補足:本編は既に始まっています。先生はアビドス1章辺りに居る感じです。
因みに先生は【男性】です。簡単なプロフィール。
性別:男性
身長:188㎝
体重:78㎏
メガネ。胡散臭い。クッソ優しい。沼男。いつか背中を刺されるタイプ。博愛主義。
同じ男同士、早く絡ませたいですね。(意味深)
では、本編です。
▽ゲヘナ自治区、校内区域……ゲヘナ電車改札外。
「────本当に大丈夫かよ……俺が確りしねぇと」
次の週、木曜日の朝9時……サクタロウはゲヘナ自治区の電車、その改札外で一人立って居た。
木曜日と云えば、彼とマリーのデート日だ。しかし何故ゲヘナで……?
混沌渦巻くゲヘナ自治区でトリニティの生徒であるマリーとデート。どう考えても危険だ。
しかしその理由は、昨日のモモトークにあった。
☆モモトークタイム:20時☆
〈サクタロウさん、今日はありがとうございました〉
〈行ってみてかったトリニティの花園でしたので、サクタロウさんと共に行けて本当に楽しかったです〉
〈あぁ、俺もマリーと行けて楽しかった。ありがとう〉
〈意外と変装はサングラスだけでも行けるんだな。次からはサングラスだけで行く〉
〈フリージアとチューリップが咲いてて綺麗だったな。街道の桜も満開で、目を奪われた〉
〈今まで花を見るのに対してそこまで感銘を受けなかったが、ああしてジックリと観賞してみると楽しいものだな〉
〈ふふっ。サクタロウさんにもお楽しみ頂けた様で良かったです〉
〈お花には花言葉があったりもするので、調べてみたら結構おもしろかったりしますね〉
〈例えば……チューリップは『思いやり』と云う意味が有りますね。サクタロウさんにピッタリですね〉
〈……一番ないだろ〉
〈でも、そうだな。花には花言葉があるから、面白いな〉
〈趣味になるかも。連れてってくれてありがとうな、マリー〉
〈いいえ!此方もとても楽しかったので、お互いさまです!〉
〈あ、そうだサクタロウさん。それとは別に一つ御相談があるのですが……〉
〈大丈夫でしょうか?〉
〈当たり前だ〉
〈なんだ?〉
〈ありがとう御座います!〉
〈明日のお茶会の場所なのですが、サクタロウさんはトリニティかD.U.の都内、百鬼夜行のどれかにしようって言って、今日の夜に決めようとなったではありませんか〉
〈あぁ、そうだな〉
〈俺的にはD.U.でもトリニティでも百鬼夜行でもどれでもいいと思ってる。決まらなかったら俺が決めようと思っていたが……〉
〈その感じ、何処か行きたい所でもあったのか?〉
〈はい!〉
〈でも、そのですね……その3つの自治区ではないのですが……〉
〈お、怒らないで聞いて下さいますか?〉
〈構わない。俺は怒った事が無いからな〉
〈それで、何処に行きたいんだ?〉
〈ありがとう御座います!〉
〈ゲヘナに行ってみたいです〉
〈あ?〉
〈おいマリー、なに言ってんだ〉
〈ふざけるな。却下だ〉
〈あう…怒っているではありませんかぁ…〉
〈その、だめですか?〉
〈当たり前だ。認められん〉
〈ゲヘナの治安はマリーも分かっているだろ。危険すぎる〉
〈お前が傷付く可能性が高くあるんだ。遊ぶならゲヘナ以外でだ〉
〈でも……〉
〈……申し訳御座いません〉
〈……〉
〈………なんで行きたいんだ?理由は聞いてやる〉
〈サクタロウさん!〉
〈一旦聞いてやるだけだ。それで決める、言ってみろ〉
〈ありがとう御座います〉
〈サクタロウさんには、この間の大聖堂に加え今日の花園という、2回もトリニティに来て下さいました〉
〈トリニティでの貴方は非常にシビアなのにです〉
〈なので、今度は私からサクタロウさんのホームであるゲヘナに向かい〉
〈一緒にゲヘナで食べ歩きやお店を周りたいな~と……そう思いまして〉
〈…………〉
〈……だめで、しょうか?〉
〈……分かった。明日はゲヘナで遊ぼう〉
〈宜しいのですか!?〉
〈ありがとう御座いますっ!〉
〈但し、明日のマリーはトリニティのシスターとしてのマリーではなく、普通の女子高生のマリーとして来い。それが条件だ〉
〈え?〉
〈それは一体、どういう…?〉
〈ゲヘナでもトリニティ嫌いの人間は居る〉
