マリー、俺と付き合って下さい。   作:カブトムシの相棒

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予定した風紀委員会のブチギレですが、次回にします。

ちょっとそれぞれの心情を顕わさなければだったので、変更いたしました。申し訳御座いません!!

あんな予告していてですが、すみません。



最初は少し個人個人のパートになります。




では、本編です。


抱えた思いと、イブキのブチギレ。

 

 

 

☆サクタロウside

 

 

 

 

 

────生まれて初めて、好きな人が出来た。

 

そいつはどうしようもなく優しくて、清純で、困った人を放っておけないお人好しで、綺麗な女だった。

 

初めて会った時は、別にどうでも良かった。

只の気まぐれで助けただけの女。最後の最後に選んだ、風紀委員としての仕事。

 

だが今じゃ気付けば、俺にとって掛け替えのない存在となっていた。

 

伊落………伊落マリー……俺の、大切な女の子だ。

あの子は本当に、聖女と呼んでも差し支えない程に出来た子だった。

俺なんかじゃ足元にも及ばない、聖人君子の様な子だった。

勿体ない。そんな卑下を言った暁には優しく怒られたっけ。でも抗えない事実、叱られてもそう思ってしまう。

 

俺の人生は復讐心が生んだ根性生だったが、何時の間にか至極どうでも良かった人生になっていた。

死のうとしても死ねず、何度この身が破損しても普通に再生する不死身の肉体。

最初は拾ってくれた黒服に、喜んでもらえて俺も嬉しかった。

 

利用されている、搾取されている、そんなモン当に理解していた。でもそれが拾ってくれた恩返しで、この裏社会の信頼だった。

 

味覚が失ってから、やっと、自分を見た。鏡を見れば愚かな生命体が映っていた。

 

俺は、その一瞬でこの世を去りたくなった。

もう生きる意味が分からなくなった。軽い鬱、そうとも云えただろう。

 

自分が選んで道で、究極の後悔……男として酷く終わっていた。

 

風紀委員会に入って、自分が出来る仕事はした方だと思う。

美食研究会、温泉開発部、ヘルメット団など、悪と断定された組織はよく追い込んだ方だ。戦闘面では暗躍が常だった。

 

書類仕事ではよく空崎ヒナに感謝された。不眠不休で働けるこの身は、確かに無限の体力を持っている。そう言った点のメンタルは最早無敵だった。

 

風紀委員会を辞めると言った時の空崎の顔……平静を保っていたが、動揺が目放たれていた。

 

 

────今なら分かる。彼女は俺を勿体ないと思っていた訳ではなく、ただ、心をいやす事が出来なくて、後悔していたんだ。

 

 

きっと、そうだ。

空崎は人一倍責任感が強い。組織の長という事もあるが、それが彼女の元来の性格なのだろう。

 

天雨アコ、銀鏡イオリ、火宮チナツ、その他多くの先輩や後輩達……多方面も、きっと「そう言う事だったのだろうか。

 

以前の俺には、人の心など理解なんて出来なかった。

 

全てが合理性と無感情………終わってる。

 

 

マリーに会えなかったら俺は……どうなっていたのだろう。

先生に会えなかったら俺は……どうなっていたのだろう。

 

あの二人は何処か少し、似ている。

 

人の想いに敏感で、憂い、解決に動く力があった。

 

だから、あんな穏やかな在り方なのだろう……美しく、儚く、見失えば溶けてしまいそうな脆さなのに、絶対的な精神性。

 

俺は……変われた。きっと、少しは変われた気がするんだ。

 

マリーの下で笑顔の練習もした。

笑うコツや怖がられない話方も覚えた。

優しさの大切さと、生きる目標をくれた。

 

痛覚が無い、味覚が無い……それが、どうした。

 

無いモノはない。そう割り切るのに、随分と時間を使ってしまった。

どうも俺は自分が思って居る以上に、人に助けられなきゃいきないらしい……情けないが、そうなんだ。

 

 

今日、俺は────ゲヘナ学園に行き、風紀委員会へ謝罪しに行く。

 

 

分かっている。あんな別れ方して、今更加入なんて図々しいにも程がある。

でも、例え受け入れて貰えなくとも、せめて……申し訳なかったと謝罪はさせてほしい。

 

