マリー、俺と付き合って下さい。   作:カブトムシの相棒

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やっぱ先生は次の回ですわ~!


マリーの下着マジで何色にしようか悩みました。お陰で投降が遅れちゃったっす。


あとちょっとリアルで忙しい時期なので、投稿遅れます、申し訳御座いません。


では、本編です。


マリー、俺と────

 

 

 

 

 

────サクタロウ宅。

 

 

 

 

 

 

「────サクタロウ、私が言う事は唯一つ……万魔殿に入れ!」

「────ふぅ、何度も言ったでしょう。入りません」

「何故だ!風紀委員会は抜けたのだろう?」

「そんな質素な理由で彼が入る訳が無いでしょう……」

 

 

 

現在、サクタロウはマリーをソファに寝かせ、立会したままヒナとマコトと話し合う。

 

早速マコトが要件を告げ、即座に却下される。

当時から万魔殿には勧誘を受けていたサクタロウだったが、悉くその勧誘を跳ね返していた。

理由は風紀委員に居たから。だからマコトは抜けた今、彼を直々に勧誘しに来たのだ。

 

 

 

「空崎さんから何も聞いていませんでしたか?俺は風紀委員会を抜けて只のゲヘナ生として生きる道を選んだんです。もう風紀委員の肩書も無ければ、貴女の命令や我儘を聞く筋合いは俺にはありません。何なら、敬語すらしなくて良いんですよ」

「……どうしたのだサクタロウ、お前のそんな苛立ちなんぞ初めて見たぞ」

「分かって頂けたなら結構です。俺はいま虫の居所が限りなく悪いんですよ」

「その子との逢引を邪魔したのなら謝るわ。でも、どうか、話だけでも聞いてほしいの」

「…………ふぅ、分かりました。簡潔に、お願いします」

 

 

 

ヒナとマコトはサクタロウの変化に戸惑いを隠せないでいた。

 

今迄の彼は冷静に物事を進めるタイプの人間だ。

どんなアクシデントも、どんな最悪な状況下でも、感情を表に出さず粛々とこなしていく人間だ。

 

それが……たった一人の女の子に、意図も簡単に変えられている。

 

 

 

「先ずは私からだ。サクタロウ……万魔殿に入れ、とはもう言わん。だが一度だけで良い────イブキに会ってやってほしい」

「イブキですって?なんでまた。もう会わないとモモトークで伝えましたが?」

「愚か者が!なんでそんな酷い事をイブキに言った!?憎くもイブキは貴様の事を『お兄ちゃん』と称して慕っていたではないか!!」

「イブキは酷くショックを受けて、今も泣いているわ……毎日【風紀委員会】に来ては貴方の所在を聞いてくる始末。心の底から可哀想だって思うわね」

「……俄かには信じられん、イブキは強い子だ。俺風情が居なくとも元気に過ごして居ると思ったが」

「大きな間違いだ、馬鹿者がっ……!」

「今回の件に関しては私も同意見。イブキのあの様子……見るに堪えないのよ。サクタロウ、風紀委員会や万魔殿との問題とイブキとの問題は別枠よ。だからどうか、あの子に顔を合わせてくれないかしら」

 

 

 

”丹花イブキ”……彼女とサクタロウとの関係は少し深い。

 

1年前、イブキがまだ初等部に居た頃、二人は【ゲヘナ食堂】で出会った。

仏頂面のデカい優男が一人で良い姿勢で黙々と炒飯を食べているのがイブキからしたら少し面白くて、何だか気になって話しかけた。

 

初めて見る人型の男性と云う事もあり、少しだけ緊張したが、サクタロウは幼い女の子の扱いが少し上手く、次第に仲良くなっていったのだ。

 

時には共にご飯を食べ、時には共に遊び、時には共にプリンを食べ、時には共に就寝したりもした。マコトからは唯一、イブキ関連だけ厳しく言われていたが、イブキが彼を『お兄ちゃん』として接してしまい、マコトやイロハと云った面々も引くに引けなくなってしまった。

 

サクタロウはイブキに冷たい訳では無かった。だが、イブキからしたら距離を感じていた。

それだけが少し、悲しかった。でも、それでも、一緒に居てくれた。

 

その矢先に、この出来事。ただモモトークで『イブキ、元気に過ごせ。じゃあな』と……一言だったのだ。

 

マコトも、イロハも、サツキもチアキもそれはそれは激情を顕わした。

余りにも理解が出来ない愚行だからだ。

 

