マリー、俺と付き合って下さい。   作:カブトムシの相棒

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予告通りには、上手くいけませんね……すみませんでした。


では、本編です。


せめて、こんな馬鹿な頭を。下げさせて。

────どうも、俺は榊サクタロウ。

 

迷惑を掛けた風紀委員会に謝罪しに行く愚か者だ。

 

俺は現在、風紀委員会本部……の道端に居る。

早く行きたいんだが、ちょっとイレギュラーが発生してしまった。

 

 

 

「ひぐっ……うえぇぇ………」

「(参ったな……一向に離れる気配がない)」

 

 

 

そう、イブキに捕まってしまったのだ。

 

俺はイブキにも大きな迷惑を掛け、傷付けた。それは十二分に理解している。

だから風紀委員会の一件が終え次第イブキの元に行き、あの時の発言の撤回をして謝罪を行おうと思っていたんだが……まさか先に出くわすとは思わなんだ。

 

 

 

「ふぅ……イブキ」

「やっ!!」

「まだ何も言っていない。悪いが、先に風紀委員会へ行かなきゃならん。後で必ず時間は作る、だから先ずは離れてくれないか?」

「絶対にいやっ…!だって、離れたら、また何処かに行っちゃうもん……もう、いやだもん…っ」

「……」

 

 

 

イブキの論理はご尤もだ。既に俺に向ける信頼は地に伏している。

嘘は言っていないんだが、あの時、俺はイブキの元へ離れて行った男だ……この子の本音は俺への牽制なのだろう。

 

だが、此処は風紀委員会の牙城、つまり、多くの風紀委員が事を構えている。

 

それ即ち……。

 

 

 

「────さ、サクタロウさん…っ!?」

「う、うそ!!…!!は、早く、上に報告!」

「もうしてる!!」

「ってか、あそこに居るのイブキちゃんじゃ無い!?っ……また、泣かして…!!」

「包囲しろ!!絶対に、絶対に逃がすなッ!!」

 

 

 

こうなる事だって、予想できた。

 

だが、思っていた以上に行動が早い。

予想外にも即行動できるようになって……何て、妙な親心が生まれる。

 

 

 

「ふむ……既にお終いのようだな。仕方ない、イブキ」

「っ!!……んっ!」

「そこまでガッチリ掴まなくとも、俺は逃げん……ほら、抱っこしてやるよ」

「っ!!?……うっ、うぅぅ……ぐすっ……」

 

 

 

俺は諦めて、騒ぎを出来るだけ収束させる為に立ち上がる。

イブキを上手く宥め、対面する様にタテ抱っこをイブキに施す。

 

身長差もあり、イブキは俺の胸元に顔を埋めて静かに泣く。

この子は意外と声を荒げず、ひっそりと泣くタイプの子だ。

 

 

 

「よしよし、良い子良い子……ごめんなイブキ、俺の所為で本当に申し訳ない。俺はもう、何処にも行かないからな」

「え………」

「傷付けるつもりは無かったんだが、お前には嫌なモンを見せたその責任はある。そうだな……後でもう一度言うが、お前には『俺を一日使える権利』をあげよう」

「────……ん」

 

 

 

イブキは一瞬、その発言にピクッとした。

だが、顔を俺の胸元に埋め、ジッと啜り泣く。先ずは感情の整理が必要か、其処に気付けないとは、俺は全く駄目だな。

 

そうこうしている内に、辺りは……。

 

 

 

「サクタロウさんッ!其処から一歩も動かないで下さい!!」

「……分かっている」

 

 

 

風紀委員で埋もれていた。

何とも壮観、俺に向ける視線がほぼ怒気だ。まぁ、俺が悪い似だろうな。

 

黙って勝手に辞めた身だ。こうするのは理解出来る。

コイツ等にはもで確りと謝罪する。

 

だが、今日は……更に深く、謝罪するべく者が居る。

 

 

 

「────聞けェッッ!!!」

「ひゃっ…!?」

”「ひッ!!?」”

 

 

 

