真灯真美は魔王である   作:灯乃葵

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結城友奈は勇者である、終わりましたね。
結構ご都合主義だったし、まだ説明してないところあるよね?って思いました。それでもすごく強くて、可愛くて、みんながみんな立派な勇者だったと思います!



04 あなたを大切に

「あああああああああああああああ!!!!!」

 

漆黒の魔王と化した真美は、樹木の幹から跳び、弾丸の様な速度でバーテックスに突撃する。

現在バーテックスは、閃光をまともに受けてしまい、一際太い幹に叩きつけられて動けなくなった社にトドメを指そうとしている。

 

「やぁっ!!」

 

烈迫の気合いと共に黒い刃がバーテックスの硬い鱗を切り裂く。ここで社にだけ気をとられていたバーテックスが真美に気付き、鱗から青い閃光を放つ。それを真美は縦横無尽に剣を振るい、全てを消し飛ばす。

さらに、続けて剣を大上段に構え、力の限り叩きつけた。あまりに強烈な一撃に、バーテックスの身体が地面に落ちる。その隙に真美は呆然としている社の元に降りた。

社が目を真ん丸に見開いて言う。

 

「ま、まーちゃん、なの?」

「そうよ。星城さん」

「それが魔王になったまーちゃん.......なんか本当に悪役みたいだねぇ」

「勝手に言っときなさい。とりあえずいろいろ聞きたいことはあるけど、」

 

真美は一度言葉を切ると後ろを振り向くと、ダメージを修復し終わって体勢を立て直したバーテックスが浮かび上がってきていた。だが真美は慌てるどころかむしろ嬉しそうに笑う。そして剣を構えて高らかに叫んだ。

 

「まずはこの化け物を消してからにしましょうか!!」

 

 

強い。

魔王と化した真灯真美を見て、社は素直にそう感じた。

魔王システム自体のスペックの高さもあるだろうが、明らかに真美の適正がシステムに上乗せされていた。

 

「やああああああっ!!」

 

真美が叫び、漆黒の刃がバーテックスの鱗を抉る。すぐにダメージが修復されるが、構わずに連続で斬りつける。続けて端から見ても恐ろしい勢いで身体を一回転させてのかかと落としが片方のバーテックスに叩きつけられた。その衝撃に耐えきれず、二匹共々地面に落ちていく。

 

「社!この化け物を倒す方法を教えなさい!」

「えっ、いままーちゃん私のこと名前で」

「早くっ!!」

「う、うん!バーテックスを倒すにはあの中にある『御霊』を壊す必要があるの!だからどうにかしてそれを引き出す必要があって.......って、まーちゃん!?」

 

驚きのあまり思わず叫ぶ社。何故なら、話の途中で真美がバーテックスに目掛けて急降下したからだ。その黒い剣の切っ先が真っ直ぐバーテックスに向けられているを見て、社はすぐに真美の意図を理解する。

 

「まさか、バーテックスごと『御霊』を破壊するつもり!?」

 

今までの戦闘でもあったがバーテックスには強大な修復機能がある。『つまり御霊』ごとバーテックスを破壊するということは、その修復機能を凌駕する勢いで攻撃しなければいけないのだ。

 

「そんなの無理だよまーちゃん!!」

 

その声が届いたかどうかはわからない。しかし、社は天から落ちる真美と目が合ったような気がした。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

咆哮と共に、真美の天空からの一撃が今まさにもう一度浮かび上がろうとしたバーテックスを繋ぐ鎖に直撃する。甲高い音と共に鎖が木っ端微塵に砕け散り、グラリと二匹の魚が地面に倒れ伏す。

ここまでは先程もできた。問題はここから。破壊された鎖が恐るべき速度で復元されていく。恐らくはバーテックスが体勢を立て直す前に『御霊』を破壊するつもりなのだろうが、明らかにバーテックスの方が速度が早い。しかし、真美に急ぐ様子はなかった。それを見て、ようやく社は理解する。

 

「.......そっか、そういうことなんだねまーちゃん!」

 

そう、時間が足りないのであれば、修復が完了するまでの時間を延長させればいいだけなのだ。立っていた樹木から飛び降りながら、社の脳裏に、先程の自分の言葉が甦る。

『そんなの無理だよ』。

無理。それは社が一番嫌いな言葉だった。なのに、それを口にしてしまった。それも自分よりも何も知らなくて、覚悟も決められなかった友達の前で。

だから、もう一度彼女は誓う。

 

「この言葉を覆したくて、変えたくて、私は勇者になったんだ」

「だからこそ、私は諦めないよ、絶対に!!」

「私は、勇者になる!!」

 

