺人形か何かかと本気で信じてたんだけど」

 

そんな声が聞こえてくる。いや、陰口を言われるならまだいいが、あからさまに興味津々なことを言われるとものすごく気まずい。そもそも真美は目立たずにいたいのだ。だからこそこの状況はまずい。かなりまずい。

 

「.......そうだ、先生、先生!この騒ぎを納めてください!!」

「.......(感動の眼差し」

「味方が誰もいない!?」

 

いわゆる四面楚歌を初体験して恐れおののく真美。諸悪の根元である転校生はえへへと笑っていた。

そういえば、と半分現実逃避気味に真美は思う。話を良く聞いてなかったからなのだが、真実は転校生の下の名前を知らない。しかしどうせ下の名を呼び会うことなんてないだろうから知る必要はないだろう。

転校生はにこにこととても可愛らしい笑顔で話しかけてきた。

 

「ねーねー、まーちゃん!」

「だからその呼び方は.....!あー、もう何よ!?」

「あのねあのね、」

 

 

この時、この瞬間、この言葉がきっかけで真灯真美の運命は大きく変わってしまった。

ひとりぼっちなだけで他は平凡な普通の少女から、ひとりぼっち異質で異常な少女へと。

 

「世界を救う『魔王』になってくれる?」

 

思わず真未が聞き返そうとして、しかしできなかった。何故なら変化に気付いたからだ。今の今まで真美の稀有な光景を目にして大騒ぎしていたクラスメイト達が、まるでビデオを一時停止したかのように静止している。慌てて椅子から立ち上がり、耳を済まして、窓から外を見る。愕然とした。この教室だけではない、学校が、町中が完全に停まっていた。

 

「な、なにこれ.....!」

「うん、ちゃーんと大赦の連絡通りだね。じゃあまーちゃん、ちょっと目を閉じててね」

「は、え?大赦ってあの大赦の事?あんた一体何者なのよ!?」

「説明は後でちゃんとするから!ほら早く目を閉じてってあー!少し我慢しててね!」

「我慢?ちょっと待って何がーーーーー」

 

真美はその言葉を最後まで言うことができなかった。何故なら、突然花の嵐が巻き起こり、町を、学校を、教室を、そして真美を呑み込んでしまったからだ。視界を花びらに包まれながら真実は思った。

 

ふざけるな、と。

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