俺の絶叫に、イブキを含む全員が怯む。

久しぶりに大声を出したな。それこそ人体実験以来だ。まだ出せる事に俺も驚いてしまう。

 

有無は言わさない。まだバレて2分も経っていない、此処で事を大きくするのは面倒だ。

 

 

 

「俺は、風紀委員会にもう一度入りたく、この場に参った!!逃げも隠れもしない!!だが此処で上を待つのは億劫だッ!!頼む、先に俺を『空崎ヒナ』に会わせてくれッ!!」

「え、え…っ!?」

「つ、つまり…?」

「連れてけって………コト!?」

「って……待って、さっき今……風紀委員会にって……」

「告げる!!第一として、空崎ヒナとサシで話したい!!重要で、重大な話だ!!」

 

 

 

俺は言いたい事を言った。

きっと困惑と驚愕が混じっている感情だろう、俺の絶叫など聞いた事が無い筈だ、自分で言うのも何だが迫力はある。

 

分かり易く狼狽えているが、何やら……走って来る足音が聞こえる。

 

群衆の間を押し退けて、一人の人物が現れた。それは……。

 

 

 

「ど、どいて下さいッ……ッ!!さ……サクタロウ、さん」

「火宮か、久しぶりだな」

 

 

 

それは、風紀委員会のメンバー。医療を担当する……『火宮チナツ』だ。

コイツはThe・仕事人だ。生真面目で、ゲヘナでは珍しい生徒。

 

しかし良いタイミングで来てくれた。話が纏まり易い。

 

 

 

「どうして……何で、此処に…ッ!……イブキちゃんまで、一体どういう状況……?」

「火宮、俺に言いたい事、話したい事、問いただしたい事が多く在るのは理解している。だが今は、先に俺を風紀委員長室に連れて行ってくれ」

「────っ……………皆さん、道を開けて下さい。サクタロウさん、此方へ」

 

 

 

火宮は俺の言葉を咀嚼し、飲み込んでくれた。

 

珍しく葛藤していた。確かに………俺の行動は最低的で不真面目だ。

感情を押し殺している者の目、俺と違い彼女は何処までも真面目だ。

 

怒りたい気持ちを抑え、最善を取ってくれたのだろう。有難い話だ。

 

火宮が風紀委員達にそう言うと、皆々がそっと道を開けてくれた。

しかし、そうなってくるとイブキが問題だ…さて、どうしたもの……む。

 

 

 

「火宮、待て」

「はい?」

「おい、其処に居るモブ美」

「へ……わ、私!?」

 

 

 

俺は風紀委員会本部に入る直前、見覚えのある顔を見つけた。

そう、それは────俺に手紙を送ってくれた1年生の新人だ。

 

俺に呼ばれて驚いたのか、酷く動揺している。だが俺はそのまま続ける。

 

 

 

「俺に手紙をくれたな。シャーレから話は聞いている……すまなかったな」

「いっ、いえ!私は、そんな……」

「後にその事で1年生達に感謝と謝罪の御礼をする。だが今は、この子の事を見てやって欲しい」

 

 

 

俺はそう言い、イブキに声を掛ける。

 

 

 

「イブキ」

「……離れないって、言った」

「そうだな。でも少しだけ、俺に時間をくれ」

「………もう…嘘は言わない…?」

 

 

 

酷く怯えて、震えている。

まだ11才の幼子だ。あんな光景を見させてしまった、俺は一生モノの罪を背負っている。

この子には、取り返しの付かない事をした……何度謝ってきても許せないだろう。

 

しかし、この件はどうしても空崎と二人で話したい。

 

 

 

「イブキ、俺はもう嘘は言わない。必ず、お前との時間を作る。約束だ」

「……やぶったら」

「あぁ、俺に何をしても良いからn」

「破ったら……イブキのモノにするから……絶対に…」

 

 

 

ふむ……よく分からんが、もしかして俺は本当に取り返しの付かない事をしてしまったのではないだろうか。

 

そう思ってしまうが……まぁ、取り合えず承諾は得た。

 