〈仮にシスターの礼装、言えばいつも着ている服装だと危険だという事だ〉
〈だから、トリニティの生徒とバレる事のない様な私服で来てほしい〉
〈それを約束できるのなら……一緒にゲヘナを周ろう〉
〈俺だって叶う事ならマリーとゲヘナを歩きたいんだ〉
〈サクタロウさん……〉
〈承知しました。ではサクタロウさんが提示して下さった条件を受け入れさせて頂きます!〉
〈私服で来ます。明日は……目指すべくシスターではなく、普通の女の子として、です〉
〈すまん頼む、ありがとう〉
〈ゲヘナってのはどうもヤンチャな人間が多い〉
〈最悪は俺がマリーの盾となるが、危害が及ばない事を願うばかりだ〉
〈我儘を聞いて下さり、本当にありがとう御座います〉
〈私も自分の身は自分で守れるよう、用心して参ります〉
〈マリー、安心しろ〉
〈お前には絶対に傷一つ付けん〉
〈お前の笑顔に傷が付いていたら、可愛さが半減してしまうからな〉
〈じゃあ明日、10時にゲヘナ駅の南口改札前で待っている〉
〈行きの電車内で何かされたら直ぐに言え。電車ぶっ壊してでも助けに行く〉
〈……何ならトリニティから迎えに行くか?〉
〈だ、大丈夫ですよ!そこまでして頂けなくても!〉
〈お気持ちだけ有難く頂戴しますね。そのまま自分の足で行きますから〉
〈では、明日はその予定で行きましょう〉
〈でも……ふふっ、とっても頼りになる御方と一緒にゲヘナを周れるのは、安心ですね〉
〈……勝手に言ってろ〉
〈頼りにしていますね、サクタロウさん〉
〈あぁ……〉
☆モモトークタイム:終了☆
▽
少し長くなってしまったが、こう言った理由が有り木曜日デートはゲヘナで行う事になったのだ。
サクタロウは10時集合に伴い、9時に駅の改札口の外で待機している。真面目所以の行動だった。少し早すぎるが……。
「(────この際、俺も普通の服装で来てしまったが……大丈夫かな。空崎さんには────〈頼む、もう捜索をするなってあの人達に言ってくれ〉……って、昨日連絡したっきり返信が来ないのが心残りだな)」
サクタロウは今日『普通の私服』で来ていた。変装せずに、だ。
・黒色のスラックスパンツ。
・黒と紺色のジャケットに白のインナー。
・白のスニーカー。
割と決めてきているサクタロウ。ファッションには疎い為、ネットでどんなスタイルが良いか調べ、持っている限りの私服で来たのだ。
そんな服装をしているも、彼には少し不安要素があった。
そう……恐らく現在も己を探しているであろう風紀委員会と万魔殿だ。
「(見つかる確率はそんな高くはないと思うが……仮に見つかったらマズいか。ここは空崎さんを信じたいが……)」
彼が数秒、思案に暮れていると────
「────あのっ」
「ッ!!!」
「ひゃっ!?」
後ろから声を掛けられた。
背後を取られたのはかなり久しぶり故、少し驚いてしまうも一瞬で振り向く。
懐に仕舞う【煙玉】を持つ。臨戦態勢に立つも……それは一瞬。
だって、其処に居たのは────
「ご、ごめんなさい。驚かせてしまいましたね」
「……マリー、か」
そう、今日ともにデートをする女の子。
伊落マリーその子だったのだ。
「おはよう御座います、サクタロウさん。私が言うのもあれですが、とてもお早いのですね」
「あ、あぁ……」
「………?」
「………」
サクタロウは、マリーの姿に目を奪われてしまう。
────いつもの礼装ではない。かなり印象が変わった、私服姿。
・黄色と緑色の太めのボーダー柄ニット。
・白を基調としたロングスカート。
・シンプルなショルダーバック。
・ローファー風なフラットシューズ。
そんな、いつものマリーとは違う雰囲気に、サクタロウは目を奪われる。
それは、マリーもそうだ。
「あ、あの、サクタロウさん…?」
「ッ、あ…すまん。あー……凄く可愛いな、似合ってて良いと思う」
「っ!!あ、えとっ……あ、ありがとう御座います…っ!嬉しい…です」
「そうか。いや……うん、良かった」
「あの!サクタロウさんもっ!とっても……かっこいいです…っ!」
「?……すまん、聴こえなかった。何て言った?」