自己満で、他人の気持ちを理解していない。それでも……相手側にも、相応の誠意は見せたい。

 

緊張する。だが同時に、やる気が湧いてくる。

 

先生に道を標して頂いた。

梔子さんに考え方の違いを教えて頂いた。

 

マリーに……頑張ってと、一人ではないと、応援して頂いた。

 

 

この期待に、応えぬは嘘だ。

 

俺はやる。やってやる……もう、逃げないと────決めたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

先生side

 

 

 

「────ユメ、君は一人の大人として、サクタロウの事をどう見えた?」

「え?ど、どうって……?」

「例えば、彼の眼を見て『疲れているな』だとか、若い子らしく『一人で悩んでしまっているな』とか。何でもいいよ」

「ふむ……私は、余り頭が良くないので上手くは言えませんが、サクタロウ君は────何処か、変わったなって思いました」

 

 

 

先生とユメは現在、サクタロウ宅を後にして、シャーレへの帰り道を歩いている。

二人で並んで歩き、唐突に先生がそう問いただして来た。

 

ユメはそう告げると、先生が微笑んで答える。

 

 

 

「そうか、昔から彼を見て接して来たユメらしい答えで良いと思う」

「そうですか?えへへ……でも、先生はどうしてそんな事を聞いたのですか?」

「私はね、あの子に初めて会った時から────与えられるべき幸せと生活を、知らない子供だと思った」

「え……?」

「でもよく見た。それは全くの違いであると……あの子は、本当に強い子だね」

 

 

 

先生が、ユメでは少し理解出来ない発言をする。

 

ユメは2年前、大好きな後輩と喧嘩して、アビドス砂漠に現状の解決の為に奔走した事があり……そのまま失踪してしまった事があった。

 

その時、偶々アビドス砂漠で特殊訓練で赴いていたサクタロウに助けられた過去があった。

 

それから数回程度だが、確かな交流はあった。

その交流で見てきたサクタロウと、先ほど見たサクタロウ……まるで見違えた、人が変わったようだった。

 

そんな単純な感想からくる言葉だった。それを、先生はユメらしいと称えた。

 

そんな中での、先生の発言……どんな意味が?

 

 

 

「ユメ、あの子は君にどの程度まで話した事があった?」

「どの程度ですか?えっと……………あ、あれ?そう言えば私、サクタロウ君の事、あまり知らない様な……」

「そうだと思った。サクタロウは秘密主義だと、あのド直球な発言は自分の意志が入って無かったから来たモノだってね」

「あっ……なるほどです」

「見た目で判断した訳じゃないよ。あの子の失っている右目、残った左目の暗いハイライト。無を極めてしまった表情……生気すら感じられない雰囲気、分かるさ。あの子は相当の経験を果てして今を生きている………きっと、誰にも言えない様な、酷な人生をね」

 

 

 

無礙に言うべきではない。だが、ユメには言う必要がある。

彼と話し相手であるユメ、それは珍しい事だと聞いた。

 

人と必要以上に接しないで有名なサクタロウ、だが、ユメとはほんの少しだけ、気が抜けた話し方だった気がする。

 

 

 

「彼にどんな事があって、左目を失ったかは分からない。彼にどんな事があって、あのような表情なのかは分からない。でも、それでも、眼の奥にあった一粒の光を私は見た。あれは誰かに救われて頂いた生きる目標だと」

「……確かに、彼は本当に変わったと思いました。彼が学園に行く前に電話していた人がそうなのでしょうか」

「ふふっ、結局教えてくれなかったけど、きっとそうだろうね。あの子をあそこまで変えてくれた子だ、きっと優しい子なのは予想出来るよ……でもね、ユメ。私は”もしも”を考えてしまう」

「と、言いますと?」

 

 

 

先生は続ける。

 

 

 

「────私が、もっと早く彼を見つけていれば……あんな傷を負わずに済んだんじゃないかって」

「ッ…!!」

「身勝手で、傲慢な話だ。でもあの子の傷は一生モノだ、もう消えない……あの子は何処吹く風で接してくれたけど、きっと不便だし心の何処かでは思う事を抱えているんじゃないか。そう思う私は……未熟者だ」

「先生……」

 