そうだ、この間テレビで言っていたが、確か子供には愛情表現が適切だと言っていた。

特に俺はイブキに対して、冷たく接してしまっていた。

 

そうだな……此処は、マリーに習って言わせて貰おう。

 

 

 

「何でもして良い。聞けイブキ、俺はお前が大切だ。本当の妹の様に想っている」

「…………え?」

「言えなくてすまなかったな。お前が俺を兄の様に慕ってくれていたのは理解していた。ずっと言いたくて、言えなかった……だがもう良いな。イブキ」

「う……うん…っ」

「────俺をずっと信じてくれてありがとう。怒ってくれて、想いをぶつけてくれてありがとう。俺は、お前が()()()だからな」

 

 

 

”ざわ………っ!!”

 

 

 

俺はイブキに『妹の様な子に向ける博愛』の言葉を送った。

 

想いを言葉にするのは難しい。

羞恥に畏怖、嫌悪など様々な感情が生まれては邪魔をする。

 

この歳になって、マリーと触れ合って、よく分かった……感情とはこういうモノだと。

 

でもイブキは、この子は俺に本音で当たってくれた。

怒りたい想いも、心配だって気持ちも、全ての感情を俺にぶつけてくれた。

 

並大抵の覚悟では出来ん。幼子だからと区別はしない。

 

俺も……イブキの様に、成ろうと思った。

 

 

 

「噓ばっかでごめん。逃げてばっかでごめん……もう、俺は隠れない。イブキ、お前にとって、良い兄で居ると尽力するよ。ほら、ぎゅ~ってしてやる」

「わっ、わっ、あっあっあっ………へ…!?」

「よしよし……お前は可愛いな、イブキ。しかもこんな俺にも変わらず接してくれる。本当に優しい子だな……その優しさに、俺はいつも救われているよ」

「お……おに…ちゃっ……」

 

 

 

イブキ、丹花イブキ……ゲヘナに於ける、数少ない良心。

羽沼マコト率いる万魔殿のみならず、ゲヘナ学園で愛される天使の様な女の子。

 

錆びてしまっていた当時の俺にも、元気に接してくれた子……俺も絆された。マリーには感謝せなばな。

 

しかし、妙だ。あんなにも騒がしかった周囲が急に静かになった……周りを見渡せば、皆が俺とイブキを凝視している。

 

 

 

「(ふむ……急いでたと言っておいて、イブキと戯れ過ぎたかな。その圧力の視線か。確かに、失礼に値するな)」

 

 

 

俺の事。そして、イブキと云う絶対的存在。

 

両方の圧力で、起こった視線。

周囲の風紀委員からしたら遺憾モノだろう。これはいけないな、さて、そろそろモブ美にイブキを預けるとしよう。

 

 

 

「モブ美、待たせてすまなかった。イブキを頼む。万魔殿まで送ってやってくれ」

「あ、は……はひっ!」

「あっ………」

 

 

 

抱擁していたイブキを離し、そっとモブ美に手を繋がせる。

離れる時、イブキの声が漏れる。何だか申し訳ないが、これから大事な会合だ……だが。

 

 

 

「安心しろイブキ。さっき言っただろ、必ず時間を作る」

「っ……」

「お兄ちゃんとの約束だ。連絡するからな、その時まで、良い子で待ってるんだぞ」

「…………うん!」

 

 

 

イブキの帽子を脱がし、そのまま撫でる。

良い返事が聞けたところで、俺はイブキに帽子を被せる。

 

聡い子だ。俺には無い純粋性も持っている。

 

 

 

「あれ、絶対に他の女の子にも言ってるよね?」

「……いつか刺されんじゃね?サクタロウ先輩」

「前から罪すぎる男の人とは思ってたけど、ありゃマズいね……」

「私はイブキちゃんの持つ男性像が破壊されてないか心配だよ……」

「……お前、昨日サクタロウさんでオn」

「それ以上喋ったらテメェのケツにショットガンぶち込んで私も死ぬぞ」

「あ、すみません……」

 