「あ、うっ…えっとっ………私服、とても似合ってて、カッコいいです…っ」
「そうか。あー…ありがとう。頑張って選んだ甲斐があったと思う」
※この二人は別に恋人ではありません※
だが、二人の反応は同じくらい一緒だが、表情が全く違う。
マリーは顔を赤くさせ、照れながら髪をくるくる回す。とても嬉しそうに、彼に言われた事を噛み締めながら。
サクタロウはいつも通りだ。能面の様に無を極め、顔も赤くしない。だが嬉しいという感情はマリーが感知できる程度の雰囲気は出している。
「すまん、マリーの服、思った事真っ直ぐに言い過ぎた。キモかったか?」
「い、いえいえ!!そんなこと思ってもいませんっ!本当に嬉しかったですよ!」
「そうか。なら良い」
「あはは……」
「あぁ………────ところでマリー、1つ聞きたい事があるんだが」
「えっ?」
瞬間、サクタロウの雰囲気が一変。
左目がギュッ小さくなり、獲物を狩る獣のように細くなる。
冷徹を想起させる異様な雰囲気……マリーは一瞬で胸がキューっと締め付けられる。
だが、彼がそんな雰囲気を醸し出す理由は、確りと妥当なモノだった。
「先に来ていた俺は兎も角、なんでマリーがこんな早く来るんだ?俺は10時と云った。9時ではなく、10時と」
「あ、え、えっと……っ」
「此処はゲヘナだ。電車でも治安は変わらん。マリー……俺は今、初めて
「ひゃうっ!あびゅっ……しゃ、しゃくたろ、さっ……!」
”ぶにーーーー……っ!”
サクタロウがマリーの両頬を指で掴み、丁度いい痛みまで伸ばす。
彼の怒りは当然だった。此処はゲヘナ、マリーの様な女の子では危険すぎる場所。
今回は偶々サクタロウが1時間早く来ていたが、そうでなければマリーは一人で此処に待つという事になる。
それは、余りにも最悪な状況だ。それを理解したマリーは深く反省した。
「反省しろ、マリー」
「もっ、申し訳、ごあいましゅんっ…!」
「……ふんっ!」
「うみゅみゅっ!!
「次こんな事したら、こうするって教えてやる……頬を伸ばして潰した後は、お前の獣耳を荒く触る」
”さわさわ!もみもみ!”
「あ、んっ!ひゃうぅぅ!!ご、ごめん、なさい……っ!も、もう、二度とこんなこと、しない、おっ!?ん、しないのでぇ……ゆるひて、くだひゃいぃ…!」
サクタロウに容赦はなかった。
真面目で、朗らかな笑みを絶やさないマリーとて同じ人間。このようなミスはある。
だが、今回は少しダメだった。サクタロウの琴線に触れる行為だった。
普段のサクタロウなら、別に気にしていなかった事。
だが……マリーという、サクタロウにとって【特別に成りつつある存在】が、まるで自分の事を意に介していないような行動を取った事に……自分でもよく分かっていない怒りが噴き出したのだ。
そんな怒りの中に在るのは……一つの【心配】だった。
サクタロウはマリーの反省の色を見て、パッと手を離す。
「……約束だぞ」
「あうぅっ!は、はっ、はっ、はぁっ………はいぃ…」
「全く……大丈夫か?少し荒く弄っちまったが、頬や獣耳、痛くなってたりしないか?」
「だい、大丈夫ですっ……ん、はっ……大丈夫です」
「そうか。なら良い」
「はい……ごめんなさい、サクタロウさん。楽しいデーt…………お、お出掛け!お出掛けに、なる予定でしたのに…」
「いや、俺も強く言い過ぎた、ごめん。でも過ぎた事だ……ほら、行くぞ」
「は、はいっ!」
サクタロウはマリーに掛け声を出し、そろそろ行くよう催促する。
自然とサクタロウが車道側に立ち、マリーと並行する。
マリーの歩幅に合わせるのは、既にコツを掴んでいる。
「……えへへ」
「ん?なんだ」
「いえ……サクタロウさんって口調は少し荒いですが、やっぱり優しいな~と思いまして」
「…………ふんッ」
「あら?どうしてそっぽ向いちゃうのですか?」
「なんでだろうな。お前なら分かってんじゃねーの」
「んー……分からないから、教えて下さいって言ったら、教えて下さったり?」
「あぁ?………………ノーコメントで」
「あぅ……はい」
「────ふん……早く行くぞ。俺から離れるな、マリー」