彼にも何か理由が有るのかもしれない、それでも、イブキを泣かせていい理由は何処にも無い。

その波紋は万魔殿の親衛隊にも届いた。サクタロウには色々と世話に成った連中も、今は怒気を含めて彼を探すなんて展開になった。

 

風紀委員会も同様だ。裏切りに近い。だから、二つの犬猿の組織は手を組んで捜索に当たったのだ。

 

 

 

「……分かった、イブキには会いに行こう」

「っ!本当か?」

「嘘は付かないですよ。イブキを泣かせてしまうとは俺の一生の不覚です、ただ……そうですね、イブキには事の経緯を話す事にします。どうして、あんな言葉を送ったのか……あの子には色々と話します」

「……私達には教えてくれないの?」

「無い。飽く迄イブキにだけ伝えます。あんた等には関係のない話ですしね。これで俺をどう思うかはイブキ次第です」

「貴様っ……イブキに何を言うつもりだ!!」

「────関係ないっつってんだろ」

 

 

 

瞬間、サクタロウの目がカッ開かれ、瞳孔が獲物を見つけた獣のように小さくなる。

 

敬語を消し、いきなり狂気を表に出した。

ヒナとマコトは一瞬で言葉を詰まらせる。

 

 

 

「俺と、イブキの問題だ。お前等がイブキを溺愛しようが勝手だがな、この件は俺が仕切る。でなければ……お前等の願いは聞かん」

「ぐっ…………」

「……分かった、それで構わない」

 

 

 

マコトは納得がいかないが、此処まで来て目的を達成できないのは最悪だ。

ヒナも、此処でサクタロウと戦うのは最悪も最悪。文字通り彼のホームで戦う事になる。彼の武術は一通り知ってはいるが、まだ謎は多い。もしかしたら勝てない可能性だってあり得る。

 

故に、此処はぐっと堪える。イブキの為だと思おって。

 

少しの時の間………サクタロウが告げる。

 

 

 

「羽沼の条件は呑んだ。で、あんたは何なんだ空崎」

「────()()()()()S().()C().()H().()A().()L().()E()

「なに?」

「聞いた事はある筈よ。シャーレの先生と云う大人の存在」

 

 

 

ヒナが提示したのは、斜め上の内容だった。

 

 

 

「……シャーレ。キヴォトス外の大人が顧問としてして活動している組織か。シャーレ奪還作戦の時に卓越した指揮能力で苦しい盤面を、たったの4人で引っ繰り返したとされる、不可思議な存在……確か、火宮がその中に居たな」

「えぇ、チナツ自身も”彼”の指揮には驚かされたと言っていたわ。チナツの話を信じるのなら、きっと良い人なんだと思うけど……」

「……まさか、確証を得るために俺が懐に入るって事か?」

「話しが早くて助かる」

 

 

 

ここにきて更なる驚きだ。

 

つまり……サクタロウが【シャーレ】に直々に向かい、先生と云う不可思議な存在の証明を任せたいとの事。

 

 

 

「無論、これは風紀委員長としての命令ではないわ。可能なら、の話」

「……選択は折れ次第って事か。なら一択だな────任せて貰おう」

「そうね、わかっていたこt…………え?」

「な…っ!躊躇もなく了承しただと!?」

「え、あ、え?い……いいの?」

 

 

 

ヒナとマコトは驚愕を禁じ得ない。

まさか、あの流れで了承を得るとは思えなかったからだ。

 

サクタロウは無表情のまま告げる。

 

 

 

「正直な話、俺も気になってはいた。キヴォトス外の大人で、しかも実態は様々な自治区に制約なしで戦闘が可能な【超法規的組織】だ……そんなもの、最悪な人間が保持していたらキヴォトスのバランスが崩れかねん事態だ。気にはする」

「そ、そう……」

「……では、この案件はお前に任せるとしよう」

「あぁ」

 

 

 

ハイスピードで事が終わった。

彼の望み通りの展開だ。簡潔に物事が進んだ。

 

 

 

「シャーレには明後日に出向く。イブキには……そうだな、明日に会いに行く。今日はマリーと過ごすと決めているんだ、この予定は覆らん。それで良いな?」

「あぁ、構わん。あと明日は私も同行さs」

「ダメだ。言っただろう、コレは俺とイブキの問題だからサシで話し合う。無視して着いてきたら殺すぞ」

「な、なにぃ!?」

「マコト、貴女も納得した事でしょ。この件は二人だけの話、私達が入る隙はない」

「グギギギギッ……!」

「そういう事だ。なら、帰ってくれ」

 