 

 

何か聞こえるが、まぁ、大丈夫だろう。

 

俺はそのまま流し目でイブキを見送り、火宮の元へ向かう。

 

 

 

「すまん、待たせたな。もう大丈夫だ」

「あ、いえっ……なら、良かったです」

 

 

 

火宮と共に、俺は前へと進む。

何度も潜ったこの場所。見覚え以前の問題か。

 

まさか、また来る事になるとは思わなんだ。あの日、風紀委員を抜けて暫く経つが……ふむ、外観は変わっていない。

 

俺が逐一で掃除していた場所も、花壇の花や周辺の雑草も処理が行き届いている。

 

 

 

「……あの、サクタロウさん」

「なんだ?」

「その……」

 

 

 

ふと、火宮が言い淀む。

意見はハッキリ言う彼女らしからぬ状態。

 

久しぶりの俺に、少し戸惑っているのかもしれない。

此処は少し、柔らかくいこう。

 

 

 

「大丈夫だ、俺はもう逃げん。それに言いたい事がるなら言え」

「あっ、はい……その、サクタロウさん」

 

 

 

火宮が告げる。

 

 

 

「────変わり、ましたね?」

 

 

 

俺は火宮のその発言を、頭の中で繰り返す。

 

……ここ最近、よく言われるフレーズだ。

 

変わった……羽沼も空崎も、梔子さんも言っていた。

そして火宮にも……そうか、変わった、か。

 

 

 

「────そうなのかもな。こんな俺にも、そういう権利はあったらしい」

「え……?」

「いやなに、独り言だ……気にしないでくれ」

 

 

 

そういって無理矢理話を終了させる。

 

マリーの事を言う。それは無粋だ、別に伝える訳でもないだろう。

これは、察しを受け聞かれたら、言おう。コイツ等は信頼できる。

 

そうして、俺と火宮は風紀委員長室まで足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆風紀委員長室、前。

 

 

 

 

 

”コンコンコン……”

 

 

 

『────入りなさい』

「失礼します。榊サクタロウさんをお連れして参りました」

 

 

 

風紀委員会のトップ。その専用の委員長室に連れられ、俺は火宮に続き入った。

正直、何度も来た場所だ。感慨深くも何ともない。だが、此処に戻ってきたのは列記とした意味が有る。

 

 

 

「失礼する…………む」

 

 

 

入った、その瞬間だ────抑える気のない怒気の重圧が俺を襲う。

 

 

 

「────榊サクタロウ。久しぶり、とはまた違うけど……態々その身一つで来てくれた胆力は尊敬に値するわ」

「────空崎。あんたに伝える情報を持ってきた。まぁ、それ以外の話もあるんだがな」

 

 

 

その場にいるだけでこのプレッシャー……分かっている、空崎自身も俺には思うべき部分の発露がある。

 

だが、俺が感じ取ったこの怒気……ふぅぅ………そりゃそうだ。居なきゃ可笑しいとは思っていたが、まさかドアの左右に待機とはな。

 

 

 

「銀鏡、天雨……怒ってる理由は分かる。だが先ずは、その怒気は仕舞ってくれ」

「────貴方が言葉なく去らなければ、この憤怒も抑えられたのでしょうね?」

「────随分と舐めてくれたなぁサクタロウ……私は今すぐにでも暴れ散らかしたい気分なんだ。先に言うべき事があるんじゃないか?」

 

 

 

『銀鏡イオリ』、そして『天雨アコ』……風紀委員会のトップランカーだ。

 

眼を合わせなくても分かる。これは相当にキレている。

俺が言えた事じゃない。何にも云えん立場だ、先に空崎に事を伝えてから謝罪をしたかったが……やむなしか。

 

そう思っていた時、空崎が言を投げる。

 

 

 

「止めなさい、二人とも」

「なっ……なんでだ!!委員長!」

「報告を聞いたでしょう?サクタロウは私と話したいと言って、此処に参上したのよ。その意味、分からない貴女達じゃない筈よ」

「っ!く、うっ……!」

「此処にいる事は許してあげる。私と彼で少し話している間、頭を冷やしなさい」

 