「────っ!ふふっ……はい、サクタロウさん」
そうして、サクタロウとマリーは絶妙にイチャイチャしながら、街道へ向かう。
先ずはマリーが遊んでみたいと言っていたクレーンゲームのあるゲームセンター、その後は………サクタロウは今日の(デート)プランを色々と思考する。
マリーはそんなサクタロウを見上げ、ふっと……微笑んだ。
▽────数時間後………3時、公園のベンチ。
「────まさか【デスシャークが人間に成ってボディービルダーの大会で準優勝する映画】だとはな。只のB級映画とは一味も二味も違くて見入ってしまった」
「そうですねッ…ふ、ふふっ!展開が凄すぎて、笑いを堪えるのに必死でしたもん」
「館内にも途中から笑いを堪える様な声が聞こえてたしな。俺も結構あの映画は楽しめた部類だった。適当に選んだのが大当たりで良かった」
「ボディービルの大会で準優勝って云うのも面白かったですね」
「そうだな。まぁ確かに優勝者の筋肉はちょっとレベルが違ったからな。そんな中でも準優勝だったのがかなりリアル(???)で良かった」
現在、時刻は3時。サクタロウとマリーはゲヘナのとある公園のベンチで、お店で買ったクレープを頬張りながら先ほど視た映画の話で盛り上がっていた。
その前で何をしていたのか、軽く説明する。
・ゲームセンターでクレーンゲームをし、小さな〈ウェーブキャット〉のキーホルダーをサクタロウが4回目で取り、それをマリーに上げる。マリーは一度謙遜するも、サクタロウの押しに最後は快く受け取る。因みにそのウェーブキャットのキーホルダーは
・その後、ショッピングモールでお買い物をする。ゲヘナにしかない洋服を物色したり、アクセサリーを拝見したりと、此処はマリーを中心に動いた。サクタロウは楽しそうに回るマリーを見て『(見る時間と買う量が釣り合ってないな……)』と、まぁ分からんでもない事を思いながら、マリーに付き合っていた。マリーもサクタロウに『着てみたい服とかありますか?』と云った問いを掛け、サクタロウは『あーじゃあコレとコレで』…と、適当に決めていた。マリーは”ムッ!”ときて、その後サクタロウを着せ替え人形が如く服を着せてどれが似合うか見繕っていた。女の子と【
・少し早めの昼食をレストランで済ます。マリーはオムライス。サクタロウはうどん少なめ。
サクタロウが少なめのうどんを頼んでいることに気付いたマリーは、普通盛りとは言え少し恥ずかしかった。サクタロウは恥を搔かせてしまった事に反省。マリーにバレない様、美味しいという雰囲気は出して食べきる。
そうして、1時30分に映画館でB級映画を観た。特に理由は無いが、映画観るか~と云った感じになったので、映画は適当に選んだのだ。今は休憩中のような状況だ。
「にしても、気付けば3時半過ぎか……早いモノだな」
「ふふっ、そうですね~……楽しい時間と云うのは、いつもあっという間ですね」
「特に最近は早く時間が過ぎるのが多い気がする。マリーと関わってから、だな。マリー効果ってやつか」
「な、何を言っているのですか………もうっ」
「あぁ、俺も自分が何を言っているのか分からなくなっている。緊張が抜けて、変に話してる」
「え?緊張してたのですか?」
「当たり前だろ。マリーと一日居るんだぞ、緊張するに決まっている」
「っっ………~~~!!」
淡々と、表情を一切変える事無く、恥ずかしい事をつらつらと並べるサクタロウに、マリーはそっぽを向いて顔を赤くさせる。
この男は、無意識に口説く言葉を吐き捨てる。質が悪いのが無意識故、その全てが彼の本音である事。
マリーは恥ずかしさ、嬉しい気持ち、彼に対してどう接するべきか……色々と思考する程、彼の無意識の口説きに悶えていた。
「ん?おい、どうした。そっぽ向いて」
「……いえ、何でもありません」
「………(ジーッとマリーを見るサクタロウ)」
「ほ、本当です!本当に何でもないですから…っ!」
「ん……嘘は言っていないな」
サクタロウは気付けば、とっくにクレープを食し終えていた。
マリーは少し残っている。何だか食べている所を見られるのは、少し恥ずかしい。