 

 

そう言って、サクタロウは強引に二人を玄関まで突き放す。

 

 

 

「おいっ!ゲヘナのトップ相手に何をするんだ!」

「もうどうでもいい。立場も何も関係が無いからな、やるべき事は理解出来たんだ。もう用はないだろ、帰れ」

「貴様ァァ!下手(したて)に出ていればッ……好き放題いいすぎだぞ!!」

「それもそうだな、すみませんでした」

「うわぁぁ!急に大人しくなるな!」

「ほら、帰るわよ……取り合えず明日来るなら連絡して、一人だとちょっと危ないかもしれないから」

「同行してくれるのか、有難い……予定では、午前には行く。じゃあ、また」

 

 

 

それを残し、二人は現場を後にした。

ドアの閉まる音が響き、コツコツと靴音が次第に遠くなっていく。

 

それを聞き過ごしたサクタロウは、ふぅ……と息を吐き、今へと戻る。

 

 

ソファーではマリーがまだ寝ている。

………否。

 

 

 

「────狸寝入りはもうしなくて良いぞ、マリー」

「っっ!?」

 

 

 

ビクッ!と、マリーの身体が跳ねる。

狸寝入り……文字通り、マリーは途中から起きて、3人の話を噓寝で聞いていたのだ。

 

数秒の間……マリーは諦めが付いたのか、すくっと起き上がった。

 

 

 

「おっ……おはよう、ございます~……」

「あぁ、おはよう寝起きのマリー。嘘寝とは頂けんな」

「うっ………す、すみません!シスターにあるまじき行為でした…っ!でも、まさかゲヘナのトップ層である、あの空崎ヒナさんや羽沼マコトさんがサクタロウさんのお家に来訪するなんて、かなり衝撃で……」

「ふん……いや、俺もイジワルが過ぎたな、そう思っても致し方ない。今回の件は別に気にしなくて良い、大した内容でもないしな」

「いえ、結構な機密内容だった気が……」

「事の情報をトリニティ内部に流す程、マリーは悪い子じゃないだろ?」

「もっ!もちろんです!今回の件は聞かなかった事にします!」

「そうか……紅茶、淹れ直すな」

「あっ……ありがとう御座います」

 

 

 

数分の間、サクタロウが紅茶を淹れ直す。

 

その間にも、両名は様々な事を思い浮かばせる。

 

 

本来ならヒナやマコトも、気絶しているとはいえトリニティの生徒の前で話すなんて事はしなかった。普通なら、だ。

 

今回は大急ぎだった事、やっと見つけたサクタロウの所在、そしてサクタロウの滲み出たそこの無い狂気。

 

これらが合わさり、マリーの事を考えている暇はなかった。

 

だが、そこはマリー。今回聞いた情報を口外しないと宣言。

サクタロウはマリーの瞳を見て、それが真実だと判断。

 

 

 

「その様子だと、聞いていたのはかなり前半からか…………なぁ、マリー」

「は、はいっ……………え」

 

 

 

サクタロウが平謝りを行う。

 

 

 

「すまなかった。らしくない気持ちをお前にぶつけた。お前に、嫌な想いをさせた。本当にすまない」

「ぇ、あ、へっ!?そ、そんなッ!お顔を上げてくださいっ!貴方が謝る事なんて、一つもありません!」

「だが、現にお前をダウンさせてしまった。お前に……マリーに伝えられた言葉が、心の底から嬉しかったから、自分ですら理解出来ない感情を制御できず、お前に抱き着いてしまった。気持ち悪かっただろう……?」

「気持ち悪くなんてありません!ほ、本当です!気を失ってしまったのは、そのっ……は、恥ずかしくって、でも、嬉しくてっ!そして、貴方の抱えていた秘密を、知ってっ………色んな想いがゴチャゴチャに、なっちゃってっ……恥ずかしながら、気を失ってしまっただけなんですっ…!」

 

 

 

サクタロウの謝罪に、マリーは真っ向から否定する。

 

そんな中で沸々と思い出して来る、彼が吐露した今までの苦行に、止められない感情が涙として吐き出される。

 

でも、もう泣くのはいいから……今は、彼に寄り添いたのだ。

 