 

 

冷静。怒気を隠せない二人に空崎は冷静に待てを出す。

ここは長としての風格か。一気に場が収まるのが感じる。

 

有難い事だ。俺も前に進める。

 

 

 

「悪かったわねサクタロウ。でも同情はしない、この子達が激情を露にする理由は言わなくても分かるでしょう?」

「あぁ……その事については、この報告が終わったら必ずする」

 

 

 

そう告げると、明らかに場の雰囲気が変わった。

だが今は、空崎に『先生』の報告だ。

 

 

 

「────シャーレの先生……結論から言うと、聖人だ。恐らく自分の命を子供の為に突き出せる程のな。先生の字をそのまま背負った、教育者として最上級の存在。超法規的組織の長ではあるが、その権力を振りかざす人間では無いと判断した」

「……それは厳密に話し合い見聞した上での報告で良いのね?」

「この手に関して俺が適当を言うと思うか?紛う事なき事実だ。シャーレの先生……良い大人だよ。本当に」

 

 

 

そう告げる。

あれほど完璧に近く、人間臭い大人は早々居ない。

狂っているとも云えるだろう。あれは早死にするタイプだ……善性の塊すぎる。

 

俺がそう言うと、空崎は目を閉じて、数秒の間を空け告げる。

 

 

 

「────分かった。シャーレの先生については、貴方を信じる。風紀委員でもないのに申し付けてごめんなさい」

「構わん」

「……それで。まだあるのでしょう?此処に来た理由は」

 

 

 

間は空けずにか……厳しいな、空崎。

だが良い。事を簡単に運べる。

 

 

 

「────謝罪に来た。そして、懇願に……聞いてくれるか?」

「元よりそのつもりよ。話してみなさい」

「……あぁ」

 

 

 

空崎はそう告げる。

淡々としているが、あの目……試している。

 

……こういう事は初めてだ。上手くいくか分からん。そん時はそん時。後は考えん。

 

俺は其の場に跪いて、額を地面に擦る。

 

それは……土下座の姿勢だ。

 

 

 

「んなッ……!?」

「なっ、なにをして…!?」

「サクタロウさん!?」

「この度は、このような場を下さりありがとう御座います……そして、俺の起こした混乱により、皆様に大迷惑を掛けた事を、お詫びさせて下さい。本当に、本当に申し訳御座いませんでした」

 

 

 

誠心誠意の土下座だ。

初めてした割には上手くイケていると思う程の謝罪。

 

ヒナは沈黙。その他の三名は驚愕だろう。だが俺は続ける。

 

 

 

「社会的に見ても、私が行動に移した退部方法は到底許される行為ではありません。ただのメールで消え失せるなど、ここまで私を慕い、築き上げて下さった仲間の感情を踏み躙る最低の行為だと断言します。本来ならば、この場に居るだけでも許されざる行為。存在が罪であると自覚しております」

「いっ…いや、そこまでじゃ……」

「もし仮に私が上の立場だったら考えられません。此処に集う皆様が抱える思いを想像すれば、どうしようもない痛みであると思われます。私事では想像が出来ない程の慈悲であります」

「っ…!」

「サクタロウさん……」

 

 

 

これは本音だ。

心……に込めた、謝罪。

 

 

 

「上司仲間、同僚を裏切り、部下と丹花イブキを泣かせた私の罪は余りにも重い。これは、これから私が生きていく上で一生背負うべき責任であると痛感いたします」

「…………」

「見たくもない顔かと思います。ですが、どうか、頭を下げさせて下さい。本当に、申し訳御座いませんでした」

 

 

 

俺はそのまま、更に頭をお下げて土下座した。

 

これくらいの事をしたのだ。

考えれば考える程、愚かなことをした……許されるとは、思っていない。

 

 

 

「────顔を上げなさい。サクタロウ」

「……はい」

 

 

 

コツコツと歩いて来る空崎。

 

その音は感情が無い。

この後の動きが分からない。ふむ、やはりだめか。そう思っていた。

 

 

 

「ふんっ」

「んぶっ……ん?」

「ふむ……ふふっ、少し見ない間に良い顔に成ったじゃないサクタロウ」

 

 

 

空崎は俺の顔の両頬を摘まみ、そう告げる。

俺は理解が追い付かない。これは、どういう状況だ?