「偶にサクタロウさんって……その、ずるいです」
「?…どういう事だ」
「私からは言いませんからっ」
「なんだと?」
「い、言いませんよっ!だって、お伝えしたら何だか……いけない気がしますから」
「よく分からんが……分かったよ」
マリーもクレープを食べ終え、お茶を飲み、一息つく。
ふわっ……と風が吹く。
涼しい風。マリーの髪が、少しだけ靡く。
空を見れば少し曇っている。
「風が出て来たな、寒くないか?」
「いえ、大丈夫です」
「そうか……なぁマリー、実は何だがな」
「ん?……はい、なんでしょう?」
「今日のお出掛けプラン、映画までなんだ」
「え?」
「やる事なくなった。どうしようかな、この時間」
時刻は4時手前。中々に絶妙だ。
これからまた別の所に行くのもアリ。
それか今日はこれでお開きで、駅まで送るのもアリ。
サクタロウはマリーを見て、問う。
「どうする?」
「ど、どうしましょうか………」
「俺としては、マリーはもうトリニティに帰還した方が良いんじゃないかって思っている」
「えっ……そ、それは、どうしてですか?」
「今日1日ゲヘナで過ごして、何の問題事にも巻き込まれなかっただけでも奇跡なんだ。今日はそのまま、無事に帰って貰った方が俺としてはありがたい」
「あ、なるほど……」
ちょっと、イヤな想像をしてしまいドキッとしたマリーだが、ゲヘナ生らしい意見で納得だ。
確かに彼の言う通り、今日はお開きで良いのかもしれない。
サクタロウの意見もそうだが、彼には少し負担を掛けてしまった。第一として我儘を聞いて貰った側だ、今日はもう……このまま帰るとしよう。
「そう、ですね……わか、分かりました。今日はこれでお開きにしましょうか」
「………」
「?……あ、あの?」
「すまん、俺が言っといて何だが……マリー」
「は、はいっ」
「────もう少し、一緒に居るか?」
「────っ!!」
まさかの提案。サクタロウは左目の視線を逸らすも、それは本音のようだ。
その問いに、マリーは……。
「はい!私は全然大丈夫ですよ!」
「そうか、じゃあ……もう少し一緒に何処か歩くか」
「はいっ!あ、そうだサクタロウさん。私ちょっと行ってみたい場所がありまして……」
「何処だ?」
「この北方にある街道のネオンが綺麗だとお聞きしました。なので、此処で少し時間を使って、夜の、その……ネオンを一緒に見ませんか?」
「成程、良いなそれ。じゃあ早速行くか」
「っ!はい!」
「(……そういえば、この街道……────)」
サクタロウとマリーは早速、その街道に向かった。
所々、不良集団が不良集団と小競り合いをしていたが、サクタロウがマリーを抱えながら、何とか遠回りしながら回避していった。
そして、マリーとサクタロウは目的地に着いた。
マリーが心做しか上機嫌な事に、サクタロウは……少し、察していた。
▽
────そうして、街道の店を転々と渡り歩いて、数時間後………。
”ザァァァァァァァァァァァ…………”
「ひゃーーー!!」
「雨だー最悪―!」
「濡れる濡れる!」
「いやだもうー通り雨?」
「いや、なんか急に天気予報が変わったとか言ってきた気がするな」
「早くいえよ~!」
「黙れ~!」
ネオンが光る街道。本来なら、最高のスポットとして賑わっていたのだろう。まあ別の意味で賑わってはいるのだが。
この街道に、不幸が訪れる。何とこのタイミングで大雨だ。
時刻は8時過ぎ……夜の更けてきた頃合いだ。
「あ……あはは……災難ですね」
「まさか大雨とはな。ついていない」
現在二人は閉店した売店屋の屋根の下で雨宿り中だ。
他の人達が走って帰る中、夜の雨を見上げる。
ネオン街が燦燦と輝いて、存在を主張する。
気が付けば、この街道にはサクタロウとマリーしか居ない。そんな気がする程の人気の無さだ。
まだ営んでいる店はあるが、大雨の影響か、外に居る人間は…きっと私と俺だけ。
「雨の音が大きいのに、何だか静かだな」
「そうですね……っ……」
「寒いか?」
「あ、えっと……少しだけ」
「ならコレを掛けろ。少しはマシになる」
「へ?わっ………」
まだ寒さが残る4月だからか、大雨の事もあり肌寒くなるマリー。