 

 

「────本当にお前は、誰よりも人に共感できる子なのだな……流石だな」

「ふぅ、うっ……ふーっ………ごめんなさい、ないて、ばっかで…っ」

「何を言うんだ、何度も言っている様に、マリーが泣いてくれるだけで俺は救われた気持ちに成るんだ……すまないな、優しいお前にこんな想いをさせる何て、あってはならないのに」

「っ!いえ!どうか気にしないで下さい……ぐすっ………貴方に寄り添いたい思いは、私のエゴでもあるのでっ!」

「マリー………なぁ、マリー。俺はさ」

 

 

 

二人とも立ち上がり、テーブルから離れる。

サクタロウはマリーに少しだけ近付き、見下ろしながら、言を投げる。

 

 

 

「────本当は、今日、お前に……『もう会わない』って、言おうとしたんだ」

「っ!………サクタロウさん……」

「俺の所為でマリーは要らぬ秘密を知ってしまった。俺のこんな身体の所為でマリーに悲しい想いをさせ、心に傷を負わせてしまった。俺の所為でマリーを……泣かせてしまった」

 

 

 

サクタロウは眉間に皺を寄せ、上手く言葉を紡ぎ、頑張ってマリーに発語する。

苦しい。初めての経験だ、気持ちが、心が……凄く苦しい。

でも、伝えなければならない。

それが、己がマリーに与えた負の責任だから。

 

そして……変わると決めた、自身の決断だから。

 

 

 

「どうしても、マリー……お前に嫌われたくなかったんだ。俺の、俺の身体の秘密を知ったら、もしかしたらッ…対応を変えるんじゃないかって、怖くて…………お前に、事実を伝えるのが、俺はッ……怖くて仕方なかったんだ」

「サクタロウさん……」

「誰かに怖いと、気持ち悪いって、嫌われるのは心底どうでもいい。どうでもいいんだ……だが、お前に、マリーにそう思われるのは、本当に嫌だったんだ」

 

 

 

マリーは、ただ静かに、彼の言葉を聞く。

 

只々、静かに……彼の言葉を聞く。

 

 

 

「でも……そんな俺でも、マリーは全く嫌がらなかった。怖がらなくて、嫌いに何てならなかった……それが、どうしようもなく、嬉しいんだって気付いた」

「っ…!」

「ありがとう、マリー……俺に、まだ人間なんだって思わせてくれる、人を想うって気持ちと、心を与えてくれて────ありがとう」

 

 

 

そう告げるサクタロウの顔は……少し、ほんの、ほんの少しだけ……笑みが浮かんでいた。

 

 

 

「サクタロウさん……っ!」

 

 

 

その変化、マリーが見逃す筈が無く。

気付いた時にはもう遅かった。彼が、僅かながらも、確かに笑ったのだ。

 

全てに、何もかもに、絶望してしまった、無表情で生気の感じない顔立ちだった彼が、少し…笑ったのだ。

 

マリーは堪らず口元を抑え、涙をポロリと流す。

それだけ、彼の変化が……嬉しかった。

 

 

 

「────……マリー」

「っ!はい、なんでしょう……えっ」

「も、もう一度……抱いて、いいか?」

 

 

 

サクタロウが抱擁の構えをとる。

小さく、問う様に、または願う様に、マリーにそう伝える。

 

ぶわっと、マリーの顔が赤く染まる。

対照的、とは言えないが、サクタロウも僅かに緊張しているのが分かる。

 

マリーの答えは……決まっていた。

 

 

 

「────っ!し、失礼しても、良いのですか…?」

「あ、あぁ……お願いしたい」

「で、ではっ!しちゅっ!し…失礼、します!」

 

 

 

”ぎゅっ!……ぎゅぅぅぅ”

 

 

 

トンッ……と、マリーがサクタロウに身を預ける。

躊躇はあった。でも、今の彼の状態で、嫌とは言えない。

 

それに……何だかんだ、リベンジしたかったマリーも居た。

 

 

 

「(うぅ、やっぱり恥ずかしい……っ!ま、まだ付き合ってもいないのにぃ~………っ!)」

 

 

 

元々マリーはお淑やかな女の子だ。こんな大胆に、しかも恋仲でもない異性相手に、こんな行動をとるのは初めての経験だ。

 

顔から火が出んばかりに羞恥が襲う。

 

 

 