 

 

 

「その謝罪を伝える為に、危険地帯であるこの場まで来たのね。前から胆力は本当に凄いと思っていたけれど…まさか、こんなにも熱意ある謝罪をするとは思っていなかったわ」

「……せめてもの、謝意です」

「えぇ、確りと伝わったわ……あんな能面の様な顔をした男の子だった貴方が、成長したわね」

 

 

 

そう言いながら、空崎は俺の頭を撫でる。

……不思議と、嫌では無かった。

 

 

 

「過剰とも云える誠意。加えて、貴方が今まで風紀委員会に齎してくれた新しい風。ねぇ?皆はどう?私は、もう十分だと思うのだけど」

 

 

 

空崎の問いに、3人は……少しの間を入れて、告げる。

 

 

 

「はぁ……滅茶苦茶にキレようと思ったけど、まさかあのサクタロウからこんな謝罪をされるとはな。うん……私も、もう何もないよ」

「ふんっ!強いて言うならヒナ委員長の頭なでなでに文句を言いたいですが……彼にも彼なりの理由があっての事。それは、理解しています」

「私も、もう大丈夫です。まぁこれから色々と話し合う必要はありますが……今は、何も言う事は、ありません」

 

 

 

銀鏡、天雨、火宮の順でそう告げる。

しでかした俺に……ここまでの慈悲。

 

本当に恵まれている。俺は、もうこの人達に足を向けて眠れんな。

 

 

 

「……ありがとう、御座います」

 

 

 

そう、感謝した。

それと同時、空崎が何かを取り出す。

 

 

 

「サクタロウ」

「ん?……あ、それは」

「貴方の【退部届】よ。実はマコトが一向に受理してくれなくってね。でもそれが功を為した……もう、言わなくても分かるわね?」

 

 

 

そう言って、笑う空崎は、俺の一言が欲しいと理解した。

俺は直ぐに意を決し、あの言葉を発語する。

 

 

 

「────俺を、もう一度【風紀委員会】の一員にして頂けませんでしょうか」

「────無論よ」

 

 

 

”ビリビリビリッ!”

 

 

 

瞬間、空崎が俺の退部届をビリビリに破いた。

それをする空崎は、何だか少し楽しそうだった。

 

 

そうか……俺は、また【風紀委員会】に……。

 

 

 

「ほら、立ちなさい。人を跪かせるのは趣味じゃ無いの」

「はい……承知しました」

「どう?短期間の間、委員会を抜けた気分は」

「……何とも言えない時間だった」

「そう……良いサクタロウ?貴方が何を思って、何を抱えているかは分からない」

「………」

「でも、私達はずっと貴方の味方よ。貴方が抱えている思いが重くなってしまったら、直ぐに話しなさい。私も、この子達皆も、貴方の支えになりたいと思っているから」

「……空崎」

「それが、仲間と云う者よ」

 

 

 

至言だな。

仲間……いつか、この面々にも言う日が来る。それは理解している。

 

だが時期じゃない。まだ、まだダメだ。

もし仮に、今この場で言ってみろ。辛くなるのは誰だ?空崎だ。

自分が課した任務を俺は文字通り身を削って遂行した。

それを理解したら、責任が強い空崎は負荷を背負う。そんなんあっちゃなんねぇ。

 

願う事なら言いたくはない。だが、いずれバレる事を隠すのは裏切りにもなる。

 

 

 

「……そうさせて貰うよ」

 

 

 

こう言うしかない。申し訳ない。

 

俺は少し辺りを見渡す。

すると、全員が微笑んでいる。

 

同じ思いか……本当に優しい人達だ。

 