サクタロウが即座にマリーの異変に気付く。
そして、そのまま……自分が着用していたジャケットを、そっとマリーの肩に掛ける。
マリーは嬉しくなる。気を遣わせてしまった事は申し訳ないと思うが、何だか……女の子として扱われるのは、言葉にできない嬉しいモノがあった。
「……ありがとう御座います。サクタロウさん」
「あぁ」
「サクタロウさんは寒くありませんか?」
「大丈夫だ。これくらい大した事ない」
「ふふっ、そうですか」
「俺よりもお前だ。そのジャケット、微妙に布面積が少ないだろ。まだ寒かったりするか?」
サクタロウの問いに、マリーは……ギュっとジャケットを掴み、笑顔で告げる。
「とっても温かいです!貴方の温もりをお受け取りしたので、心も体も温まりました!」
「ッ!……そうか」
マリーのとびっきりの笑顔と言葉。
サクタロウはそっぽを向いて、呼吸を整える。さっきから、心臓がうるさい。
マリーはそんなサクタロウに、微笑ましい表情で見つめる。心臓がうるさいのは、自分もだが。
数秒の間……サクタロウがマリーにある事を告げる。
「そういえば時間は大丈夫なのか?綺麗なネオン街の景色はまたの機会に預けるとして、帰る便の電車の確認とかした方がいいんじゃないか?」
「あ、確かにですね。ではちょっと失礼しますね」
マリーはサクタロウの問いに、直ぐにスマホを取り出して電車の状況を調べる。
「えーっと、ゲヘナからトリニティの便………………え?」
しかし、此処で思わぬハプニングが発生。
「どうした」
「あ、あれ?うそ……」
「おいマリー、どうしたんだ?」
「あ、あの、そのですね………────唯一トリニティに帰れる電車が脱輪して、今日の運行は、もう無いみたいです………」
「………マジか」
「ま……マジです」
そう、まさかまさかの運行停止だったのだ。
マリーはサクタロウに電車の状況サイトを見せる。
一言一句、余す事なく全て読み上げるが……どうやら本当らしい。
「そんな事ありえるのか、危ないな」
「雨の影響もあってと書いてありましたが……本当にありえる事あるんですね……」
「現にそうなっているんだから、あるみたいだな」
二人でポカーンとなる。こんな事も容易にありえるのがキヴォトスクオリティ。
そして、二人は最大の問題に迫る。
「────え、どうしましょ……帰れなくなっちゃいました」
「そうだな……どうするか」
そう、マリーが帰れなくなったのだ。
「取り合えずは状況確認だな。マリー、お前って実家?寮?それとも一人暮らしか?」
「え、えっと…学生寮です」
「なら寮長に連絡しなきゃだな。今日はホテルに泊まる的な事」
「あ、そうですね!寮長さんに電話をしなくては……」
そうして、マリーはスマホをタップして、電話を取る。
「────はい。はい……申し訳御座いません、明日の明朝には……はい、ありがとう御座います。失礼します……」
「……行けたか?」
「はい!寮長さんには何とか通じてくれました」
先ずは第一段階をクリア。
次の問題として……何処に泊まるかだ。
「問題は何処に泊まるかですね……」
「この街道の少し奥だが、此処のホテル割と安いぞ」
「えっ!そうなのですか?」
「あぁ、此処の奥ってラブホ街だからな」
「ぶふぅぅぅっっっ!!!」
いきなり衝撃が過ぎる発言を飛ばすサクタロウ。
マリーは思わず吹く。そして、そのまま勢いよく発語する。
「な、なっっ!!え!?」
「そんなに焦るか」
「あ、焦りますよ!?へ、変な事言って……あ、あうぅうぅ…っっ!!」
「すまん、無神経だったな」
「い…ぃぇ…………その、ホテルってソレしかないのですか……?」
「いやあるにはあるが、かなり高いぞ。しかも対して良い環境ではないしな、ゴキブリめっちゃ出るらしい」
「ひぃ………あ、あれ、でも意外と詳しいのですね?其処に泊った事があったり?」
「いやない。ただ俺の家が此処から歩いて15分程度の所なんだよ。だから分かるだけだ」
「あぁ、そういう事ですか…………………へ?」
一瞬、マリーの思考が止まる。
彼は今、何と言ったのだ……?