「……痛覚も無くなって、味覚も無くなってしまったが、まだ人肌を感じる程度の感触は、残っているみたいだ」

「え…?」

「温かいな、マリー……ずっとこうして居たい」

「さ、サクタロウさん……!?」

 

 

 

ツンツン系だったのに、急に甘々な態度をみせて来るサクタロウ。

ギャップも相まって、マリーは胸キュンしてしまう。

 

 

 

「あ、すまん。苦しくないか?ちょっと強く抱きしめてしまった気がする」

「だ、だだ、大丈夫です!はい…!」

「そうか?その、もうちょっとだけ……良いか?」

「は、はいぃぃ………」

 

 

 

彼の抱擁はその後、何と20分間も続いた。

マリーはその間、極限の恥ずかしさからずっと顔を赤くさせ、少し唸っていたが……同時にとても嬉しくともあったので、複雑な気持ちだったとか……。

 

 

 

 

 

 

 

▽────数十分後。

 

 

 

 

 

 

「────あ、あの~……」

「………」

「ま、まだ、ハグしますか……?」

「………お前は、もうしたくないのか?」

「それは……ずるいですよ」

「じゃあ後1分、いや2分はお前の体温を感じさせてくれ。本当に、落ち着くんだ」

「うぅ……お好きにどうぞ…っ」

 

 

 

結局、この景色はかわらずで、二人は長い間抱き合っていた。

別に付き合っていない男女。だが少し特別で、不思議な関係。もう一歩手前なのだが、大きな決定打が無い。ムズムズするンゴ。

 

数秒後、サクタロウが────マリーを持ち上げる。

 

 

 

「きゃっ!?」

「ふんっ……よし」

「えっちょっ…ひゃあ!」

 

 

 

そして、少し歩いて、何とサクタロウがソファーに座り、サクタロウが椅子に成る形でマリーを自分の太腿の上に乗せる。

 

謂わば────正面前座位の形に成る。

 

 

 

「さっ!さささサクタロウさん!?ここ、この姿勢は、ちょっと危ない様な…っ!?」

「ずっと立ったままは辛いだろ。なら、これが効率的に休みながらハグが出来る」

「ひえぇぇ………っっ!!」

 

 

 

極限だ、だが、マリーは折れない。

彼に寄り添うと決めた、なら、その信念に通じなければならない。

 

 

 

「マリー、もう一度、質問をしてもいいか?」

「へ?あ、えぇぇっと……だ、大丈夫、です…!」

「ありがとう」

 

 

 

サクタロウが続ける。

 

 

 

「マリーは、なんで俺に、そんなに優しくしてくれるんだ?」

「そ、れは……貴方が放っておけないからなのと、私の、そのっ……個人的な理由、です…っ」

「それは言えない事なのだな?」

「は、はいぃっ……!」

 

 

 

最早、それは言っているも同義だが、取り合えずサクタロウは内に留める。

そして、二つ目。

 

 

 

「次に、マリーは俺の事をどう思っているんだ?」

「っ!?あ、あえ!?そ、そそれん!それはっ…………すき……え、えっと!!とても格好いい人だって思ってます!」

「……そうか」

 

 

 

サクタロウはマリーの言った事が……普通に聞こえていた。

それはそうだろう。目の前に居るのだから。

だが敢えて聞こえない振りをした。マリーの名誉の為にも、意を汲んだのだ。

 

そして……彼が聞きたい、最後の3つ目。

 

 

 

 

「────お前は、いつまで待ってくれる?」

「え?」

「俺が、お前に()()()()()()まで……いつまで、待ってくれるんだ」

 

 

 

それは晴天の霹靂で、マリーの脳内にとんでもない情報の暴力が襲い掛かる。

だって、それはつまり……そういう事だからだ。

 

 

 

「い、い…いつまで……」

「悪い、ダメで意気地なしで。先に言うが、俺は……お前が、そのだな……アレなんだよ」

「あ、アレ……っ!」

「そう、アレだ、アレ……お前はさっき、俺に言い掛けてくれただろ?でも俺は……すまん、お前相手だと、どうにも、その……素直に成れなくって、でも決してそれが俺って訳じゃないんだ。あーっと、だから俺は……お前に、だな」

「……ぷっ、ふふっ!」

 

 

 

じれったい彼に、こんな状態でも笑いが込み上げてくる。

恥ずかしさよりも、ずっと強い可愛さ。この人はなんでこうも擽らせるのだろう。

マリーの笑いに、サクタロウがむっとする。 

 

