真灯真美は魔王である   作:灯乃葵

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02 温かい心

「ん、う.......?」

 

頭は少しぼんやりとしているが、手足に力は入ることを確認すると、真美は目を開けた。

そしてまたもや驚愕に包まれた。

真美がいたのは『樹海』だった。

不思議な色をした幹や根っ子、木が絡まり合い、果てが見渡せない程に巨大な森を作り出していた。

真美が立っているのもそんな幹の上だった。

 

とりあえず自分の今の状態を確認してみる真美。しかし着ている服が制服という時点で予想はしていたが、やはり役に立ちそうな物はなかった。あまり使っていない黒色のスマホならあったが、そもそも圏外になっていた。

 

「どうしよう.....」

 

改めて考えてみると、これは相当ヤバいのではないのだろうか?

どこなのかはわからない。連絡を取る方法もない。頼れる人間もいない。

そう考えると、思わず涙が溢れそうになってしまった。

 

「.......誰か、助けてよぉ」

「はいはーい!まーちゃんやっと見つけたよ!」

「みきゃああああああ!!!?」

「みゅ!?なにどうしたの!」

「いやいや!あんたどっから出てきたの!」

「え、上から落ちてきたの」

「上から!?いや、それよりも!あんた今の聞いてた!」

「今のって?」

「い、いや、聞いてないならいいけど」

「.......誰か、助けてよぉ。かーわーいーいー!」

「コ ロ ス」

 

足払いをかけてから星城のマウントを奪い、拳を降り下ろす。するとその大きな胸に当たりポヨンと跳ね返され、何か負けた気がして真美はその場で崩れ落ちた。

 

逆に勝ち誇った顔で星城は起き上がると、制服からスマホを取り出してその画面を見た。

そして決意を固めたような表情で、真美に向けて言う。

 

「まーちゃん、私がついさっき言ったこと覚えてる?」

「.....『世界を救う『魔王』になってくれない』だっけ?」

「そ、私が勇者でまーちゃんが魔王に変身して、奴等からシンジュ様を守るの

「シンジュ様を守る?それに、奴等って.......?」

「奴等っていうのは、あれのこと」

 

星城は真美の後ろを指差した。真美は当然振り向いて、星城の指の先を見た。見て、後悔した。

視線の先。木や根っこがのたうち回るその先に、『異形の存在』がいた。

青色の魚、なのだろうか。それが二匹背ビレのような部分を鎖か何かで結んでいる。体長は恐らく50mを越えるのではないだろうか。

人は自分の理解の範疇を越える存在に出会うと頭が停止するという話があるが、今の真美がまさにそうだった。

身体が動けないし、動かない。

思考が続けられないし、続かない。

 

「ひ、あ」

 

そして、その変化はある種の感情へと繋がっていく。

そう、『恐怖』という名の感情に。

 

「ああああああああ!!!!ああああああああああ!!!!!!」

 

絶叫する。それは自分の心に芽生えた恐怖から逃げるための行為なのだろう。

だが。

それでも視線の先でうねるように動く『存在』がとても恐ろしかった。どんなものより、どんなことよりも『恐怖』を感じた。

 

「(こわい、こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいーーーーー!)」

 

その時だ。

 

ふわり、と。星城が恐怖に震える真美の身体を抱き締めた。そして、耳元でゆっくりとした口調で話し掛ける。

 

「落ち着いて、まーちゃん。大丈夫、今回だけは、見てるだけでいいから」

「.......あ、え?」

「これはまーちゃんに説明しなかった私の責任。だから安心して。あの敵は、私が倒す。だって、」

 

ニコリと笑うと、星城は真美から離れた。彼女はスマホを取り出した。その画面に表示されているデフォルメされた鈴蘭の花に指先で触れる。その瞬間、スマホから白い花びらが舞い散り、星城を包んでいく。

星城が花びらに包まれて見えなくなる寸前、真美は彼女の温かい声を聞いた。

 

「だって私は、みんなを守る『勇者』なんだから」

 

 

白い花びらを指で摘まんで、逆の腕に触れさせる。すると、まるで花が咲くように星城の腕が白い布に覆われた。

もう片方にも触れさせると、同じ白い布が腕を覆った。こちらには手の甲のところに鈴蘭の花の紋様がある。

次は両足に連続で触れる。白石区ニーソックスと同じ色のブーツが足を包んだ。

続けて上半身。花びらを二枚取り、一枚触れさせると白色のチャイナドレスのような服が現れ、もう一枚使うと服の全体に花びらの意匠が施された。

そして最後に花びらと共に髪の毛に触れると、色が輝く銀髪に変わり、右側に大きな鈴蘭の花のアクセサリーが現れた。

 

これが勇者。

世界を守るために選ばれた、最強の戦士である。

 

花びらが消える。

そこから現れたのは白い服に身を包んだ星城だった。真美が思わずという風に口を開く前に、星城が言う。

 

「それじゃあまーちゃん、ここにいてね。念のためこれ渡しておくよ」

「スマ、ホ.......?」

「これを持っておけば奴の攻撃からも守ってくれるから。じゃあ私は行くね。出てきてくりゅー!」

 

ポン!という音と共に、星城の頭の上に小さな白銀の飛竜が現れた。星城が竜の喉を撫でると、気持ち良さそうに「くぅ」と鳴いた。

 

「さぁて、くりゅー、私たちの力見せてあげるよ!!」

「くううう!」

 

金属が擦れるような音が辺りに響き渡った。音源は魚の化け物からだ。それを見た社が両腕を振る。すると二枚の鉄扇が現れた。扇を構えて彼女は後ろにいる真美に言った。

 

「.......そういえば。まーちゃんってば私の下の名前知らないでしょ?」

「え、あ、うん」

「もう!自己紹介で言ったのに!私の名前はね、星城社」

 

そして、と社は続けた。

 

「バーテックスから世界を守る、『勇者』だよ」

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