鉄扇を持つ手に残る力の全てを込めて、鎖に叩き付けた。今までで一番の音が響き、復元しかけていた鎖がもう一度破壊される。

 

「まーちゃん!!!」

「任せなさい!!!」

 

お互いを呼び合う。その姿はまるで、長年の親友のような姿で。

 

「例え相手がなんだろうと、私は絶対に負けない」

「そのためにはどんな力も使ってやる、利用してみせる!!」

「私は、私のために、魔王になる!!」

 

真美は漆黒の輝きと共に剣を振るう。その一撃は周囲の木々や根っ子を燃やしながら、地面をのたうち回っていたバーテックスを両断した。両断されたバーテックスが砂となり崩れ落ちる。同時に、その身体から色とりどりの光が溢れ出した。

その時だ。突然、三つの頭を持つ小さな黒い犬が現れ、溢れ出す光に飛び付いた。黒い犬は三つの口を開けると、なんとその光を租借し始めた。効果音はんぐんぐ、といった感じだが、それでも嫌悪感は拭えない光景である。

すべての光を食べ終えた黒い三つ首犬は尻尾を振りながら真美の頭の上に乗っかった。どうやら真美に褒めてもらいたいらしい。三つの頭を順に撫でていると、不意に黒いスマホがバイブ音と共に目の前に出現した。画面には【因子『魚座』を新規更新しました】とあった。不思議に思いながら『一覧』というタブをタップしてみると、11個の色がない紋様と1個の青く輝く紋様が表示された画面に切り替わった。

 

「(これについては後でいいか。まずはやることやらないとね)」

 

そう結論付けて真美はスマホをしまう。この紋様の事やあの巨大な怪物については後で知ればいい。それよりもまずやることがある。

 

「まーちゃんやったね!私たちでバーテックスを倒せたよ!!」

 

それは嬉しそうにかけよってくる。この、勇者を。

 

「.......近付くんじゃないわよ。このクソ勇者!!」

 

いや、『敵』を叩きのめすことだ。

 

「.......え」

 

真美が剣を振るう。完全に油断していた社だったが、寸前でくりゅーの障壁が真美の一撃を防御した。社が信じられないという風に叫んだ。

 

「どうしてまーちゃん!?なんでいきなりこんなことするの!!」

「理由は簡単よ。あんたが説明しないで私を巻き込んだから」

「それは、だって、説明してもしなくても、まーちゃんは『魔王』になったの!だから!」

「だから私に説明しないで、一つの気負いも覚悟もさせないで巻き込んだって?ふざけるなっ!!」

 

さらに連続で斬りつける。くりゅーの障壁に阻まれるが、真美が腕を止めることはなかった。この時、社は連続の衝撃に耐えながらどうするべきか考えていた。ますまは心の底から謝る。

しかし、言葉は出なかった。何故なら。

 

「確かに、最初からあんたと話もせずに突っぱねていたのは私が悪い。けど、説明してくれたら!そしたら!」

 

ポタリ、と。剣を振るう真美の足元に滴が落ちた。真実が泣いているのだ。あのとても冷たく、達観した雰囲気の少女が。

 

「まーちゃん、どうしたの!?なんで泣いてるの!?」

「うるさあああああい!!」

 

絶叫と共に真美が剣を叩きつけて、その場に崩れ落ちた。手から剣が音を立てながら落ち、同時に嗚咽が聞こえ始めた。

 

「だって、な、なに、よあれ!ひくっ、わたしだっ、て!こわ、こわい、ことぐらいあるのよ!な、なのに、いきな、ぐすっ、うえ、いきなりまきこまれ、うわあああああああああああん!!!」

 

その姿を見て、ようやく社は自らが犯したことの重さに気付いたのだった。星城社がバーテックスを相手にして恐怖せずにいられたのは、一重に勇者システムとバーテックスという存在について教えられていたからだ。実際には使ったことも見たことなくても、心構えだけはできる。

しかし、社は真美にその気遣いができなかった。気負いをさせないためという勝手な考えで社はその義務を怠ったのだ。

社は思わず真美にかけよって、震える身体を抱き締めた。

 

「ごめん.......まーちゃんホントにごめんね。私が、ちゃんと教えておけば...!」

「なに、ぐす、よ。いまさ、ら謝っても、ゆるさうう、ないんだから!」

「ごめんね。ホントに、ホントに、ごめんね」

「ひう、う...うああああああああああああああん!!!!!!」

 

魔王で漆黒の少女の声が響き渡る。そして、勇者で白龍の少女は花びらと共に樹海が消えるまで、いつまでもいつまでも優しく声をかけ続けていた。

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