 

 

先生とて、彼の左目に思わないんなんて事は無かった。

もしもこうしていたら、そんな既に失くした選択肢を考えてしまう。

 

それにあの感じ……彼はまだ、重要な何かを隠している。

 

 

 

「ユメ、大人って言うのは思っていた以上に馬鹿で、時に子供よりも幼い瞬間がある。それは生きてきた年数と経験で得る感情だ。成功や失敗、挑戦や怖気、喜怒哀楽、出会いと別れその全ての出来事が子供を成長させ、大人へと進ませる礎となるんだよ。でもね、その大人への道を歩めなかった者も確かに存在するのがこの世界なんだ」

「それが………サクタロウ君であると?」

「あぁ。あの子は特に顕著に表れている……あんな顔、今を生きる子供がして良い訳が無いんだよ」

 

 

 

先生の顔には確かな後悔があった。

 

何があったかは分からない。だからこそ、知るべき必要はあった。

 

 

 

「あの子の場合は……きっと絶望だらけの人生だったかもしれない。そうして生きてきた中でやっと得た、光の一粒。私はね、それが堪らなく嬉しいんだ。それと同時に、あの子の支えになりたい。サクタロウはまだ子供だ……有象無象の悪意に向き合い過ぎたんだ、悩む時間なんて無かった筈だ、私に出来る事ならなんでもしたいって思う」

「先生ッ……私も、私もその思いです!あの子は見失えば何処かに消えてしまいそうな雰囲気がありました。でも……あの様子を振り返って、先生の話を聞いて決めました!私もサクタロウ君のッ事をもっと見ようって!」

「そうだね、凄く良い心がけだユメ。とはいえ、あの子は聡い子だ。見ない間に更に成長して、ユメの様にキラキラとした笑顔に成ってるかもしれない。その時は、何も詮索せず傍で話しを聞くだけで良い。そう願うよ」

 

 

 

サクタロウは危うい背景がある反面、彼の今の支えが居る以上、余計な手は不要だろう。

サクタロウが話したくなったら話せばいい。今のスタンスは、こうだった。

 

 

 

「ふぅ……それにしても、ユメの件で彼に感謝を言おうと思ったけど、言いそびれちゃったな。全く………今でも思い出しては叱りたくなるよ。君がホシノと喧嘩して砂漠に失踪した事についてはね」

「ひぃん………もう散々怒ったじゃないですかぁ」

「彼が居なければ今頃どうなっていたか分からなかったらしいじゃないか。話を聞いただけで、私は今でも吐きそうになるん何だからね?」

「あう……あ!でも、何だか嬉しい気持ちに成ります!」

「……は?」

「だって、それって先生が私の事を想って、心配してくれてるって事ですよね?えへへ!何て言えばいいか、先生にそう思われるのは申し訳ないんですけど、同時に凄く嬉しくって!」

 

 

 

”ピキッ”

 

 

 

ユメ、失言。

 

 

 

「────そうかそうか……ユメ、君は本当に………私の心を逆撫でするのが上手いようだね」

「へ?あ、あの……?」

「まだ君には届いていなかったようだ、私の愛ある説教が……ユメ、そこで正座」

「ひ、ひぃん!?な、なんでですかぁ!?」

「いいから座りなさい。ほら、早く」

「あ、あわわ………か、勘弁して下さ~~い!!」

「んぁ!?コラ!!何処へ逃げるユメ!」

「シャーレですーーー!」

「馬鹿正直に言って……だけど、私はさっき其処に直れと云った筈だよ!ユメ、君には更なる説教が必要と判断した!コラ!待ちなさい!」

「ひぃぃぃぃん!!!」

 

 

 

先生は失言したユメを追いかける。

そこまでなかった元々の身体能力と運動不足により、ユメは走るのが遅い。

逆に何故か先生はめちゃくちゃ速い。70mを切ったあたりからユメを捉え、その場で説教を開始した。

 

その光景を、ギャラリーは少し遠目で見ている。

 

 

 

「あ、あれシャーレの先生じゃね?」

「ホントだ。んであの正座させられてんのが……あぁ、やっぱ職員の人か」

「まさか此処でシャーレ名物『梔子ユメ公開説教』が見れるとは……今日は良い日だ」

「(あの二人、距離が近くない?……まさか………いや、流石に無いか)」

 