 

 

「なんで笑うッ……俺は真剣なんだぞ」

「いえ、だって!ふふっ…いつまで待ってくれるだなんて…っ!もうそれ……あはは…!」

「なんだよ。変なことは言っていない筈だ、何がそんなに可笑しっ……おい、お前、このッ!」

「ひゃ~!またほっぺが~!」

「ニヤケ面晒しやがって……お前、ん…っ!?」

「わ、わっ!きゃっ!?」

 

 

 

”ドサッ────”

 

 

 

サクタロウがマリーの頬を両手で伸ばし、マリーが擽ったいと少しうねっていると……互いの態勢が崩れる。

 

そして、何と────

 

 

 

「あ………」

「ッ………」

 

 

 

サクタロウがマリーを押し倒す形に成ってしまった。

 

静寂が訪れる。緊張の糸がギチリと張り、心臓の音が聞こえそうな程、互いの心拍数は鼓動を早くさせる。

 

 

 

「す……すまない!早くどく────」

「ま、待って!」

「あ!?」

 

 

 

ぎゅっ……と、マリーがどこうとするサクタロウの両腕を握る。

 

一瞬、呆気に取られるサクタロウだったが……マリーが告げる。

 

 

 

「さ、さっきの問いの口答になるのですが……っ!」

「あ、あぁ……」

「────今じゃ、だめ……ですか?」

 

 

 

恥ずかしそうに、でも期待するように告げるマリー。

そういうフェロモンが分泌されているのか、マリーの周りには非常に強いナニかが放出されていた。

 

それは確かにサクタロウの判断を弱らせる。

 

 

 

「マリーッ……一つ、言っておく」

「はいっ…」

「俺にもそれなりに性欲はある。余り、刺激を与える様な雰囲気を出すのは辞めろッ」

「っ!」

「俺だって男だ……様々な感情を教えてくれた、どうしようもなく()()()()()()()()に、そんな言葉を云われてしまえば、流石に……────」

 

 

 

サクタロウが諭そうとした、瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”────チュッ♡”

 

 

 

 

 

 

「……あ?」

「んっ、は………えへへ……」

 

 

 

何と、マリーが……サクタロウにキスをしたのだ。

流石の彼もこの唐突過ぎる行為に脳が上手く機能しない。

 

だがすかさずマリーが、彼に顔を近づけ、告げる。

 

 

 

「────その言葉を聞きたかったんです。サクタロウさん」

「あ?あぁ?……お前…ッ」

「惚れている……ふふっ、えぇ、私も惚れていますよ、サクタロウさん」

「お前、さっき、おまっ……自分が何をしたか、分かってんのか?」

「分かっています。だから言います────サクタロウさん」

 

 

 

マリーがサクタロウと顔を合わせ、瞳を射抜き、告げる。

 

 

 

 

 

 

「私は貴方が好きです。初めて会った、貴方が私を救って頂いた、あの時から……大好きです」

「────」

「例え私を救ったのが気まぐれでも、例え貴方が不死身の肉体を持っても、痛覚と味覚が無くとも関係ありません。私は『榊サクタロウ』と云う男性に惚れました。少しツンツンしてて、偶に凄く可愛くって、どこか放っておけない貴方が大好きになりました」

「マリー、お……おまえ」

 

 

 

マリーは続ける。

彼が動揺をしても構わず、続ける。

 

 

 

「サクタロウさん、私と────つきあってく……んぅ!?」

「ッ!んッ……」

「ひゃ、さきゅ、さくたりょ……んぅぅっ!」

 

 

 

だが、マリーの言葉が続く事は無かった。

サクタロウが反撃の様に口付けをしたのだ。

 

マリーの様に可愛いものではなく、獣のように激しいキスを、マリーにする。

 

 

 

「ん、ふっ……ふぅぅ」

「はっ、はっ、あっ……サクタロウ、さん……っっ」

「俺のセリフを取ろうなんざ、許さん」

「へ……?」

「────この感情はきっと、そういう事なのだろう」

 

 

 

サクタロウが、トロ~ンとした顔のマリーに、遂に……告げる。

 

 

 

 

 

「────マリー、俺と付き合って下さい」

「っっ!!!!」

「俺を愛してくれ。俺の傍に居てくれ。俺の……モノになってくれ」

 

 

 