正直ぶっ飛ばされる覚悟だったから、この結末は驚きだ。

 

そう思っていると、天雨が話しかけて来る。

 

 

 

「全く……それにしても、この空いた期間に何があったのですか?」

「……それは」

「おいっ!!」

 

 

 

少し言い淀むと、銀鏡が急に突っかかって来る。

これには少し驚いた。銀鏡は続ける。

 

 

 

「言っておくが!私は全てを許した訳じゃ無いんだからな!許したのはあのふざけ散らかしたお別れメールだ!この放浪期間は全く以て謝罪に入っていないんだぞ!」

「あ、あぁ、そうだな……すまん」

「……サクタロウさん。イオリは貴方が居ない間、ずっと寂しがっていたんですよ?」

「ちょっ、チナツ!?」

「貴女もじゃないですかそれは……」

「は、はい?ななな、何の事でしょうか…!?」

「一応言うけど貴女もよアコ」

「い、委員長!?」

「……そうか、寂しかったのか。それは、すまなかったな」

 

 

 

”ブッチィィッッ!!!”

 

 

 

何故だろう、血管が切れる音が聞こえた。聞こえる筈が無いのに。

 

俺が少し思いに更けていると、急に3人が突っかかって来た。

 

 

 

「この野郎ッ!!見ない間に随分と煽り性能も上がっているらしいなぁ~!?」

「前々から貴方には説教を入れようとしていましたが、それが今だと判断しましたッ!!」

「サクタロウさん!!い、幾ら私でも怒る時は怒るのですよ!!」

「むぅ……すまない。わざとじゃないんだ」

「んいいぃぃぃ!!!その子犬みたいな表情をヤメロ!!」

「ってか私の質問に答えて下さりません!?サクタロウ!貴方のその変わりよう、一体何があったのですか!?10秒以内に答えて貰いますよ!」

 

 

 

前から思っていたが、風紀委員会の面子って血の気が多いな。

 

だが、そうだな………出来るだけ隠し事は、もう無しにしよう。

これからは出来るだけ素直に生きる。そう決めた。なら、少し話そう。

 

 

 

「実は何だが……俺、好きな人が出来たんだ」

「好きな人?ふんっ!それが貴方が変わった理…………は?」

「……うそ」

「……ん?ん??い、いま、なんて言いました?」

「隙間が産まれた?」

「いや、好きな人」

 

 

 

急に静かになった。あんな騒いでたのに。

 

ふむ……好きな人の報告じゃ弱いか?

 

 

 

「えっと、だな……その人は【トリニティ】の子なんだ。その子は『マリー』って言って、可愛くって優しくて、その……俺はその子に変えられたと云っても過言じゃない」

「…………は?」

「…………え?」

「…………へ?」

「…………あ?」

「色んな場所に行ったんだ。トリニティの花園だったり、ゲヘナの映画館だったり……聞くか?俺が……ぶごっ」

 

 

 

俺がそう言うと同時、銀鏡と火宮が俺の腕を掴み、天雨がアイアンクローの様に俺の頬を片手で掴み、空崎が問う。

 

 

 

「……一つ問うわ。それ、本当?」

「俺は嘘は言わんぞ」

 

 

 

そう言った、瞬間だった。

 

 

 

「詳しく!」

「聞かせて!!」

「下さい…ッ!!!」

「あぁ、うん。構わんぞ」

「……信じられないんだけど」

 

 

 

この4人なら良い。信じられるし。

言えない部分は隠せばいい。

 

そうして俺は、風紀委員の奴等に拘束されて、事情を話した。

 

 

 

 

 

 

 

次回

 

マリー、風紀委員会に(ひっそりと)来訪。

 





残り6,7話くらいですかね。もっと増えるかな……エデン条約をちょちょっと執筆して良い感じの本数で終わりたいんですよね。


皆さん、サクタロウの、そしてこの物語の鍵の一つである【狂気】を覚えていますか?

これからです。このフレーズ、よく覚えて欲しいですわ!



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