 

 

サクタロウのみならず、ここでも、ちょっとした進展があったり……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────ゲヘナ学園、校門前……その少し離れ。

 

 

 

 

「……着いたか」

 

 

 

どうも、榊サクタロウです。

 

俺は今、ゲヘナ学園に居る……風紀委員会専用の制服を着用して。

今日は知っての通り、謝罪と懇願を決め込む日だ。風紀委員会にもう一度入部させてくれと、今まで申し訳なかったと、伝える日。

 

最初を振り返れば、俺は史上最も最悪の別れをした。

全てスマホのメールで済ませ、他人の心を全く考えない内容を送った。

 

ハッキリ言って、門前払いが見え見えだ。いや、それが全く以て普通の行動で、当たり前だ。

 

 

 

「(シャーレの先生と梔子さんは帰らせた、先生と連絡先も交換して、後に報告。そしてマリーにも………応援して頂いたとはいえ、難関だな)」

 

 

 

先生の道標、ユメの進言、そしてマリーの後押しが、サクタロウをここまで連れて来てくれた。

 

あとは、己の持つ誠意の見せ所。冷めきってしまったこの関係性を、どう覆らせるか。

 

 

 

「……問題は、どう切り込むかだな。うぅむ……………うし」

 

 

 

考え込む事5秒。一瞬で決断。

 

 

 

「────正面突破に限る。誠意はコソコソしないのが普通だからな」

 

 

 

そのままサクタロウは威風堂々とした歩き方で校門を潜る。

 

もうそこに迷いはない。あるのは、マリーと先生、ユメから頂いた言葉の後押し。

己は一人じゃない。それが更に、サクタロウを強くさせた。

 

だが、此処でサクタロウは……思いも寄らない人物と出会う。

 

 

 

 

 

 

「────……お兄ちゃん?」

「ん?あ、イブキ」

 

 

 

校門を歩き、ゲヘナ風紀委員会本部への道……そこで、サクタロウは『丹花イブキ』と遭遇。

 

目が合い、数秒の間が流れる。

 

 

 

「あー……イブキ、久しぶりだな。実は今日────」

 

 

 

風紀委員会に戻ろうと思って来た……そう言おうとした、瞬間。

 

 

 

「お兄ちゃん!!」

「ッ!?っと……イブキ」

 

 

 

イブキが有無を言わさず、跳んで抱き着いてきた。

 

サクタロウは瞬時に抱えて、そっと足を付けさせる。

イブキにも悪い事をした、その自覚はあった。こうして抱き着いてきたのは、きっと、まだ己を思ってくれているからだろう。

 

本当に優しい子だ。こんな子に、己は何て事を……そう思い、サクタロウが告げる……

 

 

 

「ごめんなイブキ、お前には本当に申し訳ない事をs」

「────さない……」

「ん?」

 

 

 

小声で聞き取れなかった。

もう一度、聞こうとした────瞬間ッ!

 

 

 

 

 

 

 

「────お兄ちゃんのばかばかばか!!絶対…絶対!ゆるさないんだからーーーー!!」

「なんだっ!?」

「もう離さないもん!!あんな、お手紙っ……あんな、言葉でっ………うえぇぇぇええんっっ!!」

 

 

 

突如として、怒り泣きしてきたのだ。

 

 

 

 

次回

 

イブキと共にキレ散らかす風紀委員会。





先生と梔子ユメの思い。



先生からユメ⇒ 大事な後輩。危なっかしくてミスが多いが、生徒と歳も近く同性である為、女子特有の悩みにはよく助けられている。明るい性格で、可愛らしい子だと思っている。ユメにだけまぁまぁ容赦がない時があるが、それの意味は先生自身も分かっていない。実はユメの事が…?

ユメから先生:⇒ 尊敬する男性。ミスをしてもカバーしてくれる、素敵な人だと思っている。大人として凄く頼りになるけど、偶に可笑しなムーブをするのにちょっと怖いと感じていたりする。他の生徒には相応の優しを差を見せるが、何故か自分には辛辣な時が多い気がするのは気のせいではないと思ってる。でも優しいのは変わりない。先生が好き。




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