独占欲マシマシの告白を、マリーに。

マリーはホロリと涙が零れ、でも嗚咽する涙ではなく、嬉し泣きを見せる。

 

そして、間えお入れる事無く────マリーが告げる。

 

 

 

「はいっ……よろしく、おね、がい…します…っ!!」

「……あぁ、宜しく頼む」

 

 

 

言いたかった事。

言えなかった事。

 

その想いが混雑して、すれ違って、でも何とか修正して、逆にお互いを理解しあえて。

 

そして今、やっと……想いを告げる事が出来た。

 

ぎゅ~~~~っ!と抱きしめる。

つよく、強くっ、抱きしめる。

 

少し大変な事があったけど、こうしてハグが出来る。

想いが伝えられる。

それでもう、十分なのだ。

 

 

 

 

 

”────ゴリッ”

 

 

 

 

「………へ?」

「………まぁ、そうなる」

 

 

 

だが、こんな甘々で終わる程、現実は優しくはない。

 

マリーの下腹部に、なにか硬いモノがあたる。

 

 

 

「あ、わわ…あ、あえ?こ、これ…っ」

「マリー」

「は……はい」

「────勃起した」

「あっ………~~~~~~!!!!」

 

 

 

何を真面目に言っているのか。

もう顔は真っ赤っかだ。サクタロウは相変わらず無を極めているが、身体は正直らしい。

 

マリーは感触的に分かっていた。でもこうも真正面から言われると……かなりクルものがあった。

 

 

 

「どうする」

「へ…?」

「此の先、俺だけでは判断できん。さっきも言ったが俺にも性欲はある。正直いまマリーに凄く興奮している」

「あ、え、ぁぁ……っっ!!」

「だが、俺の独断でお前とセックス出来ん。俺としてはお前としたいが……3秒数えるから、嫌だったら言え。言わなかったら────お前を俺の女にする」

「────っっ…~~~っ!!」

 

 

 

ずる過ぎる提案だった。

まだ知り合ってそこそこなのに、まだ恋仲に成って数秒なのに。

 

 

 

「……3」

「あ、っ!えと……っ!!」

 

 

 

自分だって立派な高校生だ。

そういうのに興味はある。しかもこんな、異性が相手だと尚更。

 

 

 

「……2」

「んっ、あぁ……~~~!!」

 

 

 

でもそれ以前に、自分はシスターだ。

別に恋人を作ってはいけないルールはないが、まだ1年の、未熟な自分が良いのだろうか。

そんなあられもない葛藤が、渦巻く。だが……あと2秒。

 

 

 

「……1」

「………っっ!!」

 

 

 

────残り1秒。

 

 

……こういうのも、きっと良いのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「────0」

「サクタロウさん」

「ん……どうした?」

 

 

 

サクタロウはマリーの意志を尊重する。

ここで嫌って言えば辞める。そういう精神力はあるからだ。

 

だが……マリーは発語する。

 

 

 

 

 

「────優しく……おねがい、します…っ」

 

 

 

 

”────プツンッ”

 

 

 

 

「……あぁ、慣れるまではな」

「え、あ……んぅっ!!」

 

 

 

サクタロウはキスをする。

そして、数秒して……口を離し、獣のように鋭利な視線をマリーに送り、告げる。

 

 

 

「────大事にしよう、この時間を……日はまだ浅い。お前をぐちゃぐちゃにする時間は沢山あるからな」

「あ………~~~っ!」

「安心しろ、ゴムはある。寝室に、な────」

「あ、ん!おっ……お、お尻…っ!あぁ…………」

 

 

 

臀部を鷲掴みして、そのまま立ち上がり、寝室までマリーを運ぶ。

 

そうして、男女の長い長い、1日が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────サクタロウの奴、随分と変わった……人間味が今迄とは段違いだ」

「そうね……何があったかは分からないけど、要因はあのマリーって子しか考えられないわね」

「あぁ……あんなロボットみたいだった男が、見ない間に人間らしくなったものだ」

「そうね────でも、同時に以前から感じていた【狂気性】が露になっているわ」

「私達に見せた、あの空気と狂気………【雷帝】を思い出させる圧力だった。あれは一体なんだ?」

「分からない。だからこそ不気味ね……彼にシャーレを任せたのは危険だったかしら」

「……何故、サクタロウがあそこまでの狂気を秘めているかは分からん。それが善と出るか悪と出るかは運次第だろう」

「……そうね」

 

 

 

 

 

 

 

 








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