「え、あのっ……いま、何と?」
「あ?ゴキブリのホテルか?」
「そ、その先です!サクタロウさんの家から15分と聞こえた気がしたのですが………」
「あぁ、そうだぞ。こっから15分…もしないか。俺の家がある」
「え、えぇぇ!?」
まさか過ぎる発言だった。
このネオン街の、しかも歩いて15分程の場所に、彼の家が……?
マリーは驚愕を覚える。
「まぁ郊外区域で治安も悪い。寂れたアパートで暮らしている」
「そ、そうだったのですね………」
「まぁな………………あっ、そうか」
「え?」
「そうすれば金も浮くし、マリーも安全か」
「あ、あの…?」
「マリー」
「は、はいっ!」
なんだろう、猛烈に嫌な予感がする。
マリーの第六感が、そう告げる……次の、瞬間。
「────俺の家に来るか?」
「────へ?」
予想は、的中だった。
「どうする?」
「ど、どどどど、どうするって、あ、ぁい、どうしましょ、あ、え!?」
「落ち着け。そこまで焦る事ではない」
「あ、あああぁ焦りますよ!!そ、そんな!異性が、異性のお家にお、おっ、お泊りなんて……っっ!!」
「俺は何もしないぞ」
「それは、信用できるので良いのですがっ……で、でも……あうぅっ…」
マリーは顔を真っ赤に染める。その反応は当然だ。
2週間の絶妙な関係値の仲でも、流石に厳しい。
それに……相手がサクタロウだ。
それが、さらにマリーの判断を鈍らせる。
「────いや、そうだな………マリー、少し待て」
「え?」
「ひ、ふ、み…………よし。ほら」
「え?え?え???」
サクタロウが財布を取り出し、急にお金を取り出す。
そしてマリーに6万クレジットを差し出したのだ。
マリーは唐突過ぎて着いていけていない。
「ちょっと高いが、さっき言ったあのホテルに行け。6万あれば余裕で一部屋は入れるだろう、この金も多分1,2万は残ると思う。それに部屋はこの時期なら満室はない筈だしな」
「え、あの……はい???」
「どうも俺は無神経が過ぎる。お前みたいな可愛くて気になっている女を家に招き入れようなんざ、最低だったな。反省する」
「はい?あの、えっと………はい???????」
「すまなかった、マリー」
瞬間────マリーの中で、琴線に触れるナニかが、あった。
「…………」
「……ん?おい、受け取ってくれないか?」
「………サクタロウさん」
「あぁ」
「ッ!!ん、もうーーっ!!」
「んぉっ!?」
マリーは、自分が出せる大きな声で、サクタロウに迫る。
彼の正面に立ち、下からキッ!と睨むように、怒る。
「か、勝手に私の泊り先を決めないで下さい!そんなお金を私が受け取るとでも!?」
「え、いや……事故とはいえ結局もう少し居ようと云ったのは俺だから、流石にホテル代は払った方が良いかなと思ったんだが、違うのか?」
「まっっったく違います!わ、私は別に……」
「別に?」
「べ、べ、別に!貴方のお家が嫌だとは一言も言っていません!」
サクタロウは「確かに…」と、頷く。
マリーは畳みかける様にサクタロウに近付いて、告げる。
「な、なので!え、えぇぇっと……………」
「………」
「とっ……………泊めて、ください…っ」
「あぁ、分かった」
そうして、結局マリーが頼む形で彼の家に泊まらせて貰う事になった。
サクタロウとマリーは少し濡れながらも、近くのコンビニに寄って、マリーに必要な物を買わせる。
彼もマリーの夜食的なのを買う。傘も二つ買って。
そして、そのままホテル街を過ぎて……寂れたアパートに到着。
終始、マリーは顔を真っ赤に染めていた。口数も減って……。
もし過去に戻れるのなら、ネオンを見てみたいと云った自分を、止めたい気持ちで一杯だった。
────そうしてマリーは、サクタロウの家に入っていった。
────そしてマリーは、ここで……とある事を知る事になる。
次回はまさかのいきなりお泊り編です。
ただ、少し……~~~な展開になるかもです。
まだかな、いや、もう良いかな……後もう少しかな……殺すの。
を、何回も行き来してるっす。
誤字報告や感想